2-2 花見川筋の谷津地形発達史
2-2-2 花見川筋周辺の地形面の把握
② 地区別地形地質の把握
ウ 柏井付近
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【柏井付近の地形 A】
花見川現地調査報告3
柏井付近の現地調査結果のうち、北側の部分を報告します。
1 調査地点情報
次に調査地点の位置図を示しました。
調査地点位置図
基図は千葉市提供DMデータを使用しました。
調査地点のプロットはGPSデータをパソコンが機械的にプロットしていますから正確です。
この調査位置図に対応した地形分類図(予察図)を次に示します。
昭和24年撮影米軍空中写真実体視により作成しました。
事前に作成した地形分類図(予察図)
また地形断面を次に示します
断面1
千葉市提供DMデータ等高線情報から作成しました。
断面2
千葉市提供DMデータ等高線情報から作成しました。
2 緩斜面と凹地
北柏井集落の乗る河岸段丘の北に広がる台地は、標高28m等高線より西側が平坦な地形面、東側が緩斜面になっています。
その緩斜面の中に、18.4mの測量ポイントのある大きな凹地があります。
断面1でもその縁が表現されています。
写真1は緩斜面上から東側(花見川方向)を見た時の風景です。
写真1
緩斜面上から東側の風景 中心部から外れていますが、凹地形が確認できます。
凹地中央部は藪(雑木林)になっていてその内部の巨大すり鉢状地形は肉眼では観察できますが写真では表現できません。
普請盛土で出口を失った凹地です。
耕作されている方にヒアリングすると、雨が降ると水がたまるため戦後底の部分で水抜きの工事をしたことがあるとのことです。
緩斜面を構成する地層を見ることのできる露頭の存在は見つけることができませんでした。
川表の崖は竹林となっていますが危険で近寄れません。
北柏井集落の乗る段丘面背後の崖は私有地で今回は入れませんでした。
調査位置図に示した「地表面観察」場所では耕地の土質は褐色ローム質細砂か灰色中砂でした。
ローム層起源の土壌とは異なるので普請盛土起源であることが示唆されます。
崖下人家の住民からヒアリングしたところ、「崖から凹地までの一帯は全て普請盛土であり、だから土地が肥えていると先祖から伝わってきている」との話を聞くことができました。
水はけのよい砂地の土壌の特性を生かした畑作が行われているものと想像しました。
写真2
北柏井集落の乗る段丘面上から背後の崖を望む。
この崖を調査すれば背後の緩斜面を構成する地層を確認できる可能性があります。
現場観察から、北柏井集落の乗る段丘面が北方向に連続していてそこに普請盛土が行われ、一見台地のような緩斜面が作られ、一部が埋め残されて大きな凹地ができたと考えました。
3 北柏井集落の乗る河岸段丘
北柏井集落の乗る河岸段丘の構成地層を観察するために露頭を探しましたが、見つかりませんでした。
路傍や人家の庭の土質はローム、褐色細砂、褐色シルトなどでしたが、地層に由来するのか、人工的なものなのか不明です。(おそらく地層由来ではあるが、人工的に撹拌されたものと現場では感じました。)
4 後谷津北側の河岸段丘
写真3は後谷津北側の河岸段丘の全景写真です。
写真3
後谷津北側の河岸段丘
段丘端から北側を見た風景です。画面左側が花見川です。
地形面としての高さは花見川対岸の北柏井集落の乗る河岸段丘より2mほど高く、高位の段丘として捉えることができます。
段丘上の耕地の土質は手前から細砂やシルト、ローム、ロームと砂の混合と帯状に変化するので、段丘面の構成地層とその上の普請盛土の存在を推測できます。
この段丘の構成地層を観察できる可能性のある場所が露頭2です。
露頭2
露頭2では、露頭下の地面に上層より固結した砂層があり、露頭崖には固結していない褐色の細砂・シルトが観察でき、その上にロームがあります。
ただ、露頭は笹などの植物に覆われ、私有地で植物を剥ぐわけにもいきませんので、最初の観察ですから無理はしませんでした。
土地関係者の了解を得てから、本式調査をしたいと思います。
柏井付近の河岸段丘地形面を構成する堆積物を直接観察できる貴重な露頭だと判断しました。
褐色の未固結細砂・シルトが段丘堆積物であると考えました。
露頭断面で堆積状況を観察できれば、段丘堆積物の特性情報が入手できると思います。
露頭1
露頭1は川表の崖で段丘堆積物を観察できる位置にあります。
実際に観察できたものは上から崩落してきたと思われる砂質ロームです。崖の観察を子細に行えば段丘堆積物を観察できるかもしれません。
5 後谷津北側の河岸段丘の東の台地
後谷津北側の河岸段丘と南柏井共同墓地に挟まれた台地は、その標高が24~26mで付近より低くなっています。
この台地の露頭付近の状況を次に示しました。
露頭3
この露頭ではローム質砂などが観察できますが、層構造を確認できません。逆に近くに貝混じりの砂などがあり、露頭全体が普請盛土であるという感じを強く受けます。
露頭が急崖であるため最初の調査でそれ以上の十分な観察ができませんでした。
今後の調査で正確な情報を得たいと思います。
地形分類図(予察図)と異なり、現地調査では、この露頭から、台地の一部が河岸段丘上に築かれた普請盛土であるかもしれないという考えを持つに至りました。
6 現地調査結果により想定した河岸段丘面の分布
現地調査の結果、次に示す河岸段丘の分布を作業仮説として考えるようになりました。
露頭観察調査を繰り返し行い、正確性と情報の増大を図ることにより、この作業仮説を検証したいと思います。
河岸段丘面の分布(一部)(仮説)
普請盛土に覆われて隠れてしまった部分を想定復元して作成した古柏井川河岸段丘面の分布図(一部)です。
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花見川現地調査報告4
1 調査地点情報
次に調査地点の位置図を示しました。
調査地点位置図
基図は千葉市提供DMデータを使用しました。
事前に米軍が昭和24年に撮影した空中写真の実体視により作成した地形分類図(予察図)を次に示します。
事前に作成した地形分類図(予察図)
地形断面を次に示します。
断面1
千葉市提供DMデータ等高線情報から作成しました。
断面2
千葉市提供DMデータ等高線情報から作成しました。
2 高度から段丘面を2区分する
現地では高度から、河岸段丘がほぼ14mから16mの高さの低位面とほぼ18mから20mの高位面に区分できることが判りました。
事前に作成した地形分類図(予察図)の一部を修正する必要が生じました。
低位面と高位面が接するところには1m~2m程度の小崖が確認できます。
現地で予想した段丘面の分布と区分
3 高位面の露頭
露頭1、2は高位面を切っている断面です。
露頭1
露頭の上部は未固結黒色腐植質細砂、中下部は未固結褐色細砂になっています。
段丘面上は人為の影響を強く受けているので、この露頭がフレッシュな地層断面を表現していない可能性を排除できません。
露頭2
ローム質シルトが観察できます。
周辺の人為改変により、観察しているものが真に地層構成物であるか100%の確信を得られません。
想像たくましく考えれば露頭1、2の細砂、シルトは人為の攪乱を受けていたとしても、もともとの段丘堆積物であると思います。
露頭3
高位面背後の段丘崖付近の露頭です。斜面に堆積したロームのようです。
集落が立地してフレッシュな露頭が皆無の地域の段丘堆積物調査方法について、どのような専門的調査方法があるのか、情報収集してみたいと思います。
現場調査経験を積むことが一番大事だと判りますが、それ以外の方法(住民ヒアリング、井戸やボーリング資料入手、ハンドオーガー調査、…)について検討してみたいと思います。
4 段丘を作った古柏井川の流向
河岸段丘を作った古柏井川の流向を証明する方法として、地質面からの方法としては、段丘堆積物が礫である場合、その地層断面を観察できれば、インブリケイションの方向で流向を直接明らかにすることができます。
しかし、古柏井川の段丘堆積物は細砂やシルトであることが判ってきたので、この方法は使えない可能性が大です。
地形面からみると、谷津流心線の方向、段丘面分布から北に向かって流れていたことが証明できます。
段丘を形成した当時の古柏井川の流向
仮に異をとなえて、河岸段丘を作ったころの川の流向を、現在と同じ南方向に流れていたとすると、次のようなあり得ない地形形成を説明しなければならなくなります。
あり得ない古柏井川の流向
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花見川現地調査報告5
V字谷形成前の浅い谷地形の発見
東岸の台地上の広い緩斜面の存在は空中写真実体視でわかっていたのですが、現地を歩いて対岸(最成病院付近)にも同様の緩斜面が広がっていることを確認しました。
早速空中写真を見ると、樹木の存在に騙されて、緩斜面の存在を見落としていたようです。
この調査結果を地形分類図(予察図)に反映させてみました。
地形分類図(予察図を一部修正)
断面図
その分布から両岸に広がる緩斜面は、V字谷形成前の古柏井川の浅い谷であると考えました。
下総台地が形成されて最初に刻まれた谷地形(古柏井川)が、化石のように残っていたものと考えられます。
同様の緩斜面は東岸の北400m(柏井ポンプ場付近)にもあり、さらに北の西岸にも分布しています。
古柏井川の浅い谷地形
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【柏井付近の地形 B】
花見川付近の地形面の対比 その3
柏井橋の前後で前谷津(東から流れてくる支谷津)と後谷津(西から流れてくる支谷津)が花見川に合流します。
この付近の地形を河岸段丘地形に着目して、詳しくみてみました。
1 地形段彩図
この付近の地形段彩図を次に示しました。
地形段彩図
A-B、C-Dは地形断面図位置
2 地形断面図
A-B、C-D2本の地形断面図を作成し、現在考えている地形面区分をメモとして書き込みました。
A-B地形断面図
下総下位面(浅い谷)(標高22m)の断片が現れます。両岸に花見川河岸段丘(標高14m~16m)が発達します。
C-D地形断面図
標高19m前後に平坦面が現れます。この平坦面は下総下位面のグループのなかでより低位にある地形面と考えます。(詳細検討は追って行います。)
この地形面を下総下位面bと仮称しておきます。
東岸に古柏井川谷底と考えられる地形断片があります。
その下には花見川河岸段丘があります。
地形の対比は高度、分布、開析状況等から判断しています。
この現場は何度もあるいているのですが、段丘面の地層を観察できる露頭は、残念ですが、見つかっていません。
2 地形面対比の3D表示
現場での観察、空中写真での実体視を踏まえて地形面対比の結果を2つの3D画像で表示してみました。
柏井橋付近の地形3D表示 その1
柏井橋付近の地形3D表示 その2
つづく
花見川を南に向かって、段丘地形を順次詳細に見ていきます。
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花見川付近の地形面の対比 その4
柏井橋の南の地形面の対比を行いました。
1 地形段彩図
この付近の地形段彩図です。
地形段彩図
E-F、G-F、H-Iは地形断面図位置を示します。
2 地形断面図
E-F、G-F、H-Iの3本の地形断面図を作成し、現在考えている地形面区分をメモとして書き込みました。
E-F地形断面図
標高19m前後に平坦面が現れ、下総下位面bと仮称したものです。この地形面はH-I断面にも表れます。
下総下位面bの下に花見川河岸段丘が広がっています。
G-F地形断面図
古柏井川谷底が広く分布します。東岸には花見川河岸段丘があります。
H-I地形断面図
下総下位面bが分布します。
3 地形面対比の3D表示
現場での観察、空中写真での実体視を踏まえて地形面対比の結果を2つの3D画像で表示してみました。
柏井橋南の地形3D表示 その1
花見川東岸の南柏井の集落が乗っている付近を示していて、下総下位面b、古柏井川谷底、花見川河岸段丘の3つの段丘面が入り組んで分布しています。
柏井橋南の地形3D表示
その2 花見川西岸にへばり付くように花見川河岸段丘が分布しています。
つづく
■□花見川■□素材■□花見川■□素材■□花見川■□素材■□花見川■□
花見川付近の地形面の対比 その6
柏井橋付近、柏井橋南からさらに南に移動し、花島手前の地形を見てみます。
1 地形段彩図
この付近の地形段彩図を次に示しました。
地形段彩図
J-K、L-K、M-N、O-Pは地形断面図位置
2 地形断面図
J-K、L-K、M-N、O-P4本の地形断面図を作成し、現在考えている地形面区分をメモとして書き込みました。
J-K地形断面図
谷の両岸に下総下位面(浅い谷)が分布します。
東岸の下総下位面(浅い谷)は旧版1万分の1地形図でも確認できるもので、病院(最成病院)による宅地造成がなければもっと北方向に分布していたものと考えられます。
西岸に古柏井川谷底が分布します。
L-K地形断面図
古柏井川谷底の下に花見川河岸段丘が分布します。
M-N地形断面図
下総下位面(浅い谷)が分布します。
O-P地形断面図
下総下位面(浅い谷)が分布します。
3 地形面対比の3D表示
現場での観察、空中写真での実体視を踏まえて地形面対比の結果を2つの3D画像で表示してみました。
柏井橋付近の地形3D表示 その5
柏井橋付近の地形3D表示 その6
つづく