2-2-3-③地形発達史

2-2 花見川筋の谷津地形発達史

2-2-3 花見川筋周辺の地形発達史

③ 地形発達史

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【谷中分水界付近の地形発達史】

花見川付近の地形面の対比 その1

(双子塚古墳の記事連載前に話題にしていた、谷中分水界付近の地形検討に戻り、記事を連載します。)

1 谷中分水界付近の地形(これまでに判ったこと)

勝田川に分布する千葉第1段丘(河岸段丘、武蔵野面)が現在の花見川に沿って南側に連続的に分布し、花見川区横戸台付近(対岸は柏井高校付近)まで上流方向に追跡できました。

この河岸段丘を作った河川を古柏井川と名付けました。

印旛沼堀割普請前は、東京湾水系花見川の源頭部が同じく花見川区横戸台付近にあり、そこが東京湾側と印旛沼側の分水界となっていました。

古柏井川の谷を反対側から花見川が浸食しているため、谷の中に分水界が存在することになりましたので、このような地形を谷中分水界(こくちゅうぶんすいかい)といいます。

谷中分水界の地形を2012.4.27記事「印旛沼堀割普請前の花見川と古柏井川の谷中分水界」でまとめていますので、次に再掲します。

地形縦断線位置図

地形縦断線A-Bは印旛沼堀割普請の捨土の土手を避けた台地西岸の地形縦断線です。

地形縦断線C-Dは現在の花見川河道中心線付近の地形縦断線です。

地形縦断線E-Fは台地の一般面が表現されるように設定した地形縦断線です。(新規追加)

印旛沼堀割普請前の花見川源頭部付近谷底縦断イメージ

(この図には縦断E-Fは表現されていません。)

2 地形面の新たな見立て

5mメッシュをカシミール3Dで運用することにより、高さの最小単位は1mですが、任意の位置の地形断面を1クリックで作成できるようになり、それまでのDMデータを用いた「レトロな方法」による断面図作成と比べて作図精度が飛躍的に向上しました。

その結果、これまでできなかった高度面での正確な上下関係の対比比較が可能となりました。

上記の地形縦断面図に地形縦断E-Fを加え、台地の一般面の縦断も加えて表現されるような地形縦断投影図を作成しました。

そして、その図に、現在までに得られた情報と既往資料を参考にして、地形面分類を新たに見立て、それを記入してみました。

地形縦断投影図

新たに見立てた事柄を記録しておきます。

ア 下総上位面を刻む浅い谷の存在

地形面の見立ての結果は、下総上位面、下総下位面を確認するとともに、下総下位面の高さに下総上位面を削る浅い谷を確認することができました。

下総下位面(海成段丘)を形成していた海に流れ込む川の谷であったように考えます。

この浅い谷が古柏井川の前身であると考えます。

この浅い谷で縄文遺跡(宮附遺跡)が発見されていて、地層の観察もありますので、追って別記事で紹介します。

イ 谷中分水界南における古柏井川谷底面の存在

下総上位面を刻む浅い谷(下総下位面)をさらに刻む谷底があり、高さから古柏井川谷底面の断片と見立てました。

高度は17mで、ゴルフ場付近の古柏井川河道の高度16mより1m高くなります。

ウ 花見川河岸段丘

北柏井の集落の乗っている広い河岸段丘(図では花見川河岸段丘)は、高度は14mと16mの二段あるように見えます。

高度からこの段丘が直接古柏井川谷底に対比することはできないように感じます。

つづく

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花見川付近の地形面の対比 その2

1 地形分布の概観

2012.5.11記事「カシミール3Dによる地形立体画像 経緯線格子活用」で作成した「2秒間隔経緯線付平面図を基にした立体地形画像」を早速利用して、これまでに見立てた地形面分布を書き込み、地形分布を概観できるようにしてみました。

自分レベルでは、このような表現ができたので、自分の考えていることが他の人に誤解無く伝わると思うことができ、ある程度の満足感を得ることができます。

花見川谷中分水界付近の地形面分布

この分布図は、印旛沼堀割普請とその後の人工地形改変の影響を排除して、復元(想定)した地形面分布図です。

現在の河床面は表現を省略してあります。

この分布図の基となったデータは次の断面図です。

(再掲)地形縦断投影図

2012.5.9記事「花見川谷中分水界付近の地形」掲載

2 花見川地形に関する問題意識

さて、私の花見川の地形に関する問題意識を改めて説明します。

2-1 花見川の不思議な河道

ア 下総下位面(浅い谷)の流向は北方向(印旛沼方向)

下総下位面(浅い谷)の流向はその分布形状から明らかに北方向(印旛沼方向)です。

下総下位面(浅い谷)の流向

イ 古柏井川河道の流向も北方向(印旛沼方向)

古柏井川は下総下位面を削る地形ですが、その河道の流向は、下総下位面(浅い谷)と同じく、北方向(印旛沼方向)です。

古柏井川河道の流向

ウ 東京湾水系花見川の流向は南方向(東京湾方向)

ところが、東京湾水系花見川は柏井-横戸付近で下総下位面と古柏井川を削る地形であるにも関わらず、その流向は南方向です。

東京湾水系花見川の流向

エ 「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」という不思議がある

ア~ウから、「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」という不思議があるということに気がつくことになります。

このふしぎは柏井-横戸区間だけでなく、花島-柏井区間にも観察できます。理論的に考えれば、天戸-花島区間にまで延長して捉えることができるものです。

花見川谷津の延長5㎞ほどの区間に、印旛沼方向に向かう河岸段丘と、東京湾方向に向かう河岸段丘・現河床が併存しているのです。

しかし、この不思議は、これまでほとんど誰にも気がつかれることはありませんでした。

その理由は次のような事情があるからです。

【参考】「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」という不思議がこれまで気がつかれなかった理由

印旛沼堀割普請と戦後の開発工事で花見川筋は地形改変が行われたため、地学的観点から花見川について考察されることは、極例外的な事例を別にして、ほとんどありませんでした。

自然科学分野である地学関係の科学者・技術者は専門外の歴史や人文に関わることは避けて、純粋に自然現象を見たい・考えたいと思います。

ところが花見川は印旛沼堀割普請で一見原形が判らないほど改変されています。

ですから地学の立場から、花見川の地形や地質について正面から取り組まれることはこれまで全くありませんでした。

残念ながら「逆も真なり」で、印旛沼堀割普請等の花見川の歴史や人文に関わった専門家で、花見川の地学に正面から取り組んだ人はいませんでした。

オ 問題意識その1 「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」という不思議の実態を詳細に知りたい

問題意識の第1は、「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」という不思議の実態を詳細に知りたいということです。

印旛沼堀割普請やそれ以外の人工改変の影響を排除して、出来るだけ本来の地形を復元したうえで、印旛沼方向に流れた川の地形断片をつなぎ合わせる作業と、東京湾水系花見川のつくった河岸段丘をつなぎ合わせる作業を行いたいと思います。

2-1 花見川の不思議な河道が形成された成因

ア 問題意識その2 花見川の不思議な河道が形成された成因を知りたい

問題意識の第2は、 花見川の不思議な河道が形成された成因を知りたいということです。 これまでこのブログではその検討を行ってきましたが、時間も経過して地形分析スキルも向上しましたので、これまでの検討を検証したいと思います。

イ 問題意識その3 「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」現象の地学的定義の確認

花見川で「同じ河道に真逆方向に流れた谷底地形が存在している」現象を捉えて、このブログでは当初から河川争奪現象としています。

問題意識その1とその2が解決するめどがついた段階で、本当に河川争奪現象という定義でよいのか、地学用語上の適否について検証したいと思います。