2-6 宇那谷川本川筋谷津、長沼の地形発達史
2-6-4 古長沼の復元と成因
③ 古長沼跡に存在する低湿地
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【古長沼跡に存在する低湿地】
古長沼の範囲は2012.3.3記事「古長沼の復元その1」で説明しました。
古長沼の範囲
旧版1万分の1地形図投影
この古長沼跡にその存在を示す証拠を発見しました。
昭和21年撮影米軍空中写真を見ると古長沼の範囲と考えた地域に低湿地を確認できます。
古長沼跡に分布する低湿地
昭和21年撮影米軍空中写真
最近までこの場所に低湿地があったということは、この場所がかつて湖沼であった動かぬ証拠であると考えます。
昭和30年撮影米軍空中写真でも、同じ蛇行するような黒い影を確認できます。
昭和24年撮影米軍空中写真(2012.3.2記事「水田開発前の長沼池復元」に掲載)では低湿地を表す黒い影が明瞭ではなかったので、これまで見過ごしてきました。
次の記事で、この低湿地情報を分析してみたいと思います。
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【古長沼跡の3d表現】
古長沼の名残と考えられる蛇行する黒い影(水分を多く含む土質)が米軍空中写真(昭和21年撮影)に見つかりました。
この写真の簡易幾何補正をしてGISに組み込み、0.5m間隔の地形段彩図にオーバーレイしました。
地形段彩図にオーバーレイした米軍空中写真
この図をカシミール3Dを使って3D表現してみました。
米軍空中写真の3D表現
蛇行する黒い影と地形(昭和21年の地形ではなく、現代の地形)との関係はあまり明瞭ではないので、米軍空中写真を半透明にして地形段彩図の色がある程度わかるようにしてみました。
地形段彩図にオーバーレイした米軍空中写真(半透明)
この図をカシミール3Dを使って3D表現してみました。
米軍空中写真の3D表現
米軍空中写真は半透明
高さ強調倍率10倍
地形との関係が判ってきました。
さらに理解を深めるために、3D表現の高さ強調倍率を10倍から20倍に変更してみました。
米軍空中写真の3D表現
米軍空中写真は半透明
高さ強調倍率20倍
古長沼の名残と考える多湿土質の分布と地形(ただし現代の地形)との関係が直感的にわかるようになりました。
作図上の工夫はさらに出来ると思いますが、ここまでくれば、いろいろな発想を刺激する資料になりましたので、ひとまず立ち止まって考察します。
考察は次の記事で述べます。
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【古長沼跡と地形との関係】
米軍空中写真(昭和21年撮影)で見つかった蛇行する黒い影(水分を多く含む土質)と地形との関係を見てみました。
モノクロ空中写真を半透明にして地形段彩図のカラーが少し浮かび上がるようにし、高さの強調を20倍にして3D図を作成すると否が応でも直感的に理解できる資料になります。
次の3D図は北から南方向を見たものです。右が西になります。
米軍空中写真の3D表現 1
米軍空中写真は半透明
高さ強調倍率20倍
東西に延びる古長沼の浅い谷の南岸に、それと直交する尾根と谷の地形がありその地形に沿って黒い影が分布していることが判ります。
蛇行と表現した形状は、流れによる蛇行ではなく、尾根と谷の地形による平面的凹凸を表現していることであると判明しました。
次の3D図は南から北方向を見たものです。右が東になります。
米軍空中写真の3D表現 2
米軍空中写真は半透明
高さ強調倍率20倍
東西に延びる古長沼の浅い谷の南岸よりに黒い影が分布していることは、北岸側より南岸側の方が低いことを示していると考えます。
なお、黒い影のうち、長沼交差点近くの場所は地形的に一段高くなっていますが、これは最近の盛土(旧イトーヨーカ堂長沼店の開発)によるものです。
3D図と元の空中写真との関係を示すと次のようになります。
3D図と空中写真との関係
次の記事で古長沼の浅い谷と、それに直交する尾根、谷津の現在の姿を現場写真で示します。
また、なぜ古長沼の浅い谷とそれに直交する谷津があるのか、その理由も記事にします。
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【古長沼跡の現況】
米軍撮影空中写真で黒い影として写った水分を多く含む土質地区の現況を見てみました。
写真1
写真2
写真位置図
米軍撮影空中写真に現在のDM図(千葉市提供)をオーバーレイ
いたるところで小さな宅地開発が進んでいますが、この地域全体としてみると、黒い影に相当する低湿地が空中写真の通りに分布していたことを確認できました。
写真2に見るとおり、住宅等の建物に視界を阻まれて、尾根筋、谷津筋という地形分布を風景視覚的に捉えることはなかなか困難です。
しかし、付近を歩き回ると、黒い影の蛇行が尾根筋、谷津筋の平面形状に対応していることが判ります。
なお、尾根、谷津といっても、その最大比高はこの付近で2m程度です。