8-2 花見川流域の風景
8-2-1 花見川風景の見どころ
① 花見川上流
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【花見川上流】
私が散歩で興味を持った地物・現象の内、他の人にも見ごたえがあると思ってもらえそうなものを示します。
●高津川合流部のコイの集団産卵(3月中旬頃)
3月中旬頃、高津川が花見川に合流する付近で巨大なコイが群泳し、バシャバシャと大きな音を立てて集団で産卵します。普段見かけない光景であり、見ごたえあります。錦鯉なども混じっています。
平成22年3月17日午前の観察では合流部付近にから上流100メートルほどの高津川区間に7-800匹の大型のコイが集まり、数匹から10匹ほどのグループをつくりそこかしこで産卵していました。産卵は流速の早いところを好んでしているように見えました。
花見川中のコイが全て集合しているのではないかと想像しました。
コイの生命力あふれる生活を見て、次のような疑問が次々に湧き出しました。
・コイに他の魚が食い尽くされているのではないか?
・なぜ3面張コンクリート水路の高津川に来て産卵するのか?(すぐ近くの勝田川合流部にはコイは全くいない)
・他にどのような魚がいるのか?
・勝田川の合流部が改修されて段差がなくなり、勝田川と花見川の生きものの移動ができるようになると、魚の分布はどうなるか?
今後、行政や研究機関が花見川で水生動物などの専門的調査研究をしたことがあるかどうか調べて、情報を集めてみたいと思います。
●カワセミの飛翔など野鳥の生活
この区間の花見川では、大和田排水機場直下の水が流れないで溜まっているところから、花島橋まで連続してカワセミを観察できます。
弁天橋から花島橋までの右岸は護岸のない崖となっていて、道が無いので人の影響が少なく、カワセミの営巣に都合が良いのではないかと思います。カワセミは青く輝いて飛翔し、ホバリングやダイビングを見せるなどダイナミックな生活を見せて、散歩者を愉しませてくれます。
冬はカモ類もたくさん見かけます。人の気配が左岸にしかないので、他の場所と違って、人が近づいても逃げ出すことが少ないので、よく観察できます。
数年前は、弁天橋から下流右岸数百メートル区間の斜面がサギ山になっていたことがあります。コサギやアマサギが沢山みることが出来て壮観でした。
カワウやカモ類の編隊飛行も花見川に沿って朝晩見られます。
誠に花見川は野鳥観察に適した場所です。それだけ野鳥の生活に役立つ環境があるのだと思います。
写真はカワセミがよく採餌したり休んでいる場所の1つ。
●横戸元池弁天宮
平成23年1月初旬のある朝6時頃散歩の途中に参拝しましたが、灯明がともり、そのローソクが燃える油の匂いが当たり一面に漂っていました。私にとっては懐かしい情景、懐かしい匂いで、この弁天様が現在でも地域の人々と深く関わっていることを実感できました。
現場の石碑の碑文には、正徳5年(1715年)に江ノ島の弁天信仰の広がりの中でこの地に建立されたことが書いてあります。また、もともとは現在地より250メートル下流に鎮座していたが、昭和37年に印旛干拓水路拡張工事のため遷座したことが書いてあります。
水に関わる神様の弁天がなぜこの地に勧請されたのか?強く興味を惹かれます。
弁天橋から上流方向の風景
弁天橋から下流方向の風景
●弁天橋からの掘割風景
上流方向を見た風景は、台地が勝田川の沖積低地に移っていく情景であり、下流方向を見た風景は台地を削って出来た大きな掘割の風景で、2種類の風景が楽しめます。山から平野に川が流れるという一般的な風景と較べると、ここでは逆の様相になりますので、地形を気にする人にとっては、少しめまいがするかもしれません。夕方や早朝の上流方向の風景は、国道16号線沿いのガソリンスタンドや自動車ヘッドライトの光が水面に反射して、強い光の情景となります。
弁天橋は歩道も広く、安全に風景を楽しめます。
●横戸緑地下付近からの掘割風景
横戸緑地下のサイクリング道路から下流方向を見ると、掘割のS字カーブが奥行きのある掘割風景を作り出します。左右から迫る山並みのように見える情景が水面に投影され、風景画で好まれるような構図になります。
柏井橋から上流方向の風景
柏井橋から下流方向の風景
●柏井橋からの掘割風景
上流を見た風景は青い水道水管橋がアイストップになって、掘割の姿をより印象深く見ることができます。下流を見ると、最成病院の建物が入りますが、カーブした掘割を見ることができます。
橋の上から掘割を見ると、サイクリング道路から愉しむ風景とはまた違った光景に出会えます。
なお、残念ですが、柏井橋は歩道がなく、歩行するだけでも危険です。立ち止まって風景鑑賞する際には安全に気をつけることが大切です。
●最成病院対岸付近からの掘割風景
最成病院対岸付近から下流方向の風景の特徴は、掘割のS字カーブが奥行き感を出すことと、平地に出るいわゆる竜の口の部分になるので、掘割の出口を予感させることです。写真に撮りたくなるような情景です。
花島橋から上流方向の風景
花島橋から下流方向の風景
●花島橋からの掘割風景
上流方向の風景は、広い低地が狭まって、谷になるような暗示を受ける風景です。竜の口の風景です。下流方向の風景は掘割の感じは残りますが、広々とした雰囲気が勝る情景になります。
花島観音を本尊とする天福寺
花島公園
●花島観音と花島公園
天福寺の本尊が木造十一面観音立像であり「花島観音」として親しまれ、観音信仰の対象になり、33年目ごとに開扉される秘仏です。天福寺と天津神社一帯は花島観音緑地保全地区に指定されています。
花島公園は花見川沿いのお花見広場、谷津を利用した中島池、谷津池、噴水池、渓流園及び台地上のふれあい広場、球技場などを含む約15ヘクタールの都市公園です。
花島公園には掘割普請の歴史を説明する案内板があります。
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横戸緑地は天保掘割普請の土置場(土捨場)の跡をそのまま利用した公園です。掘割の斜面すぐ上の細長い凸状の地形をうまく公園として活用しています。横戸団地造成のために掘割から離れた脚部が一部カットされていますが、ほとんど往時の姿を残しているものと考えられます。土木遺産としての掘割に興味を持てば、サイクリング道路からの斜面の眺望だけでなく、土置場も見ておくことが有益です。その点で、横戸緑地訪問が打って付です。なお、横戸緑地には掘割普請や土置場跡の説明は一切ありません。(なお、サイクリング道路の全区間にも掘割普請や歴史の説明は一切ありません。花島公園にのみ掘割普請の説明板があります。)
上図は「天保期の印旛沼掘割普請」(千葉市発行)に収録されている「北柏井村の掘割筋潰れ地絵図の部分」(千葉市 川口和夫家文書)のトレース図です。この図の地点は横戸緑地より下流にあたると考えられますが、この絵図から掘割の斜面(堤敷)のすぐ外側を土置場(土捨場)にしたことが確認できます。
この地図は旧版1万分の1地形図「三角原(さんかくはら)」(大正6年測量)を青色で示し、その上に数値地図1/2500(空間データ基盤)(平成18年発行)の水部(空色)、街区・道路(墨色)、横戸緑地(赤色網)をオーバーレイしたものです。GISを用いて作成しました。
等高線から判読できる細長い凸部地形(土置場跡)と横戸緑地が見事に重なっています。「高台」は地名(小字)で、掘割普請以前の原地形の分水点付近を示していると考えられます。
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花島公園パンフレット(花島公園平面図)
谷津と周辺台地を利用して花島公園が作られています。特に、谷津の自然環境を活かして流れや池を配置した空間は心地よいものになっています。ちなみにこの谷津の地名は「谷津」です。
花島公園パンフレットには花島公園整備の経緯が次のように書かれています。
「花見川区をほぼ縦に流れる花見川の自然をどこでもふれ合えるように、『花見川リバーサイドパーク』構想が昭和40年代に発表され、『花見川サイクリングコース』や『野鳥観察の案内』などを配置し、市内でも数少ない河川レクリエーションの場として親しまれています。
この構想に基づき、『花島公園』は、花見川区の公園レクリエーションの中心となる40.4ha(うち河川区域15.2haを含む)の総合公園として計画され、平成7年度に整備が始まって以来、渓流園、お花見広場、ふれあいの広場等が順次整備され、平成20年4月1日現在の開園面積は14.9haとなっています。
今後も引き続き『緑園ゾーン』の整備を図っていきます。」
中島池
中島池には人のすぐ近くでカモが休んでいます。この池で人から1mも離れていない場所でカワセミを見かけました。カワセミからみると中島池は格好の採餌場であり、大勢の人々は単なる大型無害移動生物に見えているようです。
花島公園には千葉市教育委員会の説明板「印旛沼の掘割普請について」があり、掘割普請の歴史を知ることができます。花見川沿いの野外で掘割普請について知ることが出来るのは、この説明板だけです。