7-4-1谷津の開発
7-4 花見川流域の地域開発
7-4-1 谷津の開発
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【谷津開発のタイプ】
花見川流域のイメージと感想13 谷津開発のタイプ
花見川流域の谷津開発の姿を水(湧水、河川、水路)との関係で、現状について類型区分してみました。谷津の水を生かした地域づくりとはどのようなものであるのか、考えるために使う基礎資料づくりです。
河川法で河川に位置付けられている花見川と勝田川を除いて、農業用水路や雨水排水・下水路として管理されている河川・水路を持つ谷津を考察対象としました。
谷津の土地利用と水から考えると、次のように現状を類型区分できることがわかりました。
花見川の谷津開発タイプ
1 未開発タイプ
2 水田耕作タイプ
3 盛土タイプ
4 市街地タイプ
1 未開発タイプ
土地利用:耕作や構造物構築がない状態
水:未利用
例:高津川、北高津川の陸上自衛隊習志野演習場敷地
耕作や構造物構築がなく、明治・大正時代の未開発の谷津の姿を偲ばせる土地が残っていることは、谷津について考える上で、今となっては貴重な資産が残っていると考えます。陸軍演習場であった長い期間に小規模な地形改変は繰り返されたと想像しますが、明治・大正年間の地形図と現在の地形図を比べると顕著な地形改変の跡はあまり見られません。その証拠に、演習場内の一部に小金牧の野場土手が連続して残っている場所があります。
繰り返しになりますが、花見川流域にこのような場所があることは、自然地理上特筆すべきことであると考えます。
未開発タイプのイメージ
2 水田耕作タイプ
土地利用:水田耕作
水:地下水汲み上げ、柵渠、地下水路
例:小深川、東小深川、横戸川、長作川、犢橋川、畑川、浪花川(一部)
谷津頭から、あるいはその場で地下水を揚水して河川・水路を活用して水田耕作を行っている谷津。市街地化が進んでいる流域の中で、水田耕作されている谷津の存在は、里山的環境を地域にもたらしており、自然生態系保全価値、風景向上価値、水環境保全的価値などがあると考えられます。
なお、例にあげた河川のうち、畑川だけが全水路区間に蓋かけしていて、谷津の生態的、風景的価値が減じているように感じます。
水田耕作タイプのイメージ
3 盛土タイプ
土地利用:畑地化、資材置き場等
水:柵渠、地下水路
例:北高津川、芦太川(一部)、宇那谷川
これまで水田耕作タイプの谷津でしたが、盛土して畑地にしたり、空き地、資材置き場などとして利用されている谷津があります。多くの場合、畑や資材置き場としての利用はあくまでも便宜的一時的なもので、土地を宅地化するための布石であると考えられます。
盛土タイプのイメージ
4 市街地タイプ
土地利用:住宅地、業務団地等
水:地下水路、柵渠
例:高津川、北高津川、芦太川、宇那谷川(上流)、小深川(上流)、東小深川(上流)、犢橋川(一部)、浪花川
例にあげた河川の源流部谷津では、谷底を完全に埋立て宅地化し、住宅や工業・業務施設が立地し、その地形が完全に失われた場所が多くあります。
谷津の源流部を除くと、高津川筋ではほとんど開渠、柵渠として残っており、金網柵で囲われています。勝田川筋では地下水路化した部分が多い状況です。双方とも、谷津を市街地化するにあたって、「谷津の『湧水・河川・水路』はその存在自体に不都合を感じるので、できれば『無かったこと』にしたい、その代わりに『安全・快適・利便』の都市空間はつくりたい」という発想しか、私には感じられまでんでした。
散歩しながら、無意識的に探した「『湧水・河川・水路』を生かした街づくり(地域づくり)」の現場は、私レベルでは、結局見つけることはできませんでした。
敢えて言えば、こてはし台調整池の環境整備は谷津の持っている素質を開花させる可能性を示しているので、こういう例が花見川流域にあってよかったと思います。しかし、この例は、あくまでも園地(公園)整備にすぎません。
市街地タイプのイメージ
こてはし台調整池の環境整備
【考察】
・散歩人の私から見ると、水田耕作タイプの谷津の果たしている環境上の役割は大きいものがあるにも関わらず、社会としてはその保全に無関心であるように、感じられます。市街化(開発)を進めるにあたり、水田耕作タイプの谷津を活用するなど、自然を同伴して地域づくりを進めるという発想の痕跡を、残念ながら、見つけることができませんでした。
・水田耕作タイプの谷津の保全と整備のあり方、盛土タイプの谷津における河川・水路空間整備のあり方、市街地タイプの谷津における河川・水路空間復活整備のあり方について、流域内に手本となる事例が見つからないので、創造的に考える必要があると思いました。
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【団地開発と谷津保全】
花見川流域のイメージと感想14 団地開発と谷津保全
花見川流域を散歩しているといろいろな住宅団地の中に入りこむことになります。住宅団地内の風景も千差万別であり、生活環境の違いを想像して、それを考察の対象にしてもとても面白そうです。いつかどの団地が住みやすいか、自分なりに採点してみたいと思っています。
さて、団地開発場所の土地条件を見ると、谷津を埋め立てるなどして作った団地と、台地や浅い谷の地形面のところに作った団地にわけることができそうです。
谷津埋め立てを伴い作った団地の例(み春野団地)
谷津を埋め立てを伴い作った団地例
・高津団地(北高津川)
・花見川団地(花見川柏井の谷津)
・み春野団地(勝田川、宇那谷川)
・さつきが丘団地(犢橋川)
・朝日ヶ丘団地(浪花川)
台地や浅い谷に作った団地の例(こてはし団地)
台地や浅い谷に作った団地の例
・八千代台団地(高津川、芦太川)
・勝田台団地(勝田川)
・こてはし団地(横戸川)
団地が谷津や浅い谷の自然を保全しながら作られ、団地住民が谷津など周辺自然環境を生活の中で享受するとともに、団地の存在が地域の自然環境保全の担保になっているような例があればすばらしいのですが、私が期待するレベルでは、そのような事例は見つかりませんでした。
ただし、花見川団地に隣接して谷津支谷を含む樹林地が「柏井市民の森」に指定されています。また、こてはし団地に隣接して「横戸市民の森」が、横戸台団地に隣接して「横戸緑地」が指定されています。
これらの森や緑地が団地開発の一環として新たに指定されたものであるならば意義のあることであると思います。(今後調査したいと思っています。)
花見川団地と柏井市民の森(グーグルアース)
み春野団地は勝田川の谷津、さつきが丘団地は犢橋川の谷津を一部埋立て作られています。そして団地住民は団地周辺の自然環境の恩恵を、風景や散歩環境として享受しています。しかし、団地開発サイドは周辺の谷津保全にコミットしていることはないと想像します。
要するに、団地開発は一方的な自然環境侵食、自然環境ただ乗りになっているように感じます。
み春野団地の地図と開発前地形図
開発前地形図は旧版1万分の1地形図「三角原」(大正6年測量)
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【厄介者扱いされた宇那谷川】
宇那谷川流域紀行3 厄介者扱いされた宇那谷川
前回記事で紹介したとおり、水田耕作が終焉した宇那谷川は谷底の土地利用が畑と資材置き場や荒れた未利用地の混在地化し、河川はほとんど蓋架けされてしまいました。
宇那谷川は地域から厄介者扱いされています。
河川を蓋架けしてその上部は人が進入できないようにした未利用地としていますが、そうではなく、河川の水をきれいにし、環境資源として地域づくりに活用しようという発想が大切だと思います。
散歩しているだけでは、なぜこのような情けない河川の扱いになるのか十分に理解できません。地域づくり、街づくりの経緯に詳しい関係者や行政部局から情報を得たいと思います。
千葉市下水道局建設部下水道計画課からいただいたパンフレット「千葉市水辺再生プラン-心なごむ 水辺の再生-」には、場所を特定しているものではない一般論として、柵渠のあるべきイメージパースが掲載されています。
千葉市下水道局のイメージパース
千葉市下水道局のイメージパース
このイメージパースは単なる絵空事にすぎないのか、それとも実現していく可能性が存在しているのか、行政や関係者から情報を得たいと思います。