好きですと告げるのは、あなたがそれで微笑うから
跡部さんは意外と寂しがり屋だ。
散々身体の熱を上げられた後で、喉が渇いているけれど、首から絡みつく跡部さんのその腕を外すことができない。
自分の腕の中で丸まっている跡部さんを見るとなんか心の奥からぽかぽかと温かくなる気がする。
仕方なく視線を彷徨わせると跡部さんがつけた自身の身体の赤みに戸惑う。
自分のような男の身体を抱いて何が楽しいのか分からないが、跡部さんは気まぐれに自分を抱いた。
気持ち悪いとか、男同士とかは全く気にならなかった。
ただ従順に抱かれたけれど、なぜか跡部さんはたまに傷ついた表情をする。
それだけが気にかかった。
幼い頃から追いかけて追いかけて追いついた。
いつだって跡部さんは先に行く。
たまに振り返り、こう呼ぶんだ。
『なぁ、樺地』
自分はそれが嬉しくて、身体のそこから湧き出る歓喜を味わいたくていつも跡部さんの後ろからついていく。
「どうした? 樺地。眠れねぇのか?」
「……ウス」
跡部さんが起きた。
跳ねた髪を無造作に掻き揚げながら呟く。
「喉乾いた」
飲み物を取りに行こうと起き上がろうとすると、やっぱりその手を離してくれない。
「跡部さん……飲み物取ってきますから」
「別にいい」
自分の腕の中にいた跡部さんが覆いかぶさってくる。
そのまま深くキスされて。お互いに与えられる水分を飲み干す。
目があう。
あ、まただ。
跡部さんはなぜか捨てられた猫のような目で自分を見つめていた。
「跡部さん……」
「あ?」
「……好きです」
一瞬、困った顔になったのは何故か。
でもすぐに柔らかな笑顔になる。
いつもの自信たっぷりな笑い顔も跡部さんだけど、こうして自分にくれる笑顔はとても優しくて好きだ。
なぜか胸の奥が痛くなるけれど。
好きですと告げるのは、あなたがそれで微笑うから
あなたが笑ってくれるなら
自分は何度でも
それを告げる。