Anje side
「アンジェ!…大丈夫ですか?」
「ル、ルヴァ様、みえました?」
「あー、そのう、…はい」
ルヴァ様に見られた。ルヴァ様に見られた。
大事なことなので二回言いました。
じゃなくて!
育成が終わって建物から出るときに、ルヴァ様に声をかけられた。
とっても嬉しい偶然に、思わずルヴァ様へと駆け寄る。
手に荷物をもっていたせいで足元がみえなかったとか、浮かれすぎて周りをみてなかったとか、たまたま私がドジなだけだと思うけど。
そして、案の定……階段に引っかかった私はルヴァ様の見てる前でそのままダイブした。
スモルニィ女学院の制服のスカートはそんなに短くない。
だけど、ダイブの仕方が拙かった。
つまりスカートの中がちょうどルヴァ様から見るとばっちり見える形で。
真っ赤な顔で俯くルヴァ様に、見えはしないけど私の顔も同じ色に染まっていると思う。
よりによって苺柄の、こんな子どもっぽい下着のときじゃなくても!
もっと大人っぽいレースのとか持ってるのに、今日に限って私が履いていたのは苺柄の下着だった。
「お見苦しいものをごめんなさいっ!」
「いえ、いいんですよー…しかしですね、元気いっぱいなのは非常に良いことなのですが、貴女は少し落ち着いたほうがいいですねー」
くすん。叱られた。
ジュリアス様に怒られるのもショックだけど。他の方だったら注意レベルなお小言だけど。
大好きなルヴァ様に叱られるのはかなりショックだ。
「ああ~、アンジェリーク!その、そんなに落ち込まないでください~
…ごめんなさいっ、他の男に見られるのが嫌なだけなんですよ」
ことばの意味を認識して私は苺よりも赤くなった。
Luva side
聖殿を歩いていたら、近頃ご贔屓の金の髪の女王候補が見えたものだから、先回りして声をかけたら、
嬉しそうに駆け寄ってきた彼女が階段を踏み外し、上から跳んできた。
舞う朱色の中に白い三角が、真っ赤な苺が、
……一瞬にして脳裏に焼きつきました。
……
私には少し刺激が強すぎたようです。
こんなんだからゼフェルにヤラハタとか魔法使いとかいわれるんですよね……
慌てて助け起こすと、少女は真っ赤な顔で見たのか聞いてくる。
上目遣いがとても可愛いです……
私は否定することもできずに肯定しそのまま俯いてしまう。
「お見苦しいものをごめんなさいっ!」
彼女はなんと謝ってきた。
お見苦しいどころか眼福だったなんてとてもいえません。
どうやら元気いっぱいの彼女は他人よりそそっかしいらしく、ほかの守護聖の間でも、やれ転んだだの、やれこけそうになったとこを助けただの、たまに話題にでてくるのです。
そういうところも……たいそう可愛らしいのですが。
他の者から彼女の話を聞くと胸が苦しくなるなんて、どういうことなのかさっぱり判りません。
知恵の守護聖失格ですかね?
しかし、こんなに頻繁に転んでいては他の守護聖も彼女の苺を……
!!!!!!!
他の男が彼女の下着を見るなんて
それはいけません! それはいけませんよー。
「いえ、いいんですよー…しかしですね、元気いっぱいなのは非常に良いことなのですが、貴女は少し落ち着いたほうがいいですねー」
途端に、しゅるしゅると萎んでいくアンジェリークに慌てて慰める。
「ああ~、アンジェリーク!その、そんなに落ち込まないでください~
…ごめんなさいっ、ほかの男に見られるのが嫌なだけなんですよ」
自分でも何を言ってるのか判らなかった。