「いい? 鞘があるだろ? それに刀を抜き差しすると白い膿……種、かなぁ? 種が出る。そしたら子ができる。で、この刀が俺たちにある。それが腫れるとよくないから! そのままにしておくと気散っちゃうし。腫れてきたら抜いてあげてね。あ、抜くっていうのは擦るとか挟むとかすればいいからっ! とにかく我慢してるとよくないからね!」
そういって加州清光という一振りは息を付かずに言い終えると赤くなる。
鍛刀により顕現してはや二日目。
粗方、呼び出された意味と本丸の案内が終わったところで、審神者の近侍だというこの一振りと同じ日に顕現した刀達が集められて説明を受けているところだった。
といっても短刀たちは呼ばれず太刀の三日月宗近と大太刀である石切丸だけであったが。
「なんとなく分かったよ」
「さっすが! 石切丸さん」
「これでも神社暮らしが長かったからね。人の営みは理解してるつもりだよ」
もう一振りがゆったりと首を回す。
「はて? その刀とはなんぞ?」
「ちょっとぉ! 三日月さんはそこからなの!?」
加州が拳を突き上げ言い切る。
「……俺、実技は嫌だからね! もー! 主ったら、こんなこと俺にやらせないでよー」
ぶつぶつと壁に呟きだした加州は髪を掻き毟る。
「実技? 戦うのか?」
俺の負けでもいいんだがといいながら目を輝かせる三日月に加州は頭を抱えてしまったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
与えられた室へと戻る。
室は同じ日に仲間となったのだからと石切丸と三日月で同じ部屋となった。
本来であればもう一振りいるが遠征中と聞く。
風呂は使い方の実地もかねて先ほど皆ではいった。後はもう寝るだけというから石切丸は着物を寛げて座った。
座学ばかりとはいえ肉の身を得てからまだ幾日も経たない。疲労が溜まったのかもしれない。ああ、寝るというのも不思議なもので剣であった頃には感じなかった欲というのはこのようなものかと石切丸は身体を得た実感を確かめていた。
「石切丸よ」
いつのまにか袖が当たるくらい近くに三日月が座っていた。
この刀が気安いのか、それとも同じ流派から滲み出る気の懐かしさからくるのか、邂逅して二日目だというのにこのようにいつの間にか隣にいる。
「なんだい?」
「刀が腫れ白い膿が出てくるといっていたが、人の身は誠にそのようなことが起こるのか?」
「えっ? 知らないのかい?……君だって顕現する前は人の元にいたこともあるだろう?」
「ふむ、大事に仕舞われていたことが多かったからだろうな。余りよく覚えておらん」
「成程」
少々浮世離れしているとは思ったが神社暮らしであった己よりも更に拙い知識らしい。
石切丸は少々微笑ましく思ったが、次の台詞を聞いて顔を強張らせる。
「やってみないか?」
三日月をみると瞳は好奇心に上弦の月のように輝いている。
石切丸としても肉の身を確かめるには吝かではなかったため頷く。
布団の上に移り互いに向き合って下穿きまで寛げた。
三日月は夜着の間からまらを取り出すとそれをしみじみと見るのだからおかしく石切丸は笑いそうになった。
「もう厠でみただろう?」
「厠も昨日初めて使ったのだが。白い膿はでなくてな。ふむ、これが刀か……こんなに萎んでいるのに刀とは、ははっはは」
「それを触ってみてごらん」
「ほう」
三日月の指がまらを擦りだすと弛んでいた皮が膨張し、頭部分が存在を示す。
「おおお! やあこれはおかしきことよ」
「もう少し続けて」
石切丸の言葉通りに三日月は自らの刀を扱き出す。
「刀というのに素手で触れるのは面白いな。形もよう変わる」
三日月は扱き出すことに慣れたのか更に速度をつけていく。
「ハァ…これは確かに……よきかな」
「立派になってきたじゃないか」
二倍とまではいかずともなかなか立派に勃起した三日月のまらを石切丸はじっとみつめていた。
芯を入れたように反り返っている。刀とは言い得て妙だと思った。
さする手を止めない三日月をただ見つめる石切丸が。
「ふっ……んっ! はぁ…っ、あ…」
三日月の唇から紡がれる音が変わったのにふと気づいた。
石切丸は己のまらは特に触れてもいないのに形が変わっているのに気づき首を捻る。
気のせいか身が熱い気がする。穢れを断ち切れず厄に触れてしまったかと考えるが気分は悪くなく初めての大変に身を任せていた。
そして湧き上がる欲求通りにそれを口にする。
「触れてもいいかな?」
三日月は石切丸の言葉に少し驚いていた様子だったけど頷く。
「い、いいぞ。触ってよし」
それは大層熱く奇妙な感触だった。
石切丸はしばらく三日月のまらの感触を楽しんで撫で回していたのだが。
「鞘というのはここのことかな?」
三日月の刀から流れ落ちた液状の物が臀部と渡り、その先にある窄まりが光で照り濡れている。
石切丸がそこに指を沿わすと三日月の身体が強張った。
「石切丸! そこは何かを入れるところではないぞ!」
しかしこれ以外に加州の言っていた鞘が見当たらないことを理由に三日月の静止に構わず石切丸が指を入れると三日月が小さく声を上げる。
「ヒッ!」
短い付き合いだけど焦る三日月をみたのは初めてだ。
記憶が確かであれば、女体の鞘でも男体の鞘でも慣らせばここは快楽を拾うことができるのを石切丸は知っていた。
「や、めっ…」
太刀といえど天下五剣、本気で抗えば機動力のない石切丸を拒否できるというのに三日月はそれをしなかった。
慣らし続けると二本目の指が動くくらいにはなる。
石切丸は腹に当たるほど主張する己の刀に驚きながら、三日月の鞘を解していく。
「も、無理だ」
「肉の鞘は柔軟だと聞いているよ」
「石切丸ッ!」
石切丸の二本の指に三日月の肉が慣れ始め収縮に包まれだすと三本目を入れてみる。
しかしこれまでより抵抗が強いのだろう。石切丸は一度引き抜こうと深いところにあった指を浅いところに動かした。
「あっ! あっあぁ!!」
三日月の刀から白い液体が溢れ出す。
分かった。こちらが白い種か。
達した反動か胸を上下させ宙を見つめる三日月をみると石切丸の胸の辺りがおかしくなる。
きゅっと押されたような痛みのような何か。
それはまだ石切丸には何か分からない。
半開きの唇から流れる涎を舐め取り、そのまま口を吸う。
彷徨っていた三日月の視点が石切丸とあった。
いつのまにか互いに吸い合う。
目を閉じてしまった三日月に石切丸は月が見れずに残念に思う。
口を離すと音が鳴った。
「いいかな?」
「ふん……」
口では同意はせずとも身体の力を更に抜いた三日月に石切丸は再び口付ける。
そして指で刀を求めている鞘を広げると己の刀を差し込んでいった。
「んっ!」
解してはいたけれど、たかが指三本では大太刀の刀には敵わなかったようでみちみとと音を立てて肉が抵抗する。
石切丸は善いとはいえないその抵抗の中を貫き通す。
「っ!!!」
一度貫けば受け入れやすくなる。
三日月の鞘が石切丸の刀を包み込むと石切丸に鋼の身では経験したことのない快楽が襲う。
「うっ! すごく熱いね。蕩けそうだ」
すべてがなんとか収まると三日月の中の律動が直接石切丸へと伝わる。
石切丸とて閨事のすべてを知っている訳ではないから訳も分からないまま夢中で腰を三日月に打ち付けた。三日月が啼く。
「ゃあっんっ! 石切! もう抜け…ッアッ!」
縋ってくる腕とは裏腹に三日月からは抗議の声が聞こえるが、その声もまた甘くなっていく。
「あ、ん…は…ぅ……あっ」
腰を強めに振ればまらから生み出される体液が増える。
滑らかに動く刀が鞘を刺激し、その刺激が刀をきつく締め付けてくる鞘にする。
「まただ。なんかくる、ぞ!」
「くっ、私も限界みたいだよ!」
石切丸は溢れ出る白濁をすべて三日月へと注ぎ込んだ。
「石切よ。まさか刀が孕むとは思ってなかったぞ」
「……子はできぬと思うよ」
「加州が鞘に刀を抜き差しすれば子ができるといっておったではないか」
「君には立派な刀がついているだろう。刀がついている者は孕まないんだ」
三日月は石切丸との問答に首を傾げたが、
「あいわかった……ではまたやろう」
そういうと三日月は目を閉じる。余程疲れたのかすぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
襲われたばかりなのにその男の胸で眠るとは、それに先程の台詞の意味は、
と石切丸は逆に眠ることができなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日――
「今日はお前と三日月の初陣のつもりだったんだが……お前も顔色悪いし、三日月宗近は布団からでてこないんだって? 調子が悪いのか?」
審神者に問われて何と返せばよいのか迷ったが有りのまま答える。
「私のはただの寝不足だよ。……三日月は立ち上がれないようで出陣は無理かと。厠にいくのも難儀しているよ」
私の回答に審神者は一瞬すごい相貌をしたものの部屋の隅の葛篭へと向かわれた。
「石切丸。私にゲ、いや、男色に対する偏見はないが……お前たちはもう肉の身を得ているのだ。中で出すのはやめてあげなさい!」
聞き慣れぬことばと共に印刷された知識と奇妙な道具と油らしきものを渡された。
刀身の手入れに使えということなんだろうかと私は頷いてそれを受け取った。
その後、その道具の本当の使い方を知るまで三日月の出陣が遅れてしまい、私と練度が離れて拗ねる三日月のご機嫌取りに大変な苦労をすることになる。