「しかし、耶蘇の祭りとは意外と楽しいものだな」
珍しく酔いの廻ったらしい三日月といつまでも続く宴から引き揚げて部屋に戻ったのはつい先ほどのこと。
確かに皆で馳走を食べて、酒を呑み宴を囲むのは楽しかった。
国広兄弟や粟田口による兄弟舞を鑑賞し、なぜか鶴丸と大倶利伽羅くんの二人羽織芸まで見た。
初めての耶蘇の祭は神社の大祭とは趣のたいそう異なるものであったが存外と楽しく私は三日月に頷く。
ふらついている三日月が怪我をせぬよう畳に三日月を転がすと仕舞ってある布団を取り出し敷いていく。
しばらく私をぼーとした酔いの眼でみていた三日月であったが、急に立ち上がると私ごと三日月のために敷いた布団に転がり込む。
「ちょっと! 三日ッ!」
口を塞がれて酒気帯びの呼気が吹き込まれる。
舌まで挿し入れられて。音がして唇が離れる。
「甘いな」
私が最後に呑んだ酒の味がしたようで、三日月は己の唇に伝ったどちらのものか分からない体液を舌で舐めとると、更に深く私の口を吸ってくる。三日月に私も負けぬよう三日月の咥内を舌で愛撫していく。
長い接吻の中、熱を憶えている身体は抗いきれずに形を変化しはじめる。
下半身に己の血の集まりだけではない熱い塊が触れている。
再び唇が離れる。
「やるか」
いつになく積極的な三日月に驚きながらも唇を拭った。
ここ最近は陽動作戦や何らかで戦に駆り出され、身体の傷は手入部屋で癒されるものの、部屋に帰っても休むばかりで、こうして三日月と睦みあうのも久方ぶりだ。
朝のことを気にしているのか今日は私の傍を離れなかった三日月だけど、いつもは気恥ずかしいその距離でさえ今日は咎めえることもなく好きにさせていた。
私もそれが幸せであったから。
三日月が好きだ。
いくら私が節度を保つ御神刀とはいえ、好いた相手にこの様に誘われれば平常心を保つのは難しい。
「駄目だよ」
「なぜだ?」
すぐに繋がろうと己の菊門を広げながら私に跨る三日月を差し止める。
「久方ぶりだからね。すぐに繋がるのはきっと難しいのではないかな?」
「むう」
他の刀の前では悠然ぶっている三日月の私の前でだけみせる顔を、剥れる三日月の頬を撫でながら、空いている手で小箱から小さな瓶を取り出す。
三日月はそれが何か合点がいったのかその瓶を奪い取ると勢いよく蓋を取る。
ああ! そんなに垂らすものではないのに。
隆起した陰茎の下に向かって油を注ぐ三日月に呆れていると、三日月に腕を取られる。
「石切丸、はよう……」
「私を求めてくれるのは嬉しいけど一体どうしたんだい?」
問いかけてる間に、三日月の後ろに触れて滴る油を塗りこんでいく。
きゅっという音がして久方ぶりだというのにするりと指が入っていく。
それでも質量的にはきつくて平素よりも丹念に解す。
愛しいものを傷つけたいと思うモノもいるようだけど、私は長い御神刀としての生ゆえ刀の本分を忘れたのか、三日月を傷つけたくはなかった。
感情というのは本当に難儀なものだ。
私は心まで人のようになってしまったんだろうか。
「……今朝方の話を覚えているか?」
「うん?」
「歴史遡行軍とやらの真の目的は分からなくもないが、今のところはあやつらを倒し切れば、お前とも離れ離れになってしまう」
理解していることであるのに、いざ言の葉に乗せられると私は辛くなって三日月の口を塞ごうとした。
身を捩ってそれを回避した三日月は私の石切丸へと腰を落とし、身の内にそれを沈めていく。
「そうさな…はぁんっ」
三日月の動きに合わせて私も動くと三日月が口吸いを強請ってくる。
私も思うままに彼を貪った。
十分に解された三日月の蕾は私を飲み込み淫らに動くと締め上げる。
私は堪らず三日月を味わいながら深く突き上げていく。
「んっ、あッ、……あ、あと幾年おまえと一緒に居られるのか、あと何度こうして契れるのか、んんッぁあっ」
私に揺さぶられて三日月は自立かなわず私に縋りつく。
三日月は大量の油のせいでいつもより深く繋がったところを見遣ると幸せそうに笑った。
どうしてそれをみて私の胸は痛むのか。
「いっそこのまま一つのモノになれぬかと愚かなことを考えてしまうな」
私は三日月がそれ以上話せぬよう口を塞ぐ。
三日月の両腕が私の首に回されると三日月がそれ以上考えることができぬように彼を啼かせ尽くした。
「クション!」
背が寒くて目が覚めた。
結局、昨夜は一組の布団で眠ってしまったようだ。
五尺近い男二振りがぎゅうぎゅうに詰めているものだからどうしても布地が足りない。
幸い三日月が布団から露出している部分は私が覆っていてほっとする。
再び人の様な感情を持ってしまったことに苦笑して、私は胸の内にある温もりを抱え直す。
審神者には悪いが、この日々がどうかもう暫く続くようにと祈らずにいられないのであった。
そんな異教の神の子の降誕を祝う日の夜のこと。