ノックがあったため、入るように促すと珍しいことに炎の守護聖オスカーがいた。
「おや? オスカー、こんにちは」
「……邪魔するぜ」
先日、あんなことがあってから公務以外ではオスカーに激しく避けられていることに気付いていたが、
ルヴァとしてもそれなりに忘れたいことであったため、それを受け入れていた。
今更何の用だと考えたものの、平常心を装い迎え入れる。
「あんたまだアレもってるのか?」
「アレですか?」
「あのワインだ」
「ああ、ありますが」
「よこせ」
「……何に使うんですか?」
尋ねるとそのまま目を伏せてしまう。
「貴方であればアレなんてなくてもお嬢さん方と楽しめるでしょう?」
「五月蝿い。さっさとよこせ!」
きつい眼差しで強い口調でいわれてもルヴァは困ってしまう。
本来であれば、あのような品物は聖地に持込されては困るもので、自分の手の内にあるのであれば良いが他の者が持っていき公になると拙い。
あのときは興味だけではなくそういう責任感もあって、オスカーを抱いたのに、ここでその努力を無駄にしたくなかった。
「そういわれましてもねぇ、私にだって与えられた職務へのプライドがあるんですよー」
存外に貴方もそうでしょう?と見つめるとオスカーの視線が揺れる。
どうやら何か事情があるようで、不思議に思ったルヴァは尋ねた。
「何に……いえ、誰に使うつもりなんですかー?」
その途端に苦虫を噛み潰したような表情に変わるオスカーにルヴァの頭の中に更に謎が増える。
そもそもこの男であれば大抵の女性は落としてしまうため、よほどの女性で無い限りは薬を使用しなければならないような状況にはならない筈であった。
またもっと効果が軽いものであれば、オスカーやその他の守護聖たちが外界から持ち込んでいるのもルヴァは見逃しているだけで知っていた。
そちらは恋人たちが楽しみで使うような効果しかなかったためだ。
(オスカーが手を出せない女性? まさかあの媚薬をディアや陛下に、ということはないでしょうね
……それはいけません!宇宙の平和は私が守りますよ~!)
黙ったままのオスカーにルヴァとしては珍しく強く口調で続けた。
「理由も判らずお渡しする訳にはいきませんねー」
珍しく鼻息強く言い切ったルヴァにオスカーは眉を寄せつつ答えた。
「俺にだ」
「はああああああああ?」
ルヴァは遠い目をして、オスカーを待っている。
(どうしてこんなことになったんでしょうか……)
ここはオスカーの私邸、更にオスカーの寝室であった。
今は恋人を待つようにオスカーがバスルームから出てくるのを待っている。
あの後で訊いた事情はルヴァを当惑させた。
つまりはオスカーは普通の恋愛をしていても、あのときの与えられた後ろへの味が忘れられず、自分が男色になったのではないかと悩んでいたというのだ。
そこでもう一度試してみようとワインを口実にルヴァを誘いにきたもののなかなか言い出せなかったということだった。
俺はあんたを好きになったわけじゃない、そうしっかり釘を刺されていたが、ルヴァだってオスカーをそんな風にみたことはない。
お互い好きあっているわけでもないのに快楽だけを求めて性行為をすることをルヴァは疑問に思ったものの、押し切られると弱いところがあるルヴァはオスカーに負けた。またほんの少しの同情心も沸いて執務後にここを訪れたのであった。
「待たせたな」
「いえ……さっさとはじめましょうか」
こんなことはオスカーと仲の良いジュリアスなどに頼めばよいのにと思ったものの、光の守護聖の性格をよく知っているルヴァは無理だろうと肩を落とす。
ベッドに腰をかけたオスカーに口付けをしようとかがんだものの、それは拒否された。
「俺とあんたは恋人じゃない」
少々挫けそうなルヴァであったが気を取り直し、オスカーの胸を弄りだす。
今日は薬を呑んでいない為かくすぐったがるばかりで反応が悪い。
ルヴァだって実地二回目の今日でテクニックに自信があるわけではなかった。
それでもしつこく突起への刺激を与えると二つの先端は固く膨らんでくる。
やれやれっとホッとして優しく転がし始めた。
「おいっ、ルヴァ…胸より」
「オスカー……何事にも順序、というものがありましてですねー」
キスを断られた時点から教本通りといえず、機嫌が少々悪いところへ更に追い討ちをかけるものだから、優しく捻っていた乳首をきつく爪を立てて掴む。
「ああっ!」
意外なことにオスカーが啼いた。
「ん? もしかしてあなたはキツくされる方が好きなんですか?」
いつもの言動や態度からてっきりキツくする方が好きなのかと思っていたがどうやら身体は違うらしい。
自分では笑ったつもりなぞ無かったが、どうやら笑みを浮かべていたようでオスカーの表情が変わった。
乳首を責めていた右手を掴まれる。
しかし、元より無理をいっているのを判っていたのか、悔しそうな表情を浮かべるとルヴァのその手を自分の下半身へと導いた。
ルヴァは仕方なく導かれた陰茎を握った。始めは軽く弄ぶ。
流石にこの間とは違い、すぐに精を吐き出すことも無かったが、少し感情のスイッチが切り替わっていたルヴァは根元の方から先端にかけて少々乱暴に掻きだした。
「おい!」
「今日は軟膏ももってませんから。貴方の出すもので代用しようかと……」
「チッ」
オスカーは舌打ちするとベッドから起き上がり、サイドボードへと向かい、透明な液体の入った小瓶を手に取るとルヴァに渡す。
オスカーから渡された小瓶から自分の指へオイルを存分に滴らせるとその感触を確かめて頷く。
「ちょっとヒヤリとするかもしれませんが」
ルヴァの指の動きに合わせてきゅと反応するその窪みにプツリと挿し込む。
一本目すらキツくて辛いようだが、ルヴァも指を引きちぎられそうなほど締め付けられて困ってしまう。
(このまま挿れたら食い千切られそうですね……)
「オスカー、もうちょっと力抜いてくださいねー」
前回の行為の後に調べた文献を試そうと、オスカーを仰向けにし指の向きを変え折り曲げる。当たった内壁を軽く擦り出すと
「あ、ぁあっ…!」
オスカーが痙攣して、艶を含んだ声が漏れる。
元からそういう趣向があったのではと思うほど反応が良いオスカーに吃驚して行為を止めてしまう。
オスカー自身も正気の状態で聞く自分の声に驚いたようだった。
「ル、ヴァ、もっと……」
「はいはい」
強請るオスカーにルヴァは弟に接するように返してやる。
いつもは強気な彼が自分に頼る。意外とこういう状況は嫌ではなかった。
見つけたポイントを優しく、次第に強く押してやる。
ハァハァと聞こえる息遣いと水の音。
オスカーの肉茎は限界が近いのか、だらだらと先走りを溢れさせていた。
「あーなんといいますか、やらしい身体ですね」
後ろを弄りだしてからは前は全く刺激を与えていないのにそこは直立したまま衰えを見せない。
人間の身体は不思議なもので、まだまだ自分の知らない知識があるものだとルヴァは少し嬉しくなる。
オスカーの顔をみると、いつもは精悍な顔つきだが今は快楽に支配されているのか、唇はだらしなく開いており、
視線は宙を彷徨っている。
相変わらずの締め付けであったがルヴァは構わず二本目を飲み込ませていく。
更なる刺激を与えられて、オスカーの男の象徴は今にも精を放たんとびくびくと震えている。
少し悪戯心を起こしたのはなんというか。
達しないように根元をきつく握り締める。
快感の波に酔っていた筈のオスカーの目が見開かれるとルヴァを見る。
ルヴァはにっこりと笑って3本目の指をオスカーの中へ突き立てた。
媚薬もない初心者同然の身体に流石に苦しそうなオスカーの本来押し出す器官が抵抗をみせる。
ルヴァは構わずそのままバラバラと掻き回す。
オスカーは握り締めるルヴァの手から己を解放しようと抵抗するものの指の動きに翻弄され、精を放てない。
「頼む! イカせてくれっ!」
「駄目ですよー」
「頼むから!」
刺激を受けてすべてを開放したいのにルヴァによってその自由を奪われているオスカーは普段は絶対に他者に行わない懇願を繰り返した。
強さを与える炎の守護聖がだ。
その間も知恵を司る地の守護聖の白い指がオスカーを追い詰めていく。
オスカーの頬に苦痛と生理的な欲求から生み出された水滴が伝わると流石にルヴァが折れた。
「仕方ないですね……一回イッてくださいねー」
締めていた指の力を弱めて先端のほうへ優しく掻いてやる。
頂の窪みを爪で弾かれた途端、白い精を吐き出す。
更にきゅうっと締まった後腔にルヴァは顔を顰めた。
知ってしまった快感を身体が憶えているのはルヴァも同じだった。
性器でないはずの窪みを性器として扱っているうちにルヴァの中に妙な興奮が湧き上がっていた。
情欲。
自分にもそんな感情が用意できたのかとルヴァは驚く。
この年まですっかりこのような行為に興味がなかったものだから、自分には無縁のものと思い込んでいた。
すっかり準備のできたモノを取り出す。
自分の指ですら狭いそこに挿れるのは不安であったが、憶えている快感への誘いに抗うことができず侵入を開始する。
オスカーの腰を持ち上げ更に深く繋がるように貫いた。
性急な動作や膨らみにオスカーの入り口は限界まで広がり悲鳴を上げる。
びりりとする痛みがオスカーに与えられるがそこは普段から鍛えているため悲鳴も漏らさない。
オイルと溢れ出る体液とで繋がった箇所からはぐちゅぐちゅと卑猥な音が響いている。
「あああっ、ゃ、んっ…やめろ」
ただ快感に対する嬌声は我慢できないようで微かに漏れ伝わる。
指とは違う確かな質感で拡張され、さすがに辛いのか口では否定する言葉がつけられていた。
それを聞いたルヴァが腰の動きをとめた。
「……やめちゃっていいんですか?」
切れるような痛みは引いたもの、身体の奥からじゅくじゅくと湧き上がる疼きがたまらない。
オスカーは自分から尻を突き出し、さっきまでルヴァの楔が突き入れられていた蕾を広げていった。
「バカ! こういうときはやめるな」
赤色の肉が疼いている。二つの芽と真ん中は硬くオスカーの興奮を如実に表わしていた。
オスカー自身、自分で行った哀願の行為に遣る瀬無い思いを抱いているらしく、その顔は夜叉のようだったが。
ルヴァは微笑むともう一度オスカーの中に思うままに動き出した。
絡み付いてくる肉を味わうと強く擦り合う。
摩擦がルヴァに快感を与えるとルヴァの陰茎は脈打ち更に硬度を増す。
先ほど憶えたばかりのオスカーの性感帯をしつこく責め立てた。
「あ、あっ、ああぁぁっ」
ルヴァによっていい様にされている自分への怒りとそれを甘受している自分への葛藤と、次から次へ与えられるいつもとは異なる快楽に翻弄されてオスカーはついに意識を手放す。
どろどろとした大量の白濁がオスカーの腹を満たしたのはそのすぐ後のことだった。
To Be Continued? or The End?