「どうかされましたの?」
「んー」
「胸ってどうやったら大きくなるのかしら?」
「は?」
唖然とするロザリアに我らが女王陛下がその膨らみに手を当てていう。
「ロザリアはいいわよね、大きくて」
そういってロザリアの背後に回ると両脇から手を回し、自分より豊かな膨らみを掴む。
女官たちに綺麗に整えられた爪はロザリアの柔肌を傷つけることなく、その柔らかさを堪能する。
「ちょ! 陛下ッ!」
ロザリアはこうした行為に免疫がなかった。
男性とは勿論のこと、女子高出身とはいえ、一般コースのとは違い特別コースだったため、それなりの家柄のそれなりの子女が集まっていたから、友ともこのような戯れを行うことはなかった。
アンジェリークのほうはというと名門とはいえ、女子高育ち。
過剰なスキンシップは慣れっこで。
正直、アンジェリークと友となってからは些細なギャップから大きな隔たりまで感じることはあったけど、ロザリアが顔を顰めるような内容でも、それもまた良しとするようになったのは単に彼女の魅力によるものだとロザリアは感じていた。
このような破廉恥な行為を咎めつつも結局は許してしまう。
「ゃ、へ、いかぁ…」
「ちょっとまって! ロザリア、それ反則だわ。だめよ。オスカーとかオリヴィエの前でその表情(カオ)したら絶対ダメよ!」
「? ええ」
よく判らないままコクコクと頷く親友にアンジェリークは満足してロザリアを開放する。
「もう! アンジェったら!」
「ちょっとくらいいいじゃない」
乱れた衣装を調えつつ宥める。ロザリアは高潔であった。
「こういうことは……恋人とするものですわ」
「恋人かぁ」
「アンタとあの方とじゃどのくらい先になるか判らないわね」
「うう……揉んでもらったら大きくなるらしいんだけど…」
そういって、ため息を吐きつつロザリアの胸を凝視するアンジェリークに。
「私の胸は自前ですわよ?」
ロザリアは更なる追撃を食らわすと優雅に礼し、自分の執務室へと戻っていくのであった。