「ルヴァ、最近の貴方はなんて呼ばれているかご存知ですの?」
「はぁ…」
ロザリアと新しくできた惑星の生態について話し終わった後のこと。
とんと心当たりが無い。
ロザリアが一部限定で蕩けそうな微笑を乗せていった。
「女王のラマンなどと呼ばれてましてよ」
「ジョウオウノラマンですか?」
「女王のラマン……ふふっ、陛下の愛人ですわね」
「!?」
目を白黒させるルヴァにロザリアは悪戯っぽく笑って続けて言う。
「ぴったりだと思いますわ、女王のラマン殿」
女王のラマン
(はぁ…愛人というより、まるで間男のようですね)
ロザリアに指摘されてから自分の行動を振り返ってみると。
土曜の夜に密やかに女王の部屋へ忍び込んで、日曜の夜に私邸へ帰る。
そんなことを毎週していたらそれは噂にもなるわけで。
確かに広義でいえば愛人であることは間違いないのだが、ルヴァは自分がどうして女王の恋人という呼称ではないのだろうと考えていた。
アンジェリークも独身で、自分も独身である。
ただ立場が宇宙の女王とその地の守護聖であるというだけ。
わりと他人の意見を気にしないルヴァであるのに聖地に広まるアンジェリークに対しての自分の立場にはなぜか拘っていた。
今週も聖殿奥深く女王の部屋へと忍び込む。
補佐官に取り次がなくても女王の寝室へ入れるようになったのはいつからだろうか。
そう考えて扉をノックする。
「ルヴァ!」
首元へと腕を回し飛び込んでくる恋人の勢いに後退りながらも抱き締めて口付ける。
昔はルヴァから行動を起こさなければ抱きついてくるのもぎこちない動作で、はにかみながらキスを受けるだけだったのに。
積極的になったものだ。自分に合わせて舌を絡ませてくるまでにもなった恋人の成長に嬉しいような恥ずかしいような微妙な気分になる。
「ここじゃダメですよ、陛下。声聞こえちゃいますよ」
「でもルヴァが…やぁっ、んっ」
口では殊勝なことをいう恋人がドレスの隙間から悪戯するのを女王は咎めない。
何せ週に一回の逢瀬なのだ。
特に普段はすべてを愛し愛されるべき女王にとっては普通の女の子として過ごせる僅かな時間。
露出した肌にルヴァの手が滑るだけで、これからもたらされる快楽への予感と好きな男と過ごせる幸福に過敏に反応してしまう。
「ね、ルヴァ」
「ベッドにいきましょうか」
熱をはらんだ瞳でこちらを見上げている恋人をそのまま抱き上げてしまうと寝台へと運ぶ。
アンジェリークを宝物のように薄絹のシーツの上へ乗せると、服を脱ぎ覆い被さった。
自分だけがみることのできる女王の肌は、今はもう候補時代の健康的に焼けた肌とは違ってすっかり白く艶やかだ。
ルヴァはその白い肌に吸い付くと、赤い花を咲かせていく。
桃色の頂を薄紅色の舌で転がすとアンジェリークの身体が素直に跳ねる。
「ぁ、んっ」
彼女を傷つけないように歯と舌で愛撫する。すっかり立ち上がったそれに吸い付きながら、下着をすべて剥ぎ取る。湿ったそれを手で感じた。
少女を女にしたのは青年で、青年を男にしたのは少女だった。
アンジェリークが慣れた手つきで止めてあるターバンの端を解くとルヴァの青緑の髪が露になる。
彼女だけが許されるその動作にルヴァは微笑んで彼女の指に絡んだ布を床に落とすと、布の代わりに自分の指を絡ませた。
「ルヴァ、すき…っ」
「私もです。アンジェ……ッ」
「すき……だっ、ゃん、だいすきっ…ぁ」
普段は公に口にできないその言葉を睦言の中でだけいくつも漏らす恋人に愛しさが溢れ出す。
心も身体も結ばれて、一体どれくらい彼女を愛せばその想いの果てが見えるのだろうと考えたこともあったが、未だにそれを知ることはなかった。
想いは尽きずルヴァは無限と言う言葉の意味を実感する。
唇を震わせ、次を待ち望むアンジェリークにルヴァは深く口づけする。
前戯の段階で既に太ももまで伝う滴りを掬いながら、奥へと指を這わす。
入り口から奥にかけて丹念に解していく。
だけど、アンジェリークが一番感じるところはわざとあっさりとやり過ごした。
「やっ…、ルヴァッ!」
「お望みなら仰ってください」
わざと皆といるときの前で言うような言葉遣いで告げる恋人に女王の顔が更に赤く染まった。
「もう…」
そういってアンジェリークはルヴァの頭を自身の胸に引き寄せ、その耳に更に囁く。
それを確認したルヴァは微笑むとすっかり隆起した自身でアンジェリークを貫く。
快感に震えるアンジェリークはそれでもルヴァをみると愛しげに微笑んだ。
もっと深く彼女と繋がりたいとルヴァが腰を揺らすと、彼女の首筋が更に鮮やかに染まり、嬌声が漏れる。
自分を感じてくれている。ただそれだけでルヴァは幸せだった。
トロトロに潤った柔肉が絡みつく感触を楽しむと彼女が生理的な涙を流しながら身を捩った。
「も、やぁ…」
その姿に煽られて更に大きくなる自身を使い、アンジェリークを高みに連れていく。
「ルヴァ…っ」
「愛してます」
「あっ、あっ、」
アンジェリークの背が跳ねて硬直すると既に限界だったルヴァも達した。
自分の腕の中でまどろむアンジェリークに先日聞いたばかりの噂を寝物語として話す。
「じょうおうのらまん?」
「ええ…愛人ですねー」
「ルヴァが愛人!? 誰の?」
「……貴女のです。私が"陛下"の愛人だそうですよ」
よほど驚いたのか、みるみる間に目をぱちくりとさせる恋人に笑って。
「そんなに驚いたら、ただでさえ大きな瞳なのにおっこちちゃいますよ」
「え、だって…私の愛人…?」
しばらく何事か考えていたアンジェリークだったが、ルヴァの胸に頬を寄せると。
「でも間違いじゃないわ」
「は?」
「だってルヴァは私の一番愛している人だもの」
そういって薔薇色に頬を染めて微笑む少女は、ルヴァだけの天使だった。
To be continued forever...