啄ばむような口吸いが終わったかと思うとすぐに深くまで入ってくる。
覚え始めのころは歯が渡り合ったりしてたものが今では巧みに舌を絡め絡めさせられる様子に三日月は鋼の塊だったころからみるとほんの少しの肉の器を得た時間を思い出して笑う。
その殆どが目の前の刀と過ごした訳で。
溢れ出る幸福感と湧き上がる欲望も得てみればとても甘美で、いつか鋼に戻る日まで溺れていたいものだとすら思う。
刀としての本分を忘れたわけではないが。
「んっ」
石切丸が三日月の唇からその唇を離すと三日月の唇の端から飲み込みきれなかったものが透明な糸を引いて垂れる。石切丸がそれを拭った。
「こうして肌を重ねるのも久方ぶりかもしれないね」
今朝、石切丸自らが着せた三日月の上衣はすべて解かれ石切丸の上衣と共に三日月の下にある。三日月の白小袖は腕に掛かるのみ。
「今日も励むとしようか」
昂ぶる前張りを同じ様になっている身に押し付けられて否応もなく擦りつけられる。
敏感になった頭を合わせると瞬く間に滑りを帯び、卑猥な音を立てる。
幹同士が触れ合う刺激だけで大きく育っていく様はいつみてもおかしい。
石切丸の指が膨らみのない胸を撫ぜると三日月の腰が浮く。
そこを石切丸の腰の重みで床に留められる。
石切丸と自らの下半身から奏でられるぬるぬるとした音から生理的に顔を背けようとしたら、もう少し大きな音が聞こえてくる。
「ふっ! あッ」
口腔を弄ったときのように割合器用な動きで胸の飾りを食まれたものだから思わず声を上げてしまう。
わざと音を立てて舐める石切丸に普段はあまり感じることのない羞恥を感じるが、これもいつものことで。石切丸の唾液で塗れた自らの赤い突起にさらに幹が育った気がする。
擦り合わされる刀と快楽を拾うようにならされた突起と同時に責められて、この先を知っている窪みがきゅっと締まったのが三日月にも分かった。
「んん、恋し、きかな……」
相愛のものと肌を重ねるだけでこんなに幸せな気持ちになるとは。
昔の主のように背(夫)と結ばれているときのような貌を己もしているのだろうか。
本当に肉の身とは面白い。
刀であるときには削ぎ合うことしかできんのにと三日月はまぐわう度にその縁の不思議さを実感する。
いつもよりも濃い愛撫のせいか久しぶりの逢瀬のせいか身体の熱さに堪えきれず。
石切丸の手が三日月の窪まりに伸びたときには三日月は限界だった。
その熱を逃すように身を捩ってすぐに中から捉まってしまいそうで石切丸に強請る。
「石切、疾く!」
「っ……まだ駄目かな」
待ち侘びた鞘は石切丸の指に絡みつくように蠢いて離さない。
しかしまだ準備を終えていないと見えて二本しか飲み込んでおらず、石切丸の大太刀を受け入れるには解しが足りなかった。
下腹に重く熱く残る何かを開放したいのにもどかしい。
三日月はさらに強請る。
「はよう! 石切のまらが欲しい」
ぷちっと切れた音がした。
やや乱暴に脚が開かれ三日月が懇願した望みのものが与えられる。
「あっ! んんんんっ…ひっ」
熱い石切丸の太刀が身体を裂くように入ってきても恐怖などなかった。
もっと深くと自ら腰を揺らしながら求める。
先ほどよりもひどい水音が聞こえてももう気にならない。
ぐちゅぐちゅ響く音とともに、熱が更に熱い熱に上書きされる。
揺さぶられて堕ちる。
身体を抉る熱い刀に落とされる。
「ああんっあっあッ!」
石切丸に張り詰めた前を握り込まれて、鞘に入れるようにまらを動かされれば更に飛ばされる。
「ふ、あっんんっ! はあぁっ!!!」
落ちる。墜ちる。堕ちる。
思わず石切丸の背に爪を立てた。
黒い其処に堕ちる寸前で動きが止まった。
急激に現世に呼び戻される。
突然のお預けに三日月は訝しく思い、石切丸と目を合わせる。
「まらだけでいいのかい?」
そう訊かれて直ちに返す。
「心も欲しい」
石切丸はその答えに満足した様子で三日月に口付けを落とすと再び突き出す。
「月の色をも香をも知る人ぞ知る。私に対してもまた然りだねえ」
石切丸は艶を含んだ声でそう囁いて三日月の中を埋めていった。