70歳台の坂を登り始めて4年目に入るが、肉体的にも精神的にも老化、硬化が進み、社会的にも個人的にも適応能力が減退するのが目に見えて明らかになって来る。それでも日課のような散歩に出かけて、行き違う地元の老婆達からは「若い、元気だ」と口々に褒められるから、弱音を吐くわけにもいかないし、行きつけのスーパーのレジ係などからも何者かと不審がられる一方、いつの間にか心安くなったりして、軽口を叩いたりもする。旨いものを食う金もないし、いい女の尻を追いかける色気も失せ、鏡の中の自分に見知らぬ老人を見出して我ながら愕然とする日々を送る。今年の冬は正月明けから暫くは暖冬で凌ぎやすかったが、大寒の頃から数十年に一度という最強クラスの寒波が襲来し、気象状況が一変した。何年振りかで大雪が降り、20センチばかりの積雪の中で外出もままならず、2,3日封じ込められ、掛かり付けの内科医院に血圧測定と薬を貰いに出かけなければならず、まだ雪解けが遅れている屋敷前の農道を恐る恐る車を運転して強行突破する。それから後1カ月過ぎた今もまだ寒さが続き、ここ何年も引いたことのなかった風邪まで引き込み、血圧も上昇するなど体調に不安を覚える。農事暦も動き出しているのだが、政府の農業政策が減反廃止など、国際競争力のある大規模農家養成に舵を切り、高齢零細農家を赤字経営に追い込み、補助金、交付金なども切り下げ、廃止したり、経費を賄えなくなり、道楽で農家の真似ごとをしている金剛空間も息切れ同然になり、毎年出足が鈍くなるばかりである。去年は金剛没落回帰大地方程式空間30周年という節目の年ということもあり、何とか自らを鼓舞して乗り切ったが、金剛没落回帰大地方程式空間31周年は極めて危ういものがある。
三婆に励まされつつ行く冬野
山道を行けども遅き初音かな
厠から水漏れのして大寒波 金剛