平ヶ岳  尾瀬からの遠い道、最奥の名峰の景観と滑走

新潟県  平ヶ岳(最高点2,141m、三角点2,140m)、白沢山1,953m  2019年4月28日

日本百名山

399

薄い青空

まだ冷たい風

山の木々には春の息吹

そして山の旅人たち

(春の山旅)

☼☼☼☼☼

はるか左上に見えていたスズヶ峰がだいぶ近くなると視界が開け、急坂をぐいぐい登って大白沢山のすぐ近くに出る。1,911m峰の東西縦走路に合流。ここは12年前にテントを張った想い出の場所。なつかしい。真上の太陽のまわりに白い虹がかかっている。

白沢山は大きな丸い山で、平ヶ岳はいったん見えなくなり、白沢山頂上付近で再び見えてくる。平ヶ岳はもうすぐ先に平らな頂上を見せているが、まだ2.4㎞のかなた。

平ヶ岳の頂上直下は比較的急になっていて、そこを登っている小さな人影が見えていた。その先の登りで、下ってくる二人連れ、二組に会ったと思う。このコースを登っている人はずいぶん多いらしい。

こうしてついに、アンテナが1本立つ、平ヶ岳・最高地点に到達。このときは誰もおらず、ただ一人の頂上。周囲に広がる上越と尾瀬の景観をぐるり見廻す。越後三山はすぐ近く、西には巻機山、南にはスズヶ峰と至仏山、東には形を変えた燧岳が近く、北東には会津駒。ここは全く、名峰に囲まれた山の最深部なのだ。

平ヶ岳の頂上直下の滑走がこの日のハイライト滑走。スムースな斜面を選んでショートターンを試み、雪が融けてでこぼこのところは大きくターンを刻み、苦労して登った斜面を一気に滑り降りる。

びしょびしょになったシールを貼り、ヘッドランプを出しておいて山ノ鼻を出発。足は動くが腰が痛い。ヘッドランプ点灯。この後、更に2度休憩をとるが、ヘッドランプを消すと空には満点の星。周囲の森の上まで夜空いっぱいに星が輝いている。こんなのが見れるのは山に登った時だけだ。山登りバンザイ!

 白沢山は大きな丸い山で、平ヶ岳はいったん見えなくなり、白沢山頂上付近で再び見えてくる。平ヶ岳はもうすぐ先に平らな頂上を見せているが、まだ2.4㎞のかなた。
 平ヶ岳の頂上直下の滑走がこの日のハイライト滑走。スムースな斜面を選んでショートターンを試み、雪が融けてでこぼこのところは大きくターンを刻む。苦労して登った斜面を一気に滑り降りる。
 尾瀬ヶ原・北端付近
 岩だらけの至仏山
 白沢山
 越後三山(八海山・入道岳、中ノ岳、駒ヶ岳)
 平ヶ岳・最高点
 真上の太陽のまわりに白い虹
  5:51 鳩待峠発、滑走  6:23 山ノ鼻、シール  7:35 尾根取付き  9:56 1,911m峰、合流点11:33 白沢山13:04 平ヶ岳・最高点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往路7時間13分13:09 平ヶ岳・三角点13:44 平ヶ岳・最高点発、滑走・シール14:30 白沢山、滑走・シール16:09 1,911m峰、合流点、滑走17:08 尾根取付き、滑り歩き18:20 山ノ鼻、シール21:04 鳩待峠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・復路7時間20分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復15時間13分

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平ヶ岳は遠かった。新雪が積もり、先行トレースが無ければとてもたどり着けなかっただろう。これまでのトレーニングのおかげで、足は最後まで動いた。頭もはっきりしていた。ただ、最後の鳩待峠への登り返しで腰が痛くなり、何度か休んだ。最近始めたささやかなトレーニングの成果が少しはあったかも。

前日、日光までの高速、いろは坂、金精峠のあたりはまだ混んでいなかったが、雪予報が出ていて、金精峠のあたりから雪がちらつく。戸倉からはついに道に雪が積もり、先行していた車は鳩待峠への分岐のところで停止。たぶん断念したのだろう。私は完全に雪の積もった車道を夏タイヤ、自動四駆で登る。急カーブで急ハンドルを切ると何度かスリップ制御が利いて車体が少し揺れたが、スムーズに駐車場に到達。だが、雪の積もった道を下るのは骨だろう。5月連休前に夏タイヤに替えてしまったことを悔やむ。鳩待峠の駐車場は満車で、端の三角錐マークを少し寄せて駐車。車の中でDVDを見ながら食事。外に出ると吹雪。これで翌日は平ヶ岳まで行けるのだろうか。車の窓にも雪が積もり、スノーブラシをもってこなかったことを悔やむ。(だが、翌日朝に雪はすっかり融けており、車道にも全く雪はなし。その後も雪は降らなかったから、結局、夏タイヤに替えておいたのは正解だった)

当日朝、外が少し明るくなり、雪の積もった窓のシュードの隙間からは、雪の中を出かけている人が見える。そこで雪の積もった駐車場で準備していると、駐車場の集金がやってきた。一日2,500円というのは安くはないが、この日も融雪車が上がってきて融雪剤をまいていたから、道路整備だけでも相当な出費なのだろう。もらったチケットをサンシェードとフロントガラスの間に入れる。スキーを担いで鳩待峠まで歩き、最初は山ノ鼻まで滑走。12年前にテントザックを担いで滑ったときは快調だった記憶があるが、この日は新雪が積もり、傾斜のある上部はスムーズだったが、途中の沢沿いのところにはトレースがなく、いったんスキーを外して丘に登る。その先で見つけた、斜面をトラバース滑走していくトレースに乗ったまではよかったが、後半の傾斜のない部分はほとんどストックでの押し歩きとなる。山ノ鼻は遠く感じた。

ようやく山ノ鼻に着くと、テントがたくさん並び、食事中の人や出かけている人々。その脇で最初の休憩。シールを貼り、パンを食べたと思う。尾瀬ヶ原を北に向かうスキートレースがあり、それを辿る。今朝のトレースに違いないが、何時に出たのだろう。僅かな登り傾斜を快調に進み、途中で徒歩の二人連れを追越す。ムジナ沢の橋を渡り、柳平の池(地図には載ってない)の脇をあぶなっかしく越えていく。地図には太くでている猫又川の上流部分にはまだスノーブリッジが残っていて、猫又川を2度渡り、尾根取付き点に着く。猫又川を2度渡らず、西を回ってくるルートもあるようだが、その場合も支流をわたらないといけないらしい(帰路時にトレースを見た)。

尾根取付き点で先行トレースはつづら折りに尾根に上がっていく。よおし、ここからが本格登山だな。着込んでいたインナーを脱ぎ、ネックウォーマーを外し、スキーグローブを薄いグローブに替え、つづら折りを登る。この尾根登りは複雑な地形の中を進み、先行トレースがなければ相当に悩んだだろう。マイナーピーク1,534mをトラバースし、ワル沢の滝の音を聞きながら細尾根を登って平坦な1,661m峰に上がり、その先に立ちはだかる崖は、直下にある沢地形を左から右に登って越え、はるか左上に見えていたスズヶ峰がだいぶ近くなると視界が開け、急坂をぐいぐい登って大白沢山のすぐ近くに出る。12年前に登った大白沢山には登らず、先行トレースに従い、1,911m峰(の少し北東)の東西縦走路に合流し、2回目の休憩。ここは12年前にテントを張った想い出の場所。なつかしい。バナナを食べ、ペットボトルを1本飲み干す。雲の多かった空はだいぶ晴れてきて、真上の太陽のまわりに白い虹がかかっている。ここまで上がると風が強く、サングラスをゴーグルに替え、スキーグローブをはめる。

ここから平ヶ岳までは比較的楽だろうと思っていたのはまちがいで、少し下って1,920m峰へは急な細尾根を登り、そこからコル1,790mまで130mの下り。シールを外して滑るべきだったが、面倒なのでシールのままでおっかなびっくりの滑走。一度、派手に転倒。無理をしてはいけない。ただし、このときシール滑走できたのは、まだシールが乾いていたためで、シールがズブ濡れになった午後には、もうシール滑走は物理的に不可能だった。転倒から立ち直ってなおも斜めに小さく滑っていると、下からスキー・パーティが登ってきた。なんともう平ヶ岳までいって戻ってきたのか。スキーヤーはその先の1,895m峰をトラバースする途中まで断続的に10人以上やってきたが、たぶん同じパーティなのだろう。ここまで私がこれたのも彼らのトレースがあったおかげ。感謝。

コル1,790mから先行トレースは尾根通しのものと西側トラバースに分かれるが、私はトラバース・ルートを進み、1,895m峰の先のコル1,880mに到達。そこからは尾根通しに白沢山に向かう。白沢山は大きな丸い山で、平ヶ岳はいったん見えなくなり、白沢山頂上付近で再び見えてくる。先行トレースを外れ、GPSを見ながら白沢山の三角点まで行ってみる。雪の上のまばらな灌木帯で、もちろん三角点も雪の下。平ヶ岳はもうすぐ先に平らな頂上を見せているが、まだ2.4㎞のかなた。雪庇の尾根に向かう。コル1,890mから最後の登り。平ヶ岳の頂上直下は比較的急になっていて、そこを登っている小さな人影が見えていた。その先の登りで、下ってくる二人連れ、二組に会ったと思う。このコースを登っている人はずいぶん多いらしい。頂上直下の急斜面に取付くころにはだいぶへばっていたが、少しペースを落とし、淡々と同じペースで登っていくと、足は止まらなかった。

こうしてついに、アンテナが1本立つ、平ヶ岳・最高地点に到達。このときは誰もおらず、ただ一人の頂上。周囲に広がる上越と尾瀬の景観をぐるり見廻し、撮影する。越後三山はすぐ近く、西には巻機山、南にはスズヶ峰と至仏山、東には形を変えた燧岳が近く、北東には会津駒。ここは全く、名峰に囲まれた山の最深部なのだ。最高点から先にトレースはなかったが、私はGPSを見ながら、平ヶ岳・三角点まで行ってみる。そこは最高点の東側150mくらいの地点で、標高差は1m程度だが、灌木に囲まれているので風をしのげる。そこでザックを下ろし、ザックを枕に少し横になる。実によい気分。疲労感すら心地よい。時刻は13時、往路は7時間。復路は明るいうちに帰りたいが、山ノ鼻からはヘッドランプでも大丈夫だろう。

三角点にいたとき、スキーヤーが一人やってきた。私が最高点でシールを外している間に、そのスキーヤーの方が先に出発。私は最後にもう一度、周囲を撮影してから滑走開始。風が弱まったので、ゴーグルをサングラスに戻し、薄いグローブをはめる。平ヶ岳の頂上直下の滑走がこの日のハイライト滑走。スムースな斜面を選んでショートターンを試み、雪が融けてでこぼこのところは大きくターンを刻み、苦労して登った斜面を一気に滑り降りる。コル1,890mに滑り込んでシールを貼る。この時、さきほどのスキーヤーに追いついたが、この後は追いつけなかった。滑走の疲れで休みたかったが、白沢山に登ってシールを外してから休憩。ナッツを食べたと思う。白沢山からは灌木の中の滑走。コル1,880mから分岐を往路のトラバースコースに入ると、なんと徒歩の二人連れが登ってきた。朝、尾瀬ヶ原で会った二人だと思うが、彼等は平ヶ岳まで行けただろうか。帰りはどうしたのだろう。ちょっと心配。

トラバースコースを大きく回ってコル1,790mに着き、シールで登り返し。スキーヤーはもうはるか先を登っている。1,920m峰までの登り返しは長く感じた。狭い頂上にようやく到着し、シールを外してから休憩していると、なにやら話し声が聞こえる。コル1,890mまで滑り降り、1,911m峰までわずかな距離をスキーを担いで歩いて登ると、果たしてその声の主がいた。どうやらここにテント泊し、翌日に平ヶ岳まで行くらしい。私が休憩しているときにパーティの一人が話しかけてきた。彼等は関西からやってきて、翌日は平ヶ岳、二日後には景鶴山に登る計画で、翌日の天気を心配していた。翌日は晴れたと思うが、二日後は雨が降ったのではなかろうか。

1,911m峰からは尾根取付きまでノンストップの滑走、と思ったが、そんなに楽ではなく、狭い所を慎重に通過し、わずかだが何度もでてくる登り返しをこなし、調子に乗って滑っていて間違いに気づいて引返し、疲れてきた終盤は往路トレースを外れないよう滑走。そして眼下に尾瀬ヶ原が見えてきて、ついに尾根取付き点にさっそうと滑り込む。と思ったら深雪にスキーをとられてあえなく転倒。なんたることだ。誰も見てなかったよな、とあたりを見回すと、誰もいない。スキーを外して立ち上がり、ザックを下ろして横になって休憩。ここからはビンディングのかかとを外して滑り歩き。山ノ鼻までわずかな傾斜があるので、割と滑る。

柳平の池の脇は、往路よりも高いところをトラバース。渡り切ったところでザックを下ろして休憩。これでもう難場はない。夕方の山ノ鼻に着くと、テント村は夕食の真っ最中。朝、朝食を食べていたパーティは缶ビールで乾杯していた。楽しそうだ。びしょびしょになったシールを貼り、ヘッドランプを出しておいて山ノ鼻を出発。もう薄暗くなってきて、歩いている人もいない。下部の平らなところを歩き切り、最初の坂を登った先あたりで休憩。足は動くが腰が痛い。ヘッドランプ点灯。この後、更に2度休憩をとるが、ヘッドランプを消すと空には満点の星。周囲の森の上まで夜空いっぱいに星が輝いている。こんなのが見れるのは山に登った時だけだ。山登りバンザイ!ヘッドランプだと視界が限定され、とくに下りになるところが分かりにくい。鳩待峠へのルートはいくつかあったが、下りを見つけられずに登りトレースばかりをたどり、ずいぶん東に寄ったルートに乗って鳩待峠に着く。

駐車場に戻り、ゆっくり片づけて車に入り、暖房をつけて温まり、DVDを見て少し休憩。それからガスコンロを出して湯を沸かし、ラーメンと野菜スープを食べたと思う。風呂に入れないので気持ち悪いが、テントよりは数段よい。だが、これだけ疲労がたまり、腰や足が痛いのでは、翌日、景鶴山に登るのは難しかろう。そこで至仏山に登ることにする。

雪の積もった駐車場

前日、日光までの高速、いろは坂、金精峠のあたりはまだ混んでいなかったが、雪予報が出ていて、金精峠のあたりから雪がちらつく。戸倉からはついに道に雪が積もり、先行していた車は鳩待峠への分岐のところで停止。たぶん断念したのだろう。私は完全に雪の積もった車道を夏タイヤ、自動四駆で登る。急カーブで急ハンドルを切ると何度かスリップ制御が利いて車体が少し揺れたが、スムーズに駐車場に到達。だが、雪の積もった道を下るのは骨だろう。5月連休前に夏タイヤに替えてしまったことを悔やむ。鳩待峠の駐車場は満車で、端の三角錐マークを少し寄せて駐車。車の中でDVDを見ながら食事。外に出ると吹雪。これで翌日は平ヶ岳まで行けるのだろうか。車の窓にも雪が積もり、スノーブラシをもってこなかったことを悔やむ。(だが、翌日朝に雪はすっかり融けており、車道にも全く雪はなし。その後も雪は降らなかったから、結局、夏タイヤに替えておいたのは正解だった)

雪の鳩待峠

当日朝、外が少し明るくなり、雪の積もった窓のシュードの隙間からは、雪の中を出かけている人が見える。そこで雪の積もった駐車場で準備していると、駐車場の集金がやってきた。一日2,500円というのは安くはないが、この日も融雪車が上がってきて融雪剤をまいていたから、道路整備だけでも相当な出費なのだろう。もらったチケットをサンシェードとフロントガラスの間に入れる。スキーを担いで鳩待峠まで歩き、最初は山ノ鼻まで滑走。12年前にテントザックを担いで滑ったときは快調だった記憶があるが、この日は新雪が積もり、傾斜のある上部はスムーズだったが、途中の沢沿いのところにはトレースがなく、いったんスキーを外して丘に登る。その先で見つけた、斜面をトラバース滑走していくトレースに乗ったまではよかったが、後半の傾斜のない部分はほとんどストックでの押し歩きとなる。山ノ鼻は遠く感じた。

山ノ鼻のテント村

ようやく山ノ鼻に着くと、テントがたくさん並び、食事中の人や出かけている人々。その脇で最初の休憩。シールを貼り、パンを食べたと思う。尾瀬ヶ原を北に向かうスキートレースがあり、それを辿る。今朝のトレースに違いないが、何時に出たのだろう。僅かな登り傾斜を快調に進み、途中で徒歩の二人連れを追越す。ムジナ沢の橋を渡り、柳平の池(地図には載ってない)の脇をあぶなっかしく越えていく。地図には太くでている猫又川の上流部分にはまだスノーブリッジが残っていて、猫又川を2度渡り、尾根取付き点に着く。猫又川を2度渡らず、西を回ってくるルートもあるようだが、その場合も支流をわたらないといけないらしい(帰路時にトレースを見た)。

至仏山と青空

柳平付近

尾瀬ヶ原・北端付近

尾根取付き

岳ヶ倉山?

初めて見えた景鶴山

沢筋を登る

尾根取付き点で先行トレースはつづら折りに尾根に上がっていく。よおし、ここからが本格登山だな。着込んでいたインナーを脱ぎ、ネックウォーマーを外し、スキーグローブを薄いグローブに替え、つづら折りを登る。この尾根登りは複雑な地形の中を進み、先行トレースがなければ相当に悩んだだろう。マイナーピーク1,534mをトラバースし、ワル沢の滝の音を聞きながら細尾根を登って平坦な1,661m峰に上がり、その先に立ちはだかる崖は、直下にある沢地形を左から右に登って越え、はるか左上に見えていたスズヶ峰がだいぶ近くなると視界が開け、急坂をぐいぐい登って大白沢山のすぐ近くに出る。12年前に登った大白沢山には登らず、先行トレースに従い、1,911m峰(の少し北東)の東西縦走路に合流し、2回目の休憩。ここは12年前にテントを張った想い出の場所。なつかしい。バナナを食べ、ペットボトルを1本飲み干す。雲の多かった空はだいぶ晴れてきて、真上の太陽のまわりに白い虹がかかっている。ここまで上がると風が強く、サングラスをゴーグルに替え、スキーグローブをはめる。

大白沢山・南端

1,911m峰の東西縦走路との合流点

丸い虹

初めて見えた平ヶ岳

初めて見えた会津駒ヶ岳

初めて見えた燧岳

裏側から見る景鶴山

平ヶ岳(1,920m峰付近より)

ここから平ヶ岳までは比較的楽だろうと思っていたのはまちがいで、少し下って1,920m峰へは急な細尾根を登り、そこからコル1,790mまで130mの下り。シールを外して滑るべきだったが、面倒なのでシールのままでおっかなびっくりの滑走。一度、派手に転倒。無理をしてはいけない。ただし、このときシール滑走できたのは、まだシールが乾いていたためで、シールがズブ濡れになった午後には、もうシール滑走は物理的に不可能だった。転倒から立ち直ってなおも斜めに小さく滑っていると、下からスキー・パーティが登ってきた。なんともう平ヶ岳までいって戻ってきたのか。スキーヤーはその先の1,895m峰をトラバースする途中まで断続的に10人以上やってきたが、たぶん同じパーティなのだろう。ここまで私がこれたのも彼らのトレースがあったおかげ。感謝。

1,895m峰のトラバース・スート

白沢山頂上

平ヶ岳(白沢山付近より)

コル1,790mから先行トレースは尾根通しのものと西側トラバースに分かれるが、私はトラバース・ルートを進み、1,895m峰の先のコル1,880mに到達。そこからは尾根通しに白沢山に向かう。白沢山は大きな丸い山で、平ヶ岳はいったん見えなくなり、白沢山頂上付近で再び見えてくる。先行トレースを外れ、GPSを見ながら白沢山の三角点まで行ってみる。雪の上のまばらな灌木帯で、もちろん三角点も雪の下。平ヶ岳はもうすぐ先に平らな頂上を見せているが、まだ2.4㎞のかなた。雪庇の尾根に向かう。コル1,890mから最後の登り。平ヶ岳の頂上直下は比較的急になっていて、そこを登っている小さな人影が見えていた。その先の登りで、下ってくる二人連れ、二組に会ったと思う。このコースを登っている人はずいぶん多いらしい。頂上直下の急斜面に取付くころにはだいぶへばっていたが、少しペースを落とし、淡々と同じペースで登っていくと、足は止まらなかった。

平ヶ岳(南尾根の最後の登り)

小沢岳と下津川山

白沢山

スズヶ峰

赤倉岳(スズヶ峰の北)

背後の南北縦走路(白沢山、至仏山、武尊山)

平ヶ岳・最高点(2,141m)

こうしてついに、アンテナが1本立つ、平ヶ岳・最高地点に到達。このときは誰もおらず、ただ一人の頂上。周囲に広がる上越と尾瀬の景観をぐるり見廻し、撮影する。越後三山はすぐ近く、西には巻機山、南にはスズヶ峰と至仏山、東には形を変えた燧岳が近く、北東には会津駒。ここは全く、名峰に囲まれた山の最深部なのだ。最高点から先にトレースはなかったが、私はGPSを見ながら、平ヶ岳・三角点まで行ってみる。そこは最高点の東側150mくらいの地点で、標高差は1m程度だが、灌木に囲まれているので風をしのげる。そこでザックを下ろし、ザックを枕に少し横になる。実によい気分。疲労感すら心地よい。時刻は13時、往路は7時間。復路は明るいうちに帰りたいが、山ノ鼻からはヘッドランプでも大丈夫だろう。

平ヶ岳・三角点地点(2,140m)

 平ヶ岳から東の景観: 会津駒、大杉岳、燧岳、奥白根山、景鶴山、アヤメ平、横田代、白沢山、至仏山、笠ヶ岳、武尊山

 平ヶ岳から西の景観: 浅間山、谷川岳、苗場山、巻機山、八海山、中ノ岳、越後駒ヶ岳、日向倉山、未丈ヶ岳

岩だらけの至仏山

至仏山

武尊山と笠ヶ岳(左手前)

燧岳と北の大ナギ

皇海山

越後三山(八海山・入道岳、中ノ岳、駒ヶ岳)

未丈ヶ岳

平ヶ岳からの滑走

三角点にいたとき、スキーヤーが一人やってきた。私が最高点でシールを外している間に、そのスキーヤーの方が先に出発。私は最後にもう一度、周囲を撮影してから滑走開始。風が弱まったので、ゴーグルをサングラスに戻し、薄いグローブをはめる。平ヶ岳の頂上直下の滑走がこの日のハイライト滑走。スムースな斜面を選んでショートターンを試み、雪が融けてでこぼこのところは大きくターンを刻み、苦労して登った斜面を一気に滑り降りる。コル1,890mに滑り込んでシールを貼る。この時、さきほどのスキーヤーに追いついたが、この後は追いつけなかった。滑走の疲れで休みたかったが、白沢山に登ってシールを外してから休憩。ナッツを食べたと思う。白沢山からは灌木の中の滑走。コル1,880mから分岐を往路のトラバースコースに入ると、なんと徒歩の二人連れが登ってきた。朝、尾瀬ヶ原で会った二人だと思うが、彼等は平ヶ岳まで行けただろうか。帰りはどうしたのだろう。ちょっと心配。

頂上からの滑走

白沢山への登り返し

1,920m峰頂上

1,911m峰の合流点

トラバースコースを大きく回ってコル1,790mに着き、シールで登り返し。スキーヤーはもうはるか先を登っている。1,920m峰までの登り返しは長く感じた。狭い頂上にようやく到着し、シールを外してから休憩していると、なにやら話し声が聞こえる。コル1,890mまで滑り降り、1,911m峰までわずかな距離をスキーを担いで歩いて登ると、果たしてその声の主がいた。どうやらここにテント泊し、翌日に平ヶ岳まで行くらしい。私が休憩しているときにパーティの一人が話しかけてきた。彼等は関西からやってきて、翌日は平ヶ岳、二日後には景鶴山に登る計画で、翌日の天気を心配していた。翌日は晴れたと思うが、二日後は雨が降ったのではなかろうか。

1,911m峰からの林間滑走

尾根取付き点に滑り込む

1,911m峰からは尾根取付きまでノンストップの滑走、と思ったが、そんなに楽ではなく、狭い所を慎重に通過し、わずかだが何度もでてくる登り返しをこなし、調子に乗って滑っていて間違いに気づいて引返し、疲れてきた終盤は往路トレースを外れないよう滑走。そして眼下に尾瀬ヶ原が見えてきて、ついに尾根取付き点にさっそうと滑り込む。と思ったら深雪にスキーをとられてあえなく転倒。なんたることだ。誰も見てなかったよな、とあたりを見回すと、誰もいない。スキーを外して立ち上がり、ザックを下ろして横になって休憩。ここからはビンディングのかかとを外して滑り歩き。山ノ鼻までわずかな傾斜があるので、割と滑る。

夕方の燧岳

戻ってきた山ノ鼻

柳平の池の脇は、往路よりも高いところをトラバース。渡り切ったところでザックを下ろして休憩。これでもう難場はない。夕方の山ノ鼻に着くと、テント村は夕食の真っ最中。朝、朝食を食べていたパーティは缶ビールで乾杯していた。楽しそうだ。びしょびしょになったシールを貼り、ヘッドランプを出しておいて山ノ鼻を出発。もう薄暗くなってきて、歩いている人もいない。下部の平らなところを歩き切り、最初の坂を登った先あたりで休憩。足は動くが腰が痛い。ヘッドランプ点灯。この後、更に2度休憩をとるが、ヘッドランプを消すと空には満点の星。周囲の森の上まで夜空いっぱいに星が輝いている。こんなのが見れるのは山に登った時だけだ。山登りバンザイ!ヘッドランプだと視界が限定され、とくに下りになるところが分かりにくい。鳩待峠へのルートはいくつかあったが、下りを見つけられずに登りトレースばかりをたどり、ずいぶん東に寄ったルートに乗って鳩待峠に着く。

駐車場に戻り、ゆっくり片づけて車に入り、暖房をつけて温まり、DVDを見て少し休憩。それからガスコンロを出して湯を沸かし、ラーメンと野菜スープを食べたと思う。風呂に入れないので気持ち悪いが、テントよりは数段よい。だが、これだけ疲労がたまり、腰や足が痛いのでは、翌日、景鶴山に登るのは難しかろう。そこで至仏山に登ることにする。