焼石岳  花と池と湿原の旅、そしてツーリング縦走

岩手県  焼石岳1,548m、東焼石岳1,507m、六沢山1,470m、泉水沼1,425m、天竺山1,318m(トラバース)  2020年7月17日

南本内岳1,492m、南本内川・源流沼1,450m、焼石沼1,245m、大森山1,149m(トラバース)  2020年7月18日

(焼石岳)日本二百名山

(南本内岳)岩手の山150

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D1

3時に大森山トンネル手前の登山口にMTBデポ。4時につぶ沼Pを出る。R397の向かいにある登山口から階段を登る。静かなブナの山旅。6時頃、えらく速いおばさんが長靴で追い越していく。

中沼合流点の少し手前からいきなり現われたのはおおぶりのキンバイソウ。普通サイズのキンポウゲが咲き乱れる道を進んで銀名水。

そこから焼石岳まではまさに花と池と湿原の道。今度のおおぶりの黄色い花はリュウキンカ。タテハチョウがヒオウギアヤメにとまっている。

残雪の間の木道からいったん林の道を進んでいて、ひょっこりキヌガサソウに出会う。おおきな葉っぱの中心に巨大な花が一輪。この花を見るのは初めてだが、そこにはこの一輪だけが咲いていた。

湿原台地(姥石平)の平坦な道に上がると、ややくたびれた木道沿いに花がたくさん。赤いフウロに白いハクサンイチゲとゴゼンタチバナ。下を向いているのはオノエラン。

霧に隠れていた焼石岳が次第にに見えてくる。平坦な台地の先に横岳と並んでいる焼石岳。泉水沼の奥にゆったりと立っている焼石岳。これらこそがいちばん焼石岳らしいイメージだろう。それらのイメージを再び見ることができて幸せだ。

そこから焼石頂上までも花の道。ナナカマドの白い花、咲き残りのショウジョウバカマ、そして小さなヒナザクラの群落、その先に赤いイワカガミ、咲き残りのチングルマ、赤白のツガザクラ、黄色いウサギギク、そして白いウスユキソウ。

そうして十数年ぶりの焼石岳頂上に到達。巨大な一等三角点と頂上標識。さっきまでいた泉水沼はまるで小さく見えている。そのときが一番晴れていて、南には横岳、西の秋田県側には焼石沼と三界山、縦走路の先まで見えていた。焼石岳の北隣の南本内岳は平べったい山頂(最高点)の右端に尖った頂上が見えていた。

焼石岳から北に下る道は途中に岩石帯があり、ちょっと苦労。縦走路分岐まで下ると、南本内岳の右奥に鳥海山が浮かんでいた。

そこから金名水小屋まではしんぼうの山旅だったが、そこも花と池と湿原の世界だった。姥石平分岐までは湿原が広がり、ここにも大振りのトウゲブキに小さなヒナザクラ、縮れた花弁のイワイチョウ、そして咲き残りのチングルマ、赤いイワカガミ。

東焼石岳頂上は開けていて、縦走路尾根の北の眼下には湿原の中に三つの池が散らばっている。そこは数年前、北側から南本内岳に登った時、眼下に広がっていた天空の楽園のような風景だった。

ようやくたどり着いた次のピークには思いがけず六沢山の頂上標識があった。まだ湿原の広い斜面を下っていき、その道で思いがけず見つけたのはトキソウの小さなピンクだった。そしてようやく金名水小屋に到着。

小屋にザックを置き、天竺山の手前まで行ってみる。その金名水小屋から東の縦走路はやや荒れていて、手を使わないと登れない段差があった。だが、その段差の手前にはキヌガサソウが数輪咲いていた。少し黄色がかっていたが、大きな花がいくつも咲いているところは壮観。そして段差の先にはサンカヨウが数輪咲いていた。

D2

翌朝は小屋を出たのは4時過ぎ。風が強く霧がたちこめている。景色は見えないが、道脇の花を写していく。前日と同じ道なのに、この日はセンジュガンピを見つけた。

縦走路分岐にザックを置き、南本内岳に向かう。南本内岳までの道にはまた別の花と池と湿原の世界があった。分岐からすぐ先で小さなヒナザクラの群落の中を通過。その先の尾根を越える手前にリュウキンカとミズバショウがびっしり咲いている湿原があった。

尾根を越えて下っていくと、大きな南本内川・源流沼のほとりに出る。高度1,450mにあるこの池は100mx50mくらいの大きな池だが、近くまで来ないと見ることはできない。

最高点を越えて下っていくと湿原があり、そこで見つけたのは卍型をしたトモエシオガマ。霧と風の尾根に出て、突端にある南本内岳頂上に着く。今回は霧で視界はなかったが、ここまで来ることができて満足だった。頂上標識にタッチして往路を戻る。

縦走路分岐から西に下る道もまた花と池と湿原の道だった。そこはキンポウゲやハクサンチドリで埋まり、花を踏まないように歩けないほど咲き乱れていた。

林を抜けると大きな湿原(焼石沼の湿原)にでて、登山道から踏跡を100mほど南に行くと焼石沼のほとりに出る。焼石沼は実に大きな池(140mx90mくらい)ですがすがしい。黄色いキンポウゲでいっぱいの湿原の中にキンバイソウの群落があったので、キンポウゲの中を歩いてそこまで行ってみる。

三界山の西端のあたりで最初の渡渉。ちょっと厄介だったが、水面下の石も使ってなんとか渡れた。

大森山の東にあるトラバース起点(釈迦ざんげ)には雪道のときも来た覚えがある。トラバース路を進み、大森山トンネルへの尾根に乗る。三合目登山口Pへの分岐からはほぼ下りの楽な道。

大森山トンネル登山口は駐車場の西側のはずだったが、駐車場の東手前でR397に出る。こっちのほうがだいぶ近いが、入口に標識はない。車道を歩かないようにということか。

サイクリング・シューズに履き替えてMTBで出発。縦走路分岐からはずっと晴だったのに、トンネルを抜けると霧雨だった。

大森山トンネルからつぶ沼Pまでは全体的に下りだが、ところどころ登りがある。元気だったら登り返しもなんとかMTBで登れたと思うが、なにせ朝からの山歩きで疲れ切っていたのでそんなに踏めない。何度もMTBを降り、押して歩く。

つぶ沼まであと数kmのところで押し歩きからMTBに乗り、そこからつぶ沼入口まで走り切った。

大森山トンネルまでは車でもだいぶかかり、歩かないでMTBで走り切った登り区間もずいぶん長かったようだ。よくまあMTBで走ったなと思う(約17㎞)。根性だな。そして、トンネルを抜けると秋田側はやはり晴れていた。

 泉水沼の奥にゆったりと立っている焼石岳。これらこそがいちばん焼石岳らしいイメージだろう。それらのイメージを再び見ることができて幸せだ。
 焼石岳の北隣の南本内岳は平べったい山頂(最高点)の右端に尖った頂上が見えていた。
 登山道から踏跡を100mほど南に行くと焼石沼のほとりに出る。焼石沼は実に大きな池(140mx90mくらい)ですがすがしい。すぐ東にある焼石岳の頂上はやはり雲をかぶっているが、焼石沼のほとりは晴れていて心地よかった。
 小さなヒナザクラの群落
 焼石沼のほとりは晴れていて心地よかった。黄色いキンポウゲでいっぱいの湿原の中にキンバイソウの群落があった
 今度のおおぶりの黄色い花はリュウキンカ
 ひょっこりキヌガサソウに出会う。おおきな葉っぱの中心に巨大な花が一輪
 ここにも大振りのトウゲブキ
 思いがけず見つけたのはトキソウの小さなピンクだった
 卍型をしたトモエシオガマ
 ハクサンチドリ:縦走路分岐から西に下る道もまた花と池と湿原の道だった
タテハチョウ(イカリモンガ?)とヒオウギアヤメ
ウラジロヨウラク
泉水沼
縦走路の北に見下ろす三つの池
D1  3:02 大森山トンネルP、MTBデポ  4:07 つぶ沼P発  7:50 中沼分岐  8:30 銀名水小屋10:13 姥石平10:17 泉水沼11:09 焼石岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つぶ沼Pから7時間2分12:00 縦走路分岐12:49 東焼石岳分岐13:21 東焼石岳13:53 六沢山15:51 金名水小屋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・焼石岳から4時間42分16:20 天竺山・最接近16:45 金名水小屋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つぶ沼から12時間38分D2  4:26 金名水小屋発  7:01 六沢山  7:39 東焼石岳  8:57 縦走路分岐  9:11 南本内川・源流沼  9:32 南本内岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金名水小屋から5時間6分  9:52 南本内川・源流沼10:04 縦走路分岐11:13 焼石沼12:53 最初の渡渉点14:28 釈迦ざんげ(大森山トラバース起点)16:45 大森山トンネルP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金名水小屋から12時間19分16:58 大森山トンネルP発、MTB18:05 つぶ沼P・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大森山トンネルPから1時間7分                                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金名水小屋から13時間39分

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D1

7月の第三週に入り、天気マークが増えてきた。だが、晴れているのは北東北のみ。そこで、焼石岳縦走に行くことにする。水曜一日で準備したが、今回忘れたのはシュラフ・カバー。テント・シートは数日前に購入していたが、結局使わなかった。高速だと4,000円以上かかるので秋田からR105 利用の下道。道の駅十文字に泊まる。ここに泊まるのは三界山以来かな。広くてトイレも良く、ゴミも捨てられる。

深夜0時半に起き、2時に道の駅を出て、R392からR397を西に向かい、3時に大森山トンネル手前の登山口にMTBデポ。まっくらなので登山口がわかりにくかったが、駐車場の西端に登山道入口発見(実は駐車場の東側にもっと近い入口があり、翌日はそこを通って下山)。MTBは車道の北側の外、標識の土台のところにチェーン・キイで固定しておく。そこからつぶ沼までのR397の下りを翌日、MTBで下るのだが、登り返しがだいぶある。こいつはちょっと辛そうだと感じる。つぶ沼キャンプ場手前には巨大な駐車場(先客1台)があったが土の駐車場で濡れていたので、手前のあたりに駐車。トイレに寄り、4時につぶ沼Pを出る。予想通りもう夜が明けはじめ、ヘッドランプは不要。R397の向かいにある登山口から階段を登る。石沼の先の中沼登山口からの道との合流点までは花も少なく、静かなブナの山旅。5時前に水場を通過。ヤマアジサイにねじれたブナ。小さな白いのはアリドオシかな。5時半頃、金山沢川を渡渉。6時頃、えらく速いおばさんが長靴で追い越していく。6時半頃に最初の休憩。遅ればせながらザックカバーを付けるが、ザックはもうびしょぬれだった。岳山の脇を通過したはずだが、岳山に登る道には気づかなかった。樹間に一瞬、天竺山が見え、ようやく右下に大きな石沼が見えてくる。木々に遮られて全貌は見えないが長さ280mくらいありそうだ。花が増えはじめ、黄色いホトトギス、白いカラマツソウ、長い柄のショウマ。

中沼合流点の少し手前からいきなり現われたのはおおぶりのキンバイソウ。白や紫のハクサンチドリに咲き残りのタニウツギ。普通サイズのキンポウゲが咲き乱れる道を進んで銀名水。ここで二人目の男性が先に行く。銀名水の広場のところにベンチがあり、男性はそこで休んでいたが、私はその先にある銀名水小屋に寄ってみる。巨大な2階建ての小屋。トイレに寄りたかったが、中が板敷きだったので土足で入るのがためらわれた。そこから焼石岳まではまさに花と池と湿原の道。今度のおおぶりの黄色い花はリュウキンカ。白いスミレにオオバキスミレ、タテハチョウ(イカリモンガ?)がヒオウギアヤメにとまっている。少し大きめのマイヅルソウ。ミヤマセンキョウもたくさん咲いている。残雪の間の木道からいったん林の道を進んでいて、ひょっこりキヌガサソウに出会う。おおきな葉っぱの中心に巨大な花が一輪。この花を見るのは初めてだが、そこにはこの一輪だけが咲いていた。放射状の葉の上に花が一つの形はゴゼンタチバナを巨大にしたような感じだが、6枚の花弁に長いオシベをもち、優雅さをもっている。林を抜け、残雪の近くのややくたびれた木道を行く。残雪の道はやや荒れていたが人通りが出てきて、最初に会ったおばさんが立ち話をしていて、もう頂上まで行ってきたらしい。みんな今日は晴れると思って登ってきたのだろうが、この時はまだ頂上は晴れていなかったと思う。

湿原台地(姥石平)の平坦な道に上がると、ややくたびれた木道沿いに花がたくさん。赤いフウロに白いハクサンイチゲとゴゼンタチバナ。下を向いているのはオノエラン。数人の人たちが先に行き、霧に隠れていた焼石岳が次第にに見えてくる。天気予報は当たったようだ。姥石平の分岐標識のところには古い石仏。その少し先の泉水沼手前のベンチのところで2度目の休憩。一つ目のパンを食べる。平坦な台地の先に横岳と並んでいる焼石岳。泉水沼の奥にゆったりと立っている焼石岳。これらこそがいちばん焼石岳らしいイメージだろう。それらのイメージを再び見ることができて幸せだ。ベンチの奥にはウラジロヨウラク。

そこから焼石頂上までも花の道。ナナカマドの白い花、咲き残りのショウジョウバカマ、そして小さなヒナザクラの群落、その先に赤いイワカガミ、咲き残りのチングルマ、赤白のツガザクラ、黄色いウサギギク、そして白いウスユキソウ。尾根に上がったところから横岳に向かう踏跡があり、地図にも破線が描かれているが、ロープで閉鎖されていた。そこからの尾根沿いにはコメツツジ。そうして十数年ぶりの焼石岳頂上に到達。巨大な一等三角点と頂上標識。さっきまでいた泉水沼はまるで小さく見えている。そのときが一番晴れていて、南には横岳、西の秋田県側には焼石岳・西峰、北西の焼石沼と三界山、縦走路の先まで見えていた。岩手側は雲に霞んでいて、天竺山も見えていないが、焼石岳の北隣の南本内岳は平べったい山頂(最高点)の右端に尖った頂上が見えていた。

焼石岳から北に下る道は途中に岩石帯があり、ちょっと苦労。大きな岩の上の黄色ペンキの矢印をたどっていくと、えらく急な下りや段差のあるところがある。ここでも登ってくる人に出会う。ここに咲いていた黄色に橙色の入った花は大きな葉をしているのでミヤマダイコンソウらしい。縦走路分岐まで下ると、南本内岳の右奥に鳥海山が浮かんでいた。こんな天気なのに鳥海が見えるとは。鳥海はまだなお大量に残雪をまとっていた。縦走路分岐の四つ角で休んでいると西から登ってきたパーティがいた。たぶん3合目駐車場からなのだろうが、そこから岩石帯の道でなく、泉水沼まわりで焼石岳に登ることも考えていたようだが、分岐点で休んでからどちらに進んだのだろう。四つ角の南本内岳への道から降りて来て、姥石平分岐方面に下っていく人が数人いたが、たぶん焼石岳に登ってから南本内岳まで足を延ばしたのだろう。私は翌日に南本内岳に登る予定。そこから金名水小屋まではしんぼうの山旅だったが、そこも花と池と湿原の世界だった。姥石平分岐までは湿原が広がり、ここにも大振りのトウゲブキに小さなヒナザクラ、縮れた花弁のイワイチョウ、そして咲き残りのチングルマ、赤いイワカガミ。草原の道沿いにはさっきのミヤマダイコンソウ、時々小さなリンドウ、咲きかけのナノハナみたいなのはアキノキリンソウらしい。湿原の向こうに見える焼石岳の頂上。その上を歩いている小さな人影が見える。一瞬、霧が晴れ、横岳と焼石岳が並んで見える。

姥石平分岐から縦走路に向かい、4回目の休憩。だいぶ疲れてきていた。東焼石岳頂上は開けていて、縦走路尾根の北の眼下には湿原の中に三つの池が散らばっている。そこは数年前、北側から南本内岳に登った時、眼下に広がっていた天空の楽園のような風景だった。行く手の東側には雲が立ち込め、雲の上にピークが二つ並んでおり、手前が六沢山、奥が天竺山のようだ。アップダウンを越えていかないといけないが、あんまり下らないでほしい。いったん下り、登り返しではペースを落とさないとしんどい。足は動くので、心肺機能の問題。この半年間のトレーニングではまだ足りないらしい。縦走路で見たのはホツツジ、ムカゴトラノオやイワベンケイ。ようやくたどり着いた次のピークには思いがけず六沢山の頂上標識があった。六沢山を越え、ぼんやり見えていた天竺山も見えなくなり、霧の道を進むとそこにも花と湿原。少し傾いた木道で滑らないように気を付けて進むと、湿原には小さな池塘が散らばり、イワイチョウの白い花がそこかしこに咲いている。いくつかマイナーピークを過ぎ、この日最後の1,277m峰には標識が立っていて、牛形分岐とあるが、北に向かう道はヤブに閉ざされていて、歩けそうもなかった。そのピークをすぎると白っぽい紫の花(ウルイ=オオバギボウシ?)、白いフウロにシシウド、それにピンクのツリガネニンジンの群落、赤白のツガザクラ。大きな湿原に出て、そこには水を含んすっかりしおれたワタスゲ。小屋はもうすぐのはずだが、まだ湿原の広い斜面を下っていき、その道で思いがけず見つけたのはトキソウの小さなピンクだった。黄色い花はキンコウカだろう。そしてようやく金名水小屋に到着。

金名水小屋も巨大な二階建ての小屋で、地上階を含めると三階建てに見える。頑丈なコンクリ造りのベランダに上がると重い鉄製のスライド・ドアがあり、それを開けるともう一つガラス張りのスライド・ドアがある。廊下の左が吹き抜けの部屋で、廊下の奥には水洗トイレ。夏用と冬用の二つがあったが、夏用は廊下に置かれたポリバケツから水をタンクに補給し、二つのコックを使って水を流す仕組みになっていた。ポリバケツに2回、水を補給したが、雨水の補給方法が良くわからず、もったいないが金名水を汲んでおいた。金名水は小屋のすぐ前にあり、斜面に空いた穴から水が勢いよく噴き出していた。その強烈な水の勢いでは細菌も何もいないだろう。その水の勢いから水バッグに汲むのはちょっとやっかいだった。この日は水を汲む前に、小屋にザックを置き、天竺山の手前まで行ってみる。その金名水小屋から東の縦走路はやや荒れていて、深くえぐれた沢筋には手を使わないと登れない段差があった。この日初めてガーデン・グローブをはめて越えていく。だが、その段差の手前にはキヌガサソウが数輪咲いていた。少し黄色がかっていたが、大きな花がいくつも咲いているところは壮観。そして段差の先にはサンカヨウが数輪咲いていた。サンカヨウを見たのはここだけだったから、来た甲斐はあった。縦走路は天竺山頂上直下200mくらいのところまでで、そこから天竺山までは道はなし。微かな入口らしきものはあったが、灌木ヤブに覆われていて、相当に厳しそうだ。止めておく。小屋に戻り、金名水を汲み、小屋の中で水洗トイレを使い、快適な一夜を過ごす。いつもの野菜スープにアルファ米をいれたぞうすいをゆっくり食べる。シュラフ・カバーを忘れていたが、ダウンを着こむと全く寒くはなかった。新調したエア・マットもまずまず。ちょっと寝にくいが、小さくて軽いのは捨てがたい。

D2

翌朝は2時半のアラームで2時45分くらいに起き、長崎ちゃんぽんのカップ麺とカフェオレをゆっくり食べ、小屋を出たのは4時過ぎ。もう外は明るくなっていたが、風が強く霧がたちこめている。ソックスの上にコンビニ袋を履き、レインウェアを着こんで滑り止めのついた木道をゆく。雨ではないが、風が霧を運んでくるので風上に向くと雨粒をメガネにかぶってしまう。イクシーもレンズに水がついてしまうので、最初の休憩のときにタフに変更。隙間のあるツーリング用ヘルメットにカバーをかける。景色は見えないが、道脇の花を写していく。前日と同じ道なのに、この日はセンジュガンピを見つけた。郊外の車道脇でよく見かけるような白い花はクロヅルやイワオウギというらしい。アカツメクサに似ている大きな葉っぱはヒメツルソバ?白いのはコバイケイソウ。六沢山から東焼石岳に来ると風が強く、姥石平まで降りてから2回目の休憩。靴とズボンだけでなくレインウェアの上もすっかり濡れていて、全く見えない南本内岳に行くのは止めようかと思ったが、思い直す。ここまで来れるチャンスはもうないかもしれない。ところが、こんなにひどい天気なのに、焼石岳の縦走路分岐まで行くと人に出会った。頂上と岩手側は霧雨だが、秋田側はなんと晴れていた。不思議な天気だった。

縦走路分岐にザックを置き、南本内岳に向かう。どうせ何も見えないのだが、ここまで来たのだから寄っておかなければ。だが、南本内岳までの道にはまた別の花と池と湿原の世界があった。分岐からすぐ先で小さなヒナザクラの群落の中を通過。その先の尾根を越える手前にリュウキンカとミズバショウがびっしり咲いている湿原があった。残念なことにそれらの花の近くまでは近寄れなかった。遠くから眺めて我慢する。尾根を越えて下っていくと、大きな南本内川・源流沼のほとりに出る。高度1,450mにあるこの池は100mx50mくらいの大きな池だが、尾根に遮られて焼石岳からは見えず、近くまで来ないと見ることはできない。池は満水だが、池からはほとんど水は流れ出ていない。たぶん伏流で流れ出ているのだろう。文字を読めない古い木柱が一本立っており、その先の道もミヤマダイコンソウがいっぱい。登り返した南本内岳の最高点付近に石像のような形をしたものがあるが、それは文字の読めない石板の上に石が置いてあるもの。やっぱり石仏かな。最高点を越えて下っていくと湿原があり、木道の先に分岐表示。左が西和賀町への登山道、右が南本内岳頂上。そこで見つけたのは卍型をしたトモエシオガマ。その先でも頂上から降りてきた男性に会い、霧と風の尾根に出て、突端にある南本内岳頂上に着く。狭い頂上には大きな頂上標識が立っている。以前、ここに来たのは4年前。その時は眼下に天空の楽園が広がっていた。今回は霧で視界はなかったが、ここまで来ることができて満足だった。頂上標識にタッチして往路を戻る。

縦走路分岐から西に下る道もまた花と池と湿原の道だった。そこはキンポウゲやハクサンチドリで埋まり、花を踏まないように歩けないほど咲き乱れていた。白い花はシロバナヘビイチゴ、小さな黄色いヘビイチゴの群落も見た。途中で登ってくる二人に会うが、レインウェア姿の私に対し、彼らはそんなものは着ていない。そういえば、縦走路分岐付近で会った人たちもレインウェアを着ていなかったような気がする。背後を振り返ると焼石岳や南本内岳は霧に霞んでいるのに、行く手の緑の斜面はまるで晴れている。やがて灌木の中の道となり、時々視界が開けると北西方向に三界山が見える。三界山に登ったのも4年前。そのときは雪山だったが、たどった斜面は鮮明に覚えている。夏道はこの山の南を通過していく。沢音が近くなり、水浸しの道を水にはまらないように歩き、林を抜けると大きな湿原(焼石沼の湿原)にでてこの日3度目の休憩。登山道から踏跡を100mほど南に行くと焼石沼のほとりに出る。焼石沼は実に大きな池(140mx90mくらい)ですがすがしい。すぐ東にある焼石岳の頂上はやはり雲をかぶっているが、焼石沼のほとりは晴れていて心地よかった。黄色いキンポウゲでいっぱいの湿原の中にキンバイソウの群落があったので、キンポウゲの中を歩いてそこまで行ってみる。登山道のザックのところに戻り、今回初めて横になって休む。まあ、晴れていて気持ちよかった。

その先の渡渉点が水量が多いと渡れない(と小屋の地図に書いてあった)のが気になっていたが、渡渉点は焼石沼からまだだいぶ先だった。そこは胆沢川の左岸だったが、すぐ右横に三界山がそびえ、カメラをイクシーに戻し、長命水というのを汲んでいく。斜面に据え付けられた二つの箱の穴から、金名水ほどではないが、水が勢いよく出ていた。そこからしばらく沢沿いの林の中の道を下り、小さな湿原(柳瀞)で4度目の休憩。三界山の西端のあたりで最初の渡渉。ちょっと厄介だったが、水面下の石も使ってなんとか渡れた。ほっとしたが、渡渉点はその先にも2回、計3回渡った。花はだいぶ減ったが、黄色と白のニガナが道を埋めていた。この花は夜はしぼんでいるが、晴れると満開になってくれる。

最後の渡渉の先の縦走尾根への登り返しがきつかった。ようやく尾根上に達して楽になるが、そこからは肩も痛くなってきたので休憩インターバルが短くなっていく。そこは数年前に雪尾根を三界山まで行ったルートと同じだが、南北に四つあるピークの北の二つはパスし、南から二つ目の1,070m峰に上がり、一番高い1,080m峰は(頂上を通過する道もあったが、)南側をトラバースしていく。今回は全く林の中でほとんど視界なし。1回だけ、わずかに大森山が見えた。

大森山の東にあるトラバース起点(釈迦ざんげ)には雪道のときも来た覚えがある。そこで横になって休憩してからトラバース路を進み、大森山トンネルへの尾根に乗る。三合目登山口Pへの分岐からはほぼ下りの楽な道だが肩が痛むので数回休憩。途中にある980m峰は(登り返しと急な下りが心配だったが、)西側をトラバースしていたので全く楽だった。ピンクのギンリョウソウみたいな花、葉を大きく広げているのはコシアブラだろうか。トンネルの少し手前の展望所もやはり雪道のときに寄った記憶あり。焼石岳は雲の中だが、眼下に緑の谷が雄大に広がっていた。ようやく大森山トンネル西口に下る右折標識があり、最後のがんばり。それはずいぶん急な下りで、歩きにくい沢越え箇所がいくつかあった。駐車場の手前で大きく左に迂回しているのは正面に高い土手があるからだろう。その先、大森山トンネル登山口は駐車場の西側のはずだったが、駐車場の東手前でR397に出る。こっちのほうがだいぶ近いが、入口に標識はない。車道を歩かないようにということか。

MTBをデポしておいた車道の北側のところに今度はザックと登山靴とスティックをデポし、サイクリング・シューズに履き替えてMTBで出発。駐車場には車が一台あり、そこにちょうど二人連れ(縦走路分岐の手前ですれ違っていた)が戻ってきた。縦走路分岐からはずっと晴だったのに、大森山トンネルの中は濡れていて、トンネルを抜けると霧雨だった。こうとわかっていたらレインウェアを着てくるんだったが、もう遅い。トンネルを抜けた先の橋の上から北に大きな谷が広がっており、最奥に見えているのが大森山らしい。大森山トンネルからつぶ沼Pまでは全体的に下りだが、ところどころ登りがある。元気だったら登り返しもなんとかMTBで登れたと思うが、なにせ朝からの山歩きで疲れ切っていたのでそんなに踏めない。下りの勢いをつけて5、6段で踏み込み、足を休めながらだとなんとか越えられるが、一度スピードが緩んで1、2段の踏み込みになると息が続かない。何度もMTBを降り、押して歩く。GPSを見てもまだだいぶあるなあ。1回休憩してペットポカリを飲むが、あとはMTBで走るか、押して歩いた。車があまり来なかったのが幸い。反対車線には数台、背後からは2台くらい。2回目は車道のだいぶ内側を走っていて抜かれた。つぶ沼まであと数kmのところで押し歩きからMTBに乗り、そこからつぶ沼入口まで走り切った。

ようやくつぶ沼Pに着くとそこはもう小雨模様。駐車場は土なので、車を舗装路まで出してMTBを収納。とりあえず着替えてすぐに車を出し、ザックと登山靴とスティックの回収に向かう。大森山トンネルまでは車でもだいぶかかり、歩かないでMTBで走り切った登り区間もずいぶん長かったようだ。よくまあMTBで走ったなと思う(約17㎞)。根性だな。そして、トンネルを抜けると秋田側はやはり晴れていた。

この日はジュネス栗駒スキー場のやまゆり温泉ホテル・ブランに入り(受付は19時半だと云われ、もう過ぎていたが、入れてくれた。450円)、二日間の疲れを洗い流す。

 つぶ沼登山口

 

ねじれたブナ


一瞬見えた天竺山


ホトトギス


カラマツソウ


石沼


キンバイソウ


白いハクサンチドリ


 

タニウツギ

 

ハクサンチドリ


キンポウゲ


銀名水小屋


リュウキンカ


キンポウゲの群落


タテハチョウとヒオウギアヤメ


白いスミレ


 

残雪と木道


リュウキンカの群落

マイヅルソウ


オオバキスミレ


ミヤマセンキョウ


キヌガサソウ


湿原台地に上がる


ややくたびれた木道


 

フウロ

 



ハクサンイチゲ


ゴゼンタチバナ


赤い筋のフウロ


オノエラン


姥石平の石仏


姥石平から見る焼石岳


泉水沼から見る焼石岳


 

ウラジロヨウラク

 


ナナカマド


ショウジョウバカマ


ヒナザクラ


イワカガミ


咲き残りのチングルマ


ツガザクラ


ウサギギク


 

ウスユキソウ


尾根上から見る横岳


コメツツジ


焼石岳の頂上


一等三角点


焼石岳の頂上標識


 焼石岳頂上から南西の景観

 焼石岳頂上から北西の景観

 

焼石沼

 


 


焼石沼と三界山


ミヤマダイコンソウ


 北から見る焼石岳

 

トウゲブキ

 

リンドウ


焼石岳


縦走路分岐の標識


 

鳥海山


南本内岳


南本内岳の頂上


イワイチョウ


咲き残りのチングルマ


湿原の向こうの焼石岳


東焼石岳への分岐


 横岳と焼石岳

 焼石岳頂上の人影

東焼石岳の頂上


六沢山(右背後に雲に隠れた天竺山)


縦走路の北に見下ろす三つの池


ホツツジ


ムカゴトラノオ


イワベンケイ


六沢山の頂上標識


 

雲間の天竺山

 

牛形分岐峰1,277m


牛形分岐1,277mの標識


白っぽい紫の花(ウルイ=オオバギボウシ?)


白いフウロ


シシウド


ツリガネニンジンの群落


ツガザクラ


 

トキソウ?

 

キンコウカ


ワタスゲ


金名水小屋


キヌガサソウ


サンカヨウ


金名水


D2

 

滑り止めのある木道

 

クロヅル

 

イワオウギ?


センジュガンピ


赤い花(ヒメツルソバ?)


コバイケイソウ


池塘


リュウキンカとミズバショウの池塘


ミズバショウ


南本内川・源流沼


 

南本内岳・最高点の石仏

 

トモエシオガマ


南本内岳の頂上標識


ハクサンチドリ


キンポウゲの群落


シロバナヘビイチゴ


ヘビイチゴの群落


水浸しの道


 

焼石沼と霞む焼石岳

 焼石沼

 

キンバイソウの群落

 


キンポウゲの群落と焼石沼

長命水


ニガナの道


三界山


最初の渡渉点


 樹間の大森山

 



ピンクの花(ショウキラン)


コシアブラ?


R397に出る


大森山トンネル東口から見る大森山


R397をMTBで走る


霧雨のR397を走ってつぶ沼までもう少し