曲甲(まがりかぶと) 和賀連峰の怪峰、紅葉と七変化

秋田県  曲甲1,012m、大甲山(おおかぶと)1,108m、薬師岳1,218m  2013年10月19日

(曲甲)旧秋田県の山・脚注

(薬師岳)秋田県の山

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歩いても歩いても

目指す山頂ははるか先

岩峰を登り

沢を渡り

果てしなき道をゆく

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和賀連峰にある曲甲を見たのはもう10年前。そのときから登ろうと決めてマップも用意していたが、ついにその日がやってきた。ヤブだろうと思っていた登山口すずみ長根台への道はしっかりしており、稜線の登山道も整備されていた。しかし、木柱の立っている曲甲へは30分強のヤブこぎとなった。三等三角点のある曲甲の頂上に立ち、鳥海山から薬師岳、和賀岳を俯瞰する。すばらしい青空に秋の黄葉。そして劇的に姿を変え続けた曲甲は、すさまじく個性的な山だった。

真木渓谷の大倉岩のところから正面に鉤爪の曲甲が見えた(1/11)。10年前に初めてこれをみたとき、一目で曲甲に違いないと思った。樹上にそびえるなんともいかめしい、印象的な形。

駐車場から林道を歩く。やがて樹間に黄葉の曲甲が見えてくる(2/11)。もう鉤爪の姿ではないが、まだまだ遠いな。

「すずみ長根口」からは尾根道となり、薬師岳と曲甲を見ながらの登りとなる。曲甲はふっくらした姿(3/11)になり、薬師岳の南斜面には岩肌が見えていて、すぐそれと分かるアクセントになっている。

丸くなった曲甲が近付き(4/11)、その頂上に木柱が立っているのが見える。主稜と曲甲をつなぐ吊尾根は主稜の最高点に起点があり、そこには「甲山分岐」の標識があった。しかし、肝心な曲甲への道がない。分岐の少し手前からヤブにもぐりこみ、テープのところに達すると、そこには微かな踏跡があった。目指す曲甲は丸い頭の北側が切れ落ちている(5/11)。

曲甲の頂上は短い笹と潅木。短い笹と潅木の中に古い木柱が立っている。木柱の下に三等三角点があった。周囲を何度も撮影。確かに雲上の展望所である。南には風鞍の向こうに真昼岳らしき山が見えている。

主稜を北に進むと、背中から見ていた曲甲を左横から見るようになり、再び鉤爪の曲甲を見る(6/11)。紅葉の丸い背中の裏に真っ黒な鉤爪。

主稜が大甲山との間のコルに下っていくと、尖り頭の曲甲を正面斜め左から見上げる位置となる(7/11)。獲物を見下ろす黒い怪物。大甲山に登るに従い逆光の曲甲(8/11)は小さな黒い塊となり、目立たなくなっていく。

大甲山から下り、薬師岳に向かう。曲甲は薄いプレートの姿(9/11)になっており、かすかに虹がかかっている。和賀岳の山々の黄葉が夕日に輝きとても美しい。風は冷たく、薬師が近付くと強くなってきた。

薬師から西に下ると、左側をすっぱりとナイフで切ったように見える曲甲(10/11)、その向こうに複雑な形の真昼岳、北にはまだ訪れたことのない白岩岳。

薬師の西の尾根から林の斜面に下ると夕日がささなくなって暗くなり、倉方の標識がある。夕日をあびている曲甲は再び丸い背中になっていた(11/11)。

 主稜を北に進むと、背中から見ていた曲甲を左横から見るようになり、再び鉤爪の曲甲を見る(6/11)。紅葉の丸い背中の裏に真っ黒な鉤爪。
 和賀岳の山々の黄葉が夕日に輝きとても美しい。
鳥海山
風鞍
曲甲の頂上
 目指す曲甲は丸い頭の北側が切れ落ちている(5/11)。
 尖り頭の曲甲を正面斜め左から見上げる位置となる(7/11)。獲物を見下ろす黒い怪物
 曲甲は薄いプレートの姿(9/11)になっており、かすかに虹がかかっている。
  8:47 駐車場発  8:59 甘露水口10:01 すずみ長根口11:01 甲・中ノ沢分岐11:32 甲山分岐12:18 曲甲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り3時間31分12:40 曲甲発14:20 大甲山15:44 薬師岳16:19 倉方17:04 ブナ平17:25 甘露水口17:39 駐車場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周回8時間52分

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盛岡インターで降りると霧。秋田駒も雲をかぶっていた。が、秋田に入ると次第に青空が広がり、秋田駒の雄岳の三角形を見る。真木渓谷の入口の案内によると、和賀、薬師、曲甲その他の山がたくさん記載してあり、登山道もあるようだ。真木渓谷の道は舗装路から砂利道となるが、ところどころにモニュメントと説明書きがある。「寺屋敷」「余り滝」「ももし坂」「袖川立岩」(朝は寄らず)「大倉岩」。その大倉岩のところから正面に鉤爪の曲甲が見えた。なんともいかめしい、印象的な形。10年前はこのうち「ももし坂」「袖川立岩」「大倉岩」に寄り、曲甲を見ている。七瀬沢林道の分岐を過ぎ、「小路又」。10年前の「小路又」に比べ、字がだいぶ薄くなった。

甘露水登山口のだいぶ手前に駐車場があり、数台が停めてある。10年前もここに停めたが、通行止めのゲートは無く、「この先車両の通行は可能ですが駐車場がありませんので、ここの駐車場をご利用ください」との標識が立っていた。当時の林道は整備良好。今回は正面に立派な避難小屋兼トイレが立っていたが、林道はだいぶ傷んでいる。駐車場から林道を歩く。林道はすぐ先に九十九折りがあり、これは10年前に歩いて登っているときにライトバンが追い抜いて行った記憶がある。林道の沢筋が崩壊しているところがあり、細い丸太3本の上を歩いて渡る。10年前と違い、これではもう車は通れないな。林道の左にある甘露水口は10年前と同じ。案内標識は新しくなっている。今回は林道を直進。この先の林道は荒れていた記憶があったが、変わらない状態で続く。林道の下の沢は険しくなり、滝がかかっているのが見える。あれは越えられそうもないな。林道は本流の右岸を進むが、その支沢を一つ徒渉。水量が多く、越えられるか不安だったが、石をうまく並べてあり、スティックでバランスをとって渡る。石の上で滑ったら危ないが、大丈夫だった。

もう一つの支沢の徒渉。浅瀬になっているところに石と流木があり、うまく渡れる。この先、林道は荒れ、登山道程度となり、九十九折りに山を登っていくが、新しい道もたくさんあり、今でも人が入っているようだ。やがて樹間に紅葉の曲甲が見えてくる(2/11)。もう鉤爪の姿ではないが、まだまだ遠いな。林道の左に「すずみ長根口」の標識が倒れている。古いのと新しいのがあるが、両方とも倒れている。ガイドには「しじみ長根口」とあったが、「すずみ長根口」とある。標識は倒れているが、登山道はしっかりしているようだ。この分なら曲甲にも登山道ができているかもしれない。そこからは尾根道となり、薬師岳と曲甲を見ながらの登りとなる。曲甲はふっくらした姿になり(3/11)、薬師岳の南斜面には岩肌が見えていて、すぐそれと分かるアクセントになっている。やがて尾根道は開けてきて、紅葉に染まる曲甲を見ながらの歩きとなる。

「甲・中ノ沢分岐」という標識が倒れている。分岐を右に行くと中ノ沢岳まで1.2km、分岐を左で甲分岐まで0.4km。ガイドにある県境主稜線と思われる(たぶん、県境主稜線手前にあるもう一つの分岐)。アイポッドのバッテリーがなくなり、充電器を取り出して充電。南の空に冠雪した鳥海山が見えており、その手前に見える山は風鞍と思われる。尾根を登ると視界は更に開け、風鞍の左に中ノ沢岳が見えてくる。西には谷と市街地、すぐ近くには丸くなった曲甲(4/11)が近付き、その頂上に木柱が立っているのが見える。主稜と曲甲の間にはヤブの尾根があり、尾根に沿ってテープが貼ってあるのが見える。尾根の向こうに大甲山も見えてきた。主稜と曲甲をつなぐ吊尾根は主稜の最高点に起点があり、そこには「甲山分岐」の標識があった。その道標から南に1km先に中ノ沢山、大甲山までは1.3km。しかし、肝心な曲甲への道がない。標識のところから微かな踏跡があるように見え、そこを進んでみるが踏跡はすぐに途絶えてしまった。引き返し、他に道は無いか探すが、見当たらない。分岐の少し手前からヤブにもぐりこみ、無理やりに尾根まで進む。ようやくテープのところに達すると、そこには微かな踏跡があった。

曲甲への吊尾根からは、ところどころで視界が開け、北には大甲山の右奥に和賀岳も見えてきた。和賀岳の東には高下岳と根菅岳が見える。吊尾根には二つのマイナーピークがあり、途中でウォーキング・スティックをザックに収納する。目指す曲甲は丸い頭の北側が切れ落ちている(5/11)。コルまでだいぶ下り、笹や潅木を掴んで急坂をよじ登る。曲甲の頂上は短い笹と潅木。踏跡も頂上広場も全くなし。短い笹と潅木の中に古い木柱が立っている。プレートが剥がれて文字はなし。しかし、木柱の下に三等三角点があった。周囲を何度も撮影。確かに雲上の展望所である。白い岩肌が目立つ薬師岳の向こうに頂の平らな白岩岳がわずかに見え、その左には小滝山。東には盛岡周辺の山、その向こうには微かだが三角形の早池峰が見えている。鋭角の山は南昌山、その手前の大きなのが東根山だろうか。南には風鞍の向こうに真昼岳らしき山が見えている。鳥海はだいぶ霞んできた。低潅木の中に座って休憩。朝沸かしたホットレモンを飲む。今シーズンは初めて。

ヤブ吊尾根を辿って甲山分岐に戻る。結局、最初に辿ろうとした踏跡に出る。最初のプランではここで往路を引き返す予定だったが、登山道は整備されており、ものすごく良い天気なので、大甲山方面に進む。主稜を北に進むと、背中から見ていた曲甲を左横から見るようになり、再び鉤爪の曲甲を見る(6/11)。紅葉の丸い背中の裏に真っ黒な鉤爪。この後も姿を変え続けた曲甲は、すさまじく個性的な山だった。主稜が大甲山との間のコルに下っていくと、尖り頭の曲甲(7/11)を正面斜め左から見上げる位置となる。獲物を見下ろす黒い怪物。コルは意外に広い草原になっていて、そこから大甲山への登り返し。南東方面に見える山々は駒頭山周辺かもしれない。大甲山に登るに従い逆光の曲甲は小さな黒い塊となり(8/11)、目立たなくなっていく。大甲山の頂上も低い笹ヤブで、登山道は最高点のやや西側を通り、やや北側に頂上標識がある。三角点はなし。甲山分岐の標識には大甲山まで1.3kmとあったが、ここの標識には甲山分岐まで1.7km、薬師分岐まで1.8kmとある。歩いた感じは1.3km。標識も甲山分岐の方が新しい。ザックを下ろし、二度目の休憩。ホットレモンの残りを飲み干す。充電完了したアイポッドを起動し、ピンクフロイドを聞く。

大甲山から下り、薬師岳に向かう。曲甲は薄いプレートの姿になっており(9/11)、かすかに虹がかかっている。尾根の北の眼下に大きな滝が落ちているのが見える。和賀川の源流だ。滝の音も聞こえる。遠いので大きさのイメージが掴めないが、20mくらいはあるかもしれない。いや、最初に見えたのは滝の上段だけで、その下に下段があるのが見えてきた。50mくらいあるのかもしれない。やがてその二段大滝の全貌が見え、狭いゴルジュに落ちているのが見えた。ゴルジュの水が深ければ近付くこともできまい。近づいたとしても、垂直に近い壁が待っている。その上流の一部も見えていて、そこにも滝がかかっている。背後には曲甲が遠く小さくなり、大甲山は中央がくびれた形で見えている。和賀岳の山々の黄葉が夕日に輝きとても美しい。風は冷たく、薬師が近付くと強くなってきた。

薬師分岐に着くと標識があり、大甲山まで1.9kmとある(大甲の標識には1.8kmだった)。薬師岳までの0.2kmを往復する。薬師岳の頂上には、10年前と同様、祠(薬師堂?)があったが、昔の写真を見ると、10年前のものとは違うもののようだ。今回は白い屋根だが、10年前は青かった。頂上標識は10年前と同じもの。「和賀岳自然環境保全地域」の大きな看板も10年前同様。三角点はない。薬師頂上から見る和賀岳には雲がかかり始めていた。10年前は最初、和賀岳には雲がかかっていて見えず、次第に晴れてきたが、今回は晴天の下に薬師平、小杉山、小鷲倉から和賀岳までの主稜が黄葉に染まって美しく見えている。祠にお参りし、下山にかかる。薬師から西に下ると、左側をすっぱりとナイフで切ったように見える曲甲(10/11)、その向こうに複雑な形の真昼岳、北にはまだ訪れたことのない白岩岳。

薬師の西の尾根から林の斜面に下ると夕日がささなくなって暗くなり、倉方の標識がある。夕日をあびている曲甲は再び丸い背中になっていた(11/11)。尾根への取付の位置。滝倉避難小屋まで1.0kmとあるがそんなところに小屋があったかなあ。避難小屋の標識はあったが、避難小屋はなし。10年前にも無かった。すぐ先に水場がある。明るいうちに駐車場に戻れそうもなくなり、ブナ台でヘッドランプを取り出す。曲沢分岐というのは、小路又口までの登山道の分岐のことだが、10年前にはもう廃道の状態だった。今回は日が暮れてしまい、様子は分からず。駐車場に着き、トイレに寄ってみると、新築で宿泊可能で、奥に水洗トイレのある避難小屋だった。最近建てられたのだろう。翌日の予定とこの日の温泉と道の駅をカーナビ入力して出発。真っ暗な林道を走り、静かな市街地の中にある中里温泉に入る。

和賀連峰にある曲甲を見たのはもう10年前。そのときから登ろうと決めてマップも用意していたが、ついにその日がやってきた。ヤブだろうと思っていた登山口すずみ長根台への道はしっかりしており、稜線の登山道も整備されていた。しかし、木柱の立っている曲甲へは30分強のヤブこぎとなった。三等三角点のある曲甲の頂上に立ち、鳥海山から薬師岳、和賀岳を俯瞰する。すばらしい青空に秋の黄葉。

真木真昼自然公園の案内

盛岡インターで降りると霧。秋田駒も雲をかぶっていた。が、秋田に入ると次第に青空が広がり、秋田駒の雄岳の三角形を見る。真木渓谷の入口の案内によると、和賀、薬師、曲甲その他の山がたくさん記載してあり、登山道もあるようだ。真木渓谷の道は舗装路から砂利道となるが、ところどころにモニュメントと説明書きがある。「寺屋敷」「余り滝」「ももし坂」「袖川立岩」(朝は寄らず)「大倉岩」。その大倉岩のところから正面に鉤爪の曲甲が見えた。なんともいかめしい、印象的な形。10年前はこのうち「ももし坂」「袖川立岩」「大倉岩」に寄り、曲甲を見ている。七瀬沢林道の分岐を過ぎ、「小路又」。10年前の「小路又」に比べ、字がだいぶ薄くなった。

寺屋敷の案内

初めて見えた鉤爪の曲甲(1/11)

小路又の案内

避難小屋

駐車場


甘露水口の標識

最初の渡渉点

二つ目の渡渉点

作業道を行く

すずみ長根口の標識


紅葉の曲甲(2/11)

岩肌の薬師岳

ふっくらした曲甲(3/11)

大きなブナ

甲・中ノ沢分岐


冠雪の鳥海山

風鞍

風鞍と鳥海山

紅葉

丸い曲甲(4/11)

中ノ沢岳

 南の景観: 中ノ沢岳、風鞍、黒沢大台山、鳥海山、大台、黒森山

丸い曲甲と吊尾根、その向こうに薬師岳

「甲山分岐」の標識、曲甲への道はない

甲山分岐から見る中ノ沢岳

 北の景観: 北側が切れ落ちた曲甲、薬師岳、小杉山、大甲山、和賀岳、高下岳

北側が切れ落ちた曲甲(5/11)


曲甲の頂上

曲甲の三角点

 曲甲から南の景観: 甲山分岐、中ノ沢岳、真昼岳、風鞍、黒沢大台山、鳥海山、大台、黒森山

曲甲から北の景観: 薬師岳、小杉山、大甲山、和賀岳、高下岳

鉤爪の曲甲(6/11)(背景に白岩岳)


尖がり頭の曲甲(7/11)

赤い実と和賀岳

薬師岳と大甲山

逆光の曲甲(8/11)

大甲山の頂上標識

和賀岳(大甲山より)

 大甲山から北の景観: 白岩岳、薬師岳、小杉山、和賀岳、高下岳

秋空とダケカンバ

虹と薄いプレートになった曲甲(9/11)


中央がくびれた大甲山

深いゴルジュ滝を見下ろす

紅葉のトンネル

紅葉に染まる和賀岳

薬師分岐の道標


薬師岳の祠(薬師堂)

薬師岳の頂上

雲がかぶってきた和賀岳(薬師岳より)

 薬師岳から北の景観: 白岩岳、小杉山、和賀岳、高下岳

薬師岳からの下り

左側をすっぱりとナイフで切ったように見える曲甲(10/11)

薬師岳南西尾根の岩峰

 薬師岳南西尾根から南の景観: 大甲山、半円形の曲甲、中ノ沢岳、風鞍、真昼岳、黒沢大台山、黒森山、大台

女神山と真昼岳

「倉方」の標識


丸い背の曲甲(11/11)

中里温泉

和賀連峰にある曲甲を見たのはもう10年前。そのときから登ろうと決めてマップも用意していたが、ついにその日がやってきた。ヤブだろうと思っていた登山口すずみ長根台への道はしっかりしており、稜線の登山道も整備されていた。しかし、木柱の立っている曲甲へは30分強のヤブこぎとなった。三等三角点のある曲甲の頂上に立ち、鳥海山から薬師岳、和賀岳を俯瞰する。すばらしい青空に秋の黄葉。