至仏山  名峰の景観と大斜面の滑走

群馬県  2,228m  2004年5月2日、2013年4月28日

日本百名山

392

おまえさん、雪山には慣れてるね

なあに、トレースさえあれば楽なもんだ

空気はピンと張りつめて

神々しい純白の山々

晴れて視界が広がると

すっかり名山に取り囲まれている

❄❄❄❄❄

(2004年5月2日)

気分とは不思議なもので、こんな小雨状態でも、みんなが登るならこちらも登ろうという気になる。準備しているとスキーをしょった人がフラフラ歩いていく。こちらもスキーをかついで出発。7:38。

すぐに大きな峠小屋が見えてくる。さすがに尾瀬、スケールが違う。管理人らしき元気なオッサンがあいさつしてくれる。少し元気が出る。

9:32 林の向こうに峰が見えている!あわてて小走りに進むと、二つのピークがくっきり見えている。やっぱり、頂上は雲の上に出ていたんだ。手前ピークが小至仏、奥のピークが至仏だった。青空の下に真っ白な峰を立てた至仏。感激。

上から降りてきた徒歩の人に道を譲られ、次はこちらが譲る。北には島のように燧がぽっかり浮かんでいる!西には奥白根が見えてくる。下界は雲の下、尾瀬ヶ原も雲の下。全くの雲上の世界を歩いている。不運転じて幸運の一日となった。眼下の大斜面をスキーで降りていく人たちが見えてくる。上には相当な数の人たちがいそうだ。

東の大斜面に向かって滑走開始!それにしても広大な大斜面。少し降りると前後左右、誰もいない白斜面の世界。こいつはすごい。至仏山の大斜面が45度に切り取った空の向こうに燧岳が浮かんでいる。思い切り豪快に、大きなターンで滑っていく。

(2013年4月28日)

久しぶりに向かった鳩待峠は雪で、夏タイヤで雪の上を登り、ほぼ満車の駐車場に入る。翌朝も吹雪だったが、少し天気が回復してから至仏に登る。景色は見えなかったが、ガスの頂上には先客が大勢。ガスの大斜面はパウダーで、下まで降りると青空が広がる。思いがけない尾瀬を経験した。

 林の向こうに峰が見えている!青空の下に真っ白な峰を立てた至仏。感激。
 東の大斜面に向かって滑走開始!それにしても広大な大斜面。少し降りると前後左右、誰もいない白斜面の世界。こいつはすごい。至仏山の大斜面が45度に切り取った空の向こうに燧岳が浮かんでいる。思い切り豪快に、大きなターンで滑っていく。
 下界は雲の下、尾瀬ヶ原も雲の下。全くの雲上の世界を歩いている。

 鳩待峠の駐車場の朝、まわりの車では次第に準備して出かけていく。

 雪の消えた頂上にでっかい頂上標識

(2004年5月2日)  7:38 鳩待峠手前路肩、スキー担ぐ  7:51 鳩待峠、シール  9:46 小至仏山・トラバース10:37 至仏山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り2時間59分11:26 至仏山発、滑走12:03 電柱手前を渡渉、スキー担ぐ12:24 鳩待峠12:30 鳩待峠手前路肩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周回4時間46分(2013年4月28日)  8:43 鳩待峠駐車場発  8:48 鳩待峠登山口、シール11:05 小至仏山・トラバース11:33 至仏山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り2時間50分12:11 至仏山発、滑走12:37 渡渉12:50 シール13:14 鳩待峠13:23 鳩待峠駐車場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周回4時間40分

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(2004年5月2日)

8:00頃の登山開始でもよいと思い、確か6:00頃ホテル出発。関越トンネル手前はややガスぎみ。ところがトンネルを出ると小雨が降っている。天気予報は晴なのにどうして?南北二つの低気圧、南は夏の高気圧だが、北は春の高気圧で冷たい寒気が流れ込んでくる、というのと関係しているんだろうか。カーナビは水上で高速を降りて山越えとなっていたが、前回行った沼田で降りるルートで行く(結局これで正解。水上からのルートは閉鎖中)。しかし、小雨は止まず、あきらめムード。戻ろうか。どこへ? 前回閉まっていた鳩待峠への分岐を越えると、呼び込み駐車場あり。上の駐車場が満車なんだろうか。呼び込みに聞くと、「上は満車、道に停めるとキズつくからここに駐車してタクシーで行け」と言う。こちらは、「(雨で)山に登るかどうか分からないから、とりあえず行ってみる」と言って車で進む。クネクネした山道を行くと、終点手前から道端に駐車した車が見え始める。数台、戻っていく車ともすれ違う。よって、ところどころに駐車スペースあり。終点まで行き、満車を確認した上で引き返し、見つけておいたスペースへ縦列駐車。

気分とは不思議なもので、こんな小雨状態でも、みんなが登るならこちらも登ろうという気になる。準備しているとスキーをしょった人がフラフラ歩いていく。こちらもスキーをかついで出発。7:38。駐車場手前で左右どちらに行ってよいか分からず、そこにいた人に尋ねる。「分からない。聞いてみるから待ってくれ。至仏に行くの。私は笠ヶ岳に行くんだ。」聞くべき人を間違えた。他のパーティが左の道を登っていくのでそっちへ行く。すぐに大きな峠小屋が見えてくる。さすがに尾瀬、スケールが違う。管理人らしき元気なオッサンがあいさつしてくれる。少し元気が出る。トイレに寄り、登山口で登山カードを出そうとしたが鉛筆がなくて止め、とにかくシール・スキーで登り始める。7:51。林の中の登り。ゆっくり行く。30分で休んでいると数パーティに追い越される。次は大勢の子供パーティを追い越す手前で休憩。ゆるい傾斜だが、スキーをしょっていくのは大変そうだ。やがて、前に追い越されたパーティを次々に抜き返していく。はじめに頑張りすぎてバテているようだ。ゲレンデ・スキーにシールを付けて登っている人がいたが、ビンディングが上がらないので見るからに苦しそう。こちらはいつものマイペースでいく。子供たちが休んでいる横をゆっくり登って行く。子供たちの疲れきった顔。樹木の根元に足を埋もれさせてしまう人。それを助けようとして自分も埋まってしまう人。木のそばは危ないのだ。ざわめく人々を残して淡々と進む。

9:32 林の向こうに峰が見えている!あわてて小走りに進むと、二つのピークがくっきり見えている。やっぱり、頂上は雲の上に出ていたんだ。そばにいた人に「あれが頂上ですか」と聞く。「あの向こうだと思うんだが…」とその人は言う。実際は手前ピークが小至仏、向こう側のピーク(奥のピーク)が至仏だった。青空の下に真っ白な峰を立てた至仏。感激。小至仏山の東斜面沿いにトラバース・ルートができており、そこを人々が行き交っている。もう帰ってくる人もいる。ボードをかついだ二人連れを追い越し、上から降りてきた徒歩の人に道を譲られ、次はこちらが譲る。北には島のように燧がぽっかり浮かんでいる!西には武尊と、登ってくるうちにいつものように奥白根が見えてくる。下界は雲の下、尾瀬ヶ原も雲の下。全くの雲上の世界を歩いている。不運転じて幸運の一日となった。30分毎休憩でゆっくり燧を見た後、9:46小至仏の真下を通過。上は岩峰が出ているが、その下を迂回していく。眼下の大斜面をスキーで降りていく人たちが見えてくる。上には相当な数の人たちがいそうだ。

10:37頂上着。雪の消えた頂上にでっかい頂上標識。数十人の人々に混じり、スペースを探して陣取る。湯を沸かし、ビールを飲んでいると、後の方で「ビールもってないか」「ない」。西には中ノ岳と魚沼駒の頂上が見えているが、巻機らしきのは見えない。北西に見えているのはどうも平ヶ岳のようだ。このガスではとても行けないだろう。すると、山ノ鼻の方から男の人と、大きなザックをしょった女の人が登ってくる。雲の上に出て、ずいぶん感動・興奮しているようだ。他の人と話をしているのを聞くと、中ノ岳とその手前の兎岳というのの間から入り、平ヶ岳まで行ってきたところだという。「平ヶ岳には誰かいましたか」「いない」「いつ頃ついたの」「平ヶ岳は昼頃通過した」ということは、平ヶ岳の手前で一泊し、平ヶ岳を越えて二泊し、今日は三泊目ということか。ガスの中でよくルートを探せるものだ。みんなも感心を通り越してあきれている様子。せめてスキーするなら分かるが。食事が終って下る用意をし、一応、知ってそうな人に下るルートを尋ねる。「山ノ鼻へはこの斜面を下ればいいんですか」「山ノ鼻へは北の方向だが、斜面を下るなら東の沢に下り、電柱の立っているところで沢を渡ってそれから15分くらい登って鳩待峠に出るルートがある。それか、登ってきたルートを下るかどっちかだな。下はガスだが、滑った跡を辿れば行けるだろう」「ありがとうございました」。

11:26、言われた通りに東の大斜面に向かって滑走開始!それにしても広大な大斜面。少し降りると前後左右、誰もいない白斜面の世界。こいつはすごい。至仏山の大斜面が45度に切り取った空の向こうに燧岳が浮かんでいる。思い切り豪快に、大きなターンで滑っていく。上から二人連れがトコトコ滑ってくるが、すぐに見えなくなる。ガスに入り、視界がきかなくなるが、スキー跡を辿って東へ向かう。樹林帯となり、木を避けながら滑り、そのうち水の流れがところどころ見え出す。11:43、ワル沢らしきところに着く。林の中。12:03、オヤマ沢着。沢の向こうに電柱が立っており、そこに二人が休んでいる。わずかに残ったスノー・ブリッジを越えて電柱側へ移る。「ここから先は沢が切れていて、山ノ鼻へは行けない」と言う人。ここからはスキーをかついで、緩い坂を歩く。徒歩の人々が行き交っている。山ノ鼻まで歩く人だろうか。さっきのスキーヤーがシールを着けて登って行く。あの方が早そうだ。しかし、じきに屋根が見えてきて、12:24、鳩待山荘着。

トイレに寄ってから車まで歩く。このあたりは雨は止んでいるが、ガスは晴れていない。頂上のみの楽園だったようだ。峠小屋前のベンチに大勢がたむろし、人々が行き交っている。


(2013年4月28日)

鳩待峠の駐車場の朝、外は吹雪。携帯で天気予報を確認したが、本日の尾瀬は晴時々曇。だけど吹雪いてるぜ。これでは出発できない。もうしばらく待つ。7時に起き、ホットレモンを作り、天気の回復を待つ。明るくなってきたが、まだ風は強く、ガスは晴れない。それでも、まわりの車では次第に準備して出かけていく。せっかく来たんだ。頂上まで行けずとも、ともかく雪原を歩こう、ということか。昨晩、ロープで封鎖されていた道は開かれていて、その道を歩いて鳩待峠に上がる。峠の店の前の駐車場はもう満車に近く、人々が登山口から出かけている。この天気なのに、皆、天気予報を見てやってきたのだろう。スキーを履き、出発、9時前。後ろにたくさん並んでくるので、立ち止まらずに進む。歩きながら片手でデジカメを操作。休んでいる人は追い越していくが、追いついてきた人には道を譲る。なにしろ風景は林の中の雪の上で、遠景は見えないから、ひたすら淡々と歩く。吹雪ではなくなっているが、風があり、時々風に雪が混じる。

10時前、林が開けた場所に出る。前回はここから小至仏が見えて感激したのだが、今回は全く見えていない。トレースの分岐を右に入ると誰もついてこないので、しばらくマイペースで進み、合流するときには遅いパーティの前に出る。開けた林の雪原はやがて急になり、追いついてきたパーティを先に行かせる。でも、下りが下手な人がいて、追い越す。また急坂となり、できるだけ真直ぐに登っていく。忽然と案内標識が現われる。「残雪期に至仏山に入山の皆さまへ」とあり、雪の薄いところ、雪のないところには入らないように、とある。悪沢岳のあたりだったかもしれない。そこから笠ヶ岳に分岐となるのだが、笠ヶ岳にもいつか登りたい。案内標識を過ぎ、しばらく歩くとコルに出る。大勢が休止中。ツエルトを張っている人たちもいる。コルへは短い急斜面があり、シール・スキーで横歩きで降りている人がいたが、私は滑走を試みる。滑り込んでエッジで止まろうとしたが、シールでエッジが利かず、転倒。しかし、滑りながら立ちあがり、コルに着地。ちょっと格好悪い。コルの先で、前後に人がいなくなる。ゆっくりペースなので、時々追いついてくるパーティがいて、先に行かせる。ガスで周囲が良く見えないが、至仏へのトラバース路を進んでいる。踏跡とトレースはしっかりついており、もう戻ってくる人もいる。

至仏に近付くと、頂上周囲で休んでいる人たちが大勢いる。これは意外。あの大きな頂上標識のところに着き、写真を撮ってもらう。白いゴーグルとヘルメットが宇宙人のよう。ガスでさっぱり視界はないのに頂上に30分もいたのは、往路を引き返さず、大斜面を滑りたかったから。誰か滑る人がいないかなあ。中には、尾根伝いに山ノ鼻方面に下る人もいた。頂上に座ってシールを剥がす人。ようやく、何人かが大斜面方面に向かう。彼らについて滑ろうと思ったが、彼らはガスが晴れるのをしばらく待つ。そこをただ下ればよいのだが、見えないのはやはり不安があるのだろう。右手の方に老夫婦らしいパーティがぎこちなく滑り降りていく。5分は待ち、先に滑ろうかと思ったが、ガスが晴れそうもないので彼らも滑り始める。彼らが見えなくなってから私も滑りはじめるが、ガスで斜面が見えないのでゆっくりターン。やがてガスが薄くなってきて、大斜面の両側の尾根が見えてくる。はるか左下に彼等がいる。そこからショートターン滑走開始。パウダー滑走。彼らに追いついてしまわないように停止しながら滑走したが、何度目かに彼等のうちのボーダーが後から滑っていった。

彼等は大斜面の左尾根(ワル沢左岸尾根)に向かって滑って行くので、そちらに向かう。左岸尾根の上の方を滑っているパーティがいる。大勢だが、うまくない人がいて、なかなか下りてこない。次第に晴れてきて、雲間に青空が見え、眼下には林、その手前に彼等がいる。そこは左岸尾根基部のやや上あたりで、スキーを履いたまま横になって少し休憩し、滑走再開。彼等は大斜面下の林の中に滑り込んでいったので、そのトレースを追う。林に滑り込むときのショートターントレースは崩れてしまっていて、このあたりはもう雪質が悪い。林間に入るとそこには水の出ている沢筋があり、デコボコの間を縫って滑走。彼ら、あの3人に追いついてしまう。ボーダーの二人はストックを出している。下るか登るか迷っていると、彼らのうちのスキーヤーが先に下ってゆくので、彼らの跡をおうと縦走路に出る。合流点には10人くらいが休憩していて、彼らの仲間もいたようだ。パーティーの間を歩いて縦走路に出る。大斜面の滑走はこれで終了。パウダー滑走が楽しめるとは思わなかった。

前回はここを歩いて登ったと思うが、今回はパーティの少し先まではビンディングを外して登り、そこでザックを下ろし、シールを貼る。新雪も降っているし、シールが最良である。そこから鳩待峠までは遠く感じた(滑走26分、登り返し37分)。だいぶへばっていて、何人かに追い越される。途中に分岐があり、左(東)に向かうルートがある。林を抜けると至仏の大斜面が微かに見えた。数年前に平ヶ岳に向かったときも、ここで至仏を見た記憶がある。見えているのは斜面下半分だけで、頂上は見えていない。しかし、あの大斜面を滑ってきたのだ、という実感。青空の下に雲が残っていて頂上を隠しており、大斜面の一角のみが見えている。小さな黒い点は木か人か。大きなザックを背負った人たちの後から鳩待峠に到着。朝とは違って晴天。たくさんの人と車、にパトカー。スキーを外し、小屋の裏にあるトイレに寄る。トイレから戻る途中、また至仏の大斜面を見る。朝と同様、スキーを肩に担ぎ、駐車場まで歩く。駐車場入口には係員のおじさんがいて集金している。車に戻り、ゆっくり片づけ、スキーにワックスを塗っておく。外気温ー2℃。

戸倉(片品温泉)まで下り、玉泉という温泉に寄って行く。バス停の前にあったので寄ったのだが、男の子が一人で番をしていた。

久しぶりに向かった鳩待峠は雪で、夏タイヤで雪の上を登り、ほぼ満車の駐車場に入る。翌朝も吹雪だったが、少し天気が回復してから至仏に登る。景色は見えなかったが、ガスの頂上には先客が大勢。ガスの大斜面はパウダーで、下まで降りると青空が広がる。思いがけない尾瀬を経験した。

 (2004年5月2日)

 武尊山

8:00頃の登山開始でもよいと思い、確か6:00頃ホテル出発。関越トンネル手前はややガスぎみ。ところがトンネルを出ると小雨が降っている。天気予報は晴なのにどうして?南北二つの低気圧、南は夏の高気圧だが、北は春の高気圧で冷たい寒気が流れ込んでくる、というのと関係しているんだろうか。カーナビは水上で高速を降りて山越えとなっていたが、前回行った沼田で降りるルートで行く(結局これで正解。水上からのルートは閉鎖中)。しかし、小雨は止まず、あきらめムード。戻ろうか。どこへ?

 朝の鳩待峠(2013年4月28日)

前回閉まっていた鳩待峠への分岐を越えると、呼び込み駐車場あり。上の駐車場が満車なんだろうか。呼び込みに聞くと、「上は満車、道に停めるとキズつくからここに駐車してタクシーで行け」と言う。こちらは、「(雨で)山に登るかどうか分からないから、とりあえず行ってみる」と言って車で進む。クネクネした山道を行くと、終点手前から道端に駐車した車が見え始める。数台、戻っていく車ともすれ違う。よって、ところどころに駐車スペースあり。終点まで行き、満車を確認した上で引き返し、見つけておいたスペースへ縦列駐車。

 鳩待峠(2013年4月28日)

気分とは不思議なもので、こんな小雨状態でも、みんなが登るならこちらも登ろうという気になる。準備しているとスキーをしょった人がフラフラ歩いていく。こちらもスキーをかついで出発。7:38。駐車場手前で左右どちらに行ってよいか分からず、そこにいた人に尋ねる。「分からない。聞いてみるから待ってくれ。至仏に行くの。私は笠ヶ岳に行くんだ。」聞くべき人を間違えた。他のパーティが左の道を登っていくのでそっちへ行く。すぐに大きな峠小屋が見えてくる。さすがに尾瀬、スケールが違う。管理人らしき元気なオッサンがあいさつしてくれる。少し元気が出る。

 鳩待峠小屋

トイレに寄り、登山口で登山カードを出そうとしたが鉛筆がなくて止め、とにかくシール・スキーで登り始める。7:51。林の中の登り。ゆっくり行く。30分で休んでいると数パーティに追い越される。次は大勢の子供パーティを追い越す手前で休憩。ゆるい傾斜だが、スキーをしょっていくのは大変そうだ。やがて、前に追い越されたパーティを次々に抜き返していく。はじめに頑張りすぎてバテているようだ。ゲレンデ・スキーにシールを付けて登っている人がいたが、ビンディングが上がらないので見るからに苦しそう。こちらはいつものマイペースでいく。子供たちが休んでいる横をゆっくり登って行く。子供たちの疲れきった顔。樹木の根元に足を埋もれさせてしまう人。それを助けようとして自分も埋まってしまう人。木のそばは危ないのだ。ざわめく人々を残して淡々と進む。

 雪に埋もれた道標

 小至仏山

9:32 林の向こうに峰が見えている!あわてて小走りに進むと、二つのピークがくっきり見えている。やっぱり、頂上は雲の上に出ていたんだ。そばにいた人に「あれが頂上ですか」と聞く。「あの向こうだと思うんだが…」とその人は言う。実際は手前ピークが小至仏、向こう側のピーク(奥のピーク)が至仏だった。青空の下に真っ白な峰を立てた至仏。感激。

 小至仏山のトラバース路に向かう登山者たち

小至仏山の東斜面沿いにトラバース・ルートができており、そこを人々が行き交っている。もう帰ってくる人もいる。ボードをかついだ二人連れを追い越し、上から降りてきた徒歩の人に道を譲られ、次はこちらが譲る。北には島のように燧がぽっかり浮かんでいる!西には武尊と、登ってくるうちにいつものように奥白根が見えてくる。下界は雲の下、尾瀬ヶ原も雲の下。全くの雲上の世界を歩いている。不運転じて幸運の一日となった。30分毎休憩でゆっくり燧を見た後、9:46小至仏の真下を通過。上は岩峰が出ているが、その下を迂回していく。眼下の大斜面をスキーで降りていく人たちが見えてくる。上には相当な数の人たちがいそうだ。

 トラバース路の登山者と至仏山

 背後の小至仏山と雲海

 雪の無い至仏山頂上とでっかい頂上標識

10:37頂上着。雪の消えた頂上にでっかい頂上標識。数十人の人々に混じり、スペースを探して陣取る。湯を沸かし、ビールを飲んでいると、後の方で「ビールもってないか」「ない」。西には中ノ岳と魚沼駒の頂上が見えているが、巻機らしきのは見えない。北西に見えているのはどうも平ヶ岳のようだ。このガスではとても行けないだろう。すると、山ノ鼻の方から男の人と、大きなザックをしょった女の人が登ってくる。雲の上に出て、ずいぶん感動・興奮しているようだ。他の人と話をしているのを聞くと、中ノ岳とその手前の兎岳というのの間から入り、平ヶ岳まで行ってきたところだという。「平ヶ岳には誰かいましたか」「いない」「いつ頃ついたの」「平ヶ岳は昼頃通過した」ということは、平ヶ岳の手前で一泊し、平ヶ岳を越えて二泊し、今日は三泊目ということか。ガスの中でよくルートを探せるものだ。みんなも感心を通り越してあきれている様子。せめてスキーするなら分かるが。

 混雑の雪の至仏山頂上(2013年4月28日)

 会津駒ヶ岳と燧岳

 会津駒ヶ岳

 燧岳

 平ヶ岳

 奥白根山

 武尊山

 奥白根山と雲海とスキーヤー

食事が終って下る用意をし、一応、知ってそうな人に下るルートを尋ねる。「山ノ鼻へはこの斜面を下ればいいんですか」「山ノ鼻へは北の方向だが、斜面を下るなら東の沢に下り、電柱の立っているところで沢を渡ってそれから15分くらい登って鳩待峠に出るルートがある。それか、登ってきたルートを下るかどっちかだな。下はガスだが、滑った跡を辿れば行けるだろう」「ありがとうございました」。

 大斜面の滑走

 大斜面と燧岳

11:26、言われた通りに東の大斜面に向かって滑走開始!それにしても広大な大斜面。少し降りると前後左右、誰もいない白斜面の世界。こいつはすごい。至仏山の大斜面が45度に切り取った空の向こうに燧岳が浮かんでいる。思い切り豪快に、大きなターンで滑っていく。上から二人連れがトコトコ滑ってくるが、すぐに見えなくなる。ガスに入り、視界がきかなくなるが、スキー跡を辿って東へ向かう。樹林帯となり、木を避けながら滑り、そのうち水の流れがところどころ見え出す。

 大斜面の滑走

大斜面の滑走(2013年4月28日)

 林間滑走

11:43、ワル沢らしきところに着く。林の中。12:03、オヤマ沢着。沢の向こうに電柱が立っており、そこに二人が休んでいる。わずかに残ったスノー・ブリッジを越えて電柱側へ移る。「ここから先は沢が切れていて、山ノ鼻へは行けない」と言う人。ここからはスキーをかついで、緩い坂を歩く。徒歩の人々が行き交っている。山ノ鼻まで歩く人だろうか。さっきのスキーヤーがシールを着けて登って行く。あの方が早そうだ。しかし、じきに屋根が見えてきて、12:24、鳩待山荘着。

 雪の融けた木道

 登り返し(2013年4月28日)

トイレに寄ってから車まで歩く。このあたりは雨は止んでいるが、ガスは晴れていない。頂上のみの楽園だったようだ。峠小屋前のベンチに大勢がたむろし、人々が行き交っている。

 周囲から見た至仏山

 燧岳から見る至仏山(2011年5月20日)

 鳩待峠から山ノ鼻に下る途中に見た至仏山と大斜面(2007年4月20日)

 スズヶ峰付近から見る至仏山(2007年4月20日)

 沖武尊山から見る笠ヶ岳と至仏山(2007年4月1日)

 谷川岳から見る至仏山(2018年3月31日)