前塚見山 焼石連峰東端の前衛鋒
岩手県 前塚見山915m、オガラ森山914m 2019年3月2日
(前塚見山)岩手の山150
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入畑ダムの近くの橋の上などで何度か停止。焼石連峰東端の前衛峰、南から見る前塚見山は重厚なトライアングルだが、その奥に急峻な地形が隠されていて、静かな迫力が感じられる。
更に西に進み、前塚見山の奥に連なるオガラ森山とその間の細尾根を見ると、果たして登れるかどうか不安になってきた。オガラ森山の先のP2は妙義のような尖峰で、コル2に下る尾根はオーバーハングしていて、とても辿れそうもない。北側の斜面をトラバースするしかないだろう。
スキー場からオガラ森山に向かって登る。青空は見えているが風が強く、雲が流れていく。驚いたことに、オガラ森山頂上にはイグルーの跡があった。
ザックをP5に置いて空身になり、ピッケル・ストックを両手に持ってP5東尾根を下降開始。傾斜のあるところは灌木に掴まって下り、灌木がなくなると後ろ向きになって足場を作りながら下る。そうしてなんとかコル4に到達。
そして思いがけず広い雪原になっている前塚見山の頂上に到達。相変わらず風が強く、雲が流れ、西に見えている焼石諸峰も霞んでいる。南東眼下には入畑ダム。南と西には焼石連峰の一角、駒ヶ岳と経塚山、そして強烈な尖峰の姿のオガラ森山が印象的。
行く手にオガラ森山の頂上が見えてきたころ、夕暮れ前の晴間となり、駒ヶ岳や経塚山がくっきりと見え、天竺山や牛形山らしき山を同定することができた。最後のご褒美を目に焼き付ける。
オープン斜面に出て、ようやく本日初めての滑走開始!雪庇の横の狭いところから広いオープン斜面に至り、下にある崩壊部分の上まで滑走。ここが本日のハイライトということだろう。その途中で、二つ目のイグルーの跡を見る。
そして、もう誰もいないスキー場のゲレンデに入り、ガリガリとけたたましい音をたてて滑走。
湯に入って温まると、一日中風に吹かれて凍えていた体が少しづつもとに戻っていく。
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土曜の朝は暗いうちに出かけ、高速の途中で日の出となる。先週に比べて雲が多い。夏油高原に向かう道には温泉が並んでいて、宝珠温泉や瀬美温泉がある。そして行く手に前塚見山が見えてきた。東からは南尾根を伸ばした姿。入畑ダムの近くの橋の上などで何度か停止して写真を撮る。焼石連峰の一角、夏油の前衛峰、南から見る前塚見山は重厚なトライアングルだが、その奥に急峻な地形が隠されていて、静かな迫力が感じられる。更に西に進み、前塚見山の奥に連なるオガラ森山とその間の細尾根を見ると、果たして登れるかどうか不安になってきた。南から見るオガラ森山はなだらかに見えるが、その先のP2は妙義のような尖峰で、P3との間のコル2に下る尾根はオーバーハングしていて、とても辿れそうもない。北側の斜面をトラバースするしかないだろう。オガラ森山の頂上の南に見えているオープン斜面は雪崩の跡のようにも見えるが、どうだろう。
まだスキー場の営業開始よりだいぶ早いが、従業員らしき人々の車が次々にやってくる。巨大な駐車場の最奥に他の車に並んで駐車。スキーをもって入る人もいるので、準備して出発。さっきの車道分岐から登ろうと思っていたので、もうシールは貼ってある。作業中のブルドーザーの脇を通って建物に入り、エスカレーターで上に登り、トイレに寄り、そしてゲレンデに出て、シールで北に向かう。風が強いのでゴーグルをかけ、手にはインナーとローシュ・グローブをはめる。どちらも一日中、必要だった。ゲレンデの端を歩き、途中でゲレンデを離れ、近道を探したが、窪んだ地形があるのでまたゲレンデに戻る。分岐からの車道は雪に埋まっているが、スノーモービルのトレースがあり、それを辿ってオガラ森山の西の麓(標高664m付近、木標あり)まで歩き、そこからオガラ森山に向かって登る。
青空は見えているが風が強く、雲が流れていく。雪は乾いているが、登るに従いクラストしてくる。最初は葉の落ちたブナの疎林だったが、やがて傾斜が増し、右上に岩がむき出しになっている。そこでシートラに変更。まだシールで登れるだろうが、早めに替えておいた方がよさそうだった。ディナフィット・ブーツにアイゼンを付けるのは2度目。ブナ疎林の上にはやっかいな灌木帯があり、南に回ってオープン斜面に出るが、そのすぐ上に崩壊部分があるので、灌木帯に入って崩壊部分を迂回。崩壊部分の上には広いオープン斜面があり、十分にスキーで滑れそうだったが、さっきの崩壊箇所を更に南に迂回して滑れるなら、灌木斜面を通過せずに下れるだろう。ただし、南に大きく回ってスキー場に戻れるかが問題。上のオープン斜面は長く、次第に傾斜が緩くなる斜面を黙々と登る。頂上間近になって、また崩壊箇所があり、最後の数十メートルは灌木帯に突入し、ようやくオガラ森山の頂上に到達。驚いたことに、オガラ森山頂上にはイグルーの跡があった。スキーが灌木にひっかかるのに悩まされていたため、ここにスキーを置いていくことにする。この先、2kmの細尾根でスキーを使える場面はあまりないだろう。イグルーの穴にスキーを差し込み、灌木のかなたに見えている前塚見山に向かう。
オガラ森山の東尾根は予想に反してブナ疎林で、これなら十分にスキーで滑走し、帰りもコル2からスキーで登れただろう。悔やみながら尾根を下り、コル1からプラン通りにP2を北側にトラバース。ブナ疎林はコル2まで続いていて、そこからP2へは思った通り強烈な傾斜の尾根になっていて、大きくトラバースしたのは正解だった。しかし、コル2からの登り返しあたりから疲れがたまり、休み休みの登りとなる。オガラ森山の西側と同じく、P3への尾根の南側の雪庇部分は崩壊しつつあり、ほとんど北側の灌木帯を登り、登り切ったあたりでP3頂上に達する。背後には南側の岩壁がむきだしになったP2の強烈な姿。こいつはすごい。その右手のオガラ森山も北側に鋭く切れ落ちたナギのようなのが見えている。地図では目立たたないが、P3の先にほぼ同じ高さのP4がある。灌木の隙間から雪庇尾根に出てP4。少し下ってコル3に至り、P5に登り返す頃、背後にピッケルを持った男性がやってくる。「登っている人がいるとは思わなかった」と言われたが、私もここで誰かに会うとは思わなかった。元気な男性はどんどん先に進み、疲れた私はカメの歩み。休み休み登ってようやくP5に到達。正面に前塚見山がもうあと500mのところに見えている。P5の東側は切れ落ちていたが、男性の踏み跡は北側に下っていた。大きく北側を回っていくのだろう。その踏み跡をたどって下る。ところが、数十メートル下ったところで男性が登り返してきた。どうやらうまくないらしい。P5に向かって数十メートルを登り返すが、このとき、無理に休まずに登ると疲れ切ってしまい、P5頂上でしばらく横になって休む。息が切れ、頭がぼうっとしているので、たぶんハンガーノック。休めば体力は戻るだろうが、無理はできない。
P5で休んでいた位置から東のコル4への斜面がよく見えていた。斜面は切れ落ちていて下れそうなところは1箇所しか見当たらない。それはP5からまっすぐにコル4に下る細尾根で、雪はつながっているように見えた。難所は一番上の雪庇の部分と、一番下のコルに降る部分。無理かもしれないが、あがいてみよう。ザックをP5に置いて空身になり、ピッケル・ストックを両手に持ってP5東尾根を下降開始。P5の雪庇に座り、1m弱を飛び降りる。登り返すときは雪庇を壊せばなんとかなるだろう。そこからは急斜面をグリセードぎみに下降し、更に傾斜のあるところは灌木に掴まって下り、灌木がなくなると後ろ向きになって足場を作りながら下る。そうしてなんとかコル4に到達。あとは400m弱を登るだけだが、登りは休み休みでないと無理。追いついてきた男性に先に行ってもらう。この最後の斜面も灌木帯だったが、体が疲れ切っていたので先行した男性の踏み跡がありがたかった。尾根をやや北にはずして登り、その先に前塚見山の頂上があった。頂上の手前100mくらいで戻ってきた男性に会う。ごくろうさん。そして思いがけず広い雪原になっている前塚見山の頂上に到達。木の枝の古いリボンのみが人の気配。相変わらず風が強く、雲が流れ、西に見えている焼石諸峰も霞んでいる。広い頂上を少し歩き、横になって休む。しかし時間が気になり、少し目をつぶっただけで立上り、帰路につく。最後に周囲を撮影。南東眼下には入畑ダム。南と西には焼石連峰の一角、駒ヶ岳と経塚山、そして(頂上のやや西側からは、)強烈な尖峰の姿のオガラ森山が印象的。今朝、入畑ダムやスキー場のあたりからここを見上げていたときは、登れるかどうか不安だった。難所もあった。だが、なんとかたどり着けた。本当に良かったが、これからの帰路も着実に戻らねば。難所は2箇所。P5への登り返しと、コル2からオガラ森山への登り返しだ。憂鬱だが、なんとかなるという自信あり。
首が痛くなってきていて、下るのも辛くなってきた。これは普段、ザックを背負っているのに、空身で歩いているためかもしれない。さて、コル4からの登り返しの道には太い踏み跡ができていて、比較的楽に登り返せた。何もない所を最初に歩くのはたいへんだが、踏み跡というのはこんなにもありがたいものだ。要所では灌木がうまい具合に現われ、それを掴んで登り、最後の雪庇のところは立木と雪庇の間の足がかりに片足をかけて登れた。P5に置いてきたザックを開けてテルモスを取り出し、ザックを枕に少し休んでからテルモスのホットレモンを飲む。南西にスキー場が見えていて、ゴンドラやリフトはまだ動いていて、ゲレンデのスキーヤーもしくはボーダーも小さく見えていたと思う。灌木の向こうにP4が見えていたが、コル3からP4に登り返したくはない。踏み跡もほとんどトラバースしてゆき、P4をトラバース。その先でやや登りとなり、P3に到達。P3から北西尾根に向かう踏み跡と別れ、南西に下ってコル2に向かう。すると斜めに登っている私の登りトレースに遭遇。面倒なのでまっすぐ下ったところもあったが、コル2からはいよいよ距離600m、標高差110mの登り返し。たいした距離ではないが、このときの私の体力ではたいへん。斜めに下ってきている私のトレースをたどると、比較的楽。登りながら何度も立ち止まって休み、GPSを見て残りの距離を確かめたが、なかなか近づかない。ようやくコル1付近で尾根に乗り、更に登って行く手にオガラ森山の頂上が見えてきたころ、もうゴンドラは止まっていたと思うが、夕暮れ前の晴間となり、駒ヶ岳や経塚山がくっきりと見え、天竺山や牛形山らしき山を同定することができた。最後のご褒美を目に焼き付ける。
そしてついにオガラ森山に到達。さっそくスキーをイグルーの中から取り出し、アイゼンをザックにしまい、ブーツをスキーモードに変更してから横になって休憩。しかし、いざスキーを履く段になり、頂上直下はとても滑れないと気づく。南の雪庇は崩壊しているし、西の灌木斜面はスキーで下るのは難しい。しまった、よく見てからにするんだった、と思ったがもう遅い。スキーで強引に下るのは止め、シートラで黙々と下に見えているオープン斜面のところまで下る。そしてオープン斜面に出て、ようやく本日初めての滑走開始!雪は解けかけのハードバーンで、ひっかかりぎみ。あまりスムーズには滑れないが、雪庇の横の狭いところから広いオープン斜面に至り、そこから南に向かうか西に往路を辿るかの選択肢があったが、南には見えていない崩壊部分があるかもしれない。そこで西に、下にある崩壊部分の上まで滑走。ここが本日のハイライトということだろう。その途中で、二つ目のイグルーの跡を見る。同じ人だったのだろうか。崩壊部分が下に見えてきたところで、北の灌木帯に入る。崩壊部分の下のオープン斜面は短く、スキー場に戻りにくくなるので、灌木帯を下ってブナ疎林を目指す。
しかし、灌木帯の滑走は少し斜めに滑っては止まる牛歩の歩みで、歩いたほうがよほど早かったかもしれない。ようやくブナ疎林になり、自由に滑れるようになったところで最後の休憩。斜めの無理な姿勢を保っていて、腰が痛くなっていた。GPSを見ながら往路を外れないように滑っていき、雪で埋まった車道の上のスノーモービルのトレースを滑る(朝はなかったから、この日のものだろう)。そして、もう誰もいないスキー場のゲレンデに入り、ガリガリとけたたましい音をたてて滑走。正面入口の少し手前で傾斜のなくなった広場を押したり歩いたりして横断し、正面入口に来ると、なんと自動ドアはもう閉まってして動かない。困った。右手(南)に見える駐車場方面に100m強を緩く登り返し、車道に降りると、そこは温泉館駐車場だった。そこから車道を歩いて行けばスキー場の駐車場に戻れるだろう。だが、GPSを見ると車道はかなり大回り。直線距離では100m強のはずなので、左の雪壁に登ってみると、果たして数十メートル下にスキー場駐車場があった。私の車はあそこだ。そこで、スキーを履いてその近くまで滑り込む。本日最後の滑走は約1kmの車道歩きを一瞬でショートカットするという痛快滑走。車でもう一度立寄った温泉館は、日帰りは18時まででまっくら。なんとか許してもらって入らせてもらう。湯に入って温まると、一日中風に吹かれて凍えていた体が少しづつもとに戻っていく。
今回、前塚見山で体力消耗した原因として、ヘモグロビン不足、ハンガーノック、風邪ぎみだった、などをくどくど考えたが、主因は持久力の衰えのようだ。ジョギングしてみると1kmも走れない。いつの間にこんなに体力がなくなったのだろう。いくら山を歩いても、ゆっくり歩いているのでは持久力はつかないらしい。特効薬は不要。これから毎日走るべし。
日の出
初めて見えた前塚見山(東から見る南尾根を伸ばした姿)
入畑ダムからの景観: 兎森山、オガラ森山、P2、前塚見山
オガラ森山(左奥)とP2(右手前)
南から見る重厚な前塚見山
土曜の朝は暗いうちに出かけ、高速の途中で日の出となる。先週に比べて雲が多い。夏油高原に向かう道には温泉が並んでいて、宝珠温泉や瀬美温泉がある。そして行く手に前塚見山が見えてきた。東からは南尾根を伸ばした姿。入畑ダムの近くの橋の上などで何度か停止して写真を撮る。焼石連峰の一角、夏油の前衛峰、南から見る前塚見山は重厚なトライアングルだが、その奥に急峻な地形が隠されていて、静かな迫力が感じられる。更に西に進み、前塚見山の奥に連なるオガラ森山とその間の細尾根を見ると、果たして登れるかどうか不安になってきた。南から見るオガラ森山はなだらかに見えるが、その先のP2は妙義のような尖峰で、P3との間のコル2に下る尾根はオーバーハングしていて、とても辿れそうもない。北側の斜面をトラバースするしかないだろう。オガラ森山の頂上の南に見えているオープン斜面は雪崩の跡のようにも見えるが、どうだろう。
オガラ森山(左の平坦ピーク)とP2(右尖峰)
スキー場手前からの景観: オガラ森山、P2、P4、P5、前塚見山
西から見るナギの前塚見山
夏油高原スキー場
スキー場から見るオガラ森山(オープン斜面がいくつか見える)
西から見る三角形のオガラ森山
まだスキー場の営業開始よりだいぶ早いが、従業員らしき人々の車が次々にやってくる。巨大な駐車場の最奥に他の車に並んで駐車。スキーをもって入る人もいるので、準備して出発。さっきの車道分岐から登ろうと思っていたので、もうシールは貼ってある。作業中のブルドーザーの脇を通って建物に入り、エスカレーターで上に登り、トイレに寄り、そしてゲレンデに出て、シールで北に向かう。風が強いのでゴーグルをかけ、手にはインナーとローシュ・グローブをはめる。どちらも一日中、必要だった。ゲレンデの端を歩き、途中でゲレンデを離れ、近道を探したが、窪んだ地形があるのでまたゲレンデに戻る。分岐からの車道は雪に埋まっているが、スノーモービルのトレースがあり、それを辿ってオガラ森山の西の麓(標高664m付近、木標あり)まで歩き、そこからオガラ森山に向かって登る。
スキー場・東端の木標
ブナの疎林
オープン斜面・下部
オープン斜面・崩壊部分
青空は見えているが風が強く、雲が流れていく。雪は乾いているが、登るに従いクラストしてくる。最初は葉の落ちたブナの疎林だったが、やがて傾斜が増し、右上に岩がむき出しになっている。そこでシートラに変更。まだシールで登れるだろうが、早めに替えておいた方がよさそうだった。ディナフィット・ブーツにアイゼンを付けるのは2度目。ブナ疎林の上にはやっかいな灌木帯があり、南に回ってオープン斜面に出るが、そのすぐ上に崩壊部分があるので、灌木帯に入って崩壊部分を迂回。
オープン斜面・上部
兎森山
オガラ森山・頂上直下の崩壊部分
オガラ森山頂上のイグルー
崩壊部分の上には広いオープン斜面があり、十分にスキーで滑れそうだったが、さっきの崩壊箇所を更に南に迂回して滑れるなら、灌木斜面を通過せずに下れるだろう。ただし、南に大きく回ってスキー場に戻れるかが問題。上のオープン斜面は長く、次第に傾斜が緩くなる斜面を黙々と登る。頂上間近になって、また崩壊箇所があり、最後の数十メートルは灌木帯に突入し、ようやくオガラ森山の頂上に到達。驚いたことに、オガラ森山頂上にはイグルーの跡があった。スキーが灌木にひっかかるのに悩まされていたため、ここにスキーを置いていくことにする。この先、2kmの細尾根でスキーを使える場面はあまりないだろう。イグルーの穴にスキーを差し込み、灌木のかなたに見えている前塚見山に向かう。
P2とP3(P4より)
オガラ森山の東尾根は予想に反してブナ疎林で、これなら十分にスキーで滑走し、帰りもコル2からスキーで登れただろう。悔やみながら尾根を下り、コル1からプラン通りにP2を北側にトラバース。ブナ疎林はコル2まで続いていて、そこからP2へは思った通り強烈な傾斜の尾根になっていて、大きくトラバースしたのは正解だった。しかし、コル2からの登り返しあたりから疲れがたまり、休み休みの登りとなる。オガラ森山の西側と同じく、P3への尾根の南側の雪庇部分は崩壊しつつあり、ほとんど北側の灌木帯を登り、登り切ったあたりでP3頂上に達する。背後には南側の岩壁がむきだしになったP2の強烈な姿。こいつはすごい。その右手のオガラ森山も北側に鋭く切れ落ちたナギのようなのが見えている。地図では目立たたないが、P3の先にほぼ同じ高さのP4がある。灌木の隙間から雪庇尾根に出てP4。
P5から見る前塚見山
少し下ってコル3に至り、P5に登り返す頃、背後にピッケルを持った男性がやってくる。「登っている人がいるとは思わなかった」と言われたが、私もここで誰かに会うとは思わなかった。元気な男性はどんどん先に進み、疲れた私はカメの歩み。休み休み登ってようやくP5に到達。正面に前塚見山がもうあと500mのところに見えている。P5の東側は切れ落ちていたが、男性の踏み跡は北側に下っていた。大きく北側を回っていくのだろう。その踏み跡をたどって下る。ところが、数十メートル下ったところで男性が登り返してきた。どうやらうまくないらしい。P5に向かって数十メートルを登り返すが、このとき、無理に休まずに登ると疲れ切ってしまい、P5頂上でしばらく横になって休む。息が切れ、頭がぼうっとしているので、たぶんハンガーノック。休めば体力は戻るだろうが、無理はできない。
P5東尾根・下降点
P5東尾根
P5で休んでいた位置から東のコル4への斜面がよく見えていた。斜面は切れ落ちていて下れそうなところは1箇所しか見当たらない。それはP5からまっすぐにコル4に下る細尾根で、雪はつながっているように見えた。難所は一番上の雪庇の部分と、一番下のコルに降る部分。無理かもしれないが、あがいてみよう。ザックをP5に置いて空身になり、ピッケル・ストックを両手に持ってP5東尾根を下降開始。P5の雪庇に座り、1m弱を飛び降りる。登り返すときは雪庇を壊せばなんとかなるだろう。そこからは急斜面をグリセードぎみに下降し、更に傾斜のあるところは灌木に掴まって下り、灌木がなくなると後ろ向きになって足場を作りながら下る。そうしてなんとかコル4に到達。あとは400m弱を登るだけだが、登りは休み休みでないと無理。追いついてきた男性に先に行ってもらう。
前塚見山方面から見るP5東尾根下降点
P5全景
古いリボン
前塚見山頂上
この最後の斜面も灌木帯だったが、体が疲れ切っていたので先行した男性の踏み跡がありがたかった。尾根をやや北にはずして登り、その先に前塚見山の頂上があった。頂上の手前100mくらいで戻ってきた男性に会う。ごくろうさん。そして思いがけず広い雪原になっている前塚見山の頂上に到達。木の枝の古いリボンのみが人の気配。相変わらず風が強く、雲が流れ、西に見えている焼石諸峰も霞んでいる。広い頂上を少し歩き、横になって休む。しかし時間が気になり、少し目をつぶっただけで立上り、帰路につく。最後に周囲を撮影。南東眼下には入畑ダム。南と西には焼石連峰の一角、駒ヶ岳と経塚山、そして強烈な尖峰の姿のオガラ森山が印象的。今朝、入畑ダムやスキー場のあたりからここを見上げていたときは、登れるかどうか不安だった。難所もあった。だが、なんとかたどり着けた。本当に良かったが、これからの帰路も着実に戻らねば。難所は2箇所。P5への登り返しと、コル2からオガラ森山への登り返しだ。憂鬱だが、なんとかなるという自信あり。
広い前塚見山頂上
入畑ダム
前塚見山頂上のやや西側から見るオガラ森山とP2、P3
経塚山
首が痛くなってきていて、下るのも辛くなってきた。これは普段、ザックを背負っているのに、空身で歩いているためかもしれない。さて、コル4からの登り返しの道には太い踏み跡ができていて、比較的楽に登り返せた。何もない所を最初に歩くのはたいへんだが、踏み跡というのはこんなにもありがたいものだ。要所では灌木がうまい具合に現われ、それを掴んで登り、最後の雪庇のところは立木と雪庇の間の足がかりに片足をかけて登れた。P5に置いてきたザックを開けてテルモスを取り出し、ザックを枕に少し休んでからテルモスのホットレモンを飲む。南西にスキー場が見えていて、ゴンドラやリフトはまだ動いていて、ゲレンデのスキーヤーもしくはボーダーも小さく見えていたと思う。
頂上直前のオガラ森山
灌木の向こうにP4が見えていたが、コル3からP4に登り返したくはない。踏み跡もほとんどトラバースしてゆき、P4をトラバース。その先でやや登りとなり、P3に到達。P3から北西尾根に向かう踏み跡と別れ、南西に下ってコル2に向かう。すると斜めに登っている私の登りトレースに遭遇。面倒なのでまっすぐ下ったところもあったが、コル2からはいよいよ距離600m、標高差110mの登り返し。たいした距離ではないが、このときの私の体力ではたいへん。斜めに下ってきている私のトレースをたどると、比較的楽。登りながら何度も立ち止まって休み、GPSを見て残りの距離を確かめたが、なかなか近づかない。ようやくコル1付近で尾根に乗り、更に登って行く手にオガラ森山の頂上が見えてきたころ、もうゴンドラは止まっていたと思うが、夕暮れ前の晴間となり、駒ヶ岳や経塚山がくっきりと見え、天竺山や牛形山らしき山を同定することができた。最後のご褒美を目に焼き付ける。
オガラ森山から南西の景観: 駒ヶ岳、鞍掛森山、経塚山、天竺山、牛形山
兎森山とオープン斜面・上部
最初の滑走
そしてついにオガラ森山に到達。さっそくスキーをイグルーの中から取り出し、アイゼンをザックにしまい、ブーツをスキーモードに変更してから横になって休憩。しかし、いざスキーを履く段になり、頂上直下はとても滑れないと気づく。南の雪庇は崩壊しているし、西の灌木斜面はスキーで下るのは難しい。しまった、よく見てからにするんだった、と思ったがもう遅い。スキーで強引に下るのは止め、シートラで黙々と下に見えているオープン斜面のところまで下る。そしてオープン斜面に出て、ようやく本日初めての滑走開始!雪は解けかけのハードバーンで、ひっかかりぎみ。あまりスムーズには滑れないが、雪庇の横の狭いところから広いオープン斜面に至り、そこから南に向かうか西に往路を辿るかの選択肢があったが、南には見えていない崩壊部分があるかもしれない。そこで西に、下にある崩壊部分の上まで滑走。ここが本日のハイライトということだろう。その途中で、二つ目のイグルーの跡を見る。同じ人だったのだろうか。崩壊部分が下に見えてきたところで、北の灌木帯に入る。崩壊部分の下のオープン斜面は短く、スキー場に戻りにくくなるので、灌木帯を下ってブナ疎林を目指す。
二つ目のイグルー
夕闇のオガラ森山
しかし、灌木帯の滑走は少し斜めに滑っては止まる牛歩の歩みで、歩いたほうがよほど早かったかもしれない。ようやくブナ疎林になり、自由に滑れるようになったところで最後の休憩。斜めの無理な姿勢を保っていて、腰が痛くなっていた。GPSを見ながら往路を外れないように滑っていき、雪で埋まった車道の上のスノーモービルのトレースを滑る(朝はなかったから、この日のものだろう)。そして、もう誰もいないスキー場のゲレンデに入り、ガリガリとけたたましい音をたてて滑走。正面入口の少し手前で傾斜のなくなった広場を押したり歩いたりして横断し、正面入口に来ると、なんと自動ドアはもう閉まってして動かない。困った。右手(南)に見える駐車場方面に100m強を緩く登り返し、車道に降りると、そこは温泉館駐車場だった。そこから車道を歩いて行けばスキー場の駐車場に戻れるだろう。だが、GPSを見ると車道はかなり大回り。直線距離では100m強のはずなので、左の雪壁に登ってみると、果たして数十メートル下にスキー場駐車場があった。私の車はあそこだ。そこで、スキーを履いてその近くまで滑り込む。本日最後の滑走は約1kmの車道歩きを一瞬でショートカットするという痛快滑走。
最後の滑走
車でもう一度立寄った温泉館は、日帰りは18時まででまっくら。なんとか許してもらって入らせてもらう。湯に入って温まると、一日中風に吹かれて凍えていた体が少しづつもとに戻っていく。
今回、前塚見山で体力消耗した原因として、ヘモグロビン不足、ハンガーノック、風邪ぎみだった、などをくどくど考えたが、主因は持久力の衰えのようだ。ジョギングしてみると1kmも走れない。いつの間にこんなに体力がなくなったのだろう。いくら山を歩いても、ゆっくり歩いているのでは持久力はつかないらしい。特効薬は不要。これから毎日走るべし。