岩木山、巌鬼山  石仏と花の道

青森県  岩木山1,625m、巌鬼山1,470m  2019年7月6日

(岩木山)日本百名山

426

雪渓の脇をすっかりうずめ

風に揺れている濃いピンク

霧の渦巻く夏の日の

思い出の情景

🌻🌷⚘🦋🌻🌷⚘🦋🌻🌷⚘🦋

尾根に上がる手前の広場に花がたくさん咲いていた。白いヨメナ、ピンクのシバザクラ、大きな丸いピンポンマム、ハデな橙色はコウリンタンポポという帰化植物、オダマキは朝は閉じていたが、下山時には大きく開いて下を向いていた。そしてナンテンハギらしきサヤエンドウのようなピンクの花。

尾根に上がってからもしばらくは広い歩きやすい道。途中に一番観音像。その先にも数十メートルおきに石仏が設置されていたが、倒れたり壊れたりしているのがいくつかあった。

岩場に出ると、一面の霧の間に青空が広がり、行く手にすさまじく切れ落ちた谷(赤倉キレット*)が初めて見えた。岩場の奥には祠や仏像、日の当たる岩場にニガナが咲いている。

その先のピーク(大開*)に上がる手前から視界が開け、雲間に岩木山の頂上が見えた。青空にすっくと立つ美しい緑。すると、その左にあるのが巌鬼山だろう。

巌鬼山のピークの手前に仏像や石板の並ぶ地点(赤倉御殿*)1,440mがあり、そこがルート上の巌鬼山頂上ということだろう。頃合いでガーデン手袋をはめ、灌木斜面に取付く。GPSを片手に、ゆがんだ灌木でいっぱいの巌鬼山最高点1,470mに立つ。

ツクバネウツギの咲く灌木斜面を下り、雪渓の脇まで下ると、ミチノクコザクラの大群落があった。こいつはすごい。これを見れただけでも登ってきた甲斐はあった。たくさん固まって風に揺れている紫がかったピンクの顔。白い花はイワウメだろうか。雪渓脇を行ったり来たりして不思議の国の花を眺める。

辿り着いた岩木山頂上は(2005年以来だからなんと14年ぶり)大勢の登山者たちで賑わっていた。誰かが鐘を鳴らしている。大きな岩の上を渡り、一等三角点、大町桂月歌碑#、そして鐘の頂上標識を再訪。大町桂月がここに立った時も、岩木山の頂上には青空が広がっていたに違いない。

雪渓2の下のミチノクコザクラのところから北に、小さな沢沿いに微かな踏み跡がある。何の気なしにその踏み跡を辿ってみると、少し先にミチノクコザクラの大群落が隠されていた。花を踏まないようにして花の間を歩き回る。そこにはハクサンチドリも草の中に隠れて咲いていた。はるかな高みまで登って出会えた不思議の国。

*「赤倉キレット」「赤倉講社屋群」「大開」「赤倉御殿」等の出典は岩木山観光協会

#大町桂月歌碑

「四方八方(よもやも)の千万(ちよろず)の山を見下ろして 心にかかる雲もなき哉」

大正11年10月14日、桂月

 視界が開け、雲間に岩木山の頂上が見えた。青空にすっくと立つ美しい緑。その右裾には大きな雪渓。
 ミチノクコザクラの大群落。はるかな高みまで登って出会えた不思議の国。
巌鬼山
 一番観音像
 鬼の土俵
 大町桂月歌碑#
オダマキは朝は閉じていたが、下山時には大きく開いて下を向いていた
 ブーケのような白い花はマルバシモツケ
道脇には地味な色のミヤマハンショウヅル
白い花はイワウメだろうか
 ハデな橙色はコウリンタンポポ
 大きな丸いピンポンマム
 5:54 赤倉神社・駐車地点発380m  6:03 赤倉講社屋480m  7:21 伯母石、分岐874m、尾根ルート  7:38 合流点  8:02 鬼の土俵1,078m  9:12 大開1,430m  9:31 赤倉御殿1,440m10:00 巌鬼山1,470m10:59 岩木山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り5時間5分11:23 岩木山発12:22 赤倉御殿12:35 大開13:18 鬼の土俵、休憩13:28 鬼の土俵発13:44 分岐点、トラバース・ルート13:55 伯母石、合流点14:40 赤倉講社屋15:04 赤倉神社・駐車地点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復9時間10分

******************************

朝3時に起き、4時に青森を出たときは小雨。登山口はカーナビ・マップではよくわからず、大石神社の赤い大鳥居のところで車を降りて案内図を調べるが、分岐しているすぐ先をどっちに行っていいのか分からない。右の良い道に入ると、正解だった。実は赤い大鳥居の左奥に大駐車場があったのだが、このときは気づかず、もう少し先の登山口手前のスペースまで入る。神社の境内の中だが誰もおらず、霧に包まれたひどい天気で、登るかどうか悩んだ。これまでなら、たぶん登らずに帰っただろう。だが今回は花を見るため、と割り切り、レインウェアにタフで出かける。

目の前の赤倉大神の社にお参りしてから、登山道標識に向かって進む。最初に見たのは大きな白いヨメナの群落。道は左右に分かれ、道標はその中央の踏み跡を指しているように見えたので踏み跡を辿ってみるが、祠や石仏が並んでいるところだった。左の道に入り、赤倉沢にかかる橋を渡る。橋の手前に注意表示があり、「斜面崩落箇所、標高1,320m、26番観音付近」とある。通りにくくなっているのだろうが、なんとかなるだろう。最初は参道のような歩きやすい道、というか、800mほど先に赤倉講社屋群*とある赤倉神社の一角があり、そこまではその名の通りの参道。赤倉大山神社の奥に進み、赤倉講社屋の中をいったん左(東)に登って尾根に上がるが、尾根に上がる手前の広場に花がたくさん咲いていた。白いヨメナ、ピンクのシバザクラ、大きな丸いピンポンマム、ハデな橙色はコウリンタンポポという帰化植物、オダマキは朝は閉じていたが、下山時には大きく開いて下を向いていた。そしてナンテンハギらしきサヤエンドウのようなピンクの花。赤倉講社屋の先もしばらくは広い歩きやすい道。途中に一番観音像。その先にも数十メートルおきに石仏が設置されていたが、倒れたり壊れたりしているのがいくつかあった。一人旅なのでウォークマンを起動。白い小さいのはアリドオシ。薄暗い道脇にマイヅルソウ。

*「赤倉キレット」「赤倉講社屋群」「大開」「赤倉御殿」等の出典は岩木山観光協会(iwakisan.com/touristinfo/2017/07/25/tozan_akakura/)

伯母石という大きな石のところが分岐になっていて、往路ではそれに気づかずに左の尾根コースに入る。伯母石は高さ2mはある大きな三角形の石で、下に隙間があるが、大人には狭そうだった。手前の石像にお賽銭といっしょに小さな鐘が置いてあったので、鳴らしてみる。このあたりでブナからツガの林に変わり、道は岩の多い狭い登山道となる。やがて大きな岩が積み重なったやっかいな岩場を越えていく。岩場に出ると、一面の霧の間に青空が広がり、行く手にすさまじく切れ落ちた谷(赤倉キレット*)が初めて見えた。その左のなだらかな峰が巌鬼山だった。岩場の奥には祠や仏像、日の当たる岩場にニガナが咲いている。ようやく岩場が終わって尾根の林の中の道に下ると、そこにトラバース・ルートとの合流点があった。林の中の緩い尾根を登ると、鬼の土俵(標高1,078m)に着く。それは尾根の平坦なところの丸い切分で、石仏や祠が並び、その真ん中に鬼の像と標識がある。鬼の像は足のところが折れ、足に立て掛けてあったが、腹巻にチョッキを羽織り、なお威厳を保っているようだ。鬼の土俵から大開までの長い登りの間に最初に見たのはカラマツソウ。次いで尾根の先に再び赤倉キレットが見え、道脇には地味な色のミヤマハンショウヅル、白がはじけるマイヅルソウ、白とピンクのシャクナゲ、4枚花びらのゴゼンタチバナ、それにツガザクラ。ブーケのような白い花は(イソツツジじゃなくて)マルバシモツケ。二十一番観音の先に、裏返しに立っている石仏があり、更に先に壊れた石仏もあった。修復されることを願う。高度が上がるとハクサンチドリにヘビイチゴ(キジムシロ?ミツバツチグリ?)。この先の尾根道でルートが二つに分かれており、赤倉キレット側が崩れているので東側ルートを切り開いたのだろうと思い、往路では東側ルートを歩くが、笹の刈り払い跡がひっかかって歩きにくかった。

その先のピーク(大開*)に上がる手前から視界が開け、雲間に岩木山の頂上が見えた。青空にすっくと立つ美しい緑。すると、その左にあるのが巌鬼山だろう。大開は巌鬼山手前の1,430mピークで、ケルン、石室の残骸らしきもの、石仏や祠があり、そこから岩木山と巌鬼山がよく見えた。岩木山の右裾には大きな雪渓があり、巌鬼山とのコルにも雪渓が見えた。あの上を歩かないといけないかな。この先、いったん下り、巌鬼山に向かって登り返していくと、ちょっとしおれた一輪の紫がかったピンクの花を見る。これがミチノクコザクラに違いないと気付く。初めて見たミチノクコザクラ。巌鬼山のピークの手前に仏像や石板の並ぶ地点(赤倉御殿*)1,440mがあり、そこがルート上の巌鬼山頂上ということだろう。「赤倉大権現」と刻まれた大きな石板の右手から、道はいったん灌木斜面を下る。その先に巌鬼山最高点まで行く踏み跡があるのではないかと期待していたのだが、見つからない。頃合いでガーデン手袋をはめ、灌木斜面に取付く。薄ヤブを登って、まばらな灌木の岩尾根を南にたどる。灌木の中に咲いていたのは丸い花が縦に並んだベニバナイチヤクソウ。巌鬼山頂上まで残り50mくらいの地点まで来たところで密集した灌木に遮られ、斜面に下ってやり過ごし、再び尾根に上がり、GPSを片手に、ゆがんだ灌木でいっぱいの巌鬼山最高点1,470mに立つ。頂上には広場や道があることを期待していたが、何もなし。そこから岩木山へのルートに灌木斜面を下る。このときは霧がかかり、岩木山は見えていなかったが、眼下に雪渓が見えてくる。細長い白のツクバネウツギの咲く灌木斜面を下り、雪渓の脇まで下ると、ミチノクコザクラの大群落があった。こいつはすごい。これを見れただけでも登ってきた甲斐はあった。たくさん固まって風に揺れている紫がかったピンクの顔。白い花はイワウメだろうか。雪渓脇を行ったり来たりして不思議の国の花を眺める。

登山道は雪渓の中に消えていたので、大きな雪渓を登る。結構傾斜があって怖かったが、けりこまずにやや斜めに登り、あそこかなと見当をつけた地点に向かうと、そこに登山道があった。経験だな。そこからロープのある急斜面を登ると、ショウジョウバカマが咲いていた。1,550m付近でいったん平坦になる。今度は黄色いヘビイチゴ(キジムシロ、ミツバツチグリ?)の群落。丸い葉をした小さな花はコケモモ、白い花がぎっしり集まったナナカマド。そこから岩木山までにはもう一つ雪渓があり、その手前の道沿いにミチノクコザクラの群落があった(実はそこから北に微かな踏み跡をたどると、もう一つのミチノクコザクラの大群落が隠されていて、帰路でそこに立ち寄る。ハクサンチドリの群落もあった)。二つ目の雪渓も傾斜があり、今度は少しけりこんで慎重に登る。雪渓2の上から見下ろす巌鬼山は雲をかぶり、もうずいぶん低く見えていた。赤倉神社からの道は思った通り(この天気だし)誰にも会わなかったが、辿り着いた岩木山頂上は(2005年以来だからなんと14年ぶり)大勢の登山者たちで賑わっていた。誰かが鐘を鳴らしている。大きな岩の上を渡り、一等三角点、大町桂月歌碑#、そして鐘の頂上標識を再訪。大町桂月がここに立った時も、岩木山の頂上には青空が広がっていたに違いない。それから南に面した岩木山神社にお参りし、北側に戻って本日初めての休憩。雲で遠景はほとんど隠されており、北の街並みと田園のみが見えていたが、頂上は晴れていて、青空も見えている(下山してから見た岩木山は、逆に頂上が雲に隠れていた)。間違って買ってしまったアルミ缶ポカリスエットを飲み、ナッツを一袋食べる。平和な頂上。

#大町桂月歌碑 「四方八方(よもやも)の千万(ちよろず)の山を見下ろして 心にかかる雲もなき哉」大正11年10月14日、桂月

下りの最初の雪渓は傾斜があって怖かった。ゴムを外してないスティックは役に立たないが、かかとで少し踏み込み、足元がブレないようにすれば、比較的楽に降りられる。こういう雪渓で尻餅をついたことは何度かあり、このくらいの固さの雪なら止まると思うのだが、この日は尻餅はつかなかった。雪渓2の下のミチノクコザクラのところから北に、小さな沢沿いに微かな踏み跡がある。何の気なしにその踏み跡を辿ってみると、少し先にミチノクコザクラの大群落が隠されていた。花を踏まないようにして花の間を歩き回る。そこにはハクサンチドリも草の中に隠れて咲いていた。はるかな高みまで登って出会えた不思議の国。登山道に戻り、ロープのある急坂を下っていくと、登ってくるパーティに出会う。赤倉コースで出会ったのは、本日、最初で最後。学生たちのパーティだった。元気な声でこんにちわ。ちょっと疲れた顔。大鳴沢雪渓を下った時は霧が深くて下の景色が見えなかったが、見当をつけて下って行って、ちょうどミチノクコザクラの群落のところに出る。そしてもう一度、不思議の国の花の間を歩き回る。それから雪渓に沿って下り、登山道に戻る地点を探すが、見つからない。雪渓はどこまでも続いていて、GPSを見ると下り過ぎていたので登り返し、頃合いで斜面に取付き、登山道に復帰。往路では登山道を外れていたので、そこは初めて歩いたことになるが、やがて灌木尾根取付き点に達し、赤倉御殿に着く。

復路のとき、赤倉御殿から大開は霧に閉ざされていて視界がなく、淡々と下る。大開から鬼の土俵の間は、分岐から西側コースを下ってみるが、崩落しているところは無かった。テープが貼ってある箇所があり、そこが崩れかかっているのかもしれない。虫が気になり始めたので、鬼の土俵でザックを下ろし、虫スプレーを顔や首筋にスプレーする。ついでに2度目の休憩。鬼の横に座ってペットボトルのポカリを飲む。その先の分岐では、往路では岩場の通過に苦労したので、復路ではトラバース・コースを辿ってみる。だが、そのコースにもやっかいな大岩があり、しかも濡れているのでかえって歩きにくかったかもしれない。途中で北の田園風景が霞んで見えていた。伯母石のところで合流し、ほっとする。赤倉講社屋*まで下ると日が射していて、往路のときは閉じていたオダマキがたくさん咲いていた。再会したハデな橙色コウリンタンポポや大きな丸いピンポンマムも日差しに輝いていた。駐車地点には4台ほどが停まっていて、車の中で待っているらしい人もいた。近くにトラックが停めてあり、どこかを工事中らしい。広い神社なので、維持管理は大変だろうが、倒れた石仏もなんとかしてほしい。

帰りに寄った北小苑温泉というのはキャンプ場の中の温泉で、受付から少し歩かないといけない。湯は熱くてgood。受付の建物から風呂のある建物まで少し歩くが、途中にある池のそばに大きなアヤメが咲いていた。マックスでサシミとニギリを買い、(ついでにイワシやサバや野菜、パンも買い、)自宅でゆっくり食べる。こういうのも悪くない。

*「赤倉キレット」「赤倉講社屋」「大開」「赤倉御殿」等の出典は岩木山観光協会(iwakisan.com/touristinfo/2017/07/25/tozan_akakura/)

大石大神と赤倉大神の門標

朝3時に起き、4時に青森を出たときは小雨。登山口はカーナビ・マップではよくわからず、大石神社の赤い大鳥居のところで車を降りて案内図を調べるが、分岐しているすぐ先をどっちに行っていいのか分からない。右の良い道に入ると、正解だった。実は赤い大鳥居の左奥に大駐車場があったのだが、このときは気づかず、もう少し先の登山口手前のスペースまで入る。神社の境内の中だが誰もおらず、霧に包まれたひどい天気で、登るかどうか悩んだ。これまでなら、たぶん登らずに帰っただろう。だが今回は花を見るため、と割り切り、レインウェアにタフで出かける。

赤い鳥居

赤倉山神社

赤倉大神

目の前の赤倉大神の社にお参りしてから、登山道標識に向かって進む。最初に見たのは大きな白いヨメナの群落。道は左右に分かれ、道標はその中央の踏み跡を指しているように見えたので踏み跡を辿ってみるが、祠や石仏が並んでいるところだった。左の道に入り、赤倉沢にかかる橋を渡る。橋の手前に注意表示があり、「斜面崩落箇所、標高1,320m、26番観音付近」とある。通りにくくなっているのだろうが、なんとかなるだろう。最初は参道のような歩きやすい道、というか、800mほど先に赤倉講社屋群*とある赤倉神社の一角があり、そこまではその名の通りの参道。

ヨメナ

崩落箇所の注意

赤倉大山神社

シバザクラ

赤倉大山神社の奥に進み、赤倉講社屋の中をいったん左(東)に登って尾根に上がるが、尾根に上がる手前の広場に花がたくさん咲いていた。白いヨメナ、ピンクのシバザクラ、大きな丸いピンポンマム、ハデな橙色はコウリンタンポポという帰化植物、オダマキは朝は閉じていたが、下山時には大きく開いて下を向いていた。そしてナンテンハギらしきサヤエンドウのようなピンクの花。赤倉講社屋の先もしばらくは広い歩きやすい道。途中に一番観音像。その先にも数十メートルおきに石仏が設置されていたが、倒れたり壊れたりしているのがいくつかあった。一人旅なのでウォークマンを起動。白い小さいのはアリドオシ。薄暗い道脇にマイヅルソウ。

*「赤倉キレット」「赤倉講社屋群」「大開」「赤倉御殿」等の出典は岩木山観光協会(iwakisan.com/touristinfo/2017/07/25/tozan_akakura/)

ピンポンマム

ピンポンマム

コウリンタンポポ

コウリンタンポポ

オダマキ

オダマキ

青いオダマキ

ナンテンハギ

アリドオシ

一番観音像

伯母石

伯母石という大きな石のところが分岐になっていて、往路ではそれに気づかずに左の尾根コースに入る。伯母石は高さ2mはある大きな三角形の石で、下に隙間があるが、大人には狭そうだった。手前の石像にお賽銭といっしょに小さな鐘が置いてあったので、鳴らしてみる。このあたりでブナからツガの林に変わり、道は岩の多い狭い登山道となる。やがて大きな岩が積み重なったやっかいな岩場を越えていく。岩場に出ると、一面の霧の間に青空が広がり、行く手にすさまじく切れ落ちた谷(赤倉キレット*)が初めて見えた。その左のなだらかな峰が巌鬼山だった。岩場の奥には祠や仏像、日の当たる岩場にニガナが咲いている。ようやく岩場が終わって尾根の林の中の道に下ると、そこにトラバース・ルートとの合流点があった。

伯母石の標識

伯母石の小さな鐘

伯母石の岩峰

伯母石のピーク付近

初めて見えた巌鬼山と赤倉キレット

赤倉キレット

大ナギ

ニガナ

鬼の土俵

林の中の緩い尾根を登ると、鬼の土俵(標高1,078m)に着く。それは尾根の平坦なところの丸い切分で、石仏や祠が並び、その真ん中に鬼の像と標識がある。鬼の像は足のところが折れ、足に立て掛けてあったが、腹巻にチョッキを羽織り、なお威厳を保っているようだ。鬼の土俵から大開までの長い登りの間に最初に見たのはカラマツソウ。次いで尾根の先に再び赤倉キレットが見え、道脇には地味な色のミヤマハンショウヅル、白がはじけるマイヅルソウ、白とピンクのシャクナゲ、4枚花びらのゴゼンタチバナ、それにツガザクラ。ブーケのような白い花はイソツツジ。二十一番観音の先に、裏返しに立っている石仏があり、更に先に壊れた石仏もあった。修復されることを願う。高度が上がるとハクサンチドリにヘビイチゴ(キジムシロ?ミツバツチグリ?)。この先の尾根道でルートが二つに分かれており、赤倉キレット側が崩れているので東側ルートを切り開いたのだろうと思い、往路では東側ルートを歩くが、笹の刈り払い跡がひっかかって歩きにくかった。

鬼の土俵の鬼と標識

ミヤマハンショウヅル

マイヅルソウ

カラマツソウ

カラマツソウ

二十一番観音

白いシャクナゲ

ゴゼンタチバナ

初めて見えた岩木山頂上

その先のピーク(大開*)に上がる手前から視界が開け、雲間に岩木山の頂上が見えた。青空にすっくと立つ美しい緑。すると、その左にあるのが巌鬼山だろう。大開は巌鬼山手前の1,430mピークで、ケルン、石室の残骸らしきもの、石仏や祠があり、そこから岩木山と巌鬼山がよく見えた。岩木山の右裾には大きな雪渓があり、巌鬼山とのコルにも雪渓が見えた。あの上を歩かないといけないかな。この先、いったん下り、巌鬼山に向かって登り返していくと、ちょっとしおれた一輪の紫がかったピンクの花を見る。これがミチノクコザクラに違いないと気付く。初めて見たミチノクコザクラ。

裏返しに立っている石仏

(イソツツジじゃなくて)マルバシモツケ

これもマルバシモツケ

岩木山

岩木山

大開から見る巌鬼山と岩木山、西法寺山

巌鬼山

ピンクのシャクナゲ

初めて見たミチノクコザクラ(ちょっとくたびれてる)

壊れた石仏

岩木山

赤倉御殿の祠と石仏

巌鬼山のピークの手前に仏像や石板の並ぶ地点(赤倉御殿*)1,440mがあり、そこがルート上の巌鬼山頂上ということだろう。「赤倉大権現」と刻まれた大きな石板の右手から、道はいったん灌木斜面を下る。その先に巌鬼山最高点まで行く踏み跡があるのではないかと期待していたのだが、見つからない。頃合いでガーデン手袋をはめ、灌木斜面に取付く。薄ヤブを登って、まばらな灌木の岩尾根を南にたどる。灌木の中に咲いていたのは丸い花が縦に並んだベニバナイチヤクソウ。巌鬼山頂上まで残り50mくらいの地点まで来たところで密集した灌木に遮られ、斜面に下ってやり過ごし、再び尾根に上がり、GPSを片手に、ゆがんだ灌木でいっぱいの巌鬼山最高点1,470mに立つ。頂上には広場や道があることを期待していたが、何もなし。そこから岩木山へのルートに灌木斜面を下る。このときは霧がかかり、岩木山は見えていなかったが、眼下に雪渓が見えてくる。

赤倉大権現の石板

ベニバナイチヤクソウ

巌鬼山の頂上

ツクバネウツギ

雪渓1・大鳴沢雪渓

細長い白のツクバネウツギの咲く灌木斜面を下り、雪渓の脇まで下ると、ミチノクコザクラの大群落があった。こいつはすごい。これを見れただけでも登ってきた甲斐はあった。たくさん固まって風に揺れている紫がかったピンクの顔。白い花はイワウメだろうか。雪渓脇を行ったり来たりして不思議の国の花を眺める。

ミチノクコザクラ

ミチノクコザクラ

イワウメ

イワウメ

ミチノクコザクラ

ミチノクコザクラ

ショウジョウバカマ

登山道は雪渓の中に消えていたので、大きな雪渓を登る。結構傾斜があって怖かったが、けりこまずにやや斜めに登り、あそこかなと見当をつけた地点に向かうと、そこに登山道があった。経験だな。そこからロープのある急斜面を登ると、ショウジョウバカマが咲いていた。1,550m付近でいったん平坦になる。今度は黄色いヘビイチゴ(キジムシロ、ミツバツチグリ?)の群落。丸い葉をした小さな花はコケモモ、白い花がぎっしり集まったナナカマド。そこから岩木山までにはもう一つ雪渓があり、その手前の道沿いにミチノクコザクラの群落があった(実はそこから北に微かな踏み跡をたどると、もう一つのミチノクコザクラの大群落が隠されていて、帰路でそこに立ち寄る。ハクサンチドリの群落もあった)。二つ目の雪渓も傾斜があり、今度は少しけりこんで慎重に登る。

コケモモ

コケモモ

ナナカマド

ヘビイチゴ

ヘビイチゴ

ミチノクコザクラ

ミチノクコザクラ

ハクサンチドリ

ハクサンチドリ

雪渓2

巌鬼山

雪渓2の上から見下ろす巌鬼山は雲をかぶり、もうずいぶん低く見えていた。赤倉神社からの道は思った通り(この天気だし)誰にも会わなかったが、辿り着いた岩木山頂上は(2005年以来だからなんと14年ぶり)大勢の登山者たちで賑わっていた。誰かが鐘を鳴らしている。大きな岩の上を渡り、一等三角点、大町桂月歌碑#、そして鐘の頂上標識を再訪。大町桂月がここに立った時も、岩木山の頂上には青空が広がっていたに違いない。それから南に面した岩木山神社にお参りし、北側に戻って本日初めての休憩。雲で遠景はほとんど隠されており、北の街並みと田園のみが見えていたが、頂上は晴れていて、青空も見えている(下山してから見た岩木山は、逆に頂上が雲に隠れていた)。間違って買ってしまったアルミ缶ポカリスエットを飲み、ナッツを一袋食べる。平和な頂上。

#大町桂月歌碑(2002年8月)「四方八方(よもやも)の千万(ちよろず)の山を見下ろして 心にかかる雲もなき哉」大正11年10月14日、桂月

岩木山頂上

一等三角点

大町桂月歌碑

大町桂月歌碑(2002年8月)「四方八方(よもやも)の千万(ちよろず)の山を見下ろして心にかかる雲もなき哉」大正11年10月14日、桂月

鐘の頂上標識

岩木山神社

岩木山頂上

北の情景

一代堂

下りの最初の雪渓は傾斜があって怖かった。ゴムを外してないスティックは役に立たないが、かかとで少し踏み込み、足元がブレないようにすれば、比較的楽に降りられる。こういう雪渓で尻餅をついたことは何度かあり、このくらいの固さの雪なら止まると思うのだが、この日は尻餅はつかなかった。雪渓2の下のミチノクコザクラのところから北に、小さな沢沿いに微かな踏み跡がある。何の気なしにその踏み跡を辿ってみると、少し先にミチノクコザクラの大群落が隠されていた。花を踏まないようにして花の間を歩き回る。そこにはハクサンチドリも草の中に隠れて咲いていた。はるかな高みまで登って出会えた不思議の国。登山道に戻り、ロープのある急坂を下っていくと、登ってくるパーティに出会う。赤倉コースで出会ったのは、本日、最初で最後。学生たちのパーティだった。元気な声でこんにちわ。ちょっと疲れた顔。大鳴沢雪渓を下った時は霧が深くて下の景色が見えなかったが、見当をつけて下って行って、ちょうどミチノクコザクラの群落のところに出る。そしてもう一度、不思議の国の花の間を歩き回る。それから雪渓に沿って下り、登山道に戻る地点を探すが、見つからない。雪渓はどこまでも続いていて、GPSを見ると下り過ぎていたので登り返し、頃合いで斜面に取付き、登山道に復帰。往路では登山道を外れていたので、そこは初めて歩いたことになるが、やがて灌木尾根取付き点に達し、赤倉御殿に着く。

北小苑温泉のアヤメ

復路のとき、赤倉御殿から大開は霧に閉ざされていて視界がなく、淡々と下る。大開から鬼の土俵の間は、分岐から西側コースを下ってみるが、崩落しているところは無かった。テープが貼ってある箇所があり、そこが崩れかかっているのかもしれない。虫が気になり始めたので、鬼の土俵でザックを下ろし、虫スプレーを顔や首筋にスプレーする。ついでに2度目の休憩。鬼の横に座ってペットボトルのポカリを飲む。その先の分岐では、往路では岩場の通過に苦労したので、復路ではトラバース・コースを辿ってみる。だが、そのコースにもやっかいな大岩があり、しかも濡れているのでかえって歩きにくかったかもしれない。途中で北の田園風景が霞んで見えていた。伯母石のところで合流し、ほっとする。赤倉講社屋*まで下ると日が射していて、往路のときは閉じていたオダマキがたくさん咲いていた。再会したハデな橙色コウリンタンポポや大きな丸いピンポンマムも日差しに輝いていた。駐車地点には4台ほどが停まっていて、車の中で待っているらしい人もいた。近くにトラックが停めてあり、どこかを工事中らしい。広い神社なので、維持管理は大変だろうが、倒れた石仏もなんとかしてほしい。

青空なのに雲をかぶっている岩木山

帰りに寄った北小苑温泉というのはキャンプ場の中の温泉で、受付から少し歩かないといけない。湯は熱くてgood。受付の建物から風呂のある建物まで少し歩くが、途中にある池のそばに大きなアヤメが咲いていた。マックスでサシミとニギリを買い、(ついでにイワシやサバや野菜、パンも買い、)自宅でゆっくり食べる。こういうのも悪くない。

*「赤倉キレット」「赤倉講社屋」「大開」「赤倉御殿」等の出典は岩木山観光協会(iwakisan.com/touristinfo/2017/07/25/tozan_akakura/)