南八甲田・櫛ヶ峰、横岳 大雪原の縦走

青森県  櫛ヶ峰1,517m、横岳(最高点1,350m、三角点1,340m)、ガチャボッチ1,285m  2011年4月18日

(櫛ヶ峰)東北百名山

(櫛ヶ峰、横岳)青森110山

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出典:ガチャボッチ  旧「青森県の山」p73、横岳「山頂から南東側に見える一段低くなった小ピークは「ガチャボッチ」と呼ばれ、その向こうに櫛ヶ峰の大きな山容が迫る」

ブナ林を抜けてアオモリトドマツが多くなると、左手に北八甲田が見えてくる。最初は樹間に部分的に見えていたが、やがて雪原に出ると北八甲田の全景が現われる。大岳を中心に様々な形の峰が立ち並ぶ様は百花繚乱の感があり、白い雪をまとった姿は実に荘厳。

横岳頂上から櫛ヶ峰に向かって急斜面を滑走。行く手に巨大な櫛ヶ峰と大雪原の縦走路が視界いっぱいに広がる。大自然に向かってジャンプ!

そこは初めて歩く大雪原で、櫛ヶ峰の前にまずガチャボッチ*を目指す。上空にはジェット雲、ヘリコプターもやってきた。そして、ガチャボッチの最高点(1,285m)と思われるピークに達する。10時前。ホットケーキを食べる。

縦走路の最低コル(1,250m)から緩やかに登っていくと、背後には真っ白なガチャボッチと横岳が、まるで兄弟のように同じ姿で並んでいた。

高度が上がるに従い景観がぐんぐん広がり、広大な南八甲田の雪原が見渡す限りに広がる。背後には横岳と櫛ヶ峰の間の大雪原、行く手には櫛ヶ峰と乗鞍の間の大雪原。その向こうには十和田三山(戸来岳の二つの峰、十和田山、十和利山)。十和田湖と牧場の白の間には御鼻部山。

そして、櫛ヶ峰の頂上に達する。前回来たのは2004年だから、7年ぶりになる。頂上標識も二等三角点も変わりないように見えたが、頂上標識の文字がずいぶん薄くなっているようだ。その背景にある北八甲田の諸峰は変わり無し。

シールを外し、滑走開始。櫛ヶ峰の大斜面に飛び込む。連続ショートターンでぐいぐい滑るが、いくら滑っても底はまだ下。やや左に向かってターンを切っていく。これだけ長いショートターン・トレースをつけたのは初めてだなあ。しかも全く他のトレースのないまっさらな雪斜面にただ一つのシュプール。

傾斜がだいぶ緩くなり、もうこのへんでいいだろうというところで滑走を止め、北へトラバースしていく。背後には少し内側に彎曲した大斜面の上から、ショートターントレースが小さくやや斜めについている。本日のハイライト。トレースはオーバーハングの向こうに消えているので、実際にはここから見えている数倍あるだろう。

7年ぶりの櫛ヶ峰に、横岳からガチャボッチ経由で登る。早朝に出発し、天気にも恵まれ、最高のツアーとなる。ビバ八甲田。

 横岳頂上から櫛ヶ峰に向かって急斜面を滑走。行く手に巨大な櫛ヶ峰と大雪原の縦走路が視界いっぱいに広がる。大自然に向かってジャンプ!
 縦走路の最低コル(1,250m)から緩やかに登っていくと、背後には真っ白なガチャボッチと横岳が、まるで兄弟のように同じ姿で並んでいた。
 櫛ヶ峰の大斜面に飛び込む。連続ショートターンでぐいぐい滑るが、いくら滑っても底はまだ下
 横岳・最高点の頂上南端に行くと、そこには頂上標識がある
櫛ヶ峰頂上
 最後は駐車場裏斜面の真上に出る。
  5:54 城ヶ倉大橋西駐車場発  7:51 逆川岳  8:58 横岳(最高点)  9:55 ガチャボッチ11:31 櫛ヶ峰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り5時間37分11:55 櫛ヶ峰発、滑走12:25 ガチャボッチ(通過)12:43 シール13:23 横岳13:37 横岳発、滑走13:54 逆川岳14:27 城ヶ倉大橋西駐車場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復8時間33分

***********************

前日、コンビニで夕食を買い、城ヶ倉に向かう。萱野高原には月がかかり、少し雲をかぶった八甲田が幻想的。西に右折すると岩木山が夕日に染まっている。城ヶ倉大橋・西駐車場のトイレは雪に埋まっていて使えない。城ヶ倉大橋の東・駐車場のトイレを使うように案内があり、従ってそっちの駐車場に泊まることにする。空には満月が明るいが、外は寒く、雪解けの水が凍っている。この日は初めて、ビールではなく、ハイボールにしたと思うが、ソーダ水があると飲みすぎてしまう感あり。スタートレックを見ながら食事。クリンゴンのコロス隊長は雄冬からの続き、神との対決の途中で就寝。夜間も車がときどき往来。どうやらゲートは開いていて、夜も通れるようだ。

翌朝4時半頃、もう外は快晴。いい日になりそうだ。湯を沸かしてテルモスに入れ、朝食をとり、出発。城ヶ倉大橋を渡って西駐車場に止め、スキーを出して出発。6時前。駐車場裏の雪壁を東回りに登ると正面から朝日がさしてくる。途中に沢筋があるので、それを途中で越えて西の主尾根に乗る。ブナの林を登って行く。雪はザラメが凍りついている感じで、ほとんどトレースはつかない。登るに従い気温が上がってきて、ネックウォーマーを外し、手袋を小さいのに替える。右手に横岳の尾根が見え、ブナ林を抜けてアオモリトドマツが多くなると、左手に北八甲田が見えてくる。最初は樹間に部分的に見えていたが、やがて雪原に出ると北八甲田の全景が現われる。大岳を中心に様々な形の峰が立ち並ぶ様は百花繚乱の感があり、白い雪をまとった姿は実に荘厳。7時半すぎには上着も脱ぎ、横岳と逆川の稜線が見えるところからやや西に向かって逆川の頂上に立つ。標識があるわけではないが、前もここにきていると思うので、ここを逆川の頂上としていいように思う。正面には櫛ヶ峰に駒ヶ峰、その下には横沼があるはずだが見えない。樹間に隠れていたようで、横沼は逆川頂上の真下にある。そこから横岳の間は直線ではなく、大雪原の南斜面が弓なりに切れ落ちているので、だいぶ北側まで回っていかなくてはならない。8時前、最初の休憩をとる。

逆川から横岳に向かう。横沼が樹間に少しづつ見えてくる。やはりあそこにあるのか。点在するアオモリトドマツの葉には雪がついていて、朝日にきらめく。横岳との間にある丘を登るとそこはアオモリトドマツの林になっており、いったん見えなくなっていた横岳の長い頂上が再び見えてくる。アオモリトドマツの林を抜けると、しばらくの間、真白な雪原斜面を登り、それから木々がまばらに見えてきて、横岳の頂上稜線に達する。頂上稜線の向こうに見えているピークは南沢岳だ。頂上稜線には踏跡、トレースにスノーモービルの跡もある。そこは横岳頂上稜線の南端(最高点)から数十メートル北側だが、三角点のある位置よりも南側だったと思う。南沢の奥に櫛ヶ峰・下岳が見えており、その左手前に櫛ヶ峰が横岳の南ピークと重なっている。横岳・最高点の頂上南端に行くと、そこには頂上標識がある。青森ミドルSC、10周年記念というのは、毎年登っているのだろう。櫛ヶ峰をバックにスタンドを立てて記念撮影。2回目の休憩、9時前。横岳頂上から櫛ヶ峰に向かって急斜面を滑走。行く手に巨大な櫛ヶ峰と大雪原の縦走路が視界いっぱいに広がる。大自然に向かってジャンプ!シールを外さなかったのは時間がもったいないと思ったからだが、かなり長い急斜面だったので、シールを外して滑走を楽しむべきだった。途中までは尾根沿いを滑り、途中から南斜面に入ってターンを切ってみる。かなりの急斜面で、それにやたらに広いので水平感覚がなくなりそうだが、シールのままでビンディングも外したまま、2~3回、大きくターンを切って滑る。軽くジャンプする感じにするとうまくいくようだ。調子よく滑り、少しオーバーハングしているように見える手前でストップ。そこは雪庇になっていて、そのまま滑っていたら危なかったかもしれない。シールでなければ軽くジャンプしてクリアしていただろうが、このあたりの感覚も経験だな。

中央雪原に滑りこみ、遅ればせながらクローチング姿勢をとるが、そんなには滑らない。振り返ると大きな三角形の白い斜面の途中にターントレースがくっきりついている。まあ、シールにしてはうまい方だろう。さて、そこは初めて歩く大雪原で、櫛ヶ峰の前にまずガチャボッチ*の2つのピークを目指す。前方右に一つ、左にやや高いのが一つ見える。その先にもっと高いピークがあるが、櫛ヶ峰の一部だろう。大雪原には踏跡が2~3あり、横岳から櫛ヶ峰に行っている人がいるようだ。踏跡はガチャボッチの左のピークに向かうが、私はまず右のピーク(ガチャボッチ北峰1,270m)に向かう。雪の丘の右端にある小さなピーク。そこにストックを立てて四周を見ると、櫛ヶ峰が南の空を覆い、三角形の横岳の左上に頂上稜線の背中が見えている。南沢は木々の向こう。ガチャボッチ北峰から滑り降り、本峰に向かう。青い空に白い雪の三角形、その上に二本のトレース。上空にはジェット雲、ヘリコプターもやってきた。そして、ガチャボッチの最高点(1,285m)と思われるピークに達する。スキーを外して裏返し、3回目の休憩。10時前。ホットケーキを食べる。櫛の頂上はたぶん風で寒いだろう。ガチャボッチの雪原の東側には大きな深い沢があり、その向こうに台地がある。だいぶ高低差がありそうだ。行く手には櫛ヶ峰の北尾根末端のピークが二つ(P1・1,280m、P2・1,320m)。奥のが険しそうだ。その左奥に駒ヶ峰があるが、三つほどのピークのあるいびつな矮小な形に見える。

*出典ガチャボッチ:旧「青森県の山」p73、横岳「山頂から南東側に見える一段低くなった小ピークは「ガチャボッチ」と呼ばれ、その向こうに櫛ヶ峰の大きな山容が迫る」

ガチャボッチから北東方面に雪斜面を滑り降りる。このくらいの斜面なら、シールでもきれいなショートターントレースが残る。縦走路の最低コル(1,250m)はその広い雪原の中にあり、そこから緩やかに登っていく。東には北八甲田が少しづつ形を変えており、小岳と硫黄岳が右側に頭をかしげ、右半分に白い雪斜面がある同じような姿で見えている。背後には真っ白なガチャボッチと横岳が、まるで兄弟のように同じ姿で並んでいた。櫛ヶ峰P1の前にマイナーピークを3つほど認定。最低コルからP1まで高低差は30m、20分程度。しかし駒ヶ峰は近づき、背後の横岳とガチャボッチはだいぶ遠くなった。P1を越えると、もうガチャボッチよりも高くなる。雪原東の沢筋はすぐ左手に迫り、谷底は見えない。P1へ斜めに登って行くと、その斜面の向こうにP2の頭と櫛ヶ峰の頂上部分が見えてくる。最後のところは九十九折りに登ってP1に到達。もう櫛ヶ峰は真上にあって姿が変わっており、駒ヶ峰は三角形になり、その右奥に乗鞍が見えている。これまたいびつな姿。P2へは急傾斜だが、雪のうねりをキックターンでうまく越え、P2の上に立つ。11時前。今度は櫛ヶ峰の稜線の裏から戸来岳が見えている。奥に大駒の平らな頂上、手前に三ツ岳の尖った二つのピーク。その手前に一段低い平らなピークが見えるが、それが三ツ岳の三つ目のピークなのだろうか。行く手の櫛ヶ峰への稜線には頂上手前のコブが見えるが、ピークにはなっていない。そこを登っていくと、今度は北西方面に南沢と岩木山が見える。高度が上がるに従い景観がぐんぐん広がり、広大な南八甲田の雪原が見渡す限りに広がる。背後には横岳と櫛ヶ峰の間の大雪原、行く手には櫛ヶ峰と乗鞍の間の大雪原。その向こうには十和田三山(戸来岳の二つの峰、十和田山、十和利山)。十和田湖と牧場の白の間には御鼻部山。

最初のコブに到達。行く手には頂上の前にもうひとつコブがあるようだ。右手奥に下岳が見えるが、下岳も横岳も駒ヶ峰も、もうここより低くなっている。ここで、東斜面から登ってきている太いトレースに気付く。どうやらスノーモービルがここまで登ってきているようだ。なんとも落ち着かない話だが、トレースは頂上まで続いていた。その東斜面を覗き込むと、広大な雪斜面がはるか下まで繋がっているのが見える。この無限の大斜面も八甲田で滑るべきクラシック斜面である。その向こうには駒ヶ峰といびつな乗鞍、その間に頭が見えているのは赤倉だろうか。二つ目のコブに登っていくと、オーバーハングの先に二つのピークが見えてくる。右手前のは手前に張り出している丘で、左奥のピークの上に頂上標識が見える。あれが頂上だ。頂上の手前まで達するとそこは平らなテラスのようになっていて、その奥に右手前のピーク。それは実際にはずいぶん小さい。テラスには祠があるはずだが、雪に埋まっているのか、見当たらない。そして、櫛ヶ峰の頂上に達する。前回来たのは2004年だから、7年ぶりになる。頂上標識も二等三角点も変わりないように見えたが、頂上標識の文字がずいぶん薄くなっているようだ。その背景にある北八甲田の諸峰は変わり無し。今回初めてなのは、南から西の遠景が見えていたことである。十和田湖は斜めにわずかではあるが見えており、その南西にある頂の平らなのが白地山。西には低い山が折り重なっており、下岳の向こうに二列の山並みがあり、奥の山頂が白いのが6年前に登った雷山(毛無山?)かもしれない。その背景には白神がうっすらと見えている。

櫛ヶ峰の頂上に来てスキーを外してひっくりかえし、カメラ・スタンドを立てようとしていると、突然スキーの男性が現われ、続いて徒歩の男性が南側から登ってきた。スキーの男性は城ヶ倉大橋から横沼経由できたと言っていたが、徒歩の男性はどちらから来たのか不明。東側には全然踏跡がないので、横岳から来たのではないか(この日は月曜なので、快晴とはいえ、人に会うとは思わなかった)。寒くて上着を着ているが、日が照っているので、横になって少し目をつぶる。いい気分。そしてシールを外し、滑走開始。スキーの男性はテレマーク・スキーで、先に出て行ったが、大斜面を滑らずに往路を戻っていったようだ。せっかく櫛ヶ峰にきたのだから、大斜面を滑っておかなくては。徒歩の男性を残して頂上を発ち、さっそく櫛ヶ峰の大斜面に飛び込む。連続ショートターンでぐいぐい滑るが、いくら滑っても底はまだ下。降りきってからシールをつけて登り返すことも考えたが、登り返しは減らしておきたいので、やや左に向かってターンを切っていく。背後のターン・トレースは最初はオーバーハングで上が見えなくなるが、更に下ると延々と続くショートターンのトレースがやや斜めに見える。これだけ長いショートターン・トレースをつけたのは初めてだなあ。しかも全く他のトレースのないまっさらな雪斜面にただ一つのシュプール。傾斜がだいぶ緩くなり、もうこのへんでいいだろうというところで滑走を止め、北へトラバースしていく。そのままトラバースしていけば尾根に着くだろう。実際には、スキーが少し上を向いているので、少しづつ登っていく感じになる。背後には少し内側に彎曲した大斜面の上から、ショートターントレースが小さくやや斜めについている。本日のハイライト。トレースはオーバーハングの向こうに消えているので、実際にはここから見えている数倍あるだろう。

トラバースは10分弱だったが、休み休み進み、だいぶ長く感じた。上を見上げると、斜面の上辺に大きな雪庇がある。間違ったところから斜面に下ると雪庇を飛び越えてしまうのか・・・と後で気づく(そういえば、シャクナゲ山の下りで、雪庇に気付かずに落ちたことがあった・・・)。大斜面を北にトラバースしていって稜線に近づくと人が見える。それは、先に下って行ったスキーの男性かと思ったら違っていて、登ってくる途中の人だった。その後に何人も続いていて、結局5人くらいとすれ違う。稜線に戻り見上げると、先に出た男性のものらしい大きなターントレースがついている。私はショートターンを刻むが、その前に上着を脱ぎ、手袋も取る。ここまで下ると風も無く、暖かい。ショートターンで滑走開始し、登ってくる二人に挨拶しながら通り過ぎ、またたく間にP2手前に着く。振り返ると、スキートレースのほかに、歩いた踏跡が一つあり、頂上で会った男性のものと思われる。P1から北東方面を見ると、逆川と横沼のあるあたりからうねりながら沢がやってきていて、そのうねりのところに雪原が突き出ている。雪原の東側、沢の東側と西側の段差は数十メートルありそうだ。P1からは谷側の急斜面を飛び降りて通過。登ったのは山側だが、そっちには次のグループが登っていたと思う。P1の急斜面にショートターンを刻み、雪原にクローチングで滑り込んだところで櫛ヶ峰からの滑走終了。そこからはビンディングを外しての歩きとなる。振り返ると、櫛ヶ峰の稜線を登る二人と、P2に達しようとする一人が見える。P2の陰にあと二人いるはずなので、総数5人ということだろう。

最低コルからは緩い登りとなり、ガチャボッチ本峰の脇を東側にやや膨らんで通過。軽い斜め登りの感じ。たくさんある登りトレースの東側をとる。それからガチャボッチ北峰をめざしてカニ登り。ガチャボッチ本峰から北峰まで10分足らずであるが、休むと滑ってしまうので歩いている間はきつい。北峰の手前からようやく下り斜面となり、できる限り横岳方面に滑り、停止したところで休憩5回目。ここでシールをつけるが、このときに先行する男性に追いつきそうなところまで来ていた。こっちが休んだのでその後男性がどっちへ行ったのか不明。このときはまだ13時前。空は快晴。櫛ヶ峰の斜面を登り返すなど、もっとゆっくりしてきて良かったのだが、なぜか先を急いでいたなあ。さて、シールでゆっくりマイペースで横岳に向かうと、なんと、横岳の南斜面に頂上からやや右よりに滑り降りたスキートレースがついている。さっきの5人のうちの何人かが、シールを外して滑ったようだ。しまった、私もシールを外して滑るんだった。横岳の麓に達し、下ってきたトレースの付近を九十九折に登る。この頂上直下を滑っているのはシールで滑った私だけのようだ。麓のところにはトレースはたくさん集結しているので、尾根沿いに降りた人もいたのかもしれない。途中で尾根に乗り換え、登っていくと、女性が一人立っている。誰かを待っている様子で、挨拶して脇を通り、横岳の頂上標識のあたりにザックを置いて最後の休憩。いやあ疲れた、でももう後は滑るだけだ。シールを取って帰る準備をしていると、さっきの女性がやってきて、3人に会わなかったか、と聞くので、櫛ヶ峰頂上で二人、下るときに5人に会った、もう頂上に着いて、下っているはず、と答える。ついでに写真を何枚かとってもらうが、その間にバッテリーが切れ、取り替えて写してもらう。絶景なんだが、背景に人物が負けてる。

さて、スキーを付けて滑走再開。横岳頂上直下の東斜面は、南斜面ほどではないがかなりの傾斜があり、ショートターンを楽しむ。融けかけてテカテカに光る雪面にトレースを残していく。斜面にはもうひとつ大きくターンしている滑走トレースがあり、櫛ヶ峰頂上で会った男性のものと思われる。すると、横沼の方に向かわず、横岳に登り返したのだ。逆川への中間地点にある林のところから二つ目の急斜面。これは長い斜面ではないが、下からは横岳直下のトレースと中間斜面のトレースがまるでつながっているように見える。そこからは横沼と北八甲田を見ながら進む。横沼にはあの男性が通った跡は残っていない。横岳の真上の稜線にはひび割れができはじめていて、通り過ぎた後で見ると大きな雪庇があり、そのうち落ちそうだ。逆川の頂上は横沼のところがくびれた稜線を大きく回りこんだところにある。櫛ヶ峰は正面に見えるが、横岳の頂上は中間ピークと重なってほとんど見えず、真下にある横沼も樹木の陰でほとんど見えない。逆川からは、北側の広大な雪原を越えて滑走。この斜面は間違えようがなさそうに見えて、いつも林に入ってから迷っている。登りトレースを本能的に探して辿るが、それも気まぐれに途中で消えてしまう。今回は、滑走トレース1本と登りトレースが1本あったが、どちらも自分のものではない。傾斜はそこそこあるのでショートターンを刻んでいくが、林に入って全く先行トレースがなくなり、東寄りに進む。これが実は間違いなのだが、その東側(酸ヶ湯?)から来ているトレースをひとつ見た。やがて尾根になって下り始めたが、こんな尾根を登ってきた覚えは無い。トレースも全く無い。その尾根の西側にトラバースし、西隣の尾根に乗り換え、更にトラバース。もうひとつの沢筋をトラバースしてもう一つ西隣の尾根に乗り換え、その林の中で登りトレースを発見。やれやれ。

もう大丈夫だろうと登りトレースに沿って滑るが、早朝の登りトレースは消えかけていて、ときどき見失い、左右に滑って再発見する。そして城ヶ倉大橋付近の車道が見え、沢筋に滑り込んで駐車場に至る尾根に乗る。そのあたりは最後のショートターンを楽しんでいて、斜面に水平に進み、目的地点の真上からショートターンでまっすぐに下る。それを4~5本で駐車場尾根に乗り、最後は駐車場裏斜面の真上に出る。その雪壁の斜面をトラバースし、最後に180度ジャンプターンをして取付点に着き、滑走終了。ご苦労さん。他に車が一台。横岳の女性は沖場平(七倉橋?)から来たと言っていたから、その前の二人か、もしくは徒歩の男性、もしくはそれ以外の人のものだろう。ゆっくりスキーを片付け、翌週に備えてワックスを塗っておく。

城ヶ倉大橋の上から逆川方面を眺める。小尾根がいくつか見えるが、あの一番奥の尾根あたりを下ろうとしていたのか、危ない所だ。値上がりした城ヶ倉温泉には寄らず、山を降りてかっぱの湯に寄っていく。風呂に入って暖まり(シャンプーと石鹸は持込)、帰りに入口で野菜を買っていく。7年ぶりの櫛ヶ峰に、横岳からガチャボッチ経由で登る。当初は一泊で考えたこのツアーは、十分に日帰りできると考え、早朝に出発し、天気にも恵まれ、最高のツアーとなる。櫛ヶ峰大斜面をもう一本と、横岳南斜面の滑走を次回には計画しよう。ビバ八甲田。

 前日

夕暮れの八甲田

前日、コンビニで夕食を買い、城ヶ倉に向かう。萱野高原には月がかかり、少し雲をかぶった八甲田が幻想的。西に右折すると岩木山が夕日に染まっている。城ヶ倉大橋・西駐車場のトイレは雪に埋まっていて使えない。城ヶ倉大橋の東・駐車場のトイレを使うように案内があり、従ってそっちの駐車場に泊まることにする。空には満月が明るいが、外は寒く、雪解けの水が凍っている。この日は初めて、ビールではなく、ハイボールにしたと思うが、ソーダ水があると飲みすぎてしまう感あり。スタートレックを見ながら食事。クリンゴンのコロス隊長は雄冬からの続き、神との対決の途中で就寝。夜間も車がときどき往来。どうやらゲートは開いていて、夜も通れるようだ。

萱野高原の夕暮の月と八甲田

夕焼けの岩木山

 当日

夜明けの岩木山

早朝の横岳

朝の駐車場裏斜面

翌朝4時半頃、もう外は快晴。いい日になりそうだ。湯を沸かしてテルモスに入れ、朝食をとり、出発。城ヶ倉大橋を渡って西駐車場に止め、スキーを出して出発。6時前。駐車場裏の雪壁を東回りに登ると正面から朝日がさしてくる。途中に沢筋があるので、それを途中で越えて西の主尾根に乗る。ブナの林を登って行く。雪はザラメが凍りついている感じで、ほとんどトレースはつかない。

ブナ林

日の出

アオモリトドマツ

登るに従い気温が上がってきて、ネックウォーマーを外し、手袋を小さいのに替える。右手に横岳の尾根が見え、ブナ林を抜けてアオモリトドマツが多くなると、左手に北八甲田が見えてくる。最初は樹間に部分的に見えていたが、やがて雪原に出ると北八甲田の全景が現われる。大岳を中心に様々な形の峰が立ち並ぶ様は百花繚乱の感があり、白い雪をまとった姿は実に荘厳。7時半すぎには上着も脱ぎ、横岳と逆川の稜線が見えるところからやや西に向かって逆川の頂上に立つ。標識があるわけではないが、前もここにきていると思うので、ここを逆川の頂上としていいように思う。正面には櫛ヶ峰に駒ヶ峰、その下には横沼があるはずだが見えない。樹間に隠れていたようで、横沼は逆川頂上の真下にある。そこから横岳の間は直線ではなく、大雪原の南斜面が弓なりに切れ落ちているので、だいぶ北側まで回っていかなくてはならない。8時前、最初の休憩をとる。

 横岳付近から見る北八甲田: 田茂萢岳(北峰、南峰)、赤倉岳、井戸岳、大岳、小岳、硫黄岳、高田大岳、黒森

 逆川岳付近から南の景観:乗鞍岳、駒ヶ峰、櫛ヶ峰、ガチャボッチ、下岳、横岳

逆川岳頂上から横岳

 逆川岳付近から見る櫛ヶ峰: 櫛ヶ峰、ガチャボッチ、下岳

横岳の頂上標識

逆川から横岳に向かう。横沼が樹間に少しづつ見えてくる。やはりあそこにあるのか。点在するアオモリトドマツの葉には雪がついていて、朝日にきらめく。横岳との間にある丘を登るとそこはアオモリトドマツの林になっており、いったん見えなくなっていた横岳の長い頂上が再び見えてくる。アオモリトドマツの林を抜けると、しばらくの間、真白な雪原斜面を登り、それから木々がまばらに見えてきて、横岳の頂上稜線に達する。頂上稜線の向こうに見えているピークは南沢岳だ。頂上稜線には踏跡、トレースにスノーモービルの跡もある。そこは横岳頂上稜線の南端(最高点)から数十メートル北側だが、三角点のある位置よりも南側だったと思う。南沢の奥に櫛ヶ峰・下岳が見えており、その左手前に櫛ヶ峰が横岳の南ピークと重なっている。

横岳からのシール滑走

横岳・最高点の頂上南端に行くと、そこには頂上標識がある。青森ミドルSC、10周年記念というのは、毎年登っているのだろう。櫛ヶ峰をバックにスタンドを立てて記念撮影。2回目の休憩、9時前。横岳頂上から櫛ヶ峰に向かって急斜面を滑走。行く手に巨大な櫛ヶ峰と大雪原の縦走路が視界いっぱいに広がる。大自然に向かってジャンプ!シールを外さなかったのは時間がもったいないと思ったからだが、かなり長い急斜面だったので、シールを外して滑走を楽しむべきだった。途中までは尾根沿いを滑り、途中から南斜面に入ってターンを切ってみる。かなりの急斜面で、それにやたらに広いので水平感覚がなくなりそうだが、シールのままでビンディングも外したまま、2~3回、大きくターンを切って滑る。軽くジャンプする感じにするとうまくいくようだ。調子よく滑り、少しオーバーハングしているように見える手前でストップ。そこは雪庇になっていて、そのまま滑っていたら危なかったかもしれない。シールでなければ軽くジャンプしてクリアしていただろうが、このあたりの感覚も経験だな。

横沼

 横岳南斜面から見る縦走路と櫛ヶ峰: ガチャボッチ、櫛ヶ峰、下岳、毛無山、白神岳、南沢岳

大雪原の縦走路

横岳からのシール滑走

 縦走路から見る北八甲田と南八甲田: 大岳、駒ヶ峰、ガチャボッチ、櫛ヶ峰

ガチャボッチ北峰

下岳

ガチャボッチ頂上

中央雪原に滑りこみ、遅ればせながらクローチング姿勢をとるが、そんなには滑らない。振り返ると大きな三角形の白い斜面の途中にターントレースがくっきりついている。まあ、シールにしてはうまい方だろう。さて、そこは初めて歩く大雪原で、櫛ヶ峰の前にまずガチャボッチ*の2つのピークを目指す。前方右に一つ、左にやや高いのが一つ見える。その先にもっと高いピークがあるが、櫛ヶ峰の一部だろう。大雪原には踏跡が2~3あり、横岳から櫛ヶ峰に行っている人がいるようだ。踏跡はガチャボッチの左のピークに向かうが、私はまず右のピーク(ガチャボッチ北峰1,270m)に向かう。雪の丘の右端にある小さなピーク。そこにストックを立てて四周を見ると、櫛ヶ峰が南の空を覆い、三角形の横岳の左上に頂上稜線の背中が見えている。南沢は木々の向こう。ガチャボッチ北峰から滑り降り、本峰に向かう。青い空に白い雪の三角形、その上に二本のトレース。上空にはジェット雲、ヘリコプターもやってきた。そして、ガチャボッチの最高点(1,285m)と思われるピークに達する。スキーを外して裏返し、3回目の休憩。10時前。ホットケーキを食べる。櫛の頂上はたぶん風で寒いだろう。ガチャボッチの雪原の東側には大きな深い沢があり、その向こうに台地がある。だいぶ高低差がありそうだ。行く手には櫛ヶ峰の北尾根末端のピークが二つ(P1・1,280m、P2・1,320m)。奥のが険しそうだ。その左奥に駒ヶ峰だあるが、三つほどのピークのあるいびつな矮小な形に見える。

*出典:旧「青森県の山」p73、横岳「山頂から南東側に見える一段低くなった小ピークは「ガチャボッチ」と呼ばれ、その向こうに櫛ヶ峰の大きな山容が迫る」

ホットケーキ

ガチャボッチからのシール滑走

南から見る白いガチャボッチ

 ガチャボッチの先から見る櫛ヶ峰: P1・1,280m、P2・1,320m、櫛ヶ峰

P1とP2

P2とP1と櫛ヶ峰

ガチャボッチと横岳

ガチャボッチから北東方面に雪斜面を滑り降りる。このくらいの斜面なら、シールでもきれいなショートターントレースが残る。縦走路の最低コル(1,250m)はその広い雪原の中にあり、そこから緩やかに登っていく。東には北八甲田が少しづつ形を変えており、小岳と硫黄岳が右側に頭をかしげ、右半分に白い雪斜面がある同じような姿で見えている。背後には真っ白なガチャボッチと横岳が、まるで兄弟のように同じ姿で並んでいた。櫛ヶ峰P1の前にマイナーピークを3つほど認定。最低コルからP1まで高低差は30m、20分程度。しかし駒ヶ峰は近づき、背後の横岳とガチャボッチはだいぶ遠くなった。P1を越えると、もうガチャボッチよりも高くなる。雪原東の沢筋はすぐ左手に迫り、谷底は見えない。P1へ斜めに登って行くと、その斜面の向こうにP2の頭と櫛ヶ峰の頂上部分が見えてくる。最後のところは九十九折りに登ってP1に到達。もう櫛ヶ峰は真上にあって姿が変わっており、駒ヶ峰は三角形になり、その右奥に乗鞍が見えている。これまたいびつな姿。P2へは急傾斜だが、雪のうねりをキックターンでうまく越え、P2の上に立つ。11時前。今度は櫛ヶ峰の稜線の裏から戸来岳が見えている。奥に大駒の平らな頂上、手前に三ツ岳の尖った二つのピーク。その手前に一段低い平らなピークが見えるが、それが三ツ岳の三つ目のピークなのだろうか。行く手の櫛ヶ峰への稜線には頂上手前のコブが見えるが、ピークにはなっていない。そこを登っていくと、今度は北西方面に南沢と岩木山が見える。高度が上がるに従い景観がぐんぐん広がり、広大な南八甲田の雪原が見渡す限りに広がる。背後には横岳と櫛ヶ峰の間の大雪原、行く手には櫛ヶ峰と乗鞍の間の大雪原。その向こうには十和田三山(戸来岳の二つの峰、十和田山、十和利山)。十和田湖と牧場の白の間には御鼻部山。

 P1から見上げる櫛ヶ峰: 駒ヶ峰、乗鞍岳、P2・1,320m、櫛ヶ峰

P2への急斜面

P2から振り返る縦走路と横岳

櫛ヶ峰への北尾根を登る

最初のコブに到達。行く手には頂上の前にもうひとつコブがあるようだ。右手奥に下岳が見えるが、下岳も横岳も駒ヶ峰も、もうここより低くなっている。ここで、東斜面から登ってきている太いトレースに気付く。どうやらスノーモービルがここまで登ってきているようだ。なんとも落ち着かない話だが、トレースは頂上まで続いていた。その東斜面を覗き込むと、広大な雪斜面がはるか下まで繋がっているのが見える。この無限の大斜面も八甲田で滑るべきクラシック斜面である。その向こうには駒ヶ峰といびつな乗鞍、その間に頭が見えているのは赤倉だろうか。

空に浮かぶ岩木山

櫛ヶ峰の大斜面

下岳

櫛ヶ峰頂上

二つ目のコブに登っていくと、オーバーハングの先に二つのピークが見えてくる。右手前のは手前に張り出している丘で、左奥のピークの上に頂上標識が見える。あれが頂上だ。頂上の手前まで達するとそこは平らなテラスのようになっていて、その奥に右手前のピーク。それは実際にはずいぶん小さい。テラスには祠があるはずだが、雪に埋まっているのか、見当たらない。そして、櫛ヶ峰の頂上に達する。前回来たのは2004年だから、7年ぶりになる。頂上標識も二等三角点も変わりないように見えたが、頂上標識の文字がずいぶん薄くなっているようだ。その背景にある北八甲田の諸峰は変わり無し。今回初めてなのは、南から西の遠景が見えていたことである。十和田湖は斜めにわずかではあるが見えており、その南西にある頂の平らなのが白地山。西には低い山が折り重なっており、下岳の向こうに二列の山並みがあり、奥の山頂が白いのが6年前に登った雷山(毛無山?)かもしれない。その背景には白神がうっすらと見えている。

 櫛ヶ峰頂上から南の景観: 戸来岳、御鼻部山、十和田湖、白地山、毛無山、白神岳、雷山、下岳、田代山、岩木山

下岳

櫛ヶ峰の頂上に来てスキーを外してひっくりかえし、カメラ・スタンドを立てようとしていると、突然スキーの男性が現われ、続いて徒歩の男性が南側から登ってきた。スキーの男性は城ヶ倉大橋から横沼経由できたと言っていたが、徒歩の男性はどちらから来たのか不明。東側には全然踏跡がないので、横岳から来たのではないか。(この日は月曜なので、快晴とはいえ、人に会うとは思わなかった)

大斜面の滑走

寒くて上着を着ているが、日が照っているので、横になって少し目をつぶる。いい気分。そしてシールを外し、滑走開始。スキーの男性はテレマーク・スキーで、先に出て行ったが、大斜面を滑らずに往路を戻っていったようだ。せっかく櫛ヶ峰にきたのだから、大斜面を滑っておかなくては。徒歩の男性を残して頂上を発ち、さっそく櫛ヶ峰の大斜面に飛び込む。連続ショートターンでぐいぐい滑るが、いくら滑っても底はまだ下。降りきってからシールをつけて登り返すことも考えたが、登り返しは減らしておきたいので、やや左に向かってターンを切っていく。背後のターン・トレースは最初はオーバーハングで上が見えなくなるが、更に下ると延々と続くショートターンのトレースがやや斜めに見える。これだけ長いショートターン・トレースをつけたのは初めてだなあ。しかも全く他のトレースのないまっさらな雪斜面にただ一つのシュプール。傾斜がだいぶ緩くなり、もうこのへんでいいだろうというところで滑走を止め、北へトラバースしていく。そのままトラバースしていけば尾根に着くだろう。実際には、スキーが少し上を向いているので、少しづつ登っていく感じになる。背後には少し内側に彎曲した大斜面の上から、ショートターントレースが小さくやや斜めについている。本日のハイライト。トレースはオーバーハングの向こうに消えているので、実際にはここから見えている数倍あるだろう。

大斜面の滑走

大斜面の滑走

大斜面のトラバース

北尾根の滑走

トラバースは10分弱だったが、休み休み進み、だいぶ長く感じた。上を見上げると、斜面の上辺に大きな雪庇がある。間違ったところから斜面に下ると雪庇を飛び越えてしまうのか・・・と後で気づく(そういえば、シャクナゲ山の下りで、雪庇に気付かずに落ちたことがあった・・・)。大斜面を北にトラバースしていって稜線に近づくと人が見える。それは、先に下って行ったスキーの男性かと思ったら違っていて、登ってくる途中の人だった。その後に何人も続いていて、結局5人くらいとすれ違う。稜線に戻り見上げると、先に出た男性のものらしい大きなターントレースがついている。私はショートターンを刻むが、その前に上着を脱ぎ、手袋も取る。ここまで下ると風も無く、暖かい。

北尾根の滑走と登山者

ショートターンで滑走開始し、登ってくる二人に挨拶しながら通り過ぎ、またたく間にP2手前に着く。振り返ると、スキートレースのほかに、歩いた踏跡が一つあり、頂上で会った男性のものと思われる。P1から北東方面を見ると、逆川と横沼のあるあたりからうねりながら沢がやってきていて、そのうねりのところに雪原が突き出ている。雪原の東側、沢の東側と西側の段差は数十メートルありそうだ。P1からは谷側の急斜面を飛び降りて通過。登ったのは山側だが、そっちには次のグループが登っていたと思う。P1の急斜面にショートターンを刻み、雪原にクローチングで滑り込んだところで櫛ヶ峰からの滑走終了。そこからはビンディングを外しての歩きとなる。振り返ると、櫛ヶ峰の稜線を登る二人と、P2に達しようとする一人が見える。P2の陰にあと二人いるはずなので、総数5人ということだろう。

北尾根の滑走トレースと登りトレース

P2頂上の登山者

最低コルからは緩い登りとなり、ガチャボッチ本峰の脇を東側にやや膨らんで通過。軽い斜め登りの感じ。たくさんある登りトレースの東側をとる。それからガチャボッチ北峰をめざしてカニ登り。ガチャボッチ本峰から北峰まで10分足らずであるが、休むと滑ってしまうので歩いている間はきつい。北峰の手前からようやく下り斜面となり、できる限り横岳方面に滑り、停止したところで休憩5回目。ここでシールをつけるが、このときに先行する男性に追いつきそうなところまで来ていた。こっちが休んだのでその後男性がどっちへ行ったのか不明。このときはまだ13時前。空は快晴。櫛ヶ峰の斜面を登り返すなど、もっとゆっくりしてきて良かったのだが、なぜか先を急いでいたなあ。

さて、シールでゆっくりマイペースで横岳に向かうと、なんと、横岳の南斜面に頂上からやや右よりに滑り降りたスキートレースがついている。さっきの5人のうちの何人かが、シールを外して滑ったようだ。しまった、私もシールを外して滑るんだった。

横岳からの滑走

横岳の麓に達し、下ってきたトレースの付近を九十九折に登る。この頂上直下を滑っているのはシールで滑った私だけのようだ。麓のところにはトレースはたくさん集結しているので、尾根沿いに降りた人もいたのかもしれない。途中で尾根に乗り換え、登っていくと、女性が一人立っている。誰かを待っている様子で、挨拶して脇を通り、横岳の頂上標識のあたりにザックを置いて最後の休憩。いやあ疲れた、でももう後は滑るだけだ。シールを取って帰る準備をしていると、さっきの女性がやってきて、3人に会わなかったか、と聞くので、櫛ヶ峰頂上で二人、下るときに5人に会った、もう頂上に着いて、下っているはず、と答える。ついでに写真を何枚かとってもらうが、その間にバッテリーが切れ、取り替えて写してもらう。絶景なんだが、背景に人物が負けてる。

横岳からの滑走

さて、スキーを付けて滑走再開。横岳頂上直下の東斜面は、南斜面ほどではないがかなりの傾斜があり、ショートターンを楽しむ。融けかけてテカテカに光る雪面にトレースを残していく。斜面にはもうひとつ大きくターンしている滑走トレースがあり、櫛ヶ峰頂上で会った男性のものと思われる。すると、横沼の方に向かわず、横岳に登り返したのだ。逆川への中間地点にある林のところから二つ目の急斜面。これは長い斜面ではないが、下からは横岳直下のトレースと中間者面のトレースがまるでつながっているように見える。そこからは横沼と北八甲田を見ながら進む。横沼にはあの男性が通った跡は残っていない。横岳の真上の稜線にはひび割れができはじめていて、通り過ぎた後で見ると大きな雪庇があり、そのうち落ちそうだ。逆川の頂上は横沼のところがくびれた稜線を大きく回りこんだところにある。櫛ヶ峰は正面に見えるが、横岳の頂上は中間ピークと重なってほとんど見えず、真下にある横沼も樹木の陰でほとんど見えない。

逆川からは、北側の広大な雪原を越えて滑走。この斜面は間違えようがなさそうに見えて、いつも林に入ってから迷っている。登りトレースを本能的に探して辿るが、それも気まぐれに途中で消えてしまう。今回は、滑走トレース1本と登りトレースが1本あったが、どちらも自分のものではない。傾斜はそこそこあるのでショートターンを刻んでいくが、林に入って全く先行トレースがなくなり、東寄りに進む。これが実は間違いなのだが、その東側(酸ヶ湯?)から来ているトレースをひとつ見た。やがて尾根になって下り始めたが、こんな尾根を登ってきた覚えは無い。トレースも全く無い。その尾根の西側にトラバースし、西隣の尾根に乗り換え、更にトラバース。もうひとつの沢筋をトラバースしてもう一つ西隣の尾根に乗り換え、その林の中で登りトレースを発見。やれやれ。

城ヶ倉大橋・西駐車場裏斜面

もう大丈夫だろうと登りトレースに沿って滑るが、早朝の登りトレースは消えかけていて、ときどき見失い、左右に滑って再発見する。そして城ヶ倉大橋付近の車道が見え、沢筋に滑り込んで駐車場に至る尾根に乗る。そのあたりは最後のショートターンを楽しんでいて、斜面に水平に進み、目的地点の真上からショートターンでまっすぐに下る。それを4~5本で駐車場尾根に乗り、最後は駐車場裏斜面の真上に出る。その雪壁の斜面をトラバースし、最後に180度ジャンプターンをして取付点に着き、滑走終了。ご苦労さん。他に車が一台。横岳の女性は沖場平(七倉橋?)から来たと言っていたから、その前の二人か、もしくは徒歩の男性、もしくはそれ以外の人のものだろう。ゆっくりスキーを片付け、翌週に備えてワックスを塗っておく。

かっぱの湯

城ヶ倉大橋の上から逆川方面を眺める。小尾根がいくつか見えるが、あの一番奥の尾根あたりを下ろうとしていたのか、危ない所だ。値上がりした城ヶ倉温泉には寄らず、山を降りてかっぱの湯に寄っていく。風呂に入って暖まり(シャンプーと石鹸は持込)、帰りに入口で野菜を買っていく。

7年ぶりの櫛ヶ峰に、横岳からガチャボッチ経由で登る。当初は一泊で考えたこのツアーは、十分に日帰りできると考え、早朝に出発し、天気にも恵まれ、最高のツアーとなる。櫛ヶ峰大斜面をもう一本と、横岳南斜面の滑走を次回には計画しよう。ビバ八甲田。