十勝岳     白いピラミッド

北海道・大雪山系  十勝岳2,077m、前十勝岳1,790m  2020年4月19日

(十勝岳)日本百名山

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三日後にもう一度、十勝岳に向かったのは前回、霧と吹雪でほとんど景色が見えなかったからだ。苦労して頂上に到達してそれなりに達成感は得られたから、これで満足してもよいのだが、まともな映像がまるでないのはやはり寂しい。

白銀荘から東に進んで林を抜け、三日前と同じカバワラ尾根(前十勝岳北西尾根)に向かう。

私がこのカバワラ尾根(前十勝の北西尾根)を登ったのはガイド情報に基づくものだが、今では前十勝の噴煙が増えていて「絶対に近寄るな」という注意書きを見たのは翌日、白銀荘の中でだった。だが、登っているときはそうとは知らず、再び煙に巻かれて細尾根を歩く。風が煙を吹き払うと行く手に白いピラミッドが見えており、それが十勝岳だった。

過去2回は視界のないピラミッドを黙々と登って頂上に到達したのだが、この日は見上げると見える頂上がなかなか近づかず、しかも絶景が広がっているので何度も立ち止まった。

ついに3度目の十勝岳頂上に着く。岩か祠の雪ボールの隙間に入ると三日前と同じ頂上標識が見えている。ありがとう十勝岳。今日はこんなに晴れて、本当に良かった。

右回りに頂上の北西側まで滑り、シュカブラがうるさいところを通過して北に滑走。シュカブラを抜けると滑らかな斜面となるが、雪のついているところとアイスバーンのところが混じっていて、ショートターンというわけにはいかない。それでも元気よく滑走していく。

グラウンド火口の手前あたりで振り返って見た十勝岳は白い雲をなびかせ、滑らかな白いピラミッドはとても神々しく見えた。

グラウンド火口の東の淵沿いに滑走。フォローの風にぐんぐん滑る。

避難小屋に立ち寄らずに高い地点を滑走していく。もういいかげん疲れ切っていた。沢筋の右岸を滑走し、標高1,000mの渡渉地点に滑り込む。そしてやっと白銀荘駐車場に着く。くたくただが、充実した一日だった。

(2020年4月19日)

美瑛のあたりから南に、ずらりと並んだ十勝連峰を見ることができる。左端に襟を立てたオプタテシケ、中央左に二つ並んだ真白な三角形は美瑛富士と美瑛岳、右端には富良野岳の端正な姿、噴煙を上げる前十勝岳、そして中央右の少し奥まったところに十勝岳の小さいがよく目立つ白いピラミッド。

 グラウンド火口の手前あたりで振り返って見た十勝岳は白い雲をなびかせ、滑らかな白いピラミッドはとても神々しく見えた。
 美瑛のあたりから南に、ずらりと並んだ十勝連峰を見ることができる。噴煙を上げる前十勝岳。少し奥まったところに十勝岳の小さいがよく目立つ白いピラミッド。
 白銀荘からスタート
 噴煙をなびかせる前十勝岳
 頂上からの滑走
トムラウシ
  6:42 白銀荘P発  7:05 富良野川渡渉点  8:19 アイゼン1,540m11:25 前十勝岳13:31 十勝岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り6時間49分13:45 十勝岳発、滑走14:05 グラウンド火口の底14:49 富良野川渡渉点15:01 白銀荘P・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周回8時間19分

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三日後にもう一度、十勝岳に向かったのは前回、霧と吹雪でほとんど景色が見えなかったからだ。苦労して頂上に到達してそれなりに達成感は得られたから、これで満足してもよいのだが、まともな映像がまるでないのはやはり寂しい。そして、疲れ切って翌日はオフにしたら、翌日が見事に快晴になったのが決定的だった。芦別岳に登った翌日、少し無理をしてでももう一度十勝岳に登ろうと決める。芦別岳に登った日は午後遅くに雨が降り、当日の予報は曇後晴。そこで4時起床にして7時頃、白銀荘を出る。三日前にも歩いているから迷いはない。だが、この日はトレースがこちこちに固まっていたのでトラバースコースには入らずにメインルートを進む。曇後晴の予報だが、朝の車道からは十勝連峰がやや霞んで見えていた。白銀荘から東に進んで林を抜け、初めて雲をかぶっていない十勝連峰を仰ぎ見たが、そこからは十勝岳は見えていない。三日前と同じカバワラ尾根(前十勝岳北西尾根)に向かう。コチコチなのでどこでアイゼンに変えるかだが、すいすい登っていくスキートレースを辿って行って次第に急になり、最後はおっかなびっくりで登って行ってやや緩やかになった地点(1,540m地点、三日前1,710mよりもだいぶ手前)でアイゼンに変え、最初の休憩。パンを食べる。

ここから前方には前十勝の頂上が近づき、岩剥き出しのところが見える。三日前はフォローの風で煙は来ず、このあたりから視界も狭まり、ひたすら尾根通しに登ったのだが、この日はアゲインストの風に煙が頭上を流れていて、そっちに登っていくトレースは見当たらず、スノーシューのトレースは左に尾根をトラバースしてゆく。視界は良好で、トラバースしていった先に大正火口が見えてきて、その北の淵を東に向かう踏跡が見えるが、ここからだとだいぶ距離があり、しかも下ることになる。スノシューの踏跡はそこから先には見当たらず、引き返したのか、それとも大正火口の淵にいったのかは不明。私がこのカバワラ尾根(前十勝の北西尾根)を登ったのはガイド情報に基づくものだが、今では前十勝の噴煙が増えていて「絶対に近寄るな」という注意書きを見たのは翌日、白銀荘の中でだった。だが、登っているときはそうとは知らず、再び煙に巻かれて細尾根を歩く。風が煙を吹き払うと行く手に白いピラミッドが見えており、それが十勝岳だった。えらく近く見えたが、そこまではまだ遠かった。細尾根のところに来ると、黄色くなった雪の上に三日前の自分の踏跡が残っていて、それをたどる。時々煙が視界をさえぎり、何も見えなくなるので、その踏跡がなければとても進めなかっただろう。細尾根の両側から煙が噴き上げているところはすさまじく、写真をとりたくなる気持ちを抑えて前進。途中で雪が消えているところを慎重に越え、向こう側の広いところに出たときはほっとした。

こちら側に出てしまえばアゲインストの風に守られてもう煙の心配はない。煙の噴き上げる細尾根の奥に黒い岩のピークが見えており、それが前十勝の頂上なのだろう。今日はその右側(東側)をトラバースしてきたが、三日前は霧に包まれてそこを通過したことを思い出す。そして行く手には、十勝岳の白いピラミッドが迫る。ここからだと左(北西)に尾根を伸ばした姿。夏道沿いに並んだ木柱のところに至り、あとはもう登るだけだ。だが、そこから頂上までは遠く、何度も立ち止まって休憩。アゲインストの風がシートラのスキーを押し返し、踏ん張って歩くのもしんどい。白いピラミッドを登り始めると視界が大きく開け、左下(北)に巨大なグラウンド火口が広がっている。過去2回は霧や雪に閉ざされて全く見ることができなかったので、この広大な景観を見ることができて感激だった。なるほど、こういう地形になっていたのか。過去2回はこのグラウンド火口の南端に滑り込んだものの底が見えないので左回りにトラバースしてゆき、大正火口とグラウンド火口の間の尾根の先に上がった。この日は、その広大なグラウンド火口の底を滑走していくスキーヤーを見る。なるほど、あそこを滑っても登り返さずに下まで行けるのだろう。私もあそこを滑ることにしよう。

過去2回は視界のないピラミッドを黙々と登って頂上に到達したのだが、この日は見上げると見える頂上がなかなか近づかず、しかも絶景が広がっているので何度も立ち止まった。頂上まであと数十メートルになったとき、眼下のグラウンド火口の方角から登ってくるスキーヤーを見る。なるほど、あの方角からだと遠回りになるが、ずっとシールで登れるのだろう。そのスキーヤーはその後、途中でアイゼンに変えて登っていた。私は夏道沿いに九十九折りに登るのが面倒になり、まっすぐに登って行き、ついに3度目の十勝岳頂上に着く。岩か祠の雪ボールの隙間に入ると三日前と同じ頂上標識が見えている。そして北東に、爆裂火口のような絶壁の上に針のような頂上を立てた姿の美瑛岳を見る。それは、北から見た端正な姿とはまるで違う形だった。北には双耳の姿のトムラウシ。南西には富良野岳に続く尾根が続いている。信じられない絶景に囲まれ、何度も眺め、写真を撮るが、風が強烈で長居はできない。この日はアイゼンに変えたときにシールも外しておいたので、滑走に移るのは楽だった。ありがとう十勝岳。今日はこんなに晴れて、本当に良かった。

グラウンド火口に向かうには、北側を下っても行けそうだったので、頂上からそちら側に滑り込む。滑らかなアイスバーンをガリガリいわせてターン。だが、左に下るあたりがどうなっているのかよく分からない。ここは慎重を期して右回りに頂上の北西側まで滑り、シュカブラがうるさいところを通過して北に滑走。シュカブラを抜けると滑らかな斜面となるが、雪のついているところとアイスバーンのところが混じっていて、ショートターンというわけにはいかない。それでも元気よく滑走していくと、あのスキーヤーが頂上の北東を登っているのが小さく見えた。グラウンド火口の手前あたりで振り返って見た十勝岳は白い雲をなびかせ、滑らかな白いピラミッドはとても神々しく見えた。グラウンド火口のあたりから雪は柔らかくなるが、スキーが取られてターンしにくい。前日の芦別岳のときも下部の雪は柔らかく、ブレーキがかかる。これでは雪は滑らないだろうから、火口底に下るのは止めて登りトレースのあるグラウンド火口の東の淵沿いに滑走。フォローの風にぐんぐん滑る。グランド火口を出ると登りトレースは北西に避難小屋方面に続いているが、私は往路に戻ろうと思ってその避難小屋に向かう登りトレースを離れ、もっと西側にある大正火口との間の尾根に移るが、その尾根の西側に下ると雪が切れて岩が出ている箇所があったので少し登り返して引き返す。登り返すのはしんどかったが、スキーを痛めたくない。3日前は岩の出ているところを無理に滑り、買ったばかりのアトミック・バックランドをずいぶん痛めてしまっていた。

避難小屋を見たのも初めて。だが、登りトレースの集中しているところよりも高いところに滑走トレースがいくつかあり、避難小屋に立ち寄らずに高い地点を滑走していく。もういいかげん疲れ切っていた。沢筋をいくつか横切り、往路に近づくが、往路のカバワラ尾根(前十勝北西尾根)との間には深い沢筋がある。その深い沢筋に下って反対側に達している滑走トレースもいくつかあったが、ここも登り返すのがいやで(下から見ると、登り返さずに済むようだった)、沢筋の右岸を滑走し、標高1,000mの渡渉地点に滑り込む。ここは2段になった登り返しを横登りし、そこから南側をトラバースしていく滑走トレースをたどって登り返しを回避。そしてやっと白銀荘駐車場に着く。くたくただが、充実した一日だった。

ブーツを助手席の下に置き、スキーにワックスを塗り、風が強いので車の中で着替え、白銀荘の温泉に行く。三日前と同じ、露天の二つ目の湯(元気の湯?)とヒバの湯で温まる(露天の一つ目はものすごく熱く、三つ目は温く、どちらも入っていられなかった)。白銀荘の温泉は最高!

(美瑛から見た十勝連峰、2020年4月14日)

美瑛のあたりから南に、ずらりと並んだ十勝連峰を見ることができる。左端に襟を立てたオプタテシケ、中央左に二つ並んだ真白な三角形は美瑛富士と美瑛岳、右端には富良野岳の端正な姿、噴煙を上げる前十勝岳、そして中央右の少し奥まったところに十勝岳の小さいがよく目立つ白いピラミッド。

 白銀荘の駐車場

三日後にもう一度、十勝岳に向かったのは前回、霧と吹雪でほとんど景色が見えなかったからだ。苦労して頂上に到達してそれなりに達成感は得られたから、これで満足してもよいのだが、まともな映像がまるでないのはやはり寂しい。そして、疲れ切って翌日はオフにしたら、翌日が見事に快晴になったのが決定的だった。

 沢筋を渡る

 


カバワラ尾根を登る


 大雪山・旭岳:安足間岳、比布岳、旭岳、白雲岳

 

冷たい太陽

 

枯木


三段山


白銀荘


 

大正火口の噴煙

 


初めて見えた十勝岳の頂上

ここから前方には前十勝の頂上が近づき、岩剥き出しのところが見える。三日前はフォローの風で煙は来ず、このあたりから視界も狭まり、ひたすら尾根通しに登ったのだが、この日はアゲインストの風に煙が頭上を流れていて、そっちに登っていくトレースは見当たらず、スノーシューのトレースは左に尾根をトラバースしてゆく。

 

前十勝岳の噴煙に向かう

 

前十勝の細尾根


行く手の十勝岳


十勝岳


 前十勝岳から南の景観:十勝岳、上ホロカメットク、三峰山、三段山、富良野岳

 

前十勝岳の頂上

 


グラウンド火口と美瑛岳

こちら側に出てしまえばアゲインストの風に守られてもう煙の心配はない。煙の噴き上げる細尾根の奥に黒い岩のピークが見えており、それが前十勝の頂上なのだろう。今日はその右側(東側)をトラバースしてきたが、三日前は霧に包まれてそこを通過したことを思い出す。そして行く手には、十勝岳の白いピラミッドが迫る。

 グラウンド火口を行くスキーヤー

 


頂上に向かうスキーヤー

 十勝岳途上から北の景観:上ホロカメットク、三段山、三峰山、富良野岳、芦別岳、前十勝岳、スリバチ火口

 

富良野岳(右背後は芦別岳)

 

上ホロカメットク


十勝岳の頂上標識とスキー

過去2回は視界のないピラミッドを黙々と登って頂上に到達したのだが、この日は見上げると見える頂上がなかなか近づかず、しかも絶景が広がっているので何度も立ち止まった。頂上まであと数十メートルになったとき、眼下のグラウンド火口の方角から登ってくるスキーヤーを見る。なるほど、あの方角からだと遠回りになるが、ずっとシールで登れるのだろう。

 十勝岳頂上から北の景観:大雪山・旭岳、美瑛岳、トムラウシ、石狩岳、ニペソツ、丸山、ウペペサンケ

 

トムラウシ

 十勝岳頂上から西の景観:境山、上ホロカメットク、富良野岳

 

噴煙と前十勝岳

 


頂上からの滑走(アイスバーン)

グラウンド火口に向かうには、北側を下っても行けそうだったので、頂上からそちら側に滑り込む。滑らかなアイスバーンをガリガリいわせてターン。だが、左に下るあたりがどうなっているのかよく分からない。ここは慎重を期して右回りに頂上の北西側まで滑り、シュカブラがうるさいところを通過して北に滑走。

 グラウンド火口への滑走:前十勝岳、グラウンド火口、スリバチ火口、大雪山・旭岳、美瑛岳、トムラウシ

 

十勝岳(グラウンド火口方面より)

 


十勝岳


 

グランド火口の底

 


十勝岳避難小屋

避難小屋を見たのも初めて。だが、登りトレースの集中しているところよりも高いところに滑走トレースがいくつかあり、避難小屋に立ち寄らずに高い地点を滑走していく。もういいかげん疲れ切っていた。沢筋をいくつか横切り、往路に近づくが、往路のカバワラ尾根(前十勝北西尾根)との間には深い沢筋がある。

 グラウンド火口からの滑走

 


戻ってきた白銀荘

ブーツを助手席の下に置き、スキーにワックスを塗り、風が強いので車の中で着替え、白銀荘の温泉に行く。三日前と同じ、露天の二つ目の湯(元気の湯?)とヒバの湯で温まる(露天の一つ目はものすごく熱く、三つ目は温く、どちらも入っていられなかった)。白銀荘の温泉は最高!

(2020年4月14日)

(美瑛から見た十勝連峰、2020年4月14日)

美瑛のあたりから南に、ずらりと並んだ十勝連峰を見ることができる。左端に襟を立てたオプタテシケ、中央左に二つ並んだ真白な三角形は美瑛富士と美瑛岳、右端には富良野岳の端正な姿、噴煙を上げる前十勝岳、そして中央右の少し奥まったところに十勝岳の小さいがよく目立つ白いピラミッド。

 十勝連峰(1/3):オプタテシケ、ベベツ、石垣山、美瑛富士、美瑛岳

 十勝連峰(2/3):美瑛富士、美瑛岳、十勝岳、大正火口、前十勝岳、三段山、上ホロカメットク

十勝連峰(3/3):十勝岳、大正火口、前十勝岳、三段山、上ホロカメットク、上富良野岳、三峰山、富良野岳

 富良野岳(20倍)

十勝岳(20倍)

 美瑛富士と美瑛岳(20倍)

(2020年4月19日)

 南から見る十勝連峰:前富良野岳、富良野岳、十勝岳