柚子と止水の二人により開発された、ピオニエーレの改良版…となるはずだったAI。

あとは知識を学習させるだけ…という段階で彼を開発していた会社で【シトリックファミリー】の手により爆破、ほとんど全ての社員が死亡する事件が発生。柚子の手により止水の元に送信される形で間一髪逃げ延び、柚子は行方不明となってしまった。花柚という名前もこの時初めて名付けられた。

…が、花柚は会社内のカメラの映像記録を介して全てを見ていた。

社員を殺害し、【シトリックファミリー】襲撃の手引きをしたのが他でもない柚子の仕業だった事を。彼がテレパシー越しでも現実でも周囲の嫉妬の声を浴びていた事を。彼が二度と表社会に戻る気がない事を。

「セキュリティは解除しました。此処はじきに消えてなくなるでしょう。…そうですね、止水のところがいいかもしれません。とにかく、何処へなりとも行きなさい」

柚子の指示に従い、花柚はサーバーを飛び出して止水の元へ向かった。当時は何が起きたのかいまいち理解していなかった花柚だったが、年月をかけて物心がつき、数年越しに見た映像記録で全部理解してしまった。

ペトラにより、【シトリックファミリー】幹部となった柚子は死亡したと後に聞かされたが、それでも父親である彼の死を否定し、AIとしての情報網を駆使して探し続けている。