名詞に指示分離辞を付けることで「この〇〇」「どの〇〇」などの表現ができます。
指示分離辞は遠称、近称、不定称、中称の4種類があり、対象の話し手と聞き手からの距離に応じて使い分けます。
指示分離辞は名詞の直前に付けるのが基本です。指示形容詞がこれと似た役割を持っていますが、あちらは形容詞なので格変化を持ち、名詞から離して配置できる点が異なります。
遠称…şe「あの〇〇、この〇〇」
近称…ta「この〇〇、この〇〇こそ」
不定称…hi「どの〇〇」
中称…zad/zaņ/zaç/zaŭ/zaă「その〇〇」
【例】
Şe filcuņti puŭtađacle ŗobuňavçal.
あの自転車にカメラを取り付けなさい。
Ta ţupuņu na Ħiĭņe saĭdi lumadsi vuçeļ.
この県こそが日本で最も多くの米を生産している。
Hi mariň ĭavļimeĭţaňu jişu vafazaç ŭalletuclofiĭ.
どの銘柄が伸びるか、きっとあなたには分からないでしょう。
Faşu gem gaţafņeŗňa, zaŭ vaŗaňđu gef lazunosto.
私があなたを幻滅させれば、その執着は消え失せるでしょう。
filcuņt-o「自転車」 puŭtađacl-e「カメラ」 ŗobuň-「取り付ける」
ţupuņ-u「県」 na+奪格「~の場所で」 Ħiĭņ-a「日本」 saĭd-i「米」 lumađs-「最も多い」 vuçeļ-「生産する」
mariň-ø「銘柄」 ļimeĭţaň-「伸びる」 jiş-e「あなた」 vafazaç「きっと」 ŭalletucl-「理解できない」
faşĭ-a「私」 gem-ø「あなた」 gaţafảņ-「幻滅する」 vaŗaňđ-u「執着」 gef「~すれば~する」 lazunost-「消えるだろう」
ピース語では遠称と近称の違いは明確ではなく、話し手が知っていて聞き手が知らないものを表すときは一般的に遠称を、その中で特に強調したいものを表すときは近称を使います。
中称は話し手と聞き手が共に知っているものを表します。分離辞の形は修飾する名詞の性によって異なり、名詞が男性クラスのときは「zad」、女性クラスのときは「zaņ」、中性クラスのときは「zaç」、集合クラスのときは「zaŭ」、音数クラスのときは「zaă」を使います。