幻想の中静かに眠る

ゆうさんの東方二次小説「幻想の中静かに眠る」をピース語(口語)に翻訳してみました。

――超能力者だ。

誰だなんだと聞かれたらきちんと返事をするのが筋というものだ。私は縁側に腰掛ける巫女にはっきりと答えた。

--Ĭuŭifăop.

Na ceŭzo nug jeŭano gef ri đufratĭa çulŗig fodĭujģem. Faşaĭ đaģecri, na ģagnoare ņidigŗuce sevvitiħa.

「超能力者ぁ?」

「やっぱり、信じないかな」

"Ĭuŭifăişop?"

"Ļosŭu ţa içideŗ"

同じ縁側に腰掛ける私は、わずかに眉をひそませる巫女の返答に少しだけがっかりした。

目の前の小さな庭には小雨が降り続いている。私が博麗と名のついた神社を訪れる前後から、木々の葉や土は濡れていた。

Faşaĭ, na ģagnare đihĭođe ņidigŗuce, sevitu şeđaģecra ļozibeţĭilavsa conţe ŭaleŭaňa.

Na dehture rocaŭņe habut ņidivrugaŗ palsuĭmo. Faşĭu ņuvģeņiņi 'Hacureĭo' necuţĭeĭi pirilaăto mimid cotca daŭ bar şeħuzago.

「誰が信じないって?」

「だって顔がそういってる」

「そんなことは一言も。何か勘違いしているんじゃない?」

"Ceŭzu ţa içşido?"

"Ruj dumu nevixa"

"Na tote ţehat reňas. U cuģupa ţuzardafiħeŗ?"

お盆の上に載っている湯のみを手にとって巫女がため息をついた。……被害妄想が強いのだろうか、私は?

U ħotļaăşeăņuva teħeşveta şĭetňiģŭo, pi đaģecar haħoļaĭta. ...Ran faşĭa rabăeņo ĭendivaņag ziloţ?

「幻想郷(こんなところ)に来てしまう人なんて決まってるわ。例えば存在が希薄になって誰からも認められなくなった人とか、誰からも存在を否定されてしまった人とか」

「私には友人がいたよ。誰からも認められなくなったって? 冗談じゃない」

「でもあんたには察しがついてるわ、そうでしょ。分かるの、勘がそうささやいてる」

"Ðaxodăot gaŭpoş se fampe reňse tivăo. Ħişti poşenso jusumaĭ, huņuçe rocaŭņe u dimta çodiha liņşijeĭ, ĭot jusumaĭ ħaĭņu na huņuço đuleņeĭ."

"Ran faşĭa rabăeņa ŭaşac. U dimta çodiha liņşevijam? Taģat na vutajan gad."

"Ļuc cop gevaŭaŗ. Şeģat ţa voģitmo? Faşĭi volfesitno, bog liă ŭulegħo."

勘ってなんだ。シックスセンスと直感を混同しているんじゃないか――そう思ったが、すぐにこれは取り下げた。

そこらの神社のバイト巫女とは全く雰囲気が違う。私よりも頭半分ほど背の高いこの巫女は、確かな力を持っている。それは上手く説明できないが、だが確かにそこにあるものなのだ。

だから私は、霊夢と名乗った巫女に嘘をつけないと悟った。はっきりと。しとしとと降っていた小雨が、いつの間にか強くなっていた。にわかに。誰にも気付かれないように。狡猾と。

Bog na ŭego. Ŭifăop bogo ņex ţa ŗurdaxoģo -- liă eşhatăaňam, cop u taģtu aĭsufmevoçam.

Ðaģecre ņ hacoçişçaĭte for faşçav ĭuşut ceņazdo. Ran đaģecra, ģe faşĭi ňiļ ħeĭesa ħecoxa geăiznofaĭ, saĭ xaltaņ. Ritit ţa nexaŭsoĭem, cop zi lojxaltaņ ŗoçe rabăeņo.

Ruj faşaĭ đaģecre, u napa ņ 'Reĭmuva' ruvņisuđĭe, uņeĭnedteclom, vaņvaram tebĭeran. Habut etit ņidarbigŗav ĭase zilaŭħuzoţanfa havecit, meglu ăec enĭifetja ħoļagđeă.

私と霊夢の出会いは一時間前に遡る。

ベッドから目覚めたはずの私は、何故か彼岸花の咲き乱れる見知らぬ土地に立っていた。あたりは木々に囲われ、ここがどこかの森や山の奥であるように思えた。

覚えのない光景、嗅いだことのない匂い。そして、どこかに潜んでいるらしい者の不穏な視線――獲物を狙う狩猟者の気配――も感じてしまった。

一度恐怖を覚えると、そこから抜け出すのはひどく難しい。現実だとしても被害妄想としても、それは変わることがない。

Aŭnizab faşĭa nan Reĭmuva cu domaňjuve şuse puzizmo.

Faşaĭ ređde ļivtarbaţav ņofņuĭaħ na canşe, dumroc nuziclo, havalfesine ļivmiăam.

Ņuňo cotcarovi, tota na ģisvato harda ĭot xumma, hatăaňam.

Ciŗat havalfesin, verņeň havalfesin. Pi u dugefa vosţonasa nhatăevaňam, na fofņuĭle ģehaţfostuc, u đaxodăa -- u ňidoņa riţveverta, u vaļerta ģeŭzuţabrela --

Çinave lojşus noŗňeĭe aŗopam lepcaă pedetŭo. Baŗuje seģņat ĭendivanaguje ĭifđam đihĭotđo.

ここにいるのは危険だと直感したところで、巫女の姿が奥に見えた。赤いリボンを頭につけたかわいらしい女の子だ。歳のほどは私よりも二、三は若いように思えた。

助けを求めるとすぐに快諾した巫女は、自らを幽霊の夢と書いて霊夢と名乗ると、私の手をとって歩き出した。

黙ってついてきなさい。霊夢の言葉に、私はそうしたほうが良いだろうと思えた。この場から安全に逃げ出すにはそれしかない。

Na tote faşĭi ŭosesomac sevosto, nug ĭifestaj eħuzat đaģecra na ģisvate guŭvota. Na xaņoĭo ņapo ħecoxa zepļamica. Ģe faşĭi ňiļ ģefa luĭca coŭefsa zoĭna berotăo, nug nahiħiţam.

Ðaģecar, u ţavenňa sucam ĭavveŭreĭ, u napa na 'mariňo ripa' vĭeveŗa, pi leri xatta faşĭa u livnusa vcuŗeba.

Bex điveĭha aĭşeăĭeħu. Nape Reĭmuva ļulaf ļag ritanfo, hatăaňa. Tote vabăeçmi r'amŭasuseňo şeģtuj rabăeņo.

彼岸花の咲き乱れていた開けた場所――霊夢が言うには「再思の道」――から抜けだしたところで、霊夢は私の手を引きながら話を始めた。どこに向かっていると問えば、自分の神社だと返った。

最初の話題は私についてだった。ここに来る前は何をしていたか、と問われた私は、いつものように眠っていた、とだけ答えた。

その時霊夢が「外来人か」と呟いたのを私は聞き逃さなかった。日本人だと呟き返してやったら、そういう意味じゃないと軽く笑われてしまった。

Dumroc nuziŭsoclo, caŗe loce, Reĭmuvu na 'Pavvo Taļpaħtata' zitutoĭne, abosus Reĭmu u xatta faşĭa ģeŭăicsacav u toça cuŗeba. Se fole ļesňiňives, nug ruvjeŭanam, xujva sevit na nuvģeņiņo voņa ĭeŗa.

Niduă ļeăoģ for faşaĭ na ŭezo ĭeŗa. Faşaĭ, xiz tot xarvabdave ureŗeĭ, dofeçad sibŗiňutam, nug u ļulfoja sevvitiħam.

Cu saăaļo, "Na suņexepar" u đamĭevorvaļa ţa amŭevusam. Ļag na Ĭapoņĭeşno, đoxaĭ đamĭevaļam, xujva conţe şiħcevanam, "Na çeviço ceņazdo".

霊夢は自分の神社へ案内する道中ざっくりと私が置かれた状況を説明してくれた。いうなれば、私は異邦人なのだ。

Reĭmu se nuvģeņiņi pacavvaĭat ħoravxeă u socneşa faşĭa nexaŭsa. Ņegboĭes faşaĭ zi na biħuldo.

ここは私にとっての異世界で、その名を「幻想郷」という。

本来、現実世界にある存在はここに足を踏み入れることが出来ないが、ある条件を満たせば幻想郷への移動、すなわち幻想入りが可能になるのだという。

バカバカしい。なんだこれは。ドッキリか何かか――最初はそう笑い飛ばしてやろうと思ったが、それが出来ないことに愕然とした。

私はドッキリなんてものを受ける立場にない。有名人でもなければ一芸で身を立てている者でもない。ただの学生だ。それに、霊夢が嘘をついている気配は微塵も感じられなかった。

Tot faşĭi na ŭintoģo, pi nap fiĭfeva na 'Veņopedĭo' ĭeŗo.

Huņuç seģņatņa luvocseă se toti ħep şeçeŗeclo, ciđvo şuso roşňixĭo se Veņopedĭi maăoleň ev veņofhapedĭuvub sepfoădeh şictasixaşo.

Foňidalo. Na ŭego taģat. N'armanato ĭona ħamņiţaţo -- gofŗug liă rohateň ħep taħta, ensoceclove delseģam.

Faşaĭ na đaxodăo u armanatoma meh xiņe ħogaboĭno ĭeţăaŗem. Na ņaĭţopeħdovo ĭon'osgaroħo ĭeţăaŗem. N'oňcino hicaţo. For uņedat Reĭmuva ňidoņ faşĭu ĭuşut ţa hatăuzaňa.

何度か確認を取りながら説明を受け続けると道がひらけ、そこには古びて人の気配のない神社が現れた。

もはや祀られている神様も裸足で逃げ出しているのではないか――そう思わせるほどの寂しい雰囲気が漂っている。神社と巫女。霊夢の居場所はここなのだと、言葉なしに察することができた。

寂れた神社に案内された私は縁側に座らされ、お茶とせんべいを用意されて、話の続きをすることになった。そして私は何者かを問われ、超能力者だ、と返すに至る。

Do zolgaĭ ruzbe u exaŭseňa ħogagņeb pavav levocanfanra, na tote nuvģeņiņ ņabij çul ňaçat fevsonca.

Muĭ ņetsaŭeĭ toteh ņex ţa amŭuzsus -- u ļulfa nahatăaňoĭes faşçave givuăđe. Nuvģeņiņ ĭot đaģecar. Çad Reĭmuva na toto, nug bex napa ngavoĭem.

Faşaĭ nuvģeņiņi givuăđi ģoŗtaņeĭ na ģognare hevoza, savaĭo zo ŗoňuţo ţebicaslaĭat seļpav edomăaşem. Pi faşaĭ na đaxodăo ĭepso, şeģat jeŭuzana, na ĭuŭifăopo, menonad fodĭuzujģo.

私の勘は良く当たるの――不意をつくように霊夢が呟く。

確かに、誰からも忘れ去られて辿り着く異世界に迷い込んだ理由の見当はついている。……私は、私が超能力者であることを、誰にも喋ったことがない。

そのことを霊夢に伝えると、やっぱりね、と返った。誰がどうしたって、そのくらいの察しはつくと思うのだが。なぜなら、

Bog faşĭa ŗegizas cufţo -- ņuleň Reĭmuvu đamĭevoļo.

Se ŭintoģi ħaĭņu façeĭ ţinuzeģđem, nuruf şelav ĭehuzezo. Faşaĭ na ĭuŭifăopo, -- ļulaf megli aŭede ŗiţiħa.

Ļulaf Reĭmuvu rafŭevoma, ļosu, nug fodĭevujģa.

Ŗaţ liă gaŭoĭe voşa ňaŭlaņŭu, vuĭ u şeģtu nahatăaňem. Ruj,

「友達に超能力が使えると言って、誰がどう得するっていうんだ」

「分かってるわよそんなの。それならもう分かるでしょ、あんたが幻想入りをした理由が」

「……今の現実世界、ここで言う外の世界では、超能力はインチキだという認識が強まっている。だから、たぶん私は、超能力者としての私を否定されてしまった、と思う」

「へえ、もう少し聞かせてくれる?」

「外の世界の超能力にはいろいろなものがあるんだ。心を読む能力、霊と交信して事件の真相を追う能力、念力で物を触れずに動かす能力――そう、いろいろある。だけど、そういうのはインチキだって広まっていた。みんな詐欺師だったんだ」

"Ran faşĭa ļag ĭuŭifăop, dof u şeģta zvunafem, ceŭaz ņiti ģelmoŭŭo."

"Ŭalluzeta ŭez dasat. Toteh ļuc cisvi naŭalluzeteŗ, ņoħ ļag veņuzofhapduveŗ."

"Na seģņatņe mocire, na baņat suņex mili, ŭifăop na ţuŗeŭo, çaviç şelav zilaŭħiňanfo. Haj faşaĭ na faşĭo naņ ĭuŭifăopo đulveņa, nug hatăaňo"

"Vali raĭes tosicţo?"

"Na baņte suņexe ŭez tonaļ. Cacov na vaņareňo, Rip na ĭavħeģoăiħo, bex joşoţama ļofar na maăoleňo, liă sotonaļ. Ħep siţuzoŭăo, şeģat na ţuŗeŭo. Ħaĭaņ na şulŭehoŭo ĭeŗa"

詐欺師巫女が口の中で何度か繰り返すのを私は待った。強くなりつつある雨のせいで、その声はあまり聞こえない。

Do faşĭe foŗtuce eămaf đaģecara v şulŭehoŭa zolgaĭ osvaŭna. Şace zilaŭħoţanfuņe điveĭah şelav moŭtavar ņisuđo.

「つまり、なんの特別な力のない人間が、自分は特別であるように振舞っていた?」

「人を騙す能力や、騙っていた能力に近いものには優れていたのかもしれない。けど、本物の超能力なんかじゃなかった」

「だからあんたは否定され、ここにやってきてしまった、ということね」

"Ăopļu ĭubis bex paşeăi đedi na đaxodăo đedo nivoha?"

"Paşeă halcuĭteňa ĭot taģtom ăeja vitňa ħiňelļoĭa. Cop şeģat na ŭifăopo haşeto ĭeţaŗa"

"Ļulfe ļuc đuļveņaŗ, pi se toti ĭiģu ŭuzolteŗ"

霊夢の声を聞きながら、私は怒りにまみれ始めた心音が聞こえないことを祈った。

もちろん横に座る巫女が気に入らないことを喋った、なんてことはない。自分で喋っていて、あることに気が付き、にわかに怒りを覚えたのだ。

Faşaĭ u điveĭha Reĭmuva ruvsipŭicaç, ţebisal ĭofĭufaş ţa ņisuđo, u ļulfa ruvaŭţalfam.

Ðaģecru ŗuxiŭu guçpih ŭaşnar tevasa, monđal ţa liă şeģat hatăaňa. Vota ŗiţicaħ u ŭeza şusa şĭifvetjam, pi u ĭufaşa zi nvoŗňam.

「……さっき言っていたっけ」

「あー?」

「幻想入りをしてしまう理由。存在が希薄になったりとか、否定されたりとかだとか?」

「うん。それが?」

「つまりホンモノの私は、ニセモノのせいで、勝手にいないものにされてしまった?」

"- Haĭta ņex vunafa"

"Ăeĭ?"

"Taģte veņofhapedĭuves nuruf. Ruj huņuçe doxline ĭot đulveņađne?"

"Ņaŭo, şeģat?"

"Ăopļu faşaĭ haşet voņu xezmilu gefot vedov havalfesaŭħinam?"

あんたが言ったんじゃない。私に肩入れをしない巫女の指摘は、たぶん軽い調子のものだったろう。しかし、私の頭には強い衝撃が走っていた。

自分が気づいた相当に苛立たしい事実を何度も何度も突きつけられた気がした。あまりの衝撃にありもしない痛みを覚え、目の前が真っ白になっていく。体中から一気に力が抜けていく。

Maçaz vunafa ļucu. Ŭerih đaģecra u faşĭa ţa cođarogđuca xevi na ŭezo ņeŗa feruňa ĭeŗa. Cop ran ħecoxa faşĭa đofat ziloţ tuzivăo.

Poşenas lojļimeĭaţ izodxoĭan faşĭu ĭifetjeĭ lel ovil voņa şofĭevina. đofate buzdale u peņa veņopa noŗňam, pi zotaĭav jodņeņiŭaňo. Ħaĭņe muţoca saĭ bilceņuģo.

ヒーローになる。幼い頃の私はことあるごとにそう言っていた。きっかけはたぶん、幼い頃の出来事だ。火事の建物の中で逃げ遅れたところを、消防隊員が助けてくれたのだ。

誰かの助けになりたい。そうすることで自分というものを確立したい――成長するにつれて、私はその思いを強くしていった。

高校生になってしばらく。私は突如、超能力に目覚めた。

物を触れずに動かす能力。それが念力と呼ばれるものということは、インターネットで簡単に調べられた。

Na livăo dixavem. Do ħaģo faşĭu cu saăaļo tuņaăzo liă ļulaf vunafam. Ðocav xevi na xufeto teboŭna ħiçta. Boŗoce ĭofrive amŭevuseň sogvusunag eriŗgeşvu zi ţoņuzolbo.

 Ŭuzvi u ţavinňa ģeŭĭexļoăebnem. Ļulfo u voņa çepoĭňa nŭoneĭdebnem -- buĭ zaxovnutlo faşĭi esom şelav zilaŭħoţanfa.

 M'iraŭŗo ħeņņag faşĭu ŭifăop ņuleň ħaduzeĭpo. Paşeă bex joşoţama ļofar maăoleňa. Napa şeģta na şifninlo, ļulaf pomaăo ziŗceă ceņadroĭeĭa.

誰にもこの能力を相談することはできなかった。したところで、一体何がどう変わるのだろう。どう転んでも悪いようにしかならないと思えた。

人は自分よりもかけ離れたものを嫌う。例えば、自分より醜いものに石を投げ、美しいものには敬意を払いながらも妬む。

そういうものなのだということを私はよく知っていたし、これまで生きていた中でそういうのをたくさん見ていた。こいつらはいったい何なんだろう。人とは、いったい――

人を知るにつれて幼いころの夢は散っていった。ヒーローになる。でも、それは、誰のヒーローなのだろう。この世に生きる誰が救われる価値を持っているのだろう。

Meglo paşeă şelav gutăiŭecloĭa. Ļulfo luvocseă ŭeg ņiti dixavo. Na fampe ŭescuxe se ŭezoti ļozili ovil maŗa hagrite. 

Cobozeňe u ŭeza voņe parbirtama, hoŭņe u huņuça ģo voņa sipođa ruvfoŗce, u huņuça jupĭa ģeŭfuņacasaf nađevce.

Şeģat na ŭezo dasdo, nug faşĭi ritit volfesino, do ňavizge bişleşa u şeģta luma guŭota. Ňejap na ŭego luvocseă. Ĭubis çepoĭaň luvocseă --

U ĭubisa ŭallecat ţoşic ħiçat noleţa. Na livăo dixavem. Vuĭ Ăej na livăo ceŭza. Ran ceŭza na baņte tenimĭa sivcah ţoņovnulba.

それでも激しい怒りを覚えたのは、私が誰かのヒーロー、いや、そんなものよりももっとすごい存在になれると確信していたからだ。

全人類の英雄とまではいかないが、かなりの多くの人を助けられるだけの力はある。

例えば外国からミサイルが飛んできたとして、それを食い止めて送り返すくらいならきっと出来る。そうして讃えられるだけの力量はあると確信している。

だから私にとって超能力は誇りだった。普段は平凡な人間の皮を被りながら、いつかこの力が誰かの役に立つことを願ってた。

Sonat ĭufaş somav noŗňa, faşaĭ na livăo ŭuzva ĭona huņuço şanlo dixavoĭe, vov u ļulfa niŭsodam.

 Na livăo ĭubisara ĭilav, cop na naĭfo ţavinňa đaxodăa oģvara ĭeŗoĭem. Ļulfo neħevnusvi saĭ ăe çaĭnerico, iŭsiňodo.

Haj faşĭi ŭifăop na ħeŗţeħo ĭeŗa. Ðana na đaxodăo ăivalo nivocah aŭţalfa savis paşeă şelav ŭuzvi goņaxeň.

矛盾はしている。超能力を振るって誰かを助けることと、人なんてのはどいつもこいつも助けてやる価値なんかない、ということは、どうしたって矛盾している。

しかし、実は、誰かを助けるということは間違っていた。本当は、

Caăneħ rabăeņo. Ŭifăopo u ŭuzva ģeŭţoņovnulab ran ħaĭņa v ĭubisoma sivcah ţoņovnulba raţavnuņi ŭis fullu ŭescuxu caăneħolo.

Cop vedov na xucnoşo ĭeŗa u ŭuzva ţoņovnulab. Sohaşet,

「助けて『やって』やりたかったんだ」

"U ģeŭţoņovnulba ruv'tos'ebnam"

思わず呟いていた。巫女の耳には入っていなかった。いつの間にか土砂降りになって、土にはねた水が縁側を濡らしていた。豪雨に紛れた雷のごろごろとしたのが、正解だ、と告げた気がした。天の声。嬉しくない天啓。

Bex ţidnexa đamĭoļa. Se ģefi đaģecra ţa ĭuzento. Ĭase ħixasaă ņidigŗo, ihaţu baro uĭluzatoĭnu şeħuzago ģagnar. Şaĭnu odĭuza ŭiher şaco sevit mevexta ovil febuçĭa. Ðiveĭah muĭa. Bezaņab ħipciĭ ţac.

「助けて『やって』やりたかったんだ。人は誰も助ける価値の無いやつばかりなんだ。そいつらから羨望されたかったんだ」

「なんか言った?」

「苛立ちの理由が分かった、分かったんだ……」

"U ģeŭţoņovnulba ruv'tos'ebnam. Ħaĭaņ ev ĭubisa va cebŭumo şoţoņolbo. Ňejpu egħaļebnam"

" Ðumar vunafa?"

"Nuruf izodxeňa ŭalleveta, zi ŭalleveta..."

羨望されたかった。価値の無い奴らに、己の価値の無さを分からせてやりたかった。――それが私の本当の気持ちだと、いまやっと気づいた。

胸の奥から溢れ出る自己嫌悪。安っぽい吐き気。自傷をして満たされたいという欲求が湧き上がるが、すぐに安っぽいものだと分かってしまう。安易な逃げ。

Egħaļebnam. U ňejpa sivcabiha ŭalletebnam. --Ļulaf na maŗo haşeto, nug liziş cu sume şĭifvetjam.

Na ģisvate feŭosŭa voņi zaxotlo ļoziloņ. Ŗigňaf ăeņtap. Endipneşo ģovexebnem, ņarŗiă şelav guļaxo, cop ăeņtapuň ŭalleveto. Amŭuseň vaňmuļ.

「……ああ、お茶、持って行くわ。せんべいも一緒にいれておく」

"Zoă gaņfaro savaĭ ăe ŗoňuţo"

霊夢はお盆をもって大声をはった。豪雨が屋根を叩く音があまりにもうるさい。

すたすたと畳を歩いて去るのを見送った私は、自分も雨をふらせているのに気づいた。あまりにも悔しくて、苛立たしくて、悲しくて、意識しないままに泣いていた。

嗚咽はいつの間にか叫びに変わっていた。喉が裂けそうだが止められない。豪雨のせいで自分の声すら聞こえない。

身を裂くような絶叫。滝のように流れる熱い涙。ニセモノにホンモノが駆逐された悔しさと、人に対する怒りと、自己嫌悪とが、私の全身を駆け巡る。

Reĭmu tuŗĭoca leri teħetu. Ħixasău sobeŭlag nuvdiļ xoņĭapo buzdalit. 

U jusumĭa naŭ ţanezad nuŗarbana ndeħuzatem, faşaĭ đux u şaca ģeŭņidigŗem, ļulaf ĭifvetjam. Şuvacpe ļimeĭtabĭave, padilăe, ħexiţeŗ bex ţidnexa ņňahham.

Enunal ĭase na guăļoto inuzano. Şideņaňvo xeŗeĭeg, cop çeăoňeclo. Ħixasăe điveĭhuj voņa ţa ņisuđo.

Xedĭevem u muţoca şidaňvix. Paģ sacnate đixiçno ģuňaţaă ģaşix. Ħexiţeŗ alefaŗ ňojĭu xovvogjaļa zo ĭubiso xedoħnam zo ĭavbopneň na fesinemme faşĭa ŭuħseĭvo.

「あんた、何やってんのっ!」

"Xiňabdeŗ ħuzaŗ!"

確かに霊夢の声はそういった。瞬間、私の体はどうと床に叩きつけられる。その衝撃はやっと私の絶叫をやめさせた。

Lojxaltaņ điveĭah Reĭmuva liăđă. Cu sume muţoc faşĭa xolu se ĭoçece meĭvudo. Ðofet şelav liziş u faşaĭ ĭavxedĭeva çeăvoňa.

「どうしたのっ」

「あ……」

"Ŭeg ăe ļuco"

"Ăeĭ..."

いつの間にか私は柱に頭をぶつけていたらしい。つうっと額に汗が流れるのも分かった。

いや、それは汗ではない。つんと鼻を突く鉄の匂い。血の匂い。――本当に、私は、いつの間にこんなことを?

Ĭase faşĭu ħecox se đorapi ģuħuzehosto. hacal n'adone đixiçnimaĭ ŭalleta.

Heňal şeģat na haclo ţapo. Sodeŭoz u cotra tenzo verņeň ŭiŭonra. --Sohaşet, faşĭu, ĭase ļulaf?

「大丈夫じゃなさそうね。それに、泣いていたみたいだし」

「……」

「困ってることがあったら話してみてもいいんじゃない? 聞いてあげるわ」

"Ţa vbuxĭetosteŗ. Ŭiđu ņňahhostaŗ."

"……"

"Ňalaf ļuca faşĭi ŗiţiħoĭe. ħucsutub ruvtosem"

霊夢は持っていたお盆をちゃぶ台に置き、持ち歩いていた手ぬぐいで私の額を抑えてくれた。

彼女の言葉と気遣いに、私は、今度は自覚して涙を流した。初対面の人間相手にここまで感情を爆発させたのは初めてだ。

それはきっと霊夢が、冷たくあっさりしているようで、しかし心の優しい人間だからに違いない――心からそう思えた。話してみていいのかもしれない。

Reĭmu u teħeta ĭetiģŭuca se ŗipħari şatviđa, tihaşo v nadeja u adona faşĭa ģoņetda.

Nape zo deceăa jusumĭa faşaĭ leri veĭsu ģuňaţăoģam. Ðaxodăi ŗnacţoĭsi galoţ u esoma ruvejĭevepam zave.

Ħep Reĭmu dugefad na ļobgeħo pifso hotaŭŗo, cop vedov cisvi na đaxodăo cifezo. -- Ĭo maŗe ļulaf hatăaňa. Vitňa ŗiţiħoĭe.

「……幼いころ、私はヒーローになりたかった」

「ヒーロー?」

「火事に巻き込まれて逃げ遅れたことがあって。もうすぐ死んでしまう、熱い、って本当にやばかった時、消防士のおじさんが助けてくれたんだ」

「消防……火消しの達人ね?」

「うん。それから、私もあの人のようになりたい、ヒーローになりたいと思ったんだ。けどその気持ちは嘘になったんだ」

"Do ħaģe faşaĭ na livăo dixavam"

"Na livăo?"

"Rucive aŭede vaļosaŭsam. Şirļu ħevizem, ģaşixo, nug cu ŭosesomce haşet eriŗgeşvustu ţoņuzolbo"

"Eriŗgeşav... seh na noŗuşcato v xovomĭo?"

"Ņaŭe, pi faşĭuj na cibomo dixavem, na livăo dixavem, nug hatăaňa. Cop maŗ şelav n'uņedto dixuzavo"

どうして? 霊夢の問いに答えるのを一瞬だけためらった。

自分がどれだけ傲慢で人間として評価されるべきではない存在かというのはよく自覚した。そのせいで心がゼイゼイと息を荒くしている。そんな話をしても良いのか、と戸惑ったが、次の瞬間には私の口は動いていた。

Ņoħ? biţ Reĭmuva u ĭavsevitiħa cu sumote ģeŭarlazam.

Faşaĭ đux fisnav gavataslem, pi na ĭubiso ļusuģzacem, ritit vaŭħuzepļaĭsem. Ļulfo cacov somvumi vuxniňaţo. Toç dasad tosiŭpu, nug ňuveđam, cop cu sume arviţe eămaf faşĭa seva.

「人間って、助ける価値なんかないんだよ。みんな等しく生きる価値なんてない」

「へえ?」

「誰も彼もが自分のことしか考えてない。誰かの為に生きようとか考えてる奴もいないし、もしもそんな奴がいても、やっぱり結局は自分のため、あーだこーだってことを考えてる」

「人が嫌いってわけ?」

「学校じゃ容姿の優れている順に序列がつくられる。美男美女はクラスの中で一番偉いのさ。あいつらは醜いものを蔑み、自分より美しいものを妬む。そういうクズばっかりなんだ」

"Va ĭubisom şoţoņotalbe. Mil đihĭođoă şotenale"

"Vali?"

"Ħaĭaņ u voņota ruvtaħto. La đumra tenebno, ļulfo ļaă taħto, coŭe ħega ĭeŭ, vov tifaxmi u voņota ŭezemmo taħto"

"Ăopļu u ĭubisa cobozeňeŗ?"

"N'inneŗe ņut ĭemuglo ħiňelļo ozafhalfanre. Jupĭido na roziăe zşanladso. Ňejpu sipođdo foşiŗco, pi jupĭanfido ađevco. Ħaĭaņ zi na ŗeŭsuvbo"

霊夢は黙って聞いていた。自分で話しておきながら、何を言っているのかよく分からないところもある。みんながみんな人間としての価値を疑うような奴ばかりだったろうか? ――いや、そうに違いない。

Reĭmu şosucaă ħucsiňuta. Voņu ŗiţicaħ ŭis fedu ĭeŭu çaviç ţad ritit ŭalluzeto. Ran ħaĭņa ŭescuxa sivcahuj miģop ņex rabăeņa? Ţeňe, cisvi giģţa.

「けど普通の奴だってクズだった。誰かの容姿が気持ち悪いほどに醜かったり、趣味嗜好が偏ってるって理由だけでイジメが起きた。それに、誰も助けてやらないんだよ」

「あんたはどうだったの」

「もちろん助けたさ。で、次の標的は私になったけど、すぐに止んでしまった。きっとあいつらの欲しがってた反応をしなかったからだと思う」

「……それで? あんたはいったいどうしたいの」

「分からない」

"Cop cebŭumuj ģorşiă na ŗeŭsuvbo ĭeŗa. Sipođoņe ĭemugla ŭuzva ĭot ŗoctetove zecĭufe ģoprixađ degjaŗa. Ŭiđu ļaău ţoņolba"

"Ļucu xabdaŗ"

"Monđel ģeŭţoņolbam. Pi faşaĭ na ňuŭçaŭo arviţo dixvavam, cop đuhav çeăvoňa. Ovil voņa cisvi buĭ ňejpo ăişadra"

"Vuĭ luvocseă xabdebneŗ?"

"Ţa emutoĭem"

もう一度、今度はささやいてみる。分からない。本当に、自分がどうしたいのか分からない。

Çemu cu ħuļjone ira ģeŭŭulugħem. Ţa ŭalleveto. Sohaşet, voņ xabdebno, nug ţa ŭalleveto.

「あんたは何に困ってるの?」

「自分の心のありように。少しの間、休ませてもらえないかな」

「構わないわよ、今日は泊まっていきなさい。ただこれだけは言っておくわ」

"Ļuc ŭege detňofeŗ?"

"Ňoheŗe cacova voņa. Şurņa ņex neļonheŭpem"

"Ðobiļluăe, Do huŭaăçe vihaļti. Cop taģtuj vunvafo"

霊夢はグッと顔を近づけて、真剣な面持ちを崩さない。――いったい、何を話すのだろう?

Faģ Reĭmuva xagvi cuzarđolo buĭ dumo ŗugňefo. --luvocseă ŭeg ŗiţviħo?

「外の世界に、いや、元の世界に帰るという選択肢はあるわ」

「え?」

「幻想郷に来たからって、ずっとここで生活しなければならないってことはない。むしろ多いのよ、こんなところで生きていくなんて考えられないって外来人は」

「どうして」

「妖怪なんて恐ろしいやつらがいるのが耐えられないのもいたし、生活水準がどうこうって嫌がってたのもいたわ。とにかく、外来人が外の世界に戻りたいっていうのはごくあたりまえのことなの」

"Se baņti riŭma, heňal se baņti luvocsi ĭavcuvaņ na paģefo rabăeņo"

"Enaħ?"

"Ðaxodaă se Veņopedĭi feztivăa laţe na fiĭfeve teneme. Ĭovsovaç oģvar ţa ĭaveŭro suņexepru na xopise reňse tenam"

"Ņoħ"

"Huņuç ţolaĭţoma bişufa dehu ăesulecloĭa, afăavļuňu ebroņ tenata bozeňa. Beļofjuļal suņexepar se baņti riŭma cuvņebno ăeĭeŭjuļal.

そういうものなのか、と私は意外に思った。

現実世界の人間は非日常に憧れているものだと感じていた。けど、ファンタジー小説やゲームで触れるだけで十分に満足できるものらしい。実際に自分がその目に遭えば、どうしたって拒否反応が出るのだろう。

そういうものなのか、まったく、勝手な奴らだ。

Ŭez liă ņidigŗo, nug faşĭu declaŭņam.

Aŭģobţu seģņatņa papoţaņ iħcuņo, nug şofĭiņam. Cop veņopdo ĭot fomam puhebeŗujo çulŗig girtuvoĭeăaşo. Seģņatoă voņu şeģat aŭnizbo ŭis pavvu ŭescuxu đaĭar ĭeŗosto.

Liă ŭez, ĭuşut na ňejpo meĭeļăo.

「それじゃあ布団の用意をしてあげる。もう夜も更けてるから、ご飯を食べて寝よう」

「ありがとう。……あれだこれだとうるさくて、ごめん」

「他の外来人なんて酷かったわよ。友達が食べられたとか言って、最初から発狂したりして」

「気の毒な話だね」

「予感で誰かが幻想入りをしたんだなってことは分かるから、面倒になる前に駆けつけることにしてるのよ。今回はそんなに手間のかかることじゃなくて、本当に良かったわ」

"Ŭezo şelvo ređad ģeriĭlam tevoso. Ruj huăaç irmuzaxo, omnasujaņ zipihe"

"Na taşşineŭdo. --ăazeso tonaļo faşĭa zmednem"

"Suņexepar hac şus gadala. Laş muzubo, nug se dađoge gňuxsa"

"Ļulfe đarogđo"

"Pamaŭdo đumar veņofhapdaĭ ruj ĭifetjo, xiz amsibana do papoņove ĭopa viăotem. Ruj do ħuļjone ţad ritit cuctam, johe ģicluăem"

小さな笑顔を浮かべて霊夢は奥に行ってしまった。夜更け? 空を見上げれば、豪雨のせいで夕方なのか夜なのか判別がつかない。

赤い背中とリボンを見送りながら、私は、自分が何をしたいのかを考えることにした。

Rocăuņeă deŗocas Reĭmu se ģisvati tvuŭva. Ģiăneņ? Naŭ tubu ħixasăe, huăaç ĭot ģieăeņ ņidigŗo, ļulaf moşħoheclo.

U ģupoăa zo zelaca jemica ndeħucat faşaĭ, voņ xabdebno, u taħtama cocuŗebam.

はじめに、私の心は「認めさせてやる」と叫んだ。

何を認めさせたいのだろうか――人間に救われる価値などないということだろうか? いや、それもあるが少し違う。一晩考えれば、それは分かるだろうか……

Gofŗug cacov faşĭa, "ĭavçoŭved ruvxoţem" xedĭeva.

Ŭeg ĭavçoŭved ruvxoţebno. --Na ŭezo ĭubis ţoņovnulbazňa? Heňal Ļulaf ţa tarņacđo, cop ceņazdo ħiçtumi. Do ļugoţe huăça taħtamo ļulaf ņex ŭallevetosto...

目覚めは爽やかだった。

昨夜の豪雨からからりと晴れた空模様。縁側に座って見上げる青空はどこまでも気持ちがいい。

隣には霊夢がいる。先に境内の掃除をしていたというが、昨夜の雨のせいで落ち葉やらなにやらが酷いことになっているとぼやいていた。一宿一飯の恩には報いなければなるまい。

Ļivtovnuţ xuĭeftuăa.

Ĭe ħixasăa viţada tnab ţadop hicaţ. Naŭ ģagnar ģeŭxanŭuşo tiăazģa nepaşna çula cilħiħa.

Na leţe rabăeņo Reĭmu. Zeņ poţo na padge ňađeħaşa, Şace viţada ĭot điňiļe socneş gad ņojguzeĭo, nug jocļuzeŭesco. Paŗuzaxo colva z'omnaja vubilzir.

「私も手伝うよ」

「助かるわ。あちこちに落ち葉とか枝とか散らばっちゃって……そうだ、あんた、自分がどうしたいかって分かったの?」

"Faşĭu ţaveĭninňicţeŗ"

"Na taşşineŭdo. Ran tota ran caŗa điňiļ ĭot esav siĭňuzivo. --Heņe ļucu ŭalleveta, voņ xabdebno?"

霊夢の問いに私は頷き返した。

そうだ。一晩考えて、自分がやりたいことの輪郭をつかめた気がする。今の私がやりたいこと――それは、誰かに自分の存在を認めさせることだった。

けれども一日経てば、昨日のように暴れたり乱暴な考えを持つようにはならなかった。幾分かの冷静さは取り戻せていた。問題は、どうやって自分の存在を認めさせるかがわからないことだ。

Biţi Reĭmuva ri ģigdejo veģvaħlam.

Heņe, do ģiăeņe şuse ĭe taħtama, u ŭega şazovnebnem, u ļulfa ovil febiçĭa aĭđuŗuzotăem. Ŭez faşĭu suma heĭruc -- Ļulaf ĭeŗa na ŭezo, faşĭu ŭuzav u huņuça coçoŭed.

Cop ĭe ăişsasa giņdiň ţoxjol ĭot cu viţade ģeŭurivnumfazŗom toteh raţaņo. Micňudoņ pazalun ţepfuzajo. Ņiti u huņuça voņa coçoŭedem, ļulaf ţa emuzuto, şejat na đoļlo.

「認めさせてやりたいんだ」

「何を?」

「私が超能力者ってこと。人間がみんな価値がないとか、そういう考えを捨てたわけじゃない。けど、そういうのを捨てても最後に残ったのは、それなんだ」

「本物が偽物のせいであり得ないものとされたから?」

「うん。だから、外の世界、いや、元の世界に戻って、みんなに認めさせる。その方法はまだ分からないけど」

"Faşĭu coçoŭedicţo"

"U ŭega?"

"Faşaĭ na ŭifăopo u ĭavĭeŗa. Ran ĭubisa ĭeţaņo sivcah, giņdiň şeģat ţa divuzeňħo. cop u ŭeza dasda divesňaħ toĭnevuja şeģat"

"Alefaŗ ňojĭu n'uņedto ņex dixuzevo?"

"Ņaŭe, haj se baņti riŭma, heňal se baņti luvocsi cuvņem, pi ħaĭņu u ĭavçoŭeda xoţem. Ňaŭlaņaŭ ļulfa ĭilav ħep ţa emuto"

分かったわ。霊夢はそう答えただけで、湯のみに口をつけた。

他人に無関心というわけではなさそうだった。どこか温かみを感じさせる、穏やかな声。その響きに私は癒やしを覚えていた。

Ŭalluzeto. Ludav Reĭmuvu sevvitiħa, pi ħotļaăşeăņu ļacăeĭnaŭa.

Ţa hutţeăeħahņo afhaci. Ņofņuħ hesteŗ hatăaňo điveĭhu vesnasu. Tupu şeģtu joxava febuçaĭ faşĭa.

「良い方法ってないかな」

「え?」

「超能力者は本当にいたって知らしめる方法。なんか、ないかな」

「それはあんたが考えなさいよ」

"Ņex raţaņo ňaŭlaņaŭ rit"

"Enaħ?"

"Huņuç ŭifăopa haşeta ilasħo, ňaŭlaņaŭ şeģat. Ŭuzav ņex raţaņo"

"Şeģat ļucu zi taħtiro"

正論だ。苦笑いを浮かべてお茶を頂くことにした。これが本当のお茶を濁すってやつ。

Na tornago voģimo. Perucah u savĭa nħogaxabem. Şeģat na ŭezo, ļag 'đagrecuvo savaĭ (ŗaĭģen Ĭapoņĭena)'.

「うん。がんばって探してみる。そうだ、ところで――」

"Ņaŭe, leri paţibginu coçuŭtaļem. Ăaăma vuĭ--"

湯のみを置いてひとつ気づいたことがある。

ここは幻想郷。現実世界で「いないもの」とされたものの終着駅。ターミナル。一度ここに入ったものは、いったいどうなるのだろう?

Ħotlaăşeăņu ruĭŗasuj şus cuņuziņo.

Rabăeņem na Veņopedĭe. Tifaxdo ŭeza na seģņatņe va 'sanļaăo' şofĭiņĭa. Ðaxodaă lojşus se ňejpi ĭenteĭ ŗoçe xabdo?

「――私が元の世界に戻ったとする」

「え? ええ」

「そしたらまた、幻想郷に迷いこんでしまうってことはあり得るの?」

「可能性としては十分にあるわ」

「もし私が元の世界での存在を濃くしていかないと、どのくらいの時間で幻想郷に入ってしまうの?」

「分からない。けど、一週間もすれば結果は出ると思う」

"--Ŭiher foradme faşaĭ se baņti luvocsi cuzuvņem"

"Enaħ, ņaŭe"

"Feŭsselul tuĭu se Veņopedĭi ņex ţinveģđoĭem?"

"Çulŗig şictuzixo"

"Dof na baņte luvocse faşĭu huņuç ŗus ţa zilaŭħoţo, ĭe miçala ħeđja şoŭra se Veņopedĭi ĭventem?"

"Ţa emuto. Haj ovil voņa ĭe duşsama menonoģo"

感覚でものを言っているのだろうが、異世界の巫女の言うことだ。たぶん当たっているはず。

Vulhon jusumĭa ħep cisvi xilimlo şucređe, şeģat na ŭezo đaģecru ŭintoģa vunafĭo. Xevi unvodalo.

「……それなら、それ以内で勝負をつけないと」

「勝ち負けって話じゃない思うけど。あんたがここに来たくない、忘れられなくないっていうなら、それは応援するわ」

「ありがとう。さて、泊めてくれたお礼をさせてもらうよ。境内の掃除、手伝うよ」

"......Gef xiz şeģta saņasaţ ħigŭeşiro"

"Saņasaţ vuĭ na mimido ňatoŭđo. Se toti tivăaņxeŗ, façaņxeŗ, u şeģta ruvaŭţalfeŗ gef ruvţorşubem.

"Na taşşineŭdo. Ĭuđi u ģigdeja vihvaļţaļa ruvtosem. Padag ňađevnuħ ţaveĭninňo"

立ち上がり、石畳の敷き詰められた境内へと向かう。

神社というには寂れた、手を洗う場所――名前が分からないが――もない、本当に神社と呼んでいいか難しい建物を真正面から見て、確かに掃除には骨が折れそうだと直感した。

昨夜の豪雨で濡れてない場所はないし、そのせいで落ち葉がぐんにゃりと張り付き、箒を動かしても軽々とは動かないだろうと思えた。それに折れた枝があちこちに落ちているし、おまけに大木が堂々と横たわってもいる。これを霊夢が動かすのは困難を極めそうだった。

Sesuv se padgi zapetirăaĭsi boteŭhaņem.

Na nuvģeņiņo caŗ ņabitjo, na tote xatat ħaşupo, famap ţa uvaŭtoĭan. U boŗoca na nuvģeņiņo şodlaļ zitutexoĭna ņut goŗeŭzo ndeņacat, ňađevnuħ johe na ņuđimo, şĭifetjam.

Ħixasăe viţada famap ŭescux şeħuzago, ļulfe điňiļ çila meĭuzudo, ceĭđuto defţiňoă ţa maăolo, ļuņeăa. Ļanenuļal esav paftupeĭ ran toti ran caŗi ņidigŗo, miçnales cotcuđ baştoă ăavļuluň çitovo. Şeģat Reĭmuvu maăolosto pedeŭaĭţuļal.

「どーよこれ、なかなかに面倒くさいでしょ?」

「確かに」

"Xabdo taģat, ŭiĭçu ţiŭaņuļal izsibano?"

"Liăđo"

後ろについてきていた霊夢がやる気のない調子で語りかける。そうなるのは無理は無いと思えた。誰だってそうなる。私だってそうだ。こんなものを手伝うなんて実物を見ていたら言わない。

Reĭmuvu ļuăecţu riŗħeļovsu ziroşŗo. Voņađăano ovil maŗ ļulaf. Ħaĭaņ giģţo. Faşĭuj ĭifđem. 

Ŭez dasad ţaveĭninňub, ăuħňole deņatĭe ţa covunaficţem.

「だけど恩返しにはちょうどいい。それに超能力のアピールにもちょうどいい」

「そうなの? まあ、見物させてもらうわ」

"Cop ňatoŭđo na ģigdejo. Pi na tiragbujo ĭifđo"

"Liă? Ăuĭa conţe ņedboĭo"

本当にいい機会だった。私の超能力――念力は、心に強く念じて発動する。強く念じれば念じるほど、その力は強まる。

Sohaşet ĭeŗa na ňaģdeno rito. Ŭifăop ev şifninal na cacove ăezapramo ģoļeĭso. ăezapram ziloţanaf na saĭo ziloţanfo.

「まずはそこらの落ち葉を吹き飛ばしてやろうか」

"Gofŗug u điňiļa ţuŭbiļa zi ruvsevarņaňŭitem"

イメージする。――巨人が腕をふるって風を起こす。それが辺り一面に広がって、境内を囲う木々と草むらに放り投げていく。

その様を強く意識した私は一つ掛け声をあげた。霊夢が驚いた声をあげたのはそれが原因ではない。直後に巻き起こった、鈍い音を伴う突風だった。

Naňislavem. -- Lodđaĭŭeŭad şeăo u şega ņojgeĭo. Baŗ ļ'aldeħi ĭeraņăo, u cotca zo melara padgomo coŭeniħo.

U ļulfa saĭad beĭħicax faşaĭ lojşus ņeŗvoģam. Reĭmu vorvoda ļulfe ţape. Luŭeţme sucam pevizmaĭne ăe şaĭno ļaĭono.

「これが……念力?」

「うん。これなら掃除を仕事に出来るかもしれない」

"Taģat -- na şifninlo?"

"Ņaŭe, baŗo ňađervaħ na ŗaăeşo vitňa ercaloĭe"

あっという間に落ち葉や枝は巻き上げられ、四方に飛び散り、境内から姿を消した。

私がそれをやったのだということを、霊夢は深呼吸して飲み込んだらしい。

忘れ去られたものが集う幻想郷、そこには魑魅魍魎の類なんてザラにいると彼女から聞いていたが、それでも驚くものは驚くようだ。

Esbexad điňiļ zoă esav đeŭļvuăa, sotuņăz siĭňisuv se padge nurvaņa.

Faşaĭ sevoca, Reĭmu xubĭesuŗaņ naŭallevetahņa.

Ŭez façeĭ ficiŭđo na Veņopedĭe, na caŗe ţolaĭţom ţa davetţo, ļulaf faňnuzaŗo jusumĭo. Cop ňalaŭas eşvorvodahņam.

「念力っていうよりは、風を起こす能力みたいね?」

「天狗の団扇じゃあないんだけど。もっとわかりやすいようにやってみる」

"Na şifninlo zatçe ņegboĭes va paşeăo şegņeňa"

"Zi ĭeţaŗo na leŭcuţo ruŭmuŗora. Bevoxnuļlanaf şazovnem"

風が起きてもびくともしなかった大木に力を働きかける。三人の巨人が、その筋骨隆々の体でもって持ち上げ、ひょいとそこらの茂みに投げ込む――

Cotcuđe şegu ĭuşut ţa maăvolaĭne u saĭa ruvziņuĭxem. Lodđaĭŭeŭad zoĭan muţoco sadvoģo ruveprudo, ĭezļi se melari ţuŭbiļi aĭşineĭo--

「……あっらー」

「アクバール?」

「神様なんてごまんといるのにね。一つだけとか言って奪い合って、何が楽しいのかしら」

"......Ăamăa (faĭihaţ na 'Arraăvo'. Ăoteĭħo 'Allahi' ņ Ruņađa)

"Acbar (Arabĭene na 'amşanlo')?"

"Muĭ sonat ceļņeses rabăeņo, na bemĭidovo loţihat ņiti ŗotpo"

信者に聞かせたら殺されそうな台詞を口にして霊夢は感心していた、ように見えた。

私のイメージ通りに大木は宙を舞い、どうと音を立てて煙を巻き上げている。今度こそ私の念力を信じてくれたらしい霊夢はため息をついて私に向き直った。

どこまでも気持ちがいい笑顔だった。言葉なしに感謝の気持ちが強く伝わってくる。

Zetif guçpiho u regjuhuļa napispibada ruvbejbuţĭidħimĭo Reĭmu ňufaţiħa, ļulaf guŭota.

Ħişti temiļo faşĭa cotcuđ na tube viça, xolu ăe şaĭno xiħňujaĭto. Reĭmu u şifninla faşĭa niçidahņeĭ ăe haħosļaĭat u faşĭa nafvocta.

Ĭeŗa na faĭňerivo xuĭeftoņa nepasņa. Bex napo ŗomufav soziloţ ņiħĭaco.

「手伝ってくれてありがとう。あんな大きな木、一人じゃ運ぶのに難儀するところだった。助かったわ」

「恩返しができて何より――」

"Na taşşineŭdo for ţavinaň. U cotca ļimeĭţa dasda na şuso pedeŭuļal ģeŭzugrira. Zi ţoņvolbam"

"Na verferuňo for şeģat--"

言葉に詰まった。体中に電流が流れた。

もちろんそれは錯覚だ。だけどそれに匹敵する衝撃があった。

霊夢が私に見せた感謝の態度。彼女にとっては当たり前のことだったのかもしれない。でも私にとっては初めて見たような表情だった。

いや、初めてのわけがない。ないのに、どうしてこんなに驚いているんだろう?

嬉しい。自問の答えはすぐに出た。嬉しいんだ。私の心にこの気持ちが静かに響き渡った。今の私は明鏡止水の境地にある。

Nap çeăvoňa. Fesinemam çađmitiħa.

Monđal ludav coţardafiħam. Cop rabăeņa daŭçod doşeģat.

Riciç faşĭi deņateĭ ŗomufva. Jusumĭi vitňa ăivalalo. Cop faşĭi ĭeŗidħa na dumo zavejo.

Ţeňe, tosci ţa zavecđo. Vuĭ ţoĭĭel ņoħ voruzodem?

Ħipciĭalo. Sevit hicaţ đuhav pevizma. Zi ħipciĭalo. Cacovi faşĭa maŗ şelav ņobđaŭ siţoŭăa. Cu sume faşaĭ na daţaşe vesnase.

「……そうだ、元の世界にはどうやったら出られるの?」

「あんた一人で行ける場所じゃないの。私が連れて行かないと」

"Heņe, se baņti luvocsi ņiti libosoĭem?"

"Ļuc na şuso şimbireŗ. Faşĭu ŭiboheŗ"

行くの? そう尋ねながら霊夢は私に手を伸ばした。表情は柔らかくて、つい手をとってしまいたくなった。

だが、すぐには手を伸ばし返さなかった。迷いのようなものがあったからだ。認めさせてやる――昨日の心の叫びを忘れたわけではない。昨日よりも心のなかで反響している。

Tuŭve? U şeģta ruvjeŭacan Reĭmu u xatta ruvtevosa. Dume vesnase ļeăiĭpanav u ňaza nħogvabeň lađta.

Cop sucam u xatta voņa ţa ruvtevosam. Ruj çanđom ņidigŗa. U çoŭvedeňa ruvxoţem -- cu viţade cacov xedĭeveň ţa fvaça. Ģe viţnadi sovňepo raĭes.

ただ、一瞬だけ。この世界の方が私にとっては生きやすいのではないか、と思えたのだ。

でもそれはとても長い時間のように思えた。本当はすうっと息を吸う時間よりも短いのに。

Cu sumote, na baņte talve gicoţit ţaņxe tenoĭem, nug zi hatăaňa.

Cop ļulaf do miçale paŗe, hatăaňa. Ħep vedov ģe miçali siza vuxnaţama hutuŭļanfo.

「霊夢、道案内を頼むよ」

「本当にいいのね?」

「……よろしく頼む。あとこれ、もう私には必要ないから」

"Reĭmu, ģoŗtavnuņ suraŗmicţo"

"Johe đobiļluăo?"

"-- Ģeŭŗeĭjiĭem. Pi faşĭi toteh ruj piţaģo"

ポケットの中の財布をそのまま手渡した。私の中で芽生えた新しい決意。まだ形にはなっていないけど、たぶん、それは、お金が必要なものではない。身分が必要なものではない。

Ðihĭođoă xansevita nimab ħeŭăajatta. Riņnervas ĭo faşĭe ļohopteĭ. Ĭilav ţa focuzeļdo, xevi fiĭfevu ņacah piţaģo. Xujva ţa ĭifđo ňođopuj.

「なにこれ、財布?」

「お賽銭だよ。箱に入れるのも神社の人に渡すのも同じでしょう?」

「違うと思うけど、でも、ありがたく受け取っておくわ」

"Na ŭego taģat, na nimbo?"

"Na çiļneno. Se ţebapi gaĭnedeňuj đoce nuvģeņiņa ĭexļovnuări zi đihĭotđo?"

"Xevi ħep ţa voģitmo, ăe ŗomufvo nħogabem"

私の気持ちを察したのか、霊夢の表情はどこか穏やかであった。誰かを応援するような気配が伺えた。

幻想郷という土地には人を食らう妖怪や、現代科学で駆逐されたはずの怪異が姿を持って生きている。

同じく、現実に存在しないものとされたものも生きているが、私は私の超能力をインチキだと、忘却されてしかるべきものだとは思われたくない。そうか、私はプライドが変に高いんだ。

Ħega guzaŭo maŗ faşĭa, dum Reĭmuva ņofņuħ vesnaso. Sivoc u đumra aĭţorşubuģňa ļivmiăo.

Na hetĭive v Veņopedĭa ăe muţoco tňeno ţolaĭaţ u ĭubisa muboĭan ĭot ļipaŗa ģisvatu suăimu xovogjeĭa.

Sefţav zeņ tiňeno ŭezuj đifanad rarbaţaņ, ŭifăop faşĭa na ţuŗeŭo, coŭe fevaçiro, ļulaf u ňislaveňa ţa ruvaŭţalfem. Cisvi ran faşĭa zecuf meŗţeħ mocreh. 

でもそれが、私の生き方だ。幻想の中で一時の眠りについた、私が選んだ生き方なのだ。

Cop şeģat na ropolŗo ňavizga faşĭa. Va ropolŗo faşĭu razteĭ, na veņopdove u sibŗuvnuta saăaļa npuhebeĭ.

念力使いの外来人を見送ってから一週間後。

霊夢はいつものように縁側でお茶を飲んでいた、遠い視線の先にはゆらりと流れる雲。青雲。どこまでも気持ちが良い空。

外来人が出て行ったのはちょうどこんな天気のことだった、と霊夢は振り返った。――まだ、結界を越えて誰かが迷い込んだ気配はない。このまま一日が過ぎればいいのに。

Duşsamil u suņexepra v şifihaninla dvuħutaļa.

Reĭmuvu dofeçad na ģagnare savaĭ xoļa. Ļa deŗi teŭi dugefa ŗozaţ ĭiņiņ đixicçan. Ŗozaţ havec. Len xuĭetoņa nepaşņa.

Suņexepar ģosnevaăa do laăre reňsa, ļulaf Reĭmuvu vecħita. --Ĭilav ňidoņ đar ŭanaşca đumar ţinuzeģđama raţaņo. Laţe galoţ ăis viçicţo.

「あの子が気になるの?」

"Jusumaĭ beĭħiňixo?"

振り返らなくても、建物の中に突然現れた声の主は分かっている。八雲紫。幻想郷成立に大きく関わった妖怪の女だった。

自らの名と同じ色のドレスを身につけた妖艶な妖怪は、静かに、ゆるりと、ぬらりと、霊夢の隣に座った。

Bex afocteňa ăomaļ điveĭha na ļene boŗoca sevĭa guzaŭo. Ĭacumo-Ĭucari. Na ţolaĭţo ăenziħo npuhobĭo Veņopedaĭ lađtosad.

Ţolaĭaţ sepramag leri fanlaçĭu v irisa ģo ħeşsa napa voņa ņobđaŭ đexaĭpal ciģ Reĭmuva hvoza.

「どうなの、ねえ」

「見てたの」

「なんでもお見通しなんだから。で、気になるかしら?」

「違うって言えば嘘になるわね。そんな話をするためだけに出てきたの?」

「だとしたらなにか問題? どこかでこそこそしていたほうが私らしいってこと?」

"Ĭuđi ņiti"

"Nadeņataŗ?"

"Zi ģeŭģaŭđeđem u ħaĭņa. Vuĭ ļuci na ŭezo heļvo?"

"Ţa ceņazdo for şeģat. Ri toçujo dasdo ĭeţfevirŭa?"

"Ran şeģtoma đoļal ĭepas rabăeņo? Faşĭi ňatoŭđo ţobget na fofņule ģeŭhuzavnupar?"

そうは言ってないんだけど――口にするのをやめた霊夢は、そこで初めて紫が何かを持っていることに気がついた。

Faşĭu şeģat ţa vunuzafo -- u ļuňeĭnunba ģeŭçeăvoňa Reĭmu, pi u đumra Ĭucarivu uvaŭteĭa caŭņeviņa.

「新聞? 珍しいわね、あんたが新聞だなんて」

「まさか天狗の新聞だと思ってる? 違うわ、これ、外の世界の新聞なの」

「外の世界の? くだらない記事ばっかだし、こっちには何の関係もないのしか載ってないじゃない。あんたそんなのが好みだったっけ?」

「いいえ。でも、今日のはあなたが喜ぶんじゃないかと思ったの。ほら、この一面記事。あの念力使いの外来人のことが載ってるわ」

"Ħoxvuj? Daveţes ran ļuca ħoxvuj"

"Na ħoxvujo ruŭmuŗora nhiħuziţeŗ? Ţeňe, baŗ na ħoxvujo baņta riŭma"

"Baņta riŭma? Ran baŗa ŭezot foňid, pi ħaĭņu şatiđĭu mil ţanxe puhebe. ļuci ĭofinalo dasdeŭad?"

"Ţeňe, ŭez soŭaça ļuci ħipciĭăo, cop şeģat hatăevaňa. Ŗoçe na ŭeze rşuse talve. Şatuziđo suņexepar ev şifihaninla"

紫が差し出した新聞に手を伸ばした霊夢は、しかしその手で空を掴んだ。すんでのところで新聞を取り上げられた霊夢は一つ舌打ちをした。

Reĭmu u ħoxvuja Ĭucarivu ŭolteĭa coxebaňtiħ, cop xatto jusumĭa u ţehta aĭģoļveĭsa. Ţuņi caĭuna ħoxvuj mevigdađne Reĭmu çiŭe bvaļçesca.

「何のつもりよ」

「ありがとうって言葉はないの?」

「は?」

「見せてあげるって言ってるの。感謝の言葉もないのかしら?」

「……ありがとう。じゃ、見せて」

"Ţidnex ĭepas"

"Raţaņo nap ev taşşineŭda?"

"Xabde?"

"U deņateňa ruvtosem, nug vuzunafo. Raţaņo şojņo nap ŗomufva"?

"......Na taşşineŭdo. Xiţla coĭeŗicţiŗ"

今度こそ新聞を受け取った霊夢は、最初にはっと目を開いた。

最初に目に飛び込んだ一面の記事。そこには先週の外来人の写真がある。見出しも、記事も、全てに静かに、確かに、ゆっくりと目を通した霊夢はゆっくりと顔を上げた。

Reĭmu cu ňaģdene talve nħogabeĭ soloăen ļođa svogņa.

Ŭez soloăen se govuļĭi xiĭsevaňuđ. Na caŗe pofih suņexepra duguŭma. Reĭmu u letaģŭuja u ŭeuuja, u ħaĭņa ņobđaŭ lojxaltaņ dihib guviňeĭ dihib u faňňeņa cocvuvņa.

「満足そうな顔しちゃって。そんなに嬉しかった?」

「……まあね。あいつがここに戻ってこないのは、それは喜ぶべきことだから」

"Ran faňňeņ ňalas amgirtuv. Ţoĭĭel ħipciĭăa?"

"......Liă ņaŭe. Jusumaĭ se toti ţa ĭavcuvaņ cisvi na ŭezo ruj ħipciĭo"

静かに立ち上がった霊夢は新聞を紫に返し、めいっぱい背伸びをした。視線の先は青空。どこまでも青く広がる世界。

住む世界は違うが、あの外来人も同じ空の下で、今日も頑張っている――そう思うだけで、心のどこかがあたたかくなるのを、霊夢はしっかりと感じていた。

Reĭmu ņobđaŭ seveĭ u ħoxvuja Ĭucarivi coxiņtevora, caĭunad maŗiħa. Dugef ļa tiăazģi. Loc pifas havec, nepaşan xopis.

「変わったわね」

「なにが?」

「他人のことなんてどうでもいいって、冷たい人間だったように思うけど」

「そう? ……そうかもしれない」

"Zi đuzaĭteŗ"

"Ceŭaz?"

"Çodihom ļag aldeħanăalo, ļa faşĭi ĭeŗaŗ na đaxodăo ļobgeħo"

"Liă? ......Şeģat vitňa voģitmo"

呟くように返した霊夢はそっと境内へと向かった。近くに立てかけてあった箒を手にとって、今日も日課の掃除をする。

誰も彼もがその人の仕事をする。自分であれば神社の掃除とお茶飲み、紫であれば胡散臭い態度をとること――霊夢は心のなかで呟くと、あの日から動き始めたであろう超能力者、念力使いに、ほんの少しだけ思いを馳せた。 

Reĭmu ņeĭģeŭđamĭoļ nafodĭujģoĭan ĭolaăateă se padgi tuŭva. Ceĭđut na puzeļce đucnecax ĭetviģŭa, cu soŭaçuje ňađevnuħ ev ăumuħpa cuŗebo.

Ran taģtuja ran şeģtuja ŗaăeş hicoţ. Ran faşĭa nuvģeņiņ ňađevnuħ, ran Ĭucariva riciç ŗusţeă ĭavĭeŗ -- Reĭmu ļa cacovi ģeŭđamĭosuļ şurņa covecħita u ĭuŭifăopa v şifihaninla me ăise şelve ļesňivefa.