野生美あふれるナアンドーヴを愛する青年の気持ちを散文で追っていく。
宵が訪れ、ナアンドーヴを待つ青年の心ははやる。そして彼女はやってきた。
早足で、息も乱れ、腰巻の擦れる音が近づいてくる。
二人の愛欲の夜、そして別れ。詩に沿って音楽が進んでいく。
夜の鳥がさえずり、満月が上る頃、青年のナアンドーヴへの待ちきれぬ思いが歌われる。伴奏は本来は弱音気を付けたチェロによって歌のメロデイーやリズムとは無関係に同じ音型を繰り返しているに過ぎない。
やがてテンポアップし、ピアノが加わる。彼女が近づいてくるのだ。
そしてフルートも加わり一つの高揚が生まれる。
二人は出会い、「さあ、呼吸をしずめて」ここで再びテンポも鎮まっていく。
二人のベッドでの愛欲の様子が歌われる。初めて高音域に達したピアノが喜びを表す。
ナアンドーヴへの愛の言葉は低い音域で歌われる。そのことがかえってエロスを呼ぶ。
激情はけだるさの中に消えていく。尾を引くようなチェロにもけだるさを残す。
そして、やがて彼女は帰っていく。
1、ナアンドーヴ
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
夜の鳥が鳴きだした。
満月が我が頭上に輝き、現れはじめた夜霧が、私の髪の毛をしっとりとさせる。
もう今はその時なのに、だれがお前の足を止めているのか、
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
木の葉のベッドはもう出来ている。その上に、私はよい香りの花と葉を散らした。
それはお前の魅力にふさわしい。
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
彼女がやってくる。私にはわかった、急いでくるので息が乱れている。
ほら、聞こえてくる。彼女の腰を覆う腰巻の軽い音が。
彼女だ。ナアンドーヴだ、美しいナアンドーヴだ!
さあ、呼吸をしずめて、私の美しい恋人よ。
私の膝の上でお休み。
お前の眼差しのなんと魅力的なことか!
しっかりと掴んだ手の下の、お前の乳房の揺れは、なんと生き生きとして、心地良い事か。
お前は微笑む。
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
お前の接吻は魂まで浸透する。
お前の愛撫は私の官能のすべてを焼き尽くす。
止めておくれ、さもないと私は死んでしまう。
人は快楽の喜びで死ぬものなのか?
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
喜びは稲妻のように過ぎ去る。
お前の甘い吐息は弱まる。
うるんだ瞳は再び閉じられ、頭はやんわりと傾く。
そしてお前の激情は、けだるさの中に消えていく。
今までに、お前がこれほど美しかったことはない。
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!
お前は帰る。私は未練と欲情の中で苦しむだろう。
夕方までぐったりするだろう。
今夜、お前はまた来てくれるだろう。
ナアンドーヴ、おお、美しいナアンドーヴよ!