ここでは今、私が勉強中、研究中の曲やお気に入りの曲などご紹介します。
特にフランス音楽(主に声楽曲)は力を入れてご紹介しますね。
8月の演奏会にラヴェルの曲を演目に入れます。ここで紹介する曲は作曲年代順が良いのでしょうが、演奏の機会ごとにその曲を
紹介しますね。
ラヴェルって結構最近の人なので楽譜屋さんとの著作権がまだ切れていなくてフランス版の楽譜が多かったんです。フランス版のは値段が高いのと、活字や音符が読みにくいのです。
(下の写真)
しかし、最近はアメリカの出版社が出せるようになりました。
表紙もきれいでしょ?
今回は『5つのギリシャ民謡』をご紹介します。
この5曲はラヴェルのアレンジで、見事な和声が付けられているが、正真正銘のギリシャ民謡。(ラヴェルは「展覧会の絵」などに代表されるように曲のアレンジが得意で、原曲以上の評価をしばしば受けている。)
Ⅰ 花嫁の目覚め
目覚めよ、目覚めよ、かわいいヤマウズラよ。
あけぼのに翼を広げよ、あけぼのに翼を広げよ。
お前の3つのほくろに、私の心は燃える!
リボンをごらん、金色のリボンをごらん。
お前の髪に巻きつけるために持ってきたよ。
美しい人よ、さあ結婚しよう!
二人の家族はみんなが承知している!
この曲はよく「花嫁の歌」と言われているが、この詞でわかるように、花嫁ではなく、ギリシャの田舎の(なんで?どこ?)青年によって歌われるものである。
結婚式当日の朝、花嫁の髪に飾る金のリボンを持ってきた青年は(お部屋にはまだ入らないよ)花嫁の家の前で歌を歌い、彼女を起こす。その場面はギリシャの白い家のたたずまい、太陽が朝から燦燦と照り、まぶしいほどの幸せをあらわしている。この曲のCD何枚ももっているが、すべて女性によって歌われている。しかし、実際は美しい花嫁を迎える花婿の男らしい誇らしさを感じ、快活に歌いたい。
赤い字で示したところは(今まではmfで歌っていたが)subito p(スビト ピアノ、すぐにピアノ、日本語みたいでしょ?ピアノは小さくってことよ。)に私は、満ち溢れんばかりのこの上ない優しさと、いとしさを込めて歌いたい。この3つのほくろってどこにあるのかしら?鼻の穴の近くでは絶対ないよね。
最後の節は力強くずっとf(フォルテ、大音響、大きいって事)で歌います。
フランス語にはリエゾンというものがあります。一つの単語だけを発音するにはその音は発音されないけれど、次に母音から始まる単語がくっつくと発音されるの。しかし、絶対リエゾンしなければならないっていうもののほかは、任意です。スペルが分からないと発音できないという事から、リエゾンが多い人は「学のある人、身分の高い人、洗練された人」って事。この曲は田舎の曲なので(差別じゃありません。肉体派、ガテン系、大好きです。こんなに純粋に、単純に愛してくれる男性っていいわ。素敵!)リエゾンは「義務」のところ意外は無しで歌います。(私は、カルメンも出来るだけリエゾンを避けて歌っています。)
ピアノの伴奏はG音(ソ)の連続的な保続音を持っています。一貫して確固としたリズムを保つ事!単純そうだけど、譜面づらも簡単そうだけどとても難易度が高いです。ピアノの門田さん、ごめんね。でも、門田さんならお任せできる!(下の譜面)
Ⅱ かなた、教会に
かなた教会に
アイオ・シデロの教会に
おお、聖処女よ、
アイオ・コスタンディノの教会に、
数限りない人が集まった、
おお聖処女よ、
心正しい人が
みんな残らず集まった!
この曲は、もとのギリシャ語のテキストから、教会の裏手にある小さな墓地に横たわっているすべての勇敢な兵士たちを歌ったものという事である。(私はギリシャ語もわからないし、原典も手に入らない)
なので、演奏する際はこの宗教的な性格を明確に表現しなければならない。ピエール・ベルナックは「遠くから近づいてくる宗教的な儀式を連想する。」と言っている。そこで「ppは甘いppでなく、誰かが遠くで大声で歌っているような印象を与えねばならない。全体にわたって少しずつ大きくしていくが、mfより大きな声にはしない。」と。
ピアノは始めより4オクターブも低い低音を奏で、コーダーの5小節はsempre diminuendoにする。
下の楽譜は始めの部分
こちらは終わりの部分。ピアノの左手が4オクターブも低いです。加線が見ずらいッ!
Ⅲ どの伊達オトコが!
どの伊達オトコが私にかなう、
道行く人は数々あるが?
どうだ、ヴァシリキ夫人?
ごらん、帯に下げたは、
ピストルと鋭い剣・・・・・・
お前を好きなその私!
とても男性的な曲。というよりは『何?」って感じ。(もちろん、嫌いじゃないのよ)確固たるリズムで、力強くfで歌う。
ベルナックは「男らしい、暗示的な優しさを持って愛を表現する。」と言っているが、赤文字のところって、ちょっとエッチな意味みたい。私は子どもだからわからないけれど。
Ⅳ 乳香の実を摘む女の歌
おお、私の魂の喜び、
私の心の喜び、貴い宝。
魂と心の喜びなる
思われ人よ
あなたは天使よりも美しい。
おお、やさしい天使、
やさしい天使のあなたが眼の前に、
明るい光に照らされて
金髪の天使のように出てくると、
ああ!私たちのあわれな心はみんな溜息をする!
この曲は仕事中の女の人によって歌われる『労働歌』。そうだとすれば、特別な表情をつけずにうたうべきでしょう。でも、この曲ってとても美しい!!
全く意味をなさない言葉を持つこの歌の長所は、もっぱら音楽上のアクセントにある。
ベルナックは下の楽譜のように歌ったらどうかと提案している。
Ⅴ 愉快だ!
愉快だ!
ハ、愉快だ!
きれいな脚が踊るよ。
きれいな脚と、お皿が踊るよ。
とららららら!
『 この曲はある種の平凡さをもって歌っても良い。20小節目のp(上から3段目の2小節目)は2通りの意味を指示する事が出来る。さらに4小節先のアクセント記号は、いくぶん荒っぽさを持たせる事が出来る。それから大きなcrescendo (だんだん大きく)とaccelerando(だんだん速く)があり、突然訪れるかなり長いfermata (ストップモーション)に達する。次の小節はfで、自由にゆっくりと、しかし歌のパートの最後の2音は正確にtempo primo (はじめのテンポで)で、subito p(すぐに小さく)にし、全く何気なく終わらなければならない。』
ピアノ伴奏も例によってすっきり見えるが行ったり来たりの音形で弾きにくく、また私のように小さい手では届かない。門田さんの手は大きくて立派だから届くのよ。うらやましい。(私のお姑さんが「雅子ちゃんの手足は小さいから、神様が労働をしなくて良いようにお作りになったのよ。ジュン(ダーリンのことを義母はこう呼ぶ)の手足は大きいから、ジュンが働かせれば良いのよ。」とおっしゃってました。)