今回はオペラのアリアも歌います。
いつもカルメンやサムソンとデリラなどといった聞きなれたアリアを歌いますが、今回はこの曲を紹介します。
1774年に出版されたゲーテの小説『若きウエルテルの悩み』は主人公をまねて自殺を試みる若者が増えて、発禁処分になった地域もあったくらい大反響をよんだ作品だったそうです。
19世紀のフランスオペラ界を代表するマスネはこの小説を原作に選びました。
あらすじを書きマスネ(オヤジギャグ)
1780年のある夏、ドイツの片田舎町、若い詩人のウエルテルは大法官の娘シャルロットに愛の告白をする。しかし彼女にはアルベールという婚約者がいることを知りウエルテルは絶望する。
そしてシャルロットはアルベールと結婚をするが、ウエルテルはシャルロットへの気持ちをあきらめきれなく苦悩している。アルベールは妻のシャルロットもウエルテルを憎からず思っている事を気がついている。そこで彼はウエルテルに「妻との幸せな生活を壊さないで欲しい」と告げるが、ウエルテルは再びシャルロットに愛を打ち明けるが、彼女は拒絶する。「しばらく会わないほうが良いわ。しかしクリスマスには再会しましょう。」と告げる。
そして、クリスマスの夜、二人は再会するが、彼女はウエルテルに別れを告げる。絶望したウエルテルはアルベールから借りたピストルで自殺を図る。死にかけている彼の元にシャルロットが駆けつけキスをして愛を告げるが、ウエルテルは彼女の腕の中で息を引き取る。
この『手紙のアリア』はオペラの第3幕の冒頭で歌われます。
クリスマスの夜、ウエルテルと再会する約束をしたシャルロットが今まで彼からもらっていて隠してあった手紙を読み直しているシーン。彼女は胸の高ぶりを自覚して、苦悩します。彼女も彼を愛している事を自覚しているのね。
手紙のアリア
ウエルテル!ウエルテル・・・誰に言い当てる事が出来たでしょう。
今、私の心の中に彼が占める位置の大きさを。
彼が行ってしまった時から何もかも、嫌気のさす事ばかり。私の心は彼のことでいっぱいだわ!
(ゆっくりと立ち上がり、ひきつけられるように机の引き出しを開ける)
ああ、この手紙の数々、何度も読み返してします・・・
こんなにも魅力をたたえて、でも悲しみもいっぱい。
破らなければならないのだけれど・・・出来ない!
(読む)
≪小さな私の部屋で、あなたに手紙を書いています。12月の灰色の重苦しい空が私の上にのしかかっています。まるで経かたびらのように・・・
私はひとりです、いつも一人です。≫
そばに誰もいないのだわ!誰かの愛情のしるしも同情さえひとかけらもない。
こんな孤独を強いるむごい力がどうして私にあったのでしょう。
(別の手紙を取り上げ、開く)
≪子供たちの陽気に騒ぐ声が、私の部屋の窓にまで上ってきます。
あなたが世話をしていたかわいい子供たちが私たちを取り巻いて遊んでいたあの楽しかった頃の事が忘れられません。
子供たちは、私のことをきっと忘れてしまっているのでしょうね。≫
いいえ、ウエルテル、子供たちの思い出には、あなたの面影が焼きついているわ。
あなたが帰ってくれば・・・・でも、彼は帰ってくるべきなのかしら?
ああ!この最後の一通、背筋が凍る、身がすくんでしまうわ。
(3通目を読む)
≪あなたは言った、クリスマスに、と!私は叫んだ、二度と決して!
二人のどちらが本当を言ったか、間もなくわかるでしょう。
けれど、約束の日に、たとえ私があなたの前に現れなくとも私を責めないで涙して下さい。
そう、その魅力に満ちた目で。
この言葉、何度も読み返してください、
あなたの涙が、この手紙を濡らすでしょう。
おお、シャルロット、そしてあなたは震えるでしょう。≫