今回は13番で説明した、音名、階名の続きでもあります。
13番でイタリア語での音の表し方(ドレミ)は音名、階名の両方を兼ねると書きました。
歌をドレミで歌うとき、音名読みの事を『固定ド』、階名読みの事を『移動ド』と言います。
固定ドは言い方を変えると『ハ長調読み』とも言われています。
移動ドは使っている音階によってドの位置が移動するので移動ドと言われています。
たとえば『チューリップ』の歌は、「ドレミ、ドレミ、ソミレドレミレ・・・」です。ピアノのどの鍵盤から弾き始めても、すべて「ドレミ、ドレミ、ドミレドレミレ・・」と歌いますし、移動ドをずーっと使っている人はそう聞こえます。
今はわかりませんが日本の学校教育は音名読み、すなわち移動ドで教育してきました。
しかし、私たちのような専門家は実は固定ドで学習してきたのです。
ですから、先ほどのチューリップをト長調で聞くと「ソラシ、ソラシ、レシラソラシラ・・・」としか聞こえないのです。
なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?
普通の歌を歌うときにはきっと移動ドを使った方が音を取るのが簡単なんでしょう。まあ、楽譜をそれぞれ読み替えなくてはいけない面倒くささはあっても。音程が決まっているわけですから。
しかし、問題があります。
簡単な曲は転調が少なかったり、変化音も少なかったりして、だいたいその調の中に納まりますが、近代の曲や、器楽の曲はくるくると転調したり、変化音をたくさん使ったり、ましてはシェーンベルクなど調性音楽を否定した作曲家まで出て来ます。
私の今、歌っているラヴェルの曲はピアノ伴奏の右手、左手、私の歌のパート、すべてが全部違う調性記号がついています。
という訳で、私たちのように小さいころから訓練を受けている音楽家は固定ドを使っているのです。
ケロミンの腕の表示は移動ドです。
実はこれに私は悩まされているのです。
ケロミンで練習中のフォーレの『夢のあとに』はc mollです。
ソの音から始まるのに表示はミです。
マイッテマス。