歌曲集「湖上の美人」エレンの歌第3番
今回の東日本大震災の鎮魂にシューベルトのアヴェマリアがよく歌われます。
今、私もシューベルトのアヴェマリアと書きましたが、色々な面で誤解がありますので、解説も含めて書いてみようと思います。2011年8月5日のチャリティーコンサートにも歌うつもりです。
そもそもこの曲は≪歌曲集「湖上の美人」≫の中の『エレンの歌第3番』です。
シューベルトの最晩年の歌曲の一つです。伸びやかで美しい旋律のため最も人気のある曲の一つです。歌詞が「アヴェマリア」から始まるために宗教曲と誤解されています。
「湖上の美人」はイギリスの詩人スコットの名高い叙事詩がおおもとです。シュトルクがドイツ語に訳し、それに曲が付けられました。
湖上に住んでいるエレンが父の罪の許しを湖畔の岩上にあるマリア像に祈っている曲。詳しい「湖上の美人」のあらすじはインターネットで調べられますので、そちらからどうぞ。
しばしば声楽家がやる事で、私はあまり好きではない事の一つとして、この旋律にラテン語の典礼文をつけて歌うことです。ついこの間もこのやり方で、しかも男性が歌っていました。嫌だった。
有節形式で作ってあります。有節形式とは、1番、2番、3番と同じメロディーに違う歌詞が付いているものです。日本の童謡や叙情歌みたいに。シューベルトの曲は結構有節形式が多いです。フランスの歌曲はあまりありません。だからドイツ歌曲のほうがすんなり耳に入ってくるのかもね。
エレンの歌第3番(原文ドイツ語)
1、アヴェマリア、やさしい聖女様
乙女の切なる願いを聞き入れてください
この堅くて険しい岩場から私の祈りをあなたに漂わせます。
たとえ人々がどんなに残酷であっても
朝までゆっくりと休みます。
ああ、聖女様、乙女の憂いに目を向けてください
ああ、聖母様、お願いしている子供の願いを聞いてください。
アヴェマリア
2、アヴェマリア、けがれなきマリア様
私たちがこの岩の上に眠るために
身を横たえ、そしてあなたの守護が私たちを覆ってくださるならば
堅い岩も柔らかく思われるでしょう
あなたが微笑むと暗く湿った洞窟の中に
バラの香りがただよいます。
ああ、聖母様、この子供の切なる願いを聞いてください
ああ、聖女様、乙女が呼びかけているのです
アヴェマリア
3、アヴェマリア、清い処女よ
地や天の悪魔たちはあなたの慈しみによって追われ
私たちのところに住む事が出来ません
私たちは静かに運命に従いましょう
あなたの神聖な慰めが私たちに伝わっているのですから
あなたはこの乙女に、父のために切に願うこの子に
優しい心をお寄せください
アヴェマリア