その8
社宅生活は私にとって『ダメ』な事でした。
つくづく『普通の生活』を送っていなかったんだと思い知らされました。
澤辺さんだけでなくとても素敵な方々ともお会いできましたが、社宅生活になじめずにストレスを抱えてしまいました。
ダーリンは決心し、会社を辞めることにしました。
ダーリンは実は同期の中でも出世頭でした。
会社も彼に期待し、彼も会社に貢献していました。その彼が辞めるというので車内は大騒ぎです。
色々な方に呼び出され、退社の理由を聞かれます。
本当に申し訳ないことをしました。
しかし、彼は一大決心をしたのです。
コンサルタントの唯一の国家資格である『中小企業診断士』をとることです。
私も彼も『勉強大好き人間』です。
こんな事を書くと嫌味ですが、本当に知識やスキルが増えることが楽しくてしょうがないのです。
そして、その知識やスキルを使って私だったら自分の音楽や指導に活かし、彼も仕事に活かせることが楽しくて仕方ないのです。
彼にとって、中小企業診断士という仕事は天職に違いありません。
この資格はかなりの難関です。会社勤めをしながらではいつになっても取得できないでしょう。とくに、彼が当時置かれていた立場は二つのわらじを履くなんていう余裕はありませんでした。
会社側も渋々ながら承諾して下さり、彼は退社いたしました。
というわけで、ダーリンと一緒に千葉に帰ってまいりました。
友達が「まあ、お早いお帰りで」と迎えてくれます。
たった、4か月の社宅生活、今から思うと不思議な体験でした。
そしてその間に島田というところでド派手に演奏会まで開いちゃったのです。
澤辺さんのお知り合いが私の事を知り、ぜひ演奏会をしてほしいと依頼されて。
新居は父が持っている家です。
ここは、父方の祖母が『静かな独り暮らし』を夢見て父に買ってもらった家です。庭いじりも楽しいようにと庭はけっこう広いのですが、
家は小さな2階建てです。
いよいよ、この家が完成して「おふくろ、本当に一人で暮らすの?」となった時「嫌!」となり、そのあと、ずっと人に貸していた家です。
私たちが千葉に帰ると決めた時、たまたま入っていた方が自分の家を建てて出た直後だったのです。
今も私たちは(家は建て替えましたが)そこに住んでおります。