第5回 モンキーハンティング

シンデレラでできる物理シミュレーションの簡単な例として、モンキーハンティングを取り上げましょう。

モンキーハンティングとは次のような問題です。

ヤシの木の上にサルがいます。このサルめがけて玉を投げます。投げた球は自然落下の法則にしたがって放物運動をします。一方、サルは球を投げると同時に、手を放してまっすぐに地面に向かって落ちていきます。玉をうまくサルに当てるには、どの方向に向かって玉を打ちだせばよいでしょう。

「玉を投げる」を「鉄砲で撃つ」とか、いろいろな表現があります。そんなことをしてサルにあたったらどうするの、危ないじゃないか、といった意見もありますが、単なる物理シミュレーションと思ってください。

さて、シンデレラでの物理シミュレーションはCindyLabといいます。そのために用意されていることがいくつかありますが、まずはCindyLabのためのツールを出しましょう。

Configration メニューから「ツールバーのカスタマイズ」を選びます。開いたウィンドウのドロップダウンメニューから「CindyLab」または「All Tools」を選びます。すると、ツールバーにCindyLabのためのツール群が現れます。


(1) サルを表す質点をとる。

「質点を追加する」ツールボタン

を選び、適当なところをクリックして質点を1つ作ります。質点とは、質量をもった点です。CindyLabで要素を追加すると、左下にコントローラが表示されます。オーディオ機器のプレイボタン、ポーズボタン、停止ボタンと同じ意味です。ためしに、一番左のプレイボタンを押してみましょう。なにか起りましたか? 起りませんね。質点には質量がありますが、何か力を加えないとこの質点は動きません。実行停止。停止ボタンをクリックしてください。

では、重力を加えてみましょう。

(2) 「重力を追加する」ツールボタンを選択します。適当なところで下向きにドラッグすると矢印が描けます。これが重力です。矢印の長さが重力加速度の大きさを示します。

(3) 「床を加える」ツールボタンを選択して床を描きます。床がないと質点は画面下へどんどん「落ちて」しまいます。

床は水平な直線です。適当なところでクリックすると床が描けますが、マウスボタンを離した瞬間に床が描かれてしまいます。具合が悪ければ、「要素を動かす」モードにして位置を変えるか、「取り消し」ボタン

をクリックしてやり直しましょう。

これで、サルの表す質点と、それが落ちるという設定ができました。次に玉です。

(4) 「速度つき質点を加える」ツールボタンを選択します。画面左の、床に近いところにこの点を置きます。位置を決めてドラッグすると矢印が出ます。これが速度を表します。適当な向きと長さになったらマウスボタンを離します。

では実行してみましょう。プレイボタンを押します。

動きが速すぎるようなら、コントローラの上のバーの区切りをドラッグしてシミュレーションの速さを変えます。左の方に動かせばゆっくりになります。

さあ、玉はうまくサルに当たりましたか?

重力加速度や玉の方向を変えていろいろと試してみましょう。

サルに当てるには、最初に、玉の動く方向をしっかりとサルの方に向けておくことですね。これは、理論的にも計算できます。(やってみよう)しかし、「当たっているとは思うのだが行き過ぎてしまう」のではないですか?これは、サルも玉も質点、つまり点という設定だからです。この「点」には大きさがありません。でも実際のサルや玉には大きさがありますね。では、点に「大きさ」を与えましょう。ここで、Cinderella.2の大きな特徴である「インスペクタ」が登場します。

インスペクタ(Inspector)は、日本語で「調査官」。楽団でインスペクタというと、団員の出席状況を管理したりする人のことです。しかし、そのような言葉はこのソフトではなじまない。Macintoshのソフトでは、いろいろな設定をするためのウィンドウをそのまま「インスペクタ」と書いていますので、Cinderella.2でもあえて日本語にはせず、インスペクタとしています。

「編集」メニューの一番下にある「インスペクタ」をクリックしましょう。どこかで見たウィンドウが現れましたか。レクチャの「第2回」をやった人は、「固定した半径の円」を描くときに出てきたはずです。このインスペクタは、Cinderella.2で扱う要素についていろいろな設定をするためのものです。

まず、サルか玉のどちらかをクリックして選んでおき、インスペクタの「物理シミュレーション全体の属性」ボタンをクリックします。このなかにある、「質点を球体とする」にチェックを入れます。(左側のボックスをクリック)

では、再度実行。うまく当たりましたか?

以上の手順を動画にしてYouTube に掲載しました。

http://www.youtube.com/watch?v=pbjsM2rZoe4