2.複素数の四則と点の移動

(1) 加法・減法と平行移動

つまり、 複素数の和は複素数平面上での平行移動である ということです。

これは、ベクトルと同じですね。上の、座標の表記を、ベクトルの成分表示と考えれば、ベクトルと全く同じになります。

では、このことをCinderellaで確かめてみましょう。

まず、画面下のツールバーの磁石アイコン(グリッドにスナップする)をクリックして、座標軸と方眼を表示します。

「点を加えるツール」を用いて、適当なところでクリックして点を3つ取ります。点の名前はA,B,Cとなるでしょう。

次に、スクリプトメニューからCindyScriptを選び、左側の Draw アイコン(Draw スロット と呼んでいます)をクリックして、右側の広いエリアをクリックし、次のスクリプトを書き込みます。

z1=complex(A);

z2=complex(B);

C.xy=gauss(z1+z2);

右上の歯車アイコンをクリックするとこのスクリプトが実行されます。Shift+Enterでも実行できます。

1行目は、z1を点Aに対応する複素数とします。

2行目は、z2を点Bに対応する複素数とします。

3行目は、Cの位置を、z1+z2 に対応する座標にします。

動かすモードにして、点Aまたは点Bを動かすと、それにつれて点Cも動きます。

(2) 乗法・除法と拡大・縮小

では、このことをCinderellaで確かめてみましょう。

前節(加法・減法)で作図した点A,B,Cをそのまま使います。スクリプトも始めの2行はそのまま残して、3行目を積の形に書き換えましょう。

z1=complex(A);

z2=complex(B);

C.xy=gauss(z1*z2); ← ここだけ書き換え

かけ算の印はアスタリスク * ですので書き入れるのを忘れないように。

点Cが消えてしまった場合は、AとBを原点近くに持ってきてください。Cが現れます。

さて、点AまたはBを動かしてCの動きを見るわけですが、これだけだとよくわかりませんので、図を追加しましょう。

線分を描くツールを選択し、まず点Aと原点を結びます。原点に新しい点Dができるので、B,CとDをそれぞれ結びます。

こうすると、絶対値(原点からの距離)と偏角(実軸の生の方向となす角)の様子がわかりやすくなるでしょう。

さらに、スクリプトを追加して、それぞれの点が表す複素数を極形式で表示します。

これで少しわかりやすくなったでしょうか。

さらに実験をしてみましょう。半径付きの円を加えるツールで、同心円を3つ描きます。このとき、3つ目の同心円の半径が、2つの同心円の半径の積になるようにします。2と3と6がよいでしょう。

次に、点の取り付け/取り外しツール(スバナのアイコン)をクリックして、Aを一番内側の円周上に、Bをその次の円周上にドラッグします。すると、点Cが外側の円周上に乗るでしょう。

動かすモードにして、点A,点Bをドラッグしてみましょう。

先ほどより絶対値、偏角の関係がわかりやすくなります。

(3) 共役複素数と対称移動

共役複素数を表す点は実軸に関して対称です。

また、共役複素数の演算について、次の基本性質があります。

   

では、これらのことをCinderellaで確かめてみましょう。あらためて図を書くので、ファイルメニューから「新規作成」を選びます。

まず「点を加える」ツールで適当なところに、点を2つ追加とります。点A,B ができるはずです。

スクリプトメニューからCindyScriptを開いて、Drawスロットに、次のスクリプトを書きます。

z1=complex(A);

z2=complex(B);

draw(gauss(conjugate(z1)));

draw(gauss(conjugate(z2)),color->[0,0,1]);

conjugate()というのは、綴りがわかりにくいですが、共役複素数を求める関数です。

点Aをz1,点Bをz2として、draw命令で、それぞれの共役複素数が表す点を打っています。色は初期状態が緑なのでz2の共役複素数の方は color->[0,0,1] で青に色指定をしています。

歯車アイコンでをクリックして実行し、動かすモードにして点Aと点Bをドラッグして動かしてみましょう。

次に、和を作ります。次のスクリプトを追加します。

draw(gauss(z1+z2),color->[1,0,0]);

draw(gauss(conjugate(z1)+conjugate(z2)),color->[0,1,1]);

赤い点が z1+z2 、水色の点がそれぞれの共役複素数の和です。実軸に対称なことから、共役複素数の関係にあることがわかるでしょう。

次に、積を作ります。次のスクリプトを追加します。

draw(gauss(z1*z2),color->[1,0,0]);

draw(gauss(conjugate(z1)*conjugate(z2)),color->[1,0,1]);

赤い点が z1・z2 、紫色の点がそれぞれの共役複素数の積です。実軸に対称なことから、共役複素数の関係にあることがわかるでしょう。

点Aと点Bが原点から遠いと、積も遠くなってしまうので、原点に近づけてみましょう。

共役複素数にはもうひとつ大切な性質があります。

このことは、共役複素数の定義と、絶対値の定義を使って実際に計算すればわかります。CindyScriptを書いてみてもよいでしょう。

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