第0回 シンデレラについて

1 数学ソフト「シンデレラ」

 

数学のソフトが「シンデレラ」? ガラスの靴の物語ですか? いえ、シンデレラという名前は、実は船の名前なのです。左の「Navigation」の中の「Cinderella開発経緯」をぜひお読みください。普通、ソフトウェアといえばでき上がって売られているものと思われがちですが、そうでないものはたくさんあります。ワード(WORD)やエクセル(Excel)で有名なMicrosoft Officeは、マイクロソフト社が開発して売っているソフトですが、OpenOfficeというソフトは、オープンソースといって、有志の人たちが日夜開発を続けながら、利用に供しているソフトです。Cinderella.2は、オープンソースではありませんし、フリーウェアでもありませんが、ドイツの大学教授であるゲバート氏とコルテンカンプ氏が数年来開発を続けているソフトです。新しい版は、β版としてアップロードされます。3ヶ月近く更新されないこともあれば、1日で更新されることもあります。それは、単なるバグの修正だったりすることもありますし、新しい機能が追加されていることもあります。1992年に、スウェーデンの観光船「シンデレラ」上で、クラポ氏とゲバート氏が夢見たソフト-Cinderella-は、その後いろいろな経緯をたどりながらも開発が続けられています。開発に関わるのは中心となっているゲバート氏とコルテンカンプ氏だけではありません。シンデレラを使う人が、フォーラムで質問したり、要望を出したりすることで、開発にも関係してくるわけです。そうすることで、ソフトを使いながら開発にも協力できる、そんな好奇心をくすぐるソフトがシンデレラなのです。

 

2 シンデレラでできること

 

シンデレラでどんなことができるのか、文章で説明するより、実物を見た方が早い。左のリンクから「ギャラリー」に行ってみましょう。35個のサンプルがあります。

また、少し難しい内容になりますが、左のリンクから「MatheVital」に行ってみましょう。いろいろな作品があります。ユーザーズガイドには載っていない3次元図形や、音の出る作品もあります。シンデレラでできることの奥深さを味わってください。ただし、ドイツ語のサイトです。

3 シンデレラはバグだらけ?

 

Cinderella.2を使っていると、おかしなことがよく起こります。残念ながらそれはバグかもしれません。筆者が2007年にCinderella.2を使い始めてからコルテンカンプ氏に報告したバグの数は数えきれないほどです。新しい版が出るとバグも出ます。せっかくお金を出してライセンスを買ったのに、バグがあって使えないソフトだ、そう思う人もいるでしょう。でも私はそうは思いません。なによりも、バグかな? と思って報告したときのコルテンカンプ氏の対応がさわやかだからです。バグではなく私の勘違いだったこともあります。そんなときも、コルテンカンプ氏は、こうですよ、とていねいに教えてくれました。今は無料となった1.4版にはバグらしきものはありません。しかし、Cinderella.2は、プログラムのサイズが1.4版の4倍以上。メニューなどの設定のためのプロパティファイルだけでも2000行になります。バグが出ても不思議ではありません。

コルテンカンプ氏は、Cinderella.2への序文の中で、こう書いています。

シンデレラ2を作るにあたって、コメント、ユーザーフィードバック、β版のテストなどで実に多くのかたがたの助力を得ました。なんといっても、私たちの家族に第一に感謝をしたい。シンデレラのために、私たちは多くの余暇をあてました。そのため、父親として、あるいは夫としての時間を家族に与えることができませんでした。数えきれないほどの週末と夜の時間を新しい機能の追加やバグ退治のために費やしました。 私たちは、これからの人生を他の大切なことにも多くの時間を割けるようになることを望んでいます。

コルテンカンプ氏がこの序文を書いてから10年になろうとしていますが、彼はいまだに数えきれないほどの週末と夜の時間をCinderella.2のために費やしています。新しい版が出るたびに、追加された機能を試し、バグ探しをして彼に報告することは、彼が家族と過ごす時間を奪うことにはなりますが、ユーザーである筆者も開発に参加しているという実感が得られるのです。こんなに楽しいことはありません。

そして、Cinderella.2には、Cindyscriptというプログラミング言語があります。ゲバート氏が作っているいくつかの作品には、「Cinderella.2でこんなこともできるのか!」と驚かされます。それを探索するのもまた、楽しいことです。

4 シンデレラはじめの一歩

シンデレラのユーザーズガイドには、チュートリアルとして、「パッポスの定理」「4節リンク機構」「ケプラー楕円」「ひまわりと螺旋」の4つが掲載されています。ユーザーズガイドは、左のリンクから行けるほか、Cinderella.2のヘルプメニューからも同じものが読めます。1993年にシュプリンガー東京(現在はシュプリンガージャパン)から出版された「シンデレラ 幾何学のためのグラフィクス (阿原一志)」は、このユーザーズガイドをそのまま本にしたものです。ですから、この3つのチュートリアルをやるのがよいでしょう・・・ではちょっと不親切でしょうね。「パッポスの定理」って、どんな定理? 中学や高校の教科書には出てきませんね。そこで、中学生でも知っている幾何の定理をシンデレラで作図することからやってみましょう。高校の教科書ともなれば、題材はたくさん。はじめはなんのことやらわからないメニュー、ツールボタンも使っているうちに覚えてしまうでしょう。

では、スタート。あ、その前に、Cinderella.2のダウンロードは済ませましたか? Navigationの「ダウンロード」からダウンロードしてください。いちおうフリーウェアとなっています。作図だけでなく関数のグラフや物理シミュレーション、プログラミングもできます。

2017.3.9 改訂