方べきの定理

高校の数学Aで学ぶ平面図形の定理のうちで、最も重要なのがこの「方べきの定理」でしょう。「方べき」は「方冪」と書きます。「冪」は累乗の意味ですが、ここでは「かけ算」の意味と思ってよいでしょう。「方」は「長方形」の「方」です。つまり、「かけて長方形にした」というような意味です。

教科書には(出版社によって表現が異なりますが、たとえば啓林館の場合)

点Pを通る2直線が、円とそれぞれ2点A,Bと2点C,Dで交わっているとき PA・PB=PC・PD が成り立つ

となっています。

では、オリジナルはどうなっているのでしょう。オリジナルはユークリッドの「原論」にあります。 定理35です。数の左がギリシャ語、右が英訳です。

なお、この英語対訳の原論はWeb上にフリーで公開されています。

http://farside.ph.utexas.edu/euclid/Elements.pdf

rectangle は長方形。「もし、円内の2つの直線が互いに交わるならば、一方の線分でできる長方形は他方の線分でできる長方形に等しい」と書いてあります。

教科書の記述とは違うのがおわかりでしょうか。「ある点を通る直線が」ではなく「2本の直線が交わるとき」なのですね。

数研出版の教科書では、これに近い記述になっています。

「円の2つの弦AB,CDの交点、またはそれらの延長の交点をPとすると PA・PB=PC・PDが成り立つ」

ユークリッドの本では、交点がどこにあるかは書かれていませんので、円内でも円外でもよいのです。2本の直線の位置関係により、次の2つの場合が考えられます。

また、特別な場合として、片方が接線の場合も含めることにします。点Cと点Dが重なったと思ってよいでしょう。

さて、証明ですが、オリジナルの証明は結構ややこしいです。今なら、相似を利用して、中学生でも証明ができます。

三角形を作るために2本の補助線を引きますが、引きかたには2通りあり、どちらでも構いません。

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