トロコイド

「円を含む円盤面が与えられており、円盤上の円が直線上を滑ることなく回転する。円盤上の点Pが円周上にあるときの軌跡をサイクロイド、円盤上に限らないときの点Pの軌跡をトロコイドという。特に、円盤の内にあるときを内トロコイド(ハイポトロコイド)、外にあるときを外トロコイド(エピトロコイド)という。」(曲線の事典)

次の図を見てください。

円Cが、灰色の線上を滑ることなく転がっていくときの点Sの軌跡。これはサイクロイドです。

実はこの図では、円Cは細い黒の直線上を、横方向への速さvで回転しながら進んでいきます。

その速さvが3で、円の回転速度(角速度)ωは1です。すると、t秒後のCのx座標は3tで、回転角はtなので点Sが動いた弧の長さは3tとなり、進んだ距離と回った弧の長さが等しくなります。ですから、サイクロイドと同じなのです。

同じvとωで、Sの位置を変えると次のようになります。点Sが、円Cの内側にありますので、これが内トロコイドです。

Sの位置を変えて、円の外側にしたのが外トロコイドです。

ωまたはvを変えると、「灰色の直線上を滑ることなく回転する」という条件ではなくなります。たとえば次のようになります。

この図は、円Cの半径を変えて、円周上にある点の軌跡を描いたのと結局は同じことになります。内トロコイドと同じなのです。

したがって、これらは次のように一般化できます。

半径rの円が角速度ωで回転しながら速さvで動くときの、円周上の点の軌跡がトロコイド

vやωを変えられるインタラクティブな図があります。

円上のトロコイド

円が移動する軌道が直線ではなく円の場合も同様です。Wikipediaでは、円の場合に内トロコイドと外トロコイドの説明をしています。しかし、エピサイクロイド、ハイポサイクロイドのように、「定円のまわりをすべることなく回転する」のではなく、円の中心が定円に沿って動き、かつある角速度で回転する、とすると、さまざまなシミュレーションが可能になります。

次の図は、円Cが定円上を回転する角速度がv=1、円C上の点Pが回転する角速度が4の場合です。角速度が正なので反時計回りに回転します。

この中に、半径3の円を描いてみましょう。こうすると、黒の円の外側を回るエピサイクロイドとなります。

円Cの角速度をマイナスにすると、時計回りに回転します。すると次のような軌跡になります。

円Oの外側に、半径5の円を描いてみると、これはハイポサイクロイドだということがわかります。

上図のように、それぞれの角速度と円Cの半径を変えることのできるインタラクティブな図があります。

ペリトロコイド

内接する円がすべることなく回転するときの円周上の点の軌跡、という点ではハイポサイクロイドと同じなのですが、違う点は定円と動円の関係です。ハイポサイクロイドでは、定円の内側を動円が回ります。したがって、動円の方が定円より小さい前提です。これに対し、ペリトロコイドでは内側の円が定円で、大きい円の方が動円なのです。次の図で、円Oは定円。円Cが円Oのまわりを回ります。

軌跡は次のようになります。上の状態から、円Cが反時計回りに回っています。

足跡を表示したり、アニメーションにしたりして、実際の動きをつかみやすいインタラクティブな図があります。

放物線上のトロコイド

円が移動する軌道を放物線にとってみましょう。円盤を投げ上げた場合です。円盤でなくても回転するものならば構いません。たとえばトンカチ(カナヅチ)。「日常にひそむ数理曲線(小学館)」には、トンカチを投げ上げた場合の図があります。トンカチの重心は放物線を描き、柄の先端はトロコイドを描くのです。(著者の佐藤雅彦氏のブログなどに少し載っています)

点Cは円の中心。放物線上を放物運動します。重力加速度は9.8m/ss です。点Pは点Sを出発して、角速度ωで円C上を回ります。ωが正のときは反時計回りに回ります。

ωが負のときは時計回りに回ります。「日常にひそむ数理曲線(小学館)」に載っているのはこの場合です。

上図のように、円Cの角速度と半径を変えることのできるインタラクティブな図があります。

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