23章 プレッシャー克服法と気分転換法:リーダーシップとモチベーション

 桧舞台に強い人材とは、どのような舞台でもプレッシャーを感じないか、楽しみ、自分の力を出し切れる人。脚光を浴びれば浴びるほど力を出す人です。スポーツマンやビジネスマンを研究すると、次のような共通項が見られます。

1.今に集中し、行為・プロセスを楽しめる

-桧舞台、追い詰められた状況が好き/常に、平常心、リラックスし、前向き/状況を的確分析判断

 今やるべきことに集中しています。修羅場や本番を桧舞台ととらえ、楽しみ、皆から見られるのに快感を感じています。将来の結果でなく、今の行為・プレーに集中し、「フロー状態」です(No8「フローな気分にしてくれ」参照)。自分を表現するのが楽しく、プレッシャーを感ず、追い詰められた状況を、自分を奮い立たせるチャンスと捉えています。

 どういう時でも感情的にならず、穏やかで平常心をもち、リラックスしています。メンタルタフネス研究者ジム・レイヤーは「IPS(Ideal Performance State):理想的なパフォーマンス状態」と名付けています。「体はリラックスしていながら、自信に満ち集中力がみなぎっている状態であり、相手のプレーがまるでコマ送りのスロービデオを見るようにはっきり見えるといいます。次のような特徴があります。

 ・体はとてもリラックスしている

 ・不安や畏れもなく、ゲームが楽しくて仕方がない

 ・心は澄みわたり、とても冷静

2.気分転換力、修正力がある

○気分について

 「気分」というのは、「恒常的ではないが、比較的弱くある期間持続する感情の状態」(広辞苑)とされています。「情動の背景にある持続的な感情」です。「感情」というのは、いわゆる、五情:喜(よろこび)怒(いかり)哀(かなしみ)楽(たのしみ)怨(うらみ) というように、瞬間、瞬間で変わるもの。「気分」の方は、最近、気分が良くない、というように、ある一定期間続くものと捉えると、わかりやすいかもしれません。気分と言うのはとても大事なもので、どんな偉業を挙げようが、どれほど富を築こうが、気分が落ち込んでいればそんなことはどうでもよくなります。

 心理学者ロバート・セイヤーは、気分の2要因として「心のエネルギー」と「緊張感」を挙げています。

  ・「気分」=「心のエネルギー」×「緊張」

 セイヤーの実験によると、同じ問題でも、午前中より午後のほうが深刻に受け止められている。どんな時間帯でも、心のエネルギーが「疲弊」し、「緊張」の状態では、ひときわ重大な問題だと感じていたこと。したがって、なるべく「疲労×緊張」状態の時に心配事をあれこれ考えないことだ、など、気分を左右する要因を知ることで、幾分でもコントロールできるように、と提案しています。

○気分転換力:「笑いとばす」「色々な引出し(選択肢)を使う」「ルーティーン(決まり事)」

 お子さんを持っている方なら分かると思いますが、子供と接していると、いつまでも叱った後の否定的な感情を引きずっている訳には行きません。子供は先に切り替わって次に進んでいます。こちらが引きずっていると、子供の心の成長を妨げます。早く切り替えて、子供の良いところを見てあげなければなりません。

 気分転換法としては、「笑う」「色々な選択肢を持つ」「ルーティーン(決まり事)」「別のことを取り組む」「スポーツ、散歩」「人と触れ合う」「音楽鑑賞」などが良いことがわかっています。

「笑いとばす」は、笑った表情や行為で、気持ちがポジティブになり、プレッシャー下でも的確判断し、アイデアをひねり出します。その結果「色々な選択肢を引出します」。「色々な引き出し」を持っていれば、追い詰められた時でも、これが駄目ならこれ、と別の道を使えることも大事です。

 「ルーティーン」とは、「決まり事」です。イチローがいつも同じスタイルで打席に入るあの動作がそうです。プレッシャー克服法にもなっています。気持ちの「スイッチを入れる」効果があります。会社の中で出来るとすれば、お茶を買いに行く、トイレに行く、などです。色々試して、ご自分の気分転換法を得てください。参考まで、私は、お茶を買いに行く、仲間とバカ話をして笑う、スポーツクラブに行く、をしています。

3.夢や目標を持っている/自分のためでなく、誰かのために一生懸命

 今に一生懸命になることと反するようですが、将来の夢のための今なので、失敗を恐れない、という考え方もあります。夢を創り、今のプレッシャーは目標や夢を達成する一プロセスです。本番は遠い未来の一部ですから、少々の失敗を怖がりません。また、自分のためでなく、誰かのために一生懸命であり、心が大きく、雑事や周りの雑音が気になりません。

○プレッシャーは自分が作る

 実は、プレッシャーは自分が作っているのです。認知理論でいうように、事実をどう自分が解釈するかで、その事実への感情も決まってくるからです。ですから、どーん、と構えていればいいのです。