第6回 ファシリテーション・会議マネジメント

 今回は、ファシリテーション・会議マネジメントをテーマに取り上げます。「会議は1.5時間が上限」「盛り上げるためのファシリテーション3要素」「伝わるメモは3項目」「ベストパフォーマンスの会議は7人まで」――です。コラムとして、「セレンディピティ、幸運に偶然出会う能力や幸運を呼び込む3要素」を記しています。

■1.5時間:会議は1.5時間を超えると生産性が急激に低下

 [図表]は会議のパフォーマンス曲線を経験から導き出したものです。最初は“エンジンオイル”が回りきっておらず、議論が盛り上がりにくいものです。しかし、参加者同士が発言をしていくうちに場作りができ、次第に盛り上がり、40分から1時間ぐらいでパフォーマンスのピークを迎える傾向が見られます。その後は脳の疲労、処理量の限界などから急激に生産性の低下が観察されます。新しいアイデアが出ず、同じ話の繰り返し、堂々巡り、重箱の隅をつつくような細かい議論になりがちです。こういう時はいったん休憩を入れて間をおき、翌日または次回に再スタートしたほうが生産的です。
 みなさんは、会議後「こんなアイデアがあった」「ああ言えば良かった」ということがありませんか。会議で情報を詰め込みすぎると脳が処理しきれなくなり、思考停止の状態に陥りますが、会議という状態から解放されると脳がリラックスして、アイデアをつながりだすからです。会議は1.5時間を上限とし、1.5時間を超えたらさっさと切り上げるという割り切りも組織の生産性という面から重要です。

■ファシリテーション3原則「肯定・ハウ・見える化」

 議論を盛り上げる要素は、以下の三つです。

①肯定語を使う
②2Why、3How
③ホワイトボードで見える化

①肯定語を使う
 日本は完璧主義的な傾向があり、良い面を伸ばすより、悪いところを改善しようとしがちです。会議で、若手が勇気を奮って発言したのに、ベテランがこれまでの経験から「それは無理だろう。以前、似たようなケースでうまく行かなかった」と一蹴したらどうでしょう。その若手は2度と発言しないかもしれません。まずは「なるほど、そういう切り口もあるね」など発言を“受け入れる”ことが大事です。そこから、どのようにしたらできるかを考えるというステップに進むことで、建設的な議論ができるのです。
②2Why、3How
 アイデアを広げるには、以前(第3回 創造性、打開力を鍛える-ビジネスの鉄則 ナンバー経営心理学(3))で紹介した「2Why、3How」が有効です。「2回なぜ、3回どうするかを問う」ことで、原因と対策をバランスよく考えることができるわけです。また、質問の仕方も回答に制限を設けずに質問する「オープン質問」にするなどがポイントです。Yes/No で答えられる「クローズ質問」だと、相手の考えを引き出せませんが、「オープン質問」では、より相手の考えを広げ、または、掘り下げることができます。
③ホワイトボードで見える化
 会議では参加者の発言をホワイトボードに記録し、内容を見える化、共有化します。言葉や内容を見える化しないと、発言者の言葉が異なって解釈されて進むことがあります。ホワイトボードに見える化することで、互いの理解が擦り合わされて誤解が少なく、会議も効率的に進めることができます。さらに、会議の最後にはメモを写真に撮って共有し、次回に備えましょう。
 この一手間が次回の新しい発想や選択肢につながっていくのです。前回の会議の振り返り、記憶の整理もしやすくなります。ただし、ホワイトボードのメモは、くれぐれもあらためてワープロで打ちなおすような清書は不用です。生産性の視点から完璧主義を捨てましょう。

■3項目:メモや理由は3項目

 これは、会議などでメッセージを明確にするために「3項目にまとめる」というものです。私が米国の大学院に留学した際にメモのノウハウとして伝授されました。実学を追求する米国大学院らしいヒントです。
 項目は、4つや5つでは多すぎ、記憶に残りにくくなります。3つは数的にも覚えやすく、理由として述べても1つつぶされても2つは残ります。会議でも、結論を3つに集約し「今日の発表は3つにまとめられます」と述べると、整理され参加者にも伝わりやすくなります。

■7人:ベストパフォーマンスの会議は7人まで

 筆者のファシリテーション実績からの経験則です。アイデア出しの会議は最大7人までにしましょう。8人以上になると、まったく話さない人が出てきます。まったく話さない人は、意見があっても、人数の多さに気後れして発言しにくいのです。そういう人は、参加しても意見の出しようがなく、疎外感を抱き、次第に参加意欲が低下します。また、他と異なった意見ゆえ言い出しにくいのであり、意見の幅でも選択肢・可能性を一つ失っています。
 多様な意見を集め、かつ、中身のある議論をするには4~7人がベストです。

コラム:セレンディピティ3要素
 セレンディピティとは、幸運に偶然出会う能力や幸運を呼び込む能力のことです。それを高めるには、以下の3要素があるとされます。
           ①行動  ⇒   ②気付き   ⇒   ③受容
 まず「行動」すること。続いて「気づき」を得ること。それらを「受容」することです。
 考えてばかりいて「動かない」と、チャンスには出合えません。出合ってもそれをチャンスと「気づける」ことが大事です。気づいて、それを自分のものとして「受け容れる」ことで幸運につながるのです。前向きに「動き」「気づき」「受け容れる」人と、後ろ向きに「待ち」「気づかず」「拒否する」人では、必然的にチャンスに巡り会う機会が異なりますので、どちらが幸運を呼び込めるかは言うに及びません。