15章 リーダームードが組織パフォーマンスを決めている:リーダーシップとモチベーション

○背中や実践で見せる=ロールモデル

 背中で見せる。やってみせる。ロールモデルと言います。部下や子供は、上司や親を見て育ちます。上司や親は、教師だけてなく、反面教師にもなりえます。筆者にも教師と反面教師がおり、学ぶことが多くありました。リーダーは、しっかりと背中を見られています。

○ミラーイメージの法則とリーダームード

 ミラーイメージの法則はスポーツ心理学の法則です。

「リーダーが向けた感情・思考は、そのまま相手から返ってくる」

というものです。例えば、リーダーが部下に感謝の気持ちを向ければ、部下からも感謝の気持ちで返ってくる。部下に怒りの気持ちで接すれば、怒りの気持ちで接してくる。

 「上司の背中をみて部下は育つ、親の背中を見て子は育つ」という格言があります。また、「子は親の鏡」という格言もあります。上司や親といったリーダーの一挙手一投足が、職場や家庭の雰囲気に影響するということです。明るく振舞えば、メンバーも明るくなる。承認、尊敬、感謝の念を向ければ自分に返ってくる

 逆に、感情の起伏が激しいリーダーが不機嫌になると、メンバーも気を遣い、腫れ物に触るように職場の雰囲気が沈みます。厳しいリーダーが会議室や執務室に入ってきた瞬間に場が凍りつくこともあります。皆さんの一挙手一投足が、大きいところでは、100人ぐらいの職場に影響を与えています。一言もしゃべらなくても。威圧感ありますから。「なぜか会議が盛り上がらないのです」とよく聞かれるのですが、顔や雰囲気が怖いんですよ、と申し上げています。それだけで盛り上がらないのです。

○なぜミラーイメージか

 なぜミラーイメージかというと、人間には「ペーシング」という習性があります。一緒に知り合いの方とご飯を食べるときも、同じペースで食べますよね。歩くときも同じ。一人だけ先にいかない。同じペースを保とうとする。それが、一番居心地が良いからです。

 職場にリーダーが入ってきたら、その人が出したムード・気を受け取るのが、とりあえずリスクが少ない。それに異を唱えるのは相当勇気がいる。そのムード・気が場を制している、ということです。

○リーダームード(雰囲気)が組織パフォーマンスを決めている

 ミラーイメージの法則があるため、リーダームードが、結果的に組織パフォーマンスに影響します。第13回で書きました「パフォーマンスモデル」です。

 □「組織パフォーマンス」=「組織スキル」×「組織の心持ち、モチベーション」

 「リーダームード」はミラーイメージの法則を通し、「組織の心持ち、モチベーション」に強く影響しています。リーダーが「どーん」と寛容に部下を包んであげると、職場、部下の感情・心も大きくなります。逆に、リーダーの心が小さくなると、すぐミスをみつけて、「お前駄目だな」となると部下の力がでない。良く見かけませんか。「組織スキル」は安定していますが、リーダームードで「組織の心持ち、モチベーション」は変動し、良い状態でパフォーマンスが上がります。リーダームードでどれだけパフォーマンスに影響していることか、ということです。

 リーダーは背中を見られていますし、自分の気は知らないうちに出ています。そこをご理解ください。