2 傾聴の3段階:聴いているふり、選択的に聴く、傾聴
①無視、聴いているふり
聞く耳を持たない、聞いているように見せかけて、実際には聞いていない、次に何を言おうか考えている状態です。子供が親の小言や説教を「はいはい」と聞いているのがこれに当たります。
②選択的、注意して聴く
すべてを聴くわけではなく、自分が興味・関心のある“ストライクゾーン”の話題だけを聴き、それ以外はスルーする状態です。
職場でパソコンに向かい仕事をしながら部下からの相談を受け、自分の“ストライクゾーン”に入ると、やおら真剣に聴くような状況です。上司が適度なアドバイスができていれば問題はありませんが、自分の価値観や経験を基準に聴き、意見が異なり、部下の弱点を見つけあげつらうことになるとアドバイスの押し付けとなります。部下は説教されていると感じ、ホウレンソウの足は遠のきます。最近、部下がホウレンソウに来なくなったとすれば、押し付けがましいアドバイスをしているのかもしれません。
③傾聴
積極的に関心を持ち、共感して聴くことです。相手の立場で聴いている状態です。上司としては、管理職としての役割を果たすために、部下の話を傾聴できることが欠かせないスキルとなっています。傾聴のポイントは、次項「カウンセリングの3原則」を参照ください。
1 無視、聞いているふり
2 選択的、注意して聞く
3 傾聴
3 カウンセリングの3原則
「聞く」は受動的なニュアンスがありますが、「聴く」には心を込めて耳を傾けるという能動的なニュアンスを含みます。
「カウンセリングの3原則」とは、①積極的、適切な関心を示す、②共感を持って、相手の立場で聴く、③言行一致の三つをいいます。アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した説をかみくだいたものです。
第1原則 積極的、適切な関心を示す
第2原則 共感を持って、相手の立場で聴く
第3原則 言行一致
上記2の「傾聴」を理解・実践するには、この3原則を身につけることです。カウンセリングにはいろいろな流儀がありますが、ロジャースのカウンセリングは、クライアントに対して心の免疫力を与え、対話によって心の刺さったとげを抜き、自ら傷を治癒することを助ける流儀です。
①第1原則 積極的、適切な関心を示す⇒存在承認
どのような話題に対しても無条件に「積極的に適切な関心」を示す「存在承認」です。子供や部下の相談に対し、自分が知らない分野でも積極的に関心を持ち、同じ目線になること。関心を持たれると、誰でも元気になるものです。自分に関心を示してくれ、話を聞いてくれる、みなさん喜んでお話します。熱心に聴かれていやな思いをする人はいません。
②第2原則 共感を持って、相手の立場で聴く⇒成長承認
「なるほど、それで」「次はどうなった、これからどうするの」と、相手の話に共感して聴くことです。聴く側としては「私も同じ気持ちだ」という態度で話を聴くことです。承認の視点で言えば、その人と同じ目線になって良い所を引き出し共感・承認する「成長承認」に当たります。
③第3原則 言行一致
言葉だけでなく、行動も伴った形で相手の話を聴くことです。言葉は相手に共感していても体がふんぞり返っていたり、視線を合わせなかったりしたら、相手はどう思うでしょうか。相づちを打つ、相手の話を最後まで聴く、質問するときは相手の話を引き出すようにするといった具合です。
「聴く」という行為は、「心の叫び」という心の奥底の強い「思い」を引き出すことにほかなりません。「存在承認」と「成長承認」を通して、相手の良いところを引き出し、悩みを解決する、とても大事な取り組みです。聴く側のカウンセラーは、ほとんどしゃべらないのですが、話を聴いてもらった人は生き方や成長を認められ、カウンセリングを通じて気づきを得、自らの自然治癒力で課題を克服していきます。
上司や親は、この傾聴のスキルを身につけて、部下やお子さんの中にある可能性を引き出していく良きカウンセラーになってほしいと思います。