第7回 コミュニケーションにまつわる真理

 今回はコミュニケーションのナンバー則。「3」は「コミュニケーションには3層」。「聴く」にも聴いたふりから「傾聴まで3段階」を数えられます。傾聴にはロジャースの「カウンセリングの3原則」があります。
 「4」では、「自己主張の強弱」と「感情表現の強弱」により「コミュニケーション4タイプ」に分けられ、それぞれ承認の在り方が違います。
 最後に、言葉で伝わるのは「7%」、言っている内容より、言い方や態度のほうが伝わるという「コミュニケーションの法則」です。

1 3層:コミュニケーションは3層

 コミュニケーションは質的に3層に分かれるという筆者の仮説です。
①あいさつや軽い雑談
 最も浅いのは、あいさつや軽い雑談、話し合いです。パーティー等で知り合って、その場で名刺交換し、互いを知り合うような場面や職場内で仕事の合間の雑談です。
②協働・相互啓発
 協働や相互啓発、つまり一緒に働き、学び合い、助け合うことです。このコミュニケーションができていれば、いざという時に強く、日常的に相互成長を引き出せます。
③悩み・ストレスの相談
 最も深いコミュニケーションとは、プライベートな悩みやストレスも含めた相談ができることです。つらいときに支え、一歩踏み込んで個人の悩みまで話せる家族のような職場では、メンタルヘルス不調は起こりにくいのです。

 ③までできている職場はなかなかありません。これができればメンタルな面のサポートもされた状態といえます。なお、活気がある職場は、3層いずれも活発に行われています。皆さんの職場ではいかがですか。

2 傾聴の3段階:聴いているふり、選択的に聴く、傾聴

①無視、聴いているふり
 聞く耳を持たない、聞いているように見せかけて、実際には聞いていない、次に何を言おうか考えている状態です。子供が親の小言や説教を「はいはい」と聞いているのがこれに当たります。
②選択的、注意して聴く
 すべてを聴くわけではなく、自分が興味・関心のある“ストライクゾーン”の話題だけを聴き、それ以外はスルーする状態です。
 職場でパソコンに向かい仕事をしながら部下からの相談を受け、自分の“ストライクゾーン”に入ると、やおら真剣に聴くような状況です。上司が適度なアドバイスができていれば問題はありませんが、自分の価値観や経験を基準に聴き、意見が異なり、部下の弱点を見つけあげつらうことになるとアドバイスの押し付けとなります。部下は説教されていると感じ、ホウレンソウの足は遠のきます。最近、部下がホウレンソウに来なくなったとすれば、押し付けがましいアドバイスをしているのかもしれません。
③傾聴
 積極的に関心を持ち、共感して聴くことです。相手の立場で聴いている状態です。上司としては、管理職としての役割を果たすために、部下の話を傾聴できることが欠かせないスキルとなっています。傾聴のポイントは、次項「カウンセリングの3原則」を参照ください。

1 無視、聞いているふり
2 選択的、注意して聞く
3 傾聴


3 カウンセリングの3原則

 「聞く」は受動的なニュアンスがありますが、「聴く」には心を込めて耳を傾けるという能動的なニュアンスを含みます。
 「カウンセリングの3原則」とは、①積極的、適切な関心を示す、②共感を持って、相手の立場で聴く、③言行一致の三つをいいます。アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した説をかみくだいたものです。

第1原則 積極的、適切な関心を示す
第2原則 共感を持って、相手の立場で聴く
第3原則 言行一致

 上記2の「傾聴」を理解・実践するには、この3原則を身につけることです。カウンセリングにはいろいろな流儀がありますが、ロジャースのカウンセリングは、クライアントに対して心の免疫力を与え、対話によって心の刺さったとげを抜き、自ら傷を治癒することを助ける流儀です。

①第1原則 積極的、適切な関心を示す⇒存在承認
 どのような話題に対しても無条件に「積極的に適切な関心」を示す「存在承認」です。子供や部下の相談に対し、自分が知らない分野でも積極的に関心を持ち、同じ目線になること。関心を持たれると、誰でも元気になるものです。自分に関心を示してくれ、話を聞いてくれる、みなさん喜んでお話します。熱心に聴かれていやな思いをする人はいません。

②第2原則 共感を持って、相手の立場で聴く⇒成長承認
「なるほど、それで」「次はどうなった、これからどうするの」と、相手の話に共感して聴くことです。聴く側としては「私も同じ気持ちだ」という態度で話を聴くことです。承認の視点で言えば、その人と同じ目線になって良い所を引き出し共感・承認する「成長承認」に当たります。

③第3原則 言行一致
 言葉だけでなく、行動も伴った形で相手の話を聴くことです。言葉は相手に共感していても体がふんぞり返っていたり、視線を合わせなかったりしたら、相手はどう思うでしょうか。相づちを打つ、相手の話を最後まで聴く、質問するときは相手の話を引き出すようにするといった具合です。
「聴く」という行為は、「心の叫び」という心の奥底の強い「思い」を引き出すことにほかなりません。「存在承認」と「成長承認」を通して、相手の良いところを引き出し、悩みを解決する、とても大事な取り組みです。聴く側のカウンセラーは、ほとんどしゃべらないのですが、話を聴いてもらった人は生き方や成長を認められ、カウンセリングを通じて気づきを得、自らの自然治癒力で課題を克服していきます。
 上司や親は、この傾聴のスキルを身につけて、部下やお子さんの中にある可能性を引き出していく良きカウンセラーになってほしいと思います。

4 コミュニケーション4タイプ

 人は、それぞれモチベーションの源泉(タイプ)が違います。コミュニケーションの際には、その人のタイプを認識しておくことが重要です。そうしないと、意欲を高めるどころか、意欲を下げてしまうことになってしまいます。
 タイプを客観的に捉えるには、コーチング研修などで活用されているコミュニケーションの4タイプ分類が参考になります。分類軸は「自己主張の強弱」と「感情表現の強弱」です[図表4]。タイプ別に見ていきましょう。

A プロモーター(図の右上)
「自己主張、感情表現とも強い」タイプ。注目されることを好み、褒められることを喜びます。
B アナライザー(図の左下)
「自己主張、感情表現ともにあまりない」タイプ。分析型で冷静だが、とっつきにくい印象がある。具体的に褒められることを喜び、表面的には察しづらいが、内心は喜んでいます。
C コントローラー(図の左上)
「自己主張は強いが、感情表現が少ない」タイプ。近づきがたい印象を醸します。指示命令をきっちり行い、結論からの報告を求め、成果を厳しく追求します。成果を褒められることに喜びを感じます。
D サポーター(図の右下)
「自己主張が少ないが、感情表現はある」タイプ。見た目良い人そうに映り、繊細で傷つきやすいタイプです。プロセスを大事にするので、仕事ぶりをよく見て褒めることが大事です。
 相手のタイプをよく見極めることで、より良いコミュニケーションや人間関係が作られます。




5 7%:コミュニケーションにおける言葉の果たす役割は7%(メラビアンの法則)

 言語情報(言葉)=7%、聴覚情報(言い方)=38%、視覚情報(態度)=55%。心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱した法則です。
 対面によるコミュニケーションで、言葉で伝わるのは7%しかありません。言葉以外で伝わるのは合わせて93%に達します。つまり、聞き手には言っている内容より、言い方や態度のほうが与えるインパクトが強いことを意味します。
 例えば、とても良い内容のスピーチでも、態度が尊大だったり、横柄だったりすれば、言い方や態度から受け手に伝わるのは見下されたようなメッセージしか伝わらないのです。
 シンプルに短い言葉で、言い方や態度で心を込めるのが最も相手に伝わるのです。よくいませんか。例えば、都合が悪くなると早口で話し続け、煙に巻こうとする人。逆に、誰かに感謝の意を伝えようとするとき、多くを語るより、深々とお辞儀をしたり、強く手を握ったり、笑顔で接したりするほうが気持ちは伝わるのです。