第10回日常における仕事の鉄則(完)


 数字にまつわる経営学をご紹介してきた本連載も、今回が最終回です。「1」は「知行合一(ちこうごういつ)」、「2」は「シナジー・協働は2乗倍」「2:8の法則(パレート)」、「3」は「三助:自助、互助、扶助」「三種の神器(さんしゅのじんぎ)」、このほか、「7つの習慣」「ルール72」「100時間プロ化法則」をご紹介します。

1.知行合一

 中国、明の王陽明の教えをまとめた陽明学の中心的な考え方の一つが、「知行合一」。「知は行のもとであり、行は知の発現であるとし、知と行とを同時一源のもの」とする説です。例えば「寒い」という知識(知)が寒さの体験(行)と不可分であるように、本当の「知」はすべて「行」を伴わなければならない。もしくは「行」を伴うことでしか「知」は成立しないということです。私はこれを言い換えて、「知っていることに意味があるのではなく、行ってこそ意味がある」と解釈しています。
 具体例として、私が実際に経験したことをお話しします。仕事上、高モチベーション職場に取材し「ベストプラクティス・レポート(BPR)」という冊子を作り、それを用いてマネジャー向けワークショップを行うのですが、「そんなことは知っている」というコメントをくださる方がいらっしゃいます。そんな時、私が相手に問いかけるのは「実践していますか」というものです。返ってくる答えは「実践まで…」あるいは「やってはみたがうまくいかなかった」というものが多いようです。
 これは、知識を知っているだけでは役に立たないことを示しています。大事なのは、実践・徹底し、役に立つことです。評論や言い訳をするエネルギーを実践に向けると違った世界が広がるのです。