第4回 人材育成・評価・キャリアプラン
今回は、育成、評価、キャリアに関するナンバーです。 キャリアマネジメントの「一人二役」、追い込まれたときにその人の真価が分かる「一事が万事」、育成に関わるベストバランス「1:2:7-育成の法則」、評価の際の留意点「2乗:人事考課のカンデラの法則」です。 また、自分で行動を変えるための「3カ月ルールと知行合一」、生きる意味を考える「生き方の3要素:Be-Do-Have」「40歳は人生の正午」です。
■一人二役・多能工:生産性向上、キャリアマネジメント、ポリバレント人材
演劇において、一人で二役をこなすこと、ビジネスでは、多能工を示します。 これには、以下のようなメリットがあります。
①業務負荷の平準化ができること(複数業務できる人がいると、負荷が増えても分担し、ラインにボトルネックを生じにくい) ②複数業務をこなせ、仕事に飽きが来にくい ③視野が広く、複数業務にまたがる改善提案ができること ④上記①~③の結果、キャリアの幅や成長の可能性が高まること
日本の伝統では、ホワイトカラーを「多能工」として養成していると言ってもよいでしょう。企画、人事、総務、購買、生産管理、営業など幅広い業務を経験し、ジェネラリストとして育てます。キャリアの幅が広くなり、どこでもこなせる、生き残れる人材を育成しているわけです。別名、ポリバレント人材。これはサッカーや野球で、どこでもなせるプレーヤーを指します。半面、専門性が浅いことも指摘されます。
課題になるのは、技術力が必要で一長一短に修得ができない業務です。例えば、情報システム、研究開発、金融技術、経理・財務など。単能工で行くべきなのか、多能工でいくべきなのか議論があります。考慮すべきは、社内の事情ばかりでなく、顧客の要請はより幅広い課題へのソリューションを期待されるようになってきていること。一人またはチームで複数業務の知見を持つ多能工化は必然といえます。
■一事が万事
一つのことを見れば、他のすべてのことが推察できるということ。一般的に、あまりよくない場面を見て、他の面でも同様だろうと推察する場合に用います。「人物評価の格言」といえます。
人の真価は追い詰められた時の処し方で分かるもの。その時、肝が据わっているか、慌てふためいて事に当たれないか、誰かを責めるか――によく表れます。あまり勧められるものではありませんが、圧迫面接は、圧迫された時の処し方が、その人の万事をよく表します。
■1:2:7-育成の法則
個人の成長を促進するための育成活動のベスト・ポートフォリオ経験則です。座学で教えるOff-JTが1割、OJTとコーチングで引き出すが2割、チャンスや修羅場を与えて体験・実践で考えながら成長させるのが7割と言われています。
教育は「教」と「育」から成り立っています。教えるが3割。育てるが7割。あまり教えすぎないこと。植物に例えると、こう伸びなさいと教えることはできません。水や肥料を与え、伸びるチャンスを作るだけです。手を加えすぎると枯れてしまいます。人も同じで、教えすぎると消化不良で、自分で考え、工夫することをしないので伸びません。みなさんはいかがですか。
■2乗:人事考課のカンデラの法則
考課者の陥りやすいエラーの一つとして「期末誤差」があります。考課者は、記憶に新しい成果に基づいて考課を下してしまうという傾向を示したものです。この時点によるエラーのほかに、距離によるエラーもあります。
光学のカンデラの法則は、「光源の明るさは、光源と観察者の距離の2乗に反比例する」というものです。いうなれば、距離が2倍になると、評価者見える度合いは4分の1になってしまうということです。上司(考課者)として気を付けるべきは、カンデラの法則を意識して、部下と定期的、等距離で見守り、記録する努力をすることが必要ということです。
■3カ月ルールと知行合一:3日坊主、3週間で習慣化、3カ月で伝わる
知行合一(ちこうごういつ)という言葉があります。陽明学の言葉で、「知っていても実践しなければ意味がない」ということです。
よく、講演・研修の後で担当の人から「研修参加者は当初気づきはあるのですが、効果が長続きせず、数カ月も立つと元に戻っているのです。何か良い方法はありませんか」と質問されます。私は「変わるのは聞いた方であって、ご自分の努力しかありません」と申し上げていますが、ヒントとしてお答えしているのがこのルールです。「三つのはハードルを超える取り組みをしてください」と言うものです。具体的には、以下のようなことです。
①3日のハードル=3日坊主を超える 記憶ははかないもので、わずか20分後には約半分、1日経つと74%を忘却すると言われます(エビングハウスの忘却曲線)。つまり、当初、気付きがあっても2日目に26%になっています。3日目の記憶が26%×26%=7%、93%を忘却します。これが最初のハードルである「3日坊主」を超えることです。
②3週間のハードル=習慣化する 心理学の始祖ウィリアム・ジェームズは、3週間続けると習慣化すると述べています。習慣は何が良いかというと、意識し考える必要がないこと。何かを新たに始めるには、かなりのエネルギーが要りますが、習慣化すると始めることが苦ではありません。これが3週間のハードルです。 ただし、意識しないということは、形骸化、つまり何のためにやっているかの目的を忘れる可能性もあります。気を付けてください。
③3カ月のハードル=周りに本気度が伝わる 3カ月までは周りが、「また何かやっているな」という感想を持ちます。さすがに3カ月続ければ、周りに本気度が伝わるものです。そうした周囲からの認知・承認が動機付けになり、さらに頑張り、身に付いてきます。 だまされたと思って続けてみてください。私の所には成果報告が多数寄せられています。
■生き方の3要素:Be-Do-Have
生き方についてのヒントを表す3要素です。「Be」は、ある、存在する。「Do」は行動する。「Have」は所有することです。
例えば、「Do-Have-Be」は、一生懸命勉強して、学歴や資格をとり、地位のある存在となる。今の日本を象徴する生き方かもしれません。
「Have-Do-Be」は、裕福な家庭に生まれ、良い大学、会社に入り、それなりの生活をする。
最後に、「Be-Do-Have」は、あるがままに生き、学び、幸せを手に入れる。 みなさんはどの生き方に共感を持つでしょう。最後のスローライフも悪くないですね。
■40歳は人生の正午(折り返し点):キャリアマネジメント
心理学者カール・ユングは「40歳は人生の正午」と称し、その意味を「午前の太陽の昇る勢いはすさまじいが、その勢いゆえに背後に追いやられたもの、影に隠れてしまったものがたくさんある。それらを統合していくのが40歳以降の課題だ」と語っています。
キャリアを考える際、青年期、就職、昇進・昇格、退職、老年期などのステージを意識しますが、それらをまたいで40歳が折り返しと意識するのが大事であることを示唆しています。
厄年は節目になる年齢であり、前厄、本厄、後厄の幅でいうと、男性が24~26歳、41~43歳、60~62歳、女性は18~20歳、32~34歳、36~38歳です。ビジネスパーソンでいえば、男女とも40歳前後に厄年が来ます。例えば、24歳は大学を卒業し就職し3年目、40台前半は、必死で走って来た職業人生で、自分の力と自分のパフォーマンスがずれ出すころ。自分の思ったとおり体力も持久力もついて来ないのもこのころです。女性にとっては、38歳は女性としてのあり方、子育ても一段落し、自分を見つめ直す時、そのために悩み、心の隙に厄が来るのかもしれません。
40歳は半分の人生を振り返り、残りの人生のビジョンを考えるのに良いタイミングです。このタイミングで人生を振り返り、考えてみませんか。