『コンサルタントの仕事術』

はじめに

この文章は、コンサルタント向けに作成した「コンサルタント仕事術」というビデオのスクリプトを起こしたものです。ご参考になれば幸いです。

『コンサルタントの仕事術』

はじめに

この文章は、コンサルタント向けに作成した「コンサルタント仕事術」というビデオのスクリプトを起こしたものです。ご参考になれば幸いです。

 

1.     コンサルタントに期待される価値

①悩みの解決、気付きの促進

クライアントさんの期待は千差万別なので、一概には言えない部分もありますが、基本的に共通するのは、悩みの解決です。

お客様は皆、業務上の悩みですとか、組織上の悩み、我々の言い方で言えばその職場をどう良くするかという悩みを持っていらっしゃるので、そこをどうやって解いていくかというお手伝いをするのが我々の仕事だと思っています。

我々ができることは、ご本人が気付かないことの気付きを与えることです。つまり、「悩みの根っこを深堀り」するのを助けてあげるということです。我々に悩みがあるわけではありません、お客様にあるわけですから、その心の中にある悩みの根っこを引き出して、気付かせてあげるというのが、我々のひとつの仕事です。

 

②広い選択肢、深層心理を引き出す

それから期待されるのは、悩みに気付いただけではなくて、どういう解き方があるかという、選択肢の広さです。解決へのどういうアプローチがあるか、なるべく多くの有効なアプローチを提示すると。かっこよく言えば、新しい世界への招待でしょうか。新しい世界観を持っていただけるような、新しい違った視点・物事の考え方を提供できるようなパートナーでありたいということです。

強みという観点で言いますと、お相手の組織の深層心理にある悩みをいかに引き出せるかということになると思います。「聴く・引き出す」ということ、つまりカウンセリングについて、我々は日頃から取り組んで深い造詣を持つことによって、その悩みを引き出せるということが強みになっていると思います。こういう悩みではありませんかと推測して、その仮説を投げかけて相手の琴線に触れていくということが強みの一点目です。

 

③現場をよく知ること

それから、アプローチという観点で言いますと、現場をよく知っているということが我々の強みだと思います。私共の仕事は、先ほど申しましたように多くの企業の現場のマネージャーさんだちと対話をする中で悩みを解決していく、という時間がほとんどです。机についてパソコンを打っている時間よりもそういう時間が長いことは、そうやって千差万別の悩みごとを、日頃から聞き取っているという強みとなり、従って「大体、現象から見てこういう悩みじゃないか」という仮説の選択肢をたくさん持っているということになります。

そのような仮説を投げかけて、かつ、現場で解けるようなソリューション、現場で解けるような解決策をご提示できる、ということが強みだと思います。

 

2.     成功体験・失敗体験とそこから学んだこと

①お客様との対話が学びの場

成功体験・失敗体験をいろいろ思い返してみたのですが、軽重がありますがやはりそういうものの連続的な積み重ねの中で、私もこの業務を25年くらいやってきて、ひとつふたつの成功体験ではうまく説明できませんので、どちらかというと、そこで学んできたことについて話させていただきたいと思います。

クライアントとのやり取り、お客様との接点は、我々にとって非常に学びがあります。先ほど言ったように、現場を知るためには、現場で苦労された人の心の中を知るのが一番ですから、そこから我々としては色々な症状や解決策を学んできました。ですから、常にお客様に鍛えられて、というのも常に新しい問題が出てきますので、それをどうやって解くかという道場にいるようなものです。

お客様と一緒に仕事をするなかで非常に鍛えられてきたなと思います。

また、我々は手法、考え方、掘り起こすということに関してプロですけども、お客様は業務のプロです。プロ同士で一本勝負の稽占をやっているようなもので、非常に緊張感もあり、かつ、笑いあり、人生という意味でもお客様との間では非常に学びがあったと思います。

 

②きれいなレポートより納得感

それから、いかにきれいなレポートを作るかということではないのです。お客様にとってはレポートよりも、自分の心の悩みを解決する一言なり、自分の心の悩みを解決するアプローチが欲しいのです。そういうふうに、自分の心に俯に落ちるような納得感のあるものを如何に提供できるかが問われている、ということをお客様から学んだと思います。

 

③メンバーの成長が自分の成長

社内での学びという点で言いますと、メンバーからの学びも非常に大きいです。私自身がモチペーション向上という仕事をやっていますから、メンバーを成長させること、お客様も成長して欲しいけれどメンバーも成長して欲しいということが私の願いです。そして、メンバーの成長を支援して、メンバーが成長している姿を見ることで、私としても学びがあります。

どういうところにメンバーの関心があって、どういうことに琴線があるということを常に観察するようにしています。これを「ストライクゾーン」と読んでいます。そして、その中に良いボールを投げてあげること、こういう分野をやってみないか、かつこういう仕事にチャレンジしてみないか」と投げかけることで、非常に人が成長していく姿を何度も見てきました。それは、この後お話しする「やりがい」にもつながってきますし、私も非常に学んでいるところだと思います。

 

④納得感を高める事例を持つ

我々は、納得感というのを非常に大切にしているわけですけども、どのようにしてその納得感を高められるかという目標があります。やはりお客様自身が生身の人間として、日頃からこれは俯に落ちる、と思ってもらえるような、事例ですとか言動が提示できると、やはり良いです。

例えば「私は現場の中で非常に厳しい上司に育てられた。それはそれで良かったのだけども、できればこれからは褒めて部下を育てたい」というようなお客様の声があります。自分の育ってきた環境と、これからどうして行きたいというのが、その人にとってとても大事な課題の部分です。それに対して、いかに褒める・承認するかということについて、一緒にどういうやり方をしていったら良いかということを提案するわけです。

「承認のポイントはどういうことか」という事例をたくさん提供していくということと、「これから実際にこういうミーティングをしましょう」ということになった時にそのミーティングがやれる環境を作ってあげるということです。口だけで「10人のミーティングを開きましょう」と言うだけではなくて、どういう場所を使って、どういう時間帯で、どういうルールで、例えば「否定語はやめましょう」とか、そういったことの具体的な提示をすることで、「実際に、私でもやれる」と納得していただけるようなアプローチをいくつか提案するということだと思います。

 

3.     やりがいを感じる瞬間

①お客様に喜んでもらった時、戦友になれた時

やりがいを感じた瞬間というのは、一言で言えば、お客様に喜んでもらった時です。これに尽きるといっても過言ではないです。

例えばあるプロジェクトでは、半年間でお客様と30回近いミーティングを重ね、途中の取材も、経営層へのレポーティングも、一緒にやりました。そして懇親会も頻繁に行い、最後に盛大にやりました。同じ仲間として、同じチームとしていい仕事ができたなという喜びと、「ありがとうございました、非常に良い仕事ができました」と言われた時、なんといってもかけがえのないやりがいを感じています。別な言い方をすると、戦友になれたような感じを持てたということです。

 

②プライベートな相談、励まし

あと、そのような感謝の気持ちを頂いた中で、非常に面白かったことは、そのチームのキーマンの方が、飲み会の時に、個人的に相談があると、家庭の相談をされたことがありまして。これはよほど信頼されてるんだな、ということを感じて、私は私なりのアドバイスをしたのですが、その後その家庭が良くなったというご報告を聞いて、非常に嬉しかったなということです。

それから先週、ある会社の部長さん相談会というのをやっていまして、50名くらいの部長さんと毎日会っていたのですが、ある部長さんから「非常に良い仕事をされていますね。是非日本を元気にしてください」と最後言い残された時は非常に嬉しかったです。

やりがいを感じるのは、こんな時です。

 

4.     理想のコンサルタント像

①ただ困っている人を助けたいだけ

コンサルタントという職種の人がいるわけではないのです。個人的な感想ですけども、私もコンサルタントであると自分で思ったことは、殆どありません。私自身は人の心を非常に大切にして、人の心を育てたいということを天職と思っています。困っている人を助けたい、誰かのために役立ちたい、そのために自分が役立つのであれば、相談やカウンセリングということをやりたいということで、たまたま相談にのっているだけです。それがたまに、さきほどのように宝物のような言葉を頂くことがあって、困っている人をただ助けようということでやっていることだと思います。

 

②しっかりと聞き取る

そのためにはしっかりと、相手の立場とか相手の心、置かれている状況を一緒に聞き取ってあげること。聞き取ってあげることで人は安心感を持ちますから、その境遇を受け入れてあげるというのが私どもの仕事です。じやあ課題は何か、ということで一緒に考えて、一緒にがんばっていきましょうよ、というようなお仕事をしていると。そのためには、頑張るというのは言葉だけではできませんから、色々なアプローチの仕方を提示して、そして納得感のあるものをゲットして頂いて、それで一緒に頑張りましょうと、そういうことができるのが、私の仕事だと。

これは、理想かどうかはわかりませんが、この仕事に対する私の考えだと思っています。

 

 

5.     コンサルタントに求められる知識・ノウハウ

①好奇心

決まった知識、決まったノウハウがあるというものではないと思うのです。私は「知恵のサービス業」という言い方をしていますけれど、お客様が置かれた困った状況を、知恵を使って、いかに良い心の状態、良い組織の状態にしていけるかが、私どもの仕事です。そのための必要条件として、知識やノウハウがあるのではないかと思います。

私自身、非常に興味・関心といいますか好奇心が強くて、若い頃からいろいろなものをかじってきました。心理学から始まりまして経済学ですとか、統計学・数学、それから政治学ですとか、社会学、それから生理学つまり大脳生理学もかじった時期がありました。大学や、それ以外も含めた場でのことです。これは今になると財産になっているなと思います。ご色々なことに興味関心を持って、色々なことを知ろうという意識、それを日々積み重ねすることで、頭の中に引き出しができているということです。

ですから是非、皆さんには、ストライクゾーンを狭くしないで、色々なことに興味を持っていただきたい。お客様のストライクゾーンは1つではなく広いので、それにあわせて一緒に色々な話ができるような、そのための引き出しを持っていただきたいということがあります。

 

②知恵が大切

しかし、それはあくまでも知識ですとかノウハウということで、必要条件です。これだけあっても、決して問題は解決しない。世の中の問題というのは数学の式を解くほど簡単なものではなくて、置かれた状況も千差万別ですから、応用力が大事です。十分条件としては、「知識を知恵にする」と私は考えていますけども、知識というのはそのままでは百科事典があればいいのであって、それを実際に活かせるのが知恵ということだと思います。そのためには、先ほど言った、色々なことに興味を持ってそれに正面から立ち向かおうという好奇心。それから、論理的・分析的な力。これはどうしても、お客様とある土俵の上で同じ会話をするためには、必要なものです。

 

③相手を思いやる心

ただ最終的には、それを「心」の問題に落とさなければなりません。人間の行動というのは、「意識」、「感情」と、「行動」から成り立っています。「意識」の部分というのは、どちらかというと左脳、論理の部分です。それに対して、「感情」というのは右脳の部分、「心」の部分です。皆さん考えていただくと分かりますように、「頭」でわかっても人は動かないでしょう。人は頭で分かって、そして「なるほど」と感情で納得した時に、やっと動くのです。ですから、左脳の部分だけでなくて、右脳の部分を大切にしたい。感情的な部分ですとか、俯に落ちるという「心」の部分を非常に大事にするためには、ちゃんと相手の立場に使っていく知恵を落としこむという心の優しさですとか、相手の立場を思いやる心ですとか、そういう部分を皆さんには是非持っていただきたいという風に思います。

 

カウンセリングを学ぶ

日頃から取り組んでいることと言いますと、私の最近の興味関心は、カウンセリングです。ガウンセリングの本を読み漁っていると非常に興味深く、本当に面白い分野だなあと思っています。余談になりますけど、カウンセリングにはいろいろなスタイルがあるのですけども、今私か学んでいるのは、「必ず、悩んでいる本人に治す力がある」という人間観です。つまり、ちゃんと対話をして、受け止めてあげて、引き出してあげれば、自分なりの解決策が必ず出せます。人間にはそういう力がある。それを引き出してあげるのがカウンセラーの仕事だと。実は、私たちの仕事も全くその通りで、私たちが解決策をあげるのではなくて、お客様が自分かちの中で解決策を選ぶというところまでやってあげることだと言えます。カウンセリングを非常に楽しく興味深く学んでいます。今の私の好奇心の対象はカウンセリングということで、学んでいます。

 

⑤学びの連続

このように、心がけとしては常に回りに関心を持って、お客様の課題を解くためにはどういうものが役立つか探しています。そういう意味で個人的には本を読むのが好きなので、近くの公立の図書館に行って読み漁っています。図書館のいいところは、色々な本がある、分野が広く、かつ本来なら買えないような高価な本も置いてあります。子供と一緒に行って半日ぐらい過ごしています。

 

家庭に学ぶ

あともうひとつ申し上げたいのは、学びのポイントとして、先ほどお客様、部下、メンバーと言いましたけど、実はもっと大きいのは、「家庭」です。私が一番学んでいるのは「家庭」だと思います。

子供の成長ということを通して、この分野のことを一番学んでいるなと。子供というのは本当に無垢で生まれてきて、それの成長する機会や器を作るのが親の役目だと思います。常に好奇心を刺激しながら、本人の成長ポイントをサポートしてあげるのが親だと思うのです。私は、教育という言葉は「教える」・「育てる」と書きますけども、あれは個人的には違うと思っています。「教える」ではなくて、「共に」・「育つ」=「共育」というのが教育だと思っています。子供から教えられることは非常に多い。

心理学の用語に「ミラーイメージの法則」というものがあるのですが、親がやったとおりに子供は真似してやります。上司がやったとおりに部下も真似します。ですから、良い職場の上司は必ず良いです。良い家庭の親は必ず良いです。というふうに子供に教えてもらうのです。

 

苦手に取り組むのが学び

その一例をあげますと、私はこういう客商売って子供の頃は非常に向いていないと思っていたのですが、人は変わるもので、だんだん年を取るにしたがって、非常に人と話をするのが好きになりました。その中で、色々なお客様がいます。まあ言い方は良くないかもしれませんが、いわゆる困ったお客様も結構います。非常にストライクゾーンが狭くてなかなか会話がかみ合わないという、そういうお客様でも必ず一緒のテーブルに座って、良い解決策を探し出さなければならないわけです。そのためには同じ土俵を作らなければならない。そういう方にも必ずストライクゾーンはあるはずです。自分の興味・関心・趣味、なんでも良いのです。そういうところが共有できるなら、たとえば趣味の話で、野球はどこが好きだとか、何でも良いのです。それから仕事ではこういうことを大事にしていると、そういうストライクゾーンを見つけ出して、そこにちゃんとボールを投げてあげると、どんな人でもちゃんと心は通じ合います。

このような、お互いの共通項なり一緒に話せる話題を見つけ出そうという努力は、実は子供から学んだのです。子供というのは面白い話をしている限り絶対笑っている、笑ってこちらの方を向いてくれるのです。つまらない人だと絶対にこっちを向いてくれない。こうして、子供を喜ばせられるような心を持てば、どんな人とも付き合えるということは、子供から学んだということです。

家庭ですとか仕事以外のところで学ぶことも非常に多いので、皆さんも是非、常に周りに学ぶネタが転がっていると思えば、どこでも非常に楽しい学びの場になると思います。

 

6.     コンサルティングをめざすカヘの一言

・痛みを理解し、いたわることのできる人に

先ほど申し上げたように、コンサルタントという人種がいるわけではないのです。私はあくまでも人のために役立ちたいとか相談に乗りたいと、そして良い人生を送っていただきたいなというふうに思っています。

皆さんに伝えたいことは、お客様の痛みを理解してあげて、それをいたわることができる、非常に感度の高い人に、全員がなって欲しいのです。'人は「正解」を求めているのではなく「納得解」を求めている、と私は思っています。それは「心の中の問題」なので、是非、その痛み・背景を理解してあげられるように、優しくて心の感度の良い人になっていただきたいなと思います。違う言い方をすれば、親身になって困り事を一緒に相談に乗ってくれるということが、この仕事のあり方だとも言えますので、あまり知識や技能に偏らずに、心の分かる方になっていただきたいと思います。