20章 出来ない言い訳3ヵ条:リーダーシップとモチベーション

○良い職場での取り組みからの学び

 多くの企業で社内のモチベーション向上の良い職場の取り組み集である「ベストプラクティスレポート」を取材・作成し、マネジャーの方に紹介し、一部テキストとして、一部職場改善のガイドラインとして使ってもらっています。おもしろいもので、良い職場のリーダーは、気持ちよく受け取ります。「学ぶ」意識が強い人が多いからです。何からでも学ぼう、という訳です。ところが、あまり良くない職場のマネジャーさんは受け取ろうとしないのです。今の自分のやり方が一番で、学ばなくてもいい、という意識が強いのです。その時におっしゃる受け取らない理由・言い訳が以下です。

1.うちは特殊。他社や他業界の事例は参考にならない

 この言い訳は、「違いをハードルと取るタイプ」の人の言い訳です。

 「あるサービス業の職場では、・・・という取り組みをし、社員全員がその場で、お客さんに喜んでもらおうと自力で考え、チームで対応しています」と紹介すると、「それは、サービス業の例なので、うちのようなメーカーには、参考にならないですね。」「職種が違うので、状況が違うから、どうかな」など、まずは、受け入れられない理由から入るタイプです。

 進んで参考にしようとする人は、「違いを受け入れようとするタイプ」です。まずは「どうしたら自分達でもできるようになるか」と受け入れから入ります。企業で言えば、他社をベンチマークし、学べることは徹底して学ぼう、という姿勢です。

 かつて筆者が90年代前半にハーレー・デイビッドソンを取材した時のことです。ハーレーの復活の秘訣を尋ねたところ、「我々はホンダに学んだ」と言っていました。品質管理や生産技術を、ホンダをベンチマークして学んだとのことです。また、トヨタ自動車は、レクサスディーラーの「おもてなし」を、リッツカールトンに学んでいます。

 「できない理由」にエネルギーを使うか、「どうしたらできるか」にエネルギーを使うか、どちらの使い方を応援しますか。

2.当たり前すぎる。そんなことは知っている:知っていることと出来ていることは違う

 ある企業で課長向けワークショップを行ったときです。「ベストプラクティスレポート」の感想として、「当たり前のことしか書いていない。何ら参考にならなかった」というコメントがありました。皆さんがそうなのかな、と思っていると、全く逆で「非常に参考になった」「当たり前の取り組みだが、それでいいんだと納得した」「徹底することが大事だと感じた」というコメントもあったのです。この感想を読んでどう思いますか。2タイプの方がいらっしゃるとわかります。皆さんはどちらのタイプですか。

 面白いことに、前者の方「知っているつもりタイプ」は「当たり前のことを、頭ではわかっているが、実践していない」傾向があります。やっていない人の特徴として、そのことを言われるとカチンと来て反応します。また、職場はあまりモチベーションが良好でない傾向がありました。理由は、「否定的思考」、つまり、部下の悪いところを見る傾向があり、良いところを見過ごしてしまう、また、自分のやり方が正しく、他の取り組みに対しまず「否定」から入る方に多いからです。結果として、知っていても実際には知らないと同じ効果なのです。

 逆に、後者の方「徹底してやるタイプ」の職場はモチベーションは良好という傾向がありました。「部下の目線で話をする」「部下の良いところを見つけて褒める」などの基本的なことを徹底して行っていますし、謙虚で、学ぶ意識が強く、思考が柔らかく、部下や他部署との関係作りも柔軟です。

3.以前やったが、うまくいかなかった:あたりまえのことを徹底して行う

 先の例で示しましたように、「知っていることと出来ることは雲泥の差」です。学んだ取り組みを実施してはみたのですが、徹底度合いが足りなくて、途中うまく行かないと投げ出してしまう例です。

 「ベストプラクティスレポート」で取材をした職場リーダーは、すべて謙虚で、かつ「そんな大した事は、やっていません」というニュアンスの言葉から必ず入ります。逆に、あまりモチベーションの高くない職場リーダーに取材すると、「こんなこともやっている、これはどうだ」と自慢げに話す傾向があります。

 良い職場のリーダーは「謙虚」で「部下思い」、悪い職場のリーダーは「傲慢」で「自分中心」と言うと言いすぎでしょうか。