12章 本当に何がやりたいの?MPS:リーダーシップとモチベーション

○MPS法

 組織やキャリアの夢作りに「MPS法」というのがあります。組織や個人の夢を考え、確認する際に活用できるモデルです。以下の三つを考慮に入れるというものです。職場の夢、個人のキャリア作りも同じ要領です。

 M:Meaning 意義・意味あること

 P:Pleasure 喜び、やりたいこと 

 S: Strength 得意なこと、強みのあること

○パワーゾーン

 「M」eaningは「意義・意味」です。これは会社ビジョンから落ちてきた職場ビジョン、職場ミッション、社会貢献活動、地域への貢献、などです。ここはやらなければいけないところ、やるべきこと、悪い言い方をすればやらされ感を感じるところです。

 「P」leasureは「喜び」。個人や組織の「やりたいこと」です。ストライクゾーンです。※第3回「ストライクゾーンにボールを投げ、ツボを刺激する」参照。

 「S」trenghtは「得意・強み」。できること。

 では、PとMとSの重なった部分は何でしょうか。「意義を感じ」×「やりたい」×「できる」ゾーン。ここはパワーがあるところ、「パワーゾーン」です。このゾーンを広げてあげることが夢作りのポイントです。このMの円とPの円を近づけてあげる。そして重なる「パワーゾーン」を広げてあげる。

○どうすれば

 どうすればいいかというと、1)Mを動かす、2)Pを動かす、3)Sを動かす、の3択です。

1)Mを動かす。職場ミッションやビジョンの中にあるいくつかのヒントを、部下にこんなのをやってみないか、面白そうだからやってみないか、やれそうだからやってみないか、と投げかけてみる。部下をその気にさせる。するとPの円がMに近づく、または、Pの円が大きくなり、重なりが広がります。

2)Pを動かす。日頃から部下のやりたいこと、夢要素、キャリア要素を、職場で議論したり、個々人から聴くことで、把握し、Mの円のビジョンやミッションに入れ込んでくる。Pの中身をMに入れ込むことで、重なりが広がってきます。

また、そもそもとして、好奇心やチャレンジ精神を刺激して、個人個人のやりたいことを広げてあげる。こういうことで、二つの円が重なるところが広がって行く、ということをすればいいのです。

3)Sを動かす。Sの円については、実践を積むことで得意や強みを広げることがあります。その強みが組織ミッションMや個人のやりたいことPになっていきます。

○事例

 意外と出来るんです。あるメーカーの技術系職場の室長さんの例です。

 日頃から、30人ぐらいの部下と話をしていて、「今までどんなことに興味を持った?」「どういうことに最近興味を持っている?」と日頃から歩き回って話込んでいます。これをMBWA(Management by Walking Around)、訳して、右往左往経営、と呼ぶ人もいます。日本語で言えば廊下トンビ。いつも歩き回って現場情報をとることです。そして、30人皆が何をやりたいか(P)知っている、と自負していらっしゃいました。部下にとっては、少し鬱陶しいらしいのですが、自分のことに興味を持ってもらえているので、いやではない、という感じでした。そこで集めた要素を職場ビジョン(M)に入れ込んで行く。

 また、Pを広げるために、「こんなことが今世の中で起こっていて、こんなことが会社の方針(M)にあるんだけど」「これおもしろそうだからやってみないか」と刷り込む。いつも耳元でささやかれていると、刷り込まれていく。このような日々の取り組みの中で、パワーのある夢を作っているそうです。