第2回 リーダーシップ

今回はリーダーシップ。人を率いること。特別な人のものではなく、誰もが備え獲得できるものです。ある人が一皮向けリーダーらしくなったことはありませんか。経営者だけではなく、家族では親、飲み会では幹事がリーダーです。集団ができればリーダーが生まれます。マネジメントは管理する左脳の仕事、リーダーシップは心をつかんで率いる右脳の仕事。組織盛衰の必要条件がマネジメントとすれば、十分条件はリーダーシップといえるでしょう。

●1分間マネジャー―目標設定、称賛、叱責

ここでは、『1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか』(K.ブランチャード (著), S.ジョンソン (著), 小林 薫 (翻訳) ダイヤモンド社)から「1分間マネジャー」を紹介します。

本書では、一見ごくわずかな時間しかかけていないのに、高い成果を上げている「1分間マネジャー」が登場します。週1回のミーティングは、成果を上げるために開くもので、常に「部下」「業績」の両方に心を配ります。人は気分の良い時、仕事がはかどります。気分良くなれるように援助することが、成果を上げるキーポイントです。そこには「1分間の目標設定」「1分間の称賛」「1分間の叱責」という三つの秘訣があります。

1分間の目標設定

部下が達成すべき業務目標について、上司との話し合いの場面で、互いに同意した後、部下は各目標と達成基準を一つずつ、1ページ、250語以内で書き上げます。コピーをとり、それぞれが持ち、進捗状況を定期的にチェックします。1分前後で読める程度のボリュームとラフさで十分だとしています。

1分間の称賛

良いことがあったら、その場で/具体的に/気持ちを分かち合い/1分前後で短く褒める。

1分間の叱責

同じように、叱責すべきことがあったら、その場で/具体的に/気持ちを分かち合い/1分程度で評価していること伝える。ここでも短いことがポイントです。

1分前後で十分なのは、日ごろからマネジャーは部下の業務に関心を持ち、成果に精通しているはずだからです。そういう状態が維持されていれば、ダラダラと言葉を垂れ流す必要はないのです。

●リーダーシップの3要素―ビジョニング、モチベート、ファシリテーション

リーダーシップは、文字どおり「導く」という行為であり、ビジョニング、モチベート、ファシリテーションの三つの要素から構成されます。        

ビジョニング=夢づくり

会社や職場は、どこに、どうやって行くのか、どうしたらそうなれるかといった夢と地図を描くこと。そういう夢を提示し、共有化することで、メンバーの意識と行動を合わせることでみんなが今の仕事を一生懸命頑張ることができるのです。

モチベート=人づくり

物事にチャレンジし、好奇心をかき立て、機会を通して成長させていくこと。心に火をつけ、今の困難を何とか乗り越えていこうと、鼓舞する働き掛けです。

ファシリテーション=場づくり

仕事でもスポーツでも1人の力は限られており、場づくりをし、心をつなげ、協働して、ことにあたって、困難を乗り越える。集団の心に火をつけること、チームモチベーションを高め、協働を引き出すこと。これをファシリテーションといいます。

リーダーシップの3要素

●ビジョンづくりの3要素―MPS

そこで、ビジョンを考える際には、MPSという三つを押さえることが重要です。

M(Meaning) やるべきこと、意味のあること
P(Pleasure) やりたいこと
S(Strength) できること、得意なこと

このMPSの三つが交わったところを「パワーゾーン」といいます。社会や会社から求められ(M)、自分でもやりたいところ(P)で、かつ、得意なところ(S)であり、最も力を発揮するに値するところです。このパワーゾーンを組織ビジョンとすると、メンバーの理解(腹オチ)もよく、チームとして力が発揮できるといえます。このようなパワーゾーンをメンバー間で話し合いしながら見つけ出すことがポイントです。また、このMPSはビジョンだけでなく、個人のキャリア開発を考えるうえでも有効です 

●宗教の3要素―教祖、教義、物語

顧客をひきつける商品・サービスを提供する企業は、単にコマーシャルやプロモーションがうまいだけでなく、商品・サービス自体に独自のストーリーや演出といった工夫がされています。そでは、信者の多い宗教に似ているといえるでしょう。宗教の要素には「教祖・教義・物語」の三つがあります。

教祖

企業のトップ。いうなれば、経営トップのキャラクターが“立っている”ほど、顧客から認知されやすく、そこに商品・サービスの魅力が伴うと世間から受け入れられます。

教義

企業の「経営理念・行動基準」です。ただし、この「教義」があるだけではメンバーの心に響きません。大事なのは、経営理念や行動基準を実践することで報われるということを、わかりやすく伝える、心に響く物語です。

物語

物語は、教祖や教義だけではわからないリアリティーを、社員で共有し、浸透させ、人の心を動かす原動力になります。企業ではリッツカールトンホテルの例が挙げられます。教祖は現場マネジャー、教義は「クレド」、奇跡の物語は「ミスティーク(神秘性=最高のおもてなし)」といえるでしょう。日々のベストプラクティスが報告・蓄積され、共有・実践されるというサイクルが円滑に回ることで企業競争力が高まっていくのです。

なお、物語に“力”を付加するには、一つは筋道と感情のバランスの良さが重要です。これによって理解と記憶の手助けになります。もう一つは具体性があること。「こういう出来事や考え方がこう役立つ」と描くこと。この両者が兼ね備わることで、メンバーにわかりやすく伝わり、実践しやすくなるのです。

宗教の3要素