17章 盛り上がる会議・職場のルール:リーダーシップとモチベーション

○会議や職場の盛り上がり

 自分の意見を言い、それが色々な人の意見と相俟って、面白いアイデアが出た時はとても楽しく、達成感を感じるものです。モチベーションを上げる一つの要因に「相互承認・啓発」つまり、互いに意見を言い、認め合い、高めあう、というのがあるのです。話しやすい「相互承認・啓発」の場作りが、人間関係引き出しのポイントです。秘訣は簡単です。次のルールをしっかり運用することです。自由、活発に話し合う風土ができ、2時間でも3時間でも楽しく、活発に話し合い、色々なアイデアを生み出すことができます。

○ルール:ポイントは、発散をおそれず、受容れ、膨らます、責めない、足をすくわない

1.肯定語しばり否定語禁止⇔発言するとまず否定 (前回「No16解釈が作る真実:認知理論」参照)

2.Not Why, But How(どうするか)⇔何故、何故で問い詰める

3.笑い・リラックス⇔緊張感

4.皆が、相互に話す(話さない人に大事なアイデアが)⇔一部の人のみ話す

5.ホワイトボード、メモなどで見える化⇔空中戦で抽象的

2.Not Why, But How(どうするか)=「なぜ」はほどほどに、「どうしたら」で発想を広げる

 「何故(Why)はほどほどに、どうしたら(How)できるか」という思考法を紹介します。発想、視野を広げるために、「なぜ」を「何が理由(What)で」と言い換え、「どうしたらできるか」を問い、意見の幅を広げよう、という雰囲気づくりです。

・「なぜ」は人を追い詰めがちなきつい言葉⇒「何が問題か」に焦点を移す

 「なぜ」は原因や理由を分析するのに非常に大事なことばです。が、非常に鋭利な言葉でもあります。使い方を誤ると「人を追い詰める」という側面もあります。「なぜ」「どうして」と聞かれると、何か責められているように感じることがありますね。「なぜそうしたの」「どうして出来ないの」「なんでこんなことをしたの」と畳み掛けるようにいわれたら、どうでしょう。普通の心臓でしたら、ノミのように小さくなってしまいます。

 そうなると、何もいえなくなるか、理由ではなく、言い訳を引き出しがちです。「なぜ」というのはそれほどきつい言葉です。人を責める言葉になりやすいのです。どうしても「なぜ」といいたい時は、「何が問題」で、と言い換えていただきたいのです。「なぜ」は人を対象にしがちですが、「何が問題」とすると「問題」に本質が移ります。

・「なぜ」は過去、「どうするか」は未来

 「なぜ」は原因を深堀し、特定する力があります。しかし、主に過去を分析する問いかけです。過去を掘るのはほどほどにし、未来に行きましょう。「どうしたらできますか」と。

 例えば「こういうテーマで、勉強会をやったのだけれど、うまく行きません」というケース。「なぜ、うまくいかなかったのか」ではなくて、「何が問題か」と言い換えた上で、「どうしたらうまくいくか」に議論を移しましょう。「議論ルールを徹底しましょう」とか、「人数を7名ぐらいに絞りましょう」とか、「テーマを皆が入りやすいものにしましょう」など、「どうしたらできるか」の方にエネルギーを使っていただき、同じ1時間のエネルギーを、過去を掘り出すエネルギーにするのではなくて、将来を作り出すエネルギーに変えていただきたいのです。

3.リラックス、笑い、リーダーは顔を穏やかに

 「No9 笑いとユーモア、リラックス」で書きましたとおりです。発想を広げ、思いつく量を増やすためには、リラックスした雰囲気が大事です。ここで付け加えるとすれば、司会者は怖い顔をしないでください、ということです。ミラーイメージで伝わりますから、怖い顔をされているとそれだけで意見が出ない、ということがあります。リラックスできるような雰囲気を作っていただきたい。会議だけでなく、職場作りも同じです。

4.均等に発言する機会づくり

 盛り上がらない会議の特徴の一つは、一部の人だけが話しているということです。これでは、場を持つ意味が少なくなります。参加している全員が思っているアイデアを出し合うことが発想を広げます。話さない人は意見が無いわけではなく、話しにくいのです。司会者は、なるべく均等に話ができるように、話し続ける人には注意を促し、話したくても意見が言えない人の気配を読み取り促すようにします。

5.話の中身を残しておく

 自分の意見を言い、それが色々な人の意見と相俟って、面白いアイデアが出た時、そのままにしておかないで、「ホワイトボード」や「簡単なメモ」に残しておくことも大事です。後で振り返ると、繰り返しを避けることもでき、また、得るものが多いことがわかります。また、皆が見えるところに書くことで、「見える化」され、「思っていることの摺り合わせ」が自然に行われます。空中戦で抽象的から、地上戦で具体的に変わります。