本田由紀氏「遺伝的要因のおそろしさ」投稿に関する声明
本田由紀氏「遺伝的要因のおそろしさ」投稿に関する声明
2026年9月1日午前8時、東京大学大学院教育学研究科教授の本田由紀氏は、X上で三笠宮彬子さまと麻生家を「血筋」によって否定的に論評する投稿を引用し、次のように記した。
>>この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる。露出の増加が逆効果になるかもしれない (X投稿)
私は、この発言を、特定の人々に対する否定的評価を遺伝と血統に結びつける、優生学的含意を帯びた差別的言説として容認できない。
本声明は、本田氏に対する集団的な攻撃や処分を求めるものではない。現時点で求めるのは、当該投稿の撤回と、その趣旨についての公の弁明である。
発端となったのは、東京新聞編集局が2026年8月31日にXへ投稿した、三笠宮彬子さまの皇族費について報じる記事である。
これを引用したX利用者(@budoudaiji)は彬子さまを「さもしい」と呼び、「さもしい麻生」の身内であるとしたうえで、「麻生の血筋から天皇を出すんですか」「皇籍離脱させるべきでは」などと投稿した。これは皇族費の制度や金額への批判にとどまらず、彬子さまと麻生家を血統によって結びつけ、一族全体を否定的に評価する内容であった。投稿には、彬子さまをはじめとする人物の顔貌を前面に出した画像も添付されていた。
本田氏は、この投稿を引用し、「この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる。露出の増加が逆効果になるかもしれない」と記した。引用元に対する批判や留保は付されていない。
「この人たち」「遺伝的要因」「露出の増加」が、それぞれ誰の何を指すのかは明示されていない。
引用元の文章を重視すれば、本田氏の発言は、彬子さまや麻生家の人々に見いだした人格、性向または言動上の特徴を、遺伝的要因に帰属させたものと読める。他方、添付画像が顔貌を前面に出していることを重視すれば、血縁者間の外見上の類似を否定的に揶揄したものと読む余地もある。
現段階で、そのいずれか一方に本田氏の意図を断定することはできない。しかし、いずれの解釈を採る場合にも、特定の人々に対する否定的評価を「遺伝的要因」と結びつけ、その遺伝的特徴を「おそろしい」と表現している点は共通している。
2026年9月1日16時現在、当該投稿は公開されたままであり、撤回や訂正は確認できない。本田氏は当該投稿の後にも、別の話題に関する複数の投稿を行っている。
政治家、皇族その他の公的人物について、その発言、行動、制度上の地位、公費の支出などを批判することは当然に認められる。
しかし、具体的な制度や行動を批判することとその人物に対する否定的評価を遺伝や血統に結びつけることは、まったく異なる。
人は自らの血統や遺伝的特徴を選ぶことができない。それを根拠として個人や親族を一括して評価することは本人の選択や具体的行為ではなく、出自に基づいて人間を評価することである。
本田氏が引用した投稿は明示的に「麻生の血筋」を問題にしている。その文脈で「遺伝的要因のおそろしさ」と述べることは通常の政策批判でも皇室制度や世襲政治への批判でもない。
仮に人格や言動を指しているのであれば好ましくない性向が血統によって受け継がれているとの趣旨になる。仮に外見を指しているのであれば遺伝的に受け継がれた顔貌を「おそろしい」と否定的に評価することになる。いずれの場合も批判の対象を具体的な制度や行為から本人が選択できない遺伝的特徴と血統へ移している。
この一つの投稿だけから本田氏が体系的な優生思想を持っていると断定することはできない。優生学は本来、望ましいとされた遺伝的特徴を増やし、望ましくないとされた遺伝的特徴を減らすために、人間の生殖や人口構成へ介入しようとする思想と実践を指す。本田氏の投稿が、そのような政策を直接主張しているわけではない。
しかし、特定の人々が持つとみなした遺伝的特徴を「おそろしい」と評価し、引用元が「麻生の血筋から天皇を出すんですか」と血統に基づく排除を訴えているなかで、これに批判や留保を付さず同発言を重ねたことには優生学的な含意がある。
すなわち、人間の複雑な外見、人格または行動を、生得的で一族に共通する生物学的性質へと還元し、その性質を好ましいものと好ましくないものに序列化する発想である。これは、生物学的本質主義および血統主義に接続する。
「遺伝的要因」という語は、それ自体として、遺伝だけが形質を決定するという意味ではない。「要因」は複数ある原因の一つを意味し得るため、この語の使用だけをもって遺伝的決定論と断定することはできない。
また、顔貌を含む身体的特徴に遺伝的影響があること自体は生物学的に否定されるものではない。
しかし、仮に本田氏が外見上の類似を指していたのであれば問題は科学的事実の指摘にあるのではなく、遺伝的に受け継がれたとみなした外見を「おそろしい」と価値づけ、特定の血統に属する人々を否定的に揶揄した点にある。
他方、本田氏が人格、性向または言動を指していたのであれば、その帰属には科学的根拠がない。
人間の行動や心理的特性は多数の遺伝的要因、遺伝子発現、身体、発達過程、養育環境、教育、経験、社会的地位、文化および具体的状況などが相互に作用するなかで形成される。行動の背景に神経生物学的基盤が存在することはそれが遺伝だけで決まることを意味しない。
ある形質について集団レベルで遺伝的影響が認められることと特定個人の特定の言動を遺伝によるものと判定できることも別問題である。
また、ある特徴が同じ家族や一族に見られることと、それが遺伝することは同義ではない。親族は遺伝的要因だけでなく、家庭環境、教育、文化、社会階層、生活様式、人的関係および制度的地位なども共有し得るからである。
したがって、特定人物の言動や印象を見ただけでその原因を一族の遺伝的要因に求めることはできない。
以上から「遺伝的要因のおそろしさ」という表現が外見を指すのであれば、顔貌に遺伝的影響があり得ること自体は否定できないが、それを「おそろしい」と評価するのは遺伝的な身体的特徴に対する侮蔑的な価値判断であり、科学的判断ではない。
他方、人格、性向または言動を指すのであれば、特定人物の個別の言動や一族間の印象上の類似だけから、その原因を遺伝的要因に求める科学的根拠はない。
したがって、前者は主として倫理的・差別的な問題であり、後者はそれに加えて科学的妥当性の問題を含む。いずれの解釈によっても、特定の人々に対する否定的評価を遺伝と血統に結びつけている点で容認できない。
本田氏の専門は教育社会学であり、家族、教育、仕事、社会階層などの関係を研究してきた研究者である。
現代の社会学は、生物学的要因の存在を一律に否定する学問ではない。しかし、人間の態度や行動について教育、家庭環境、文化、社会階層、制度、権力および人的ネットワークなどの社会的要因を検討せず観察者の印象だけから遺伝へ帰属させることは社会科学的な説明として成立しない。
特定の家系における政治的地位、経済的資源、教育機会、文化的資源、人的ネットワークなどの継承を問題にするのであれば、それは社会的・制度的再生産として分析されるべき問題である。
世襲政治や皇室制度を批判するのであれば制度、権力、資源および地位の継承を論じればよい。それを血統の生物学的性質へと置き換えることは社会的・制度的問題を遺伝の問題へすり替えることになる。
もちろん、SNSへの個人的な投稿に学術論文と同じ論証を要求するものではない。しかし、著名な社会学者が「遺伝的要因」という科学的表現を用いて特定の人々を否定的に評価した以上、その発言が学問的に検討され、批判されることは避けられない。
本田氏は東京大学大学院教育学研究科教授である。また、2025~2026年度の日本教育学会会長、日本教育社会学会理事を務め、日本教育社会学会では「人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会担当理事」でもある。
このような立場にある研究者の発言は、単なる無名の私人による不用意な感想として処理できない。本田氏の発言は東京大学教授、学会会長、教育社会学者としての職業的権威と社会的影響力を伴って流通する。
教育、社会、差別、人権に深く関係する学問分野を代表する立場の人物が、特定の人々について「遺伝的要因のおそろしさ」と公然と述べたことは、その学問的判断と公的役割に対する信頼を損ない得る重大な発言である。
本田氏が公的役職ではなく個人のアカウントから投稿したとしても、そのことによって大学教授や学会役員としての社会的責任が完全に切り離されるわけではない。
本田氏にも、当然ながら表現の自由がある。しかし、表現の自由は発言に対する社会的・学問的批判を免除するものではない。
私は、当該発言が法的な意味で表現の自由の保障対象外であると主張するものではない。また、国家その他の公権力によって発言を禁止すべきだと主張するものでもない。
問題は「表現の自由だから批判してはならない」「個人の投稿だから説明する必要はない」ということにはならない点にある。社会的権威と影響力を持つ研究者が、その専門領域とも関係する問題について特定の人々に対する否定的評価を遺伝と血統に結びつけた以上、その発言には相応の説明責任が生じる。
当該投稿について、個々の大学教員や研究者が発言しないことを直ちに賛同と同一視するべきではない。また、すべての関係者に個人的な意見表明を強制するものでもない。
しかし、学術的・社会的に大きな影響力を持つ人物の発言について、問題を認識し得る立場の者が一様に沈黙し何らの批判や検討もなされない状態が続けば、学術界がこの種の言説を容認または黙認しているとの印象を社会に与え、血統や遺伝的特徴に基づく人間評価を正常化するおそれがある。
とりわけ、これまで差別的言説、優生学的発想、出自に基づく人間評価などを批判してきた研究者は発言者の地位、政治的立場、人的関係または攻撃対象への評価によって基準を変えることなく、本件についても同じ基準で向き合うべきである。
私は現時点で、本田氏に対し、当該投稿を明確に撤回するとともに、次の点について公に弁明することを求める。
「この人たち」とは、具体的に誰を指しているのか
「遺伝的要因」とは、外見、人格、性向、言動その他の何を指しているのか
それを「おそろしい」と評価した理由は何か
「露出の増加が逆効果になる」とは、誰の露出が、何に対して逆効果になるという意味なのか
引用元に含まれる「麻生の血筋」という表現および血統に基づく排除の主張を、どのように認識して引用したのか
投稿を削除するだけでは発言の趣旨と問題点は明らかにならない。必要なのは、当該発言を維持しないことを明確にする撤回と、上記の点に関する弁明である。
私は、この声明によって、本田氏に対する集団的な非難、嫌がらせ、脅迫、私生活の詮索、勤務先や関係機関への大量の連絡、通報の呼びかけなどを行うものではない。また、賛同者を組織し集団で本田氏を糾弾する意図もない。
しかし、集団的攻撃を否定することと公に行われた発言を批判せずに見過ごすことは別である。
私は、一人の大学教員、教育学者として、本田氏の当該発言を、市民社会の規範および学問的責任の双方から容認できない。そのことをここに表明し、当該投稿の撤回と公の弁明を求める。
以上、蒲生諒太個人
上記声明発表後、16時32分に以下の質問状を日本教育学会事務局に送付
2026年9月1日
一般社団法人日本教育学会
法人理事会 御中
倫理委員会 御中
蒲生諒太
日本教育学会会員
本田由紀会長のX投稿に関する質問状
1 質問の趣旨
2026年9月1日午前8時、日本教育学会会長である本田由紀氏は、X上で三笠宮彬子さまと麻生家を「血筋」によって否定的に論評する投稿を引用し、次のように記しました。
この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる。露出の増加が逆効果になるかもしれない(https://x.com/hahaguma/status/2094561002574770529)。
本田氏が引用した投稿には、彬子さまを「さもしい」と呼び、「麻生の血筋から天皇を出すんですか」「皇籍離脱させるべきでは」などとする記述が含まれています(https://x.com/budoudaiji/status/2094387848652955804)。
私は、当該発言について、特定の人々に対する否定的評価を遺伝と血統に結びつける、優生学的含意を帯びた差別的言説として容認できないとの声明を公表しました(https://sites.google.com/view/education-in-tommorow/new-rouge/statement-on-hondas-remarks)。
もっとも、本田氏の投稿だけでは、「この人たち」「遺伝的要因」「露出の増加」が、それぞれ誰の何を指しているのかは明らかではありません。
外見上の類似を指しているのであれば、遺伝的な身体的特徴を「おそろしい」と評価する侮蔑的な価値判断になります。人格、性向または言動を指しているのであれば、特定人物の言動や一族間の印象上の類似だけから、その原因を遺伝的要因に求める科学的根拠はありません。
私は個人として、当該表現はいずれの解釈によっても容認できず、本田氏が撤回すべきであると考えています。他方、日本教育学会に対し、私の評価をそのまま追認するよう求めるものではありません。学会が組織として当該発言を評価するに当たっては、まず本田氏に発言の対象と趣旨を説明・弁明する機会を保障し、その内容を確認したうえで、当該発言を容認するのか否かについて見解を示すべきであると考えます。撤回と説明・弁明は択一的なものではなく、発言を維持しないことと、その発言に至った趣旨を明らかにすることの双方が必要です。
2 倫理綱領との関係
日本教育学会倫理綱領は、第2条において、会員が「研究・教育の実施、研究成果の発表、専門的意見の公表、ならびに学会運営において、つねに基本的人権に配慮しなければならない」と定めています。
また、第3条は、会員が専門的意見を公表する場合、その根拠を提示するとともに、根拠の限界も明らかにする必要があると定めています。
さらに、第8条は、国籍、人種、民族、政治上その他の意見、出身、門地、家族状況その他の事項に関する差別的な取扱いを禁止しています。
本田氏の投稿は個人のXアカウントで行われたものです。そのため、これらの規定が当該投稿に直接適用されるかどうかについては、学会による検討が必要です。
しかし、本田氏は一般会員ではなく、日本教育学会を代表する会長です。東京大学教授、日本教育学会会長、教育社会学者としての職業的権威と社会的影響力を伴って発言が流通している以上、単なる私人の発言として、学会が一切関知しないままでよいのかは疑問です。
倫理委員会規則第1条第3号は、倫理委員会の活動として「個別の倫理的な問題に関する質問および相談への対応」を定めています。本件についても、同規定に基づいて検討していただくよう求めます。
3 質問事項
以下の事項について、日本教育学会としてご回答ください。
日本教育学会は、特定の人々に対する否定的評価を「遺伝的要因」や血統に結びつけ、「おそろしさ」と表現することを、教育学研究者および学会役員の言説として容認しますか。
日本教育学会は、本田氏の当該投稿を、倫理綱領第2条の基本的人権への配慮との関係で、どのように評価しますか。
当該投稿が「専門的意見の公表」に該当するか否か、また、倫理綱領第3条および第8条の適用対象となるか否かについて、学会としてどのように判断しますか。適用対象とならないと判断する場合は、その理由も示してください。
本田氏が個人のXアカウントで行った投稿であることを理由として、学会としては問題にせず、会長個人の表現として容認するという立場ですか。
法人理事会または倫理委員会から本田氏に対し、当該発言の趣旨について説明を求め、正式な弁明の機会を設けますか。
弁明の機会を設ける場合、少なくとも次の点について本田氏に確認しますか。
「この人たち」とは、具体的に誰を指しているのか
「遺伝的要因」とは、外見、人格、性向、言動その他の何を指しているのか
それを「おそろしい」と評価した理由は何か
「露出の増加が逆効果になる」とは、誰の露出が何に対して逆効果になるという意味なのか
引用元に含まれる「麻生の血筋」という表現と、血統に基づく排除の主張をどのように認識して引用したのか
本田氏の弁明を確認したうえで、法人理事会または倫理委員会として、当該発言を容認するか否かについて見解を示しますか。
本件を、どの機関が、どのような手続によって検討しますか。また、回答までのおおよその日程を示してください。
4 手続の公正性について
本件は、学会を代表する会長本人の発言に関する問題です。そのため、本田氏には十分な弁明の機会を保障する一方、当該投稿に対する学会としての評価および本質問状への回答については、本田氏本人が判断主体とならない手続を採る必要があると考えます。
本質問状を、倫理委員会および本田氏を除く法人理事に回付し、公正な手続によって検討してください。異なる手続を採る場合には、その手続と公正性を確保する方法をご説明ください。
5 本質問状が求める範囲
私は現時点で、本田氏への処分、役職からの辞任、謝罪その他の措置を求めるものではありません。また、本田氏に対する集団的な非難や糾弾を呼びかけるものでもありません。
求めているのは、次の二点です。
本田氏本人に、当該発言について正式に弁明する機会を与えること
その弁明を踏まえ、日本教育学会が当該発言を容認するのか否かについて回答すること
2026年9月15日までに、書面または電子メールでご回答ください。理事会または倫理委員会での検討に時間を要する場合には、同日までに、本件の検討主体、予定する手続および回答予定日をご連絡ください。
以上
公開日:2026年9月1日
*上記声明文の作成にはChat GPTを利用しました
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