Photo by ChatGPT
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1. 蓮舫氏が惨敗した理由
「2024年東京都知事選挙後の政治・社会運動への意識調査」から「理想的な候補者」の特性が明らかになりました。以下示します。
・日本共産党を含む主要な既存政党の応援を受けていないこと
・批判ばかりしているというイメージを持たれていないこと
・政策について丁寧な説明を行っていること
・中道から保守系有権者までカバーできること
・普段から街頭演説や宣伝、各種行事に積極的に顔を出し、選挙区内で広く知られていること
・SNSで過剰に投稿していないこと
・支持者がフェス型選挙や一人街宣など奇抜な選挙運動を行わないこと
・社会運動と距離を保っていること(これについては間接的なエビデンス)
これらの特性を考えて、蓮舫氏やその支持者がどうだったかを考えると、当てはまらない項目が非常に多かったように感じます。蓮舫氏が惨敗したのは彼女の陣営が有権者に求められていることとは逆の判断を繰り返していたからだと考えられます(というよりも、そもそも国政政党の党首を経験した人間をその後継政党が全面バックアップして立候補させた時点で大きなマイナスだったのです)。
一方で2016年、小池百合子氏が東京都知事に初当選したとき、これらの項目に当てはまるものが多かったように思えます。
・自民党と喧嘩別れした経緯がある(自民党の推薦候補が別にいたこともある)
・政策について特徴的な説明を行っていた
・市民運動や社会運動とは距離を置いていた
・中道から保守まで幅広い支持基盤を築いていた
・SNSで目立たないようにしていた
・選挙運動は古典的な手法を用いていた
小池氏は最初の選挙で勝利し、その後も高い支持を維持しており、初当選時の支持者が離反する理由がありません。石丸伸二氏もSNSを除けば、今回、小池氏と同じような古典的な戦略を取っているように思えます。
▶︎小池都政「評価」69%「評価しない」30% 朝日世論調査 (朝日新聞 2024年6月23日 22時00分)
▶︎石丸伸二の総街宣回数は驚愕の215回越え!(石丸伸二のブログ2024年7月6日)
▶︎立憲・泉健太代表 街頭演説少ない蓮舫氏に言及「戦い方まで党が担っていない」(東京スポーツ:記者会見の模様を報道 2024年7月5日)
ただし、蓮舫氏がとった戦略は多数派の支持を得られなくとも、一定の票数を獲得できる可能性があります(否定的意見が多数でも肯定的意見が一定ある以上「ファンダム」を形成する可能性がある)。その「一定の票数」が生きる大選挙区や中選挙区では今回のやり方はうまく機能するかもしれません。また、社会運動の支持者も大選挙区の地方選挙などで議員を誕生させていますから、これら手法を頭ごなしに否定するのも考えものです。
端的に言えば、中選挙区で勝ち残った候補者や、大選挙区で勝った経験のある支持者たちが、事実上の小選挙区である首長選挙で不適応を起こしても仕方ないのです。
ちなみに「無党派層の政治・社会運動への意識調査」において、市民連合等が主張する蓮舫氏への批判・バッシングは女性差別であるという考えへの賛同意見は多数派ではないことがわかっています。
2. 支持者が好む選挙手法と一般層に届く選挙手法が違うことがある
相関分析では、特定政党の支持者が好む選挙手法と一般層に届く選挙手法が異なることが明らかになりました。
誰かを批判するやり方やフェス的な集会、一人街宣などは、広範な支持を得るには難しい手法です。しかし、これらの手法を好む層も存在し、その層が投票を希望する政党もあります。れいわ新選組や参政党などは、このような層をターゲットにして参院選挙区や比例区などで議席獲得をしており、実績があるのです。
一方、衆院小選挙区や首長選挙ではこれらの手法は効果が薄いのですが、支持者は依然としてこれら手法を求めるため、ジレンマが生じます。善意で行おうとしている上に過去に成功体験があるため、それを強く止めることもできず、「自分たちのやりたい方法はこの選挙で負ける方法だけど、これで勝ちたい」という矛盾が生じるのです。
3. 社会運動の支持状況
「2024年東京都知事選挙後の政治・社会運動への意識調査」では、新聞やSNSで盛んに言及される社会運動が必ずしも広範な支持を得ているわけではないことが分かりました。むしろ、主要な社会運動が大衆から支持されていないのではないかという疑念が強まる結果となりました。
たとえば、フェミニズム運動は女性からの支持が、高等教育無償化運動は若年層からの支持が確認できていないなど、当事者からの支持も得られていない可能性が高いです。
社会運動の支持者は野党の重要な支持層ですが、市民に支持されていない人々の声が政策の全面に出ると、市民の受け止め方は期待はずれなものになるでしょう。
市民連合の「社会を変えたい」という選挙後の叫びは、民主主義を否定しているように響きますが、案外間違ってはいないのです。社会が自分たちを受け入れない限り、政党から相手にされなくなり、政治への関与ができなくなるという懸念が生じます。
4. 「リベラル」というクラスターの存在
相関分析から、「保守」と「リベラル」が対概念ではない可能性が示されました。 「保守」というクラスターと「リベラル」というクラスターが存在し、それらにそれぞれ逆になる「リベラルが嫌いだけど、保守というわけではないアンチ=リベラル」「保守が嫌いだけど、リベラルというわけではないアンチ=保守(アンチ=ネトウヨ)」のようなものが存在するということになるでしょう。
ひとまず「保守」ー「リベラル」のクラスターで見ると、「2024年東京都知事選挙後の政治・社会運動への意識調査」によれば「リベラル」の方が少ないようです。「リベラル」は社会運動との関係が強いですが、先の通りこれらの社会運動は一般層に支持されているとは言えません。
リベラルが勝つためには社会を変える必要がありますが、現状ではうまくいっていません。ただし、これは「運動が求めているような社会になっていない」のではなく「社会運動が支持を得られていない」ということです。女性が社会で活躍しやすい政策、社会的ムードが出来てきても、フェミニズム運動が支持されないなら、リベラル陣営が政治的権力を持つには限界があるのです。
社会運動を人々に支持させることで「自分たちが勝つ」社会を構築する、これが野党にとって望ましいのですが、そのためには更なる対立と闘争が必要に感じられます。
5. 「立憲民主党」は保守政党にとって魅力的な連携相手か?
「2024年東京都知事選挙後の政治・社会運動への意識調査」の投票希望調査や相関分析から、国民民主党が市民の目から見て明らかに保守政党であり、自民党や維新の会に近いことが見えてきました。一方、立憲民主党は完全にリベラル政党であり、イデオロギー的に全く異なるクラスターを活動の対象としています。
立憲民主党投票希望層は共闘先が日本共産党でも国民民主党でも投票行動に大きな変化はありません。一方で国民民主党投票希望層は立憲民主党と共闘してもその候補に対して熱烈な投票行動を示さないことが予測されます。
立憲民主党と国民民主党の投票希望の相関係数はr=0.35であり、立憲民主党と日本共産党のr=0.51、国民民主党と維新の会のr=0.40よりも低いです。保守系野党が立憲民主党と組むことが自然であるかどうかは(つまり有権者に受け入れられるのかは)、イデオロギー的な拡大や歴史的な背景を考慮しない場合、今回の調査では明確な結論が得られませんでした。
6. 「既存政党とは違う政治家」「中道・保守候補」というニッチ
繰り返しになりますが、今回の調査では「保守」や「中道」の方が「リベラル」よりも多いことが確認されました。
「2024年東京都知事選挙後の政治・社会運動への意識調査」によれば、保守政党である自民党や維新の会の支持者の投票希望はリベラルな野党よりも弱い傾向があります。当然ながら類似した保守政党が登場すれば支持が「剥がされる」可能性があります。
一方で「無党派層の政治・社会運動への意識調査」から無党派層には潜在的に「既存政党以外の候補」への期待感があることが見えてきました。この期待感を持つ層は、無党派層の中でも比較的選挙に行っている層です。
歴史的に見ても、このニッチに働きかけて一定の成功を果たした例があります(例:「みんなの党」など)。「立憲共産」や「立憲国民」の組み合わせがこのニッチに入るかどうかは不明です。無党派層の「既存政党以外の候補」へ投票したいという層と既存政党への投票希望層は重なっていないため、可能性は低いかもしれません。
公開日:2024年8月3日
このレポートの作成にはChatGPT4oを利用しています