「野党共闘」の研究

都知事選挙と市民連合

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1 はじめに


 以前から調査をしていた「市民連合」(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)の東京都知事選挙後の7月11日夜にSNSへアップした声明文(下図)が波紋を呼んでいます。


立民・泉代表、岡田幹事長は利益率94%超…労組主催“隠れ蓑”政治資金パーティー(Smart FLASH)

「自治労」と関連政治団体について:「野党共闘」の研究⑤

「市民連合」の実態:「野党共闘」の研究⑥ 

「自治労」の政治資金についていろいろ:「野党共闘」の研究⑦

雑誌取材班との共同作業について  

「市民連合」に関する基本的理解:「野党共闘」の研究⑧


    声明文の中で、市民連合が事実上支援した蓮舫氏を抑え、2位に入った元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏のことを「1年後には忘れ去られているのでなければテレビのコメンテーターになってそうな泡まつ候補」とし、蓮舫氏が石丸氏に及ばなかったことを「深く傷つく経験」としました。また、「変えたいのは政治だけでなく、こんな選挙結果が出てしまう社会でもあった」とあたかも選挙を軽視するような文言も盛り込んでしまいました。声明文は7月12日の朝にTwitter(X)上で批判の的となり、すぐさま削除、一方でInstagram上では7月14日9時30分現在、削除されておらず、その見識は顕示されたままです。

 東京都知事選挙を通じた市民連合の動きについてわかっていることを関係者からの複数の情報をまとめて以下、報告します。

2 関係者情報の整理


①都知事候補の「候補者選考委員会」に菱山南帆子氏が市民連合所属の「呼びかけ人」として参加しています参照:日本共産党東京都委員会 東京民報「『共闘候補実現しよう』初の選考委員会を開催」。しかし、都知事選考委員会へ菱山氏が事実上代表として参加することは運営メンバー内で相談や連絡はなかったとのことです。

②また「候補者選考委員会」での議論および蓮舫氏に候補者が決まったという報告は運営メンバーになかったとのことです。

③蓮舫氏に決定後、市民連合として蓮舫氏を推薦・支援する旨の議論/決定、あるいは運営メンバーへの事後報告はなされていません

④当該声明文は7月11日夜の拡大運営委員会後に公開されたものですが、当該声明文を誰がどのような経緯で作成したのかなど、一部の運営メンバーが承知していないとのことです。さらに声明文の公開と削除についても相談や連絡を運営メンバーに行っていないとのことです。


⑤東京都知事選告示後の6月25日、市民連合Webサイト上に運営委員で政治学者の山口二郎氏がJAM会長と対談した模様が掲載されました。その中で山口氏は「安全保障を争点化するのは的外れであり、賢くないとずっと言っています。必要なことは岸田政権が決めたいくつかの重要な安全保障政策、とりわけ防衛費のあの急増に対するチェックです」と発言しています。市民連合は「安保法制の廃止」を掲げた政治団体であり、安全保障を政治・選挙の争点にすることを「的外れ」とするのは同団体の根幹を揺るがす大きな方向修正です。この重要な対談をWebサイトに掲載する旨の説明は運営メンバーに行われなかったとのことです。


⑥これまで公開された市民連合の政治資金についてレポート、さらに週刊FLASHとの共同調査、「虎ノ門ニュース」での市民連合特集など、このひと月、市民連合の政治資金が取り上げられてきましたが、このことについて事務局や幹部から運営メンバーに説明はなかったとのことです。

3 おわりに:総括と雑感


   ①-④から蓮舫氏の都知事候補擁立および支援について市民連合内で組織的に決められたことではないことが見えてきます。一方で先の声明文やSNSへの投稿(下記掲載)などを見ると、事実上、市民連合は蓮舫氏を支援しています。考えられることとして、運営メンバーのさらに上の「コア・コアメンバー」によってほとんどなし崩し的に蓮舫支援の決定が行われたということでしょう。

 また、⑤から市民連合の方針についてはこの「コア・コアメンバー」が決定しており、運営メンバーには報告や相談もないことが見えてきます。

 ⑥を見る限り、運営メンバーからの問い合わせや異議申し立てがない限り、「コア・コアメンバー」は市民連合の運営方針や実態を内部メンバーにさえ開示しないようです。


・・・改めてまとめてみると普通の組織ではないように感じます。また、ここまで物議を醸しても、いまだに一部SNSで当該声明文を掲げ続けるというのは常軌を逸したものを感じます。

   そもそも市民連合の規約自体、実態を反映したものではないため、意思決定プロセスが明瞭ではなく、一部メンバーが暴走しても誰も止めることができません。これは同団体が掲げる「立憲主義」の理念とも相いれません

   市民連合で何が起きているのか。状況を理解できているのは「コア・コアメンバー」でも極めて少数、ほんの2-3人ではないかというのが私の感触です。

公開日:2024年714